【ブルゴーニュ:3】ジョセフ ロティ、濃厚で高密度の古木ジュヴレシャンベルタン2種を利く


こんにちわ。
本日はブルゴーニュ第三弾。ジュヴレシャンベルタンの名手、ジョセフ ロティのシャルムシャンベルタン ヴィエイユヴィーニュ、そして村名ジュヴレシャンベルタン ヴィエイユヴィーニュです。

今回のジョセフ ロティは1817年に樽職人であったシャルル ロティによって設立され、現在はドメーヌの名前にもなっているジョセフ ロティ氏の息子であるフィリップ ロティが24代目当主としてそのドメーヌを率いています。
ジョセフ ロティと言えば、最も特徴的なのが彼の畑に植わっている超古木の存在でしょうか。
特に今回レポートするシャルムシャンベルタン ヴィエイユヴィーニュは100年以上の古木から産出された葡萄を使用しており、まさにキュヴェ ド トレに相応しいワインとなっています。
栽培はすべてリュットレゾネで行なわれ、100%除梗の後、8日間の低温浸漬を行う。アルコール発酵後プレスされ、トロンセの新樽で新樽比率は一級は50%、特級は100%で18ヶ月の樽熟成を行なった後、無濾過無清澄で瓶詰めされます。

ジョセフロティはマルサネ ルージュしか飲んだ事が無かったのですが、今回は本丸のジュヴレシャンベルタンと言う事で期待が高まります。どのような感じでしょうか。
ちょっとレポートしたいと思います。


生産者: ジョセフ ロティ
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン キュヴェ ド シャン シュニ ヴィエイユヴィーニュ 2010

約8000円、WA92-93pt(2005)
赤みの強い濃い色調のルビー、粘性は高い。
比較的樽が強く香ばしいカカオやコーヒー、シナモンのニュアンスを中心に感じ取れる。溶剤やスミレなどの華やかさ、濃密なブラックベリーやブルーベリーの様な黒系の果実味。そしてドライハーブ、燻製肉、オイルっぽさ、紅茶、炭焼き、五香粉のスパイシーな香り。
酸味は柔らかく滑らかで、ローステッドな香ばしい香りと果実味が楽しめる。タンニンは強くない。


生産者: ジョセフ ロティ
銘柄:シャルム シャンベルタン グランクリュ キュヴェ ド トレ ヴィエイユヴィーニュ 2010

約42000円、WA97-98pt(2005)
村名と比較しても赤みの強い濃い色調のルビー。粘性は高い。
シャルムの方が強く樽が効いておりカカオ、コーヒー、五香粉の香り、ブラックベリー、プラムの濃密で甘露な果実味、シロップとキャラメルのまったりとした甘露さを感じる。若干ミネラルがあり、冷涼な雰囲気も感じられる。ミルクティーや華やかなスミレ。リコリス、ハーブ、クローヴ、タイムなどの青っぽい雰囲気。
村名と比べると濃厚で華やかで、かつ複雑。酸味もタンニンも強くパワフル。


いやーべらぼうにオーラがありますね。素晴らしい。
濃いブルゴーニュ好きには大歓迎されるのではないでしょうか、村名からしてもう本当に凄い。
そしてシャルムはその凄まじい村名を遥かに超える特級でした。
まず全体から言うとしっかりと樽の効いた作りで、更に強烈な凝縮感、複雑さがあるアタッキーなジュヴレシャンベルタン。豊満で外向きに強烈に開いていく膨大な規模感を感じさせるワインですね。目の細かいエキス感のあるタイプではなく、濃いタイプです。

その中でこのシャルムは村名と比較して、より樽と果実味が強く感じられます。そしてシャルムの特徴であるハーブやミネラルも際立っています。
これは表土が薄く15cm程度しか無い(つまりマゾワイエールの特徴はない)ジョセフ ロティのシャルムの土壌に由縁するものではないかなと思われます。
またジョセフロティの村名区画がどこにあるのか分かりませんが、恐らくベーシックなところで国道を挟んだ、下部に位置する村名区画密集地帯にあるとすると、果実味の強いこのシャルムの特徴は理解しやすいと思います。
日照条件が良く葡萄が熟しやすい特級区画であり、かつ背斜面からの冷涼な風の影響を受けつつ、表土がうすくミネラルを吸収しやすいシャルムのテロワールと、日照条件にムラのある平地であり、風の影響を受けない村名。
テロワールの違いと、味わいの違いがしっかりと紐づいています。
またシャルムシャンベルタンが100年近くのヴィエイユヴィーニュが使われている事を考慮すると、甘露さと凝縮感が強く現れるのは自然な事だと思います。古木が優れている理由としては根が深くまで伸びており、樹勢が弱いので自然の剪定がなされる為、複雑な要素を吸い取った優れた葡萄が取れる事ですが、こちらもジョセフロティのシャルムにちゃんと反映されています。
かなり体躯が強く、パワフルなスタイルのジョセフ ロティですが、かなりワインごとに差を付けているところが素晴らしいですね。上手くない生産者の場合は抽出や樽の強さでテロワールを壊してしまうのですが、この生産者は緻密に表現できていると思います。

さすがにシャルムとしては値段高すぎですが、この内容であれば「まあ仕方ないかな」と思います。
超絶クオリティのシャルムです!オススメ!



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【ブルゴーニュ:2】セラファン ペール エ フィス、官能的なカズティエ、禁欲的なコルヴォーを効く

こんばんわ。
本日はブルゴーニュ特集第二回。ジュヴレシャンベルタンの生産者、セラファン ペール エ フィスの村名、そして1級コルヴォーとカズティエをレポートします。

セラファン ペール エ フィスは1947年に設立したクリスチャン セラファン率いるドメーヌ。
ジュヴレシャンベルタンにおいても傑出した品質のブルゴーニュを産出しています。
なるたけ葡萄に人的なアプローチを避けた栽培を行なっていますが、芽掻きや剪定はしっかりと行ない、状態の悪い葡萄はすべて選果で弾かれています。除梗は60%程度行ない、5-6日の低温浸漬。アルコール発酵をしながら15-20日のキュヴェゾンを行ない、新樽比率は村名で70%、一級は100%程度で20ヶ月の熟成を行なう。無濾過、無清澄で瓶詰めされる。

セラファンは村名は頂いた事がありますが、1級クラスは初めてです。
びっくりする程レベルが高くて驚きました。伸びやかで華やかでいてリッチな均整の取れたワインだと思います。
個人的にはとても注目している生産者なので、今後もどんどんレポートして行きたいと思います。



生産者: セラファン ペール エ フィス
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン 2010

約8000円、WA89pt
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。村名ながらとても伸びやかで煌びやかな香りが特徴的。
シナモン、黒胡椒、バニラなどの甘露さと共に強い酸味を伴うジャムの様なアメリカンチェリーやラズベリーの香り。そして華やかな薔薇やスミレ、八角やわずかな茎のニュアンス。なめし革、燻製肉、ローズヒップ、カルダモン、グローヴやタイムなど。
全体の雰囲気としては硬さは無くタンニンは柔らかい、梅しばの様な綺麗な酸味と旨味が広がる。煌びやかでありながら、ふくよかで柔らかい甘さを感じるジュヴレシャンベルタン。村名にしてこのクオリティか...!


生産者: セラファン ペール エ フィス
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン プルミエクリュ レ コルヴォー 2010

約13000円、WA90-92pt
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
村名と方向性は似ている。しかしながらより凝縮感が強くミネラリーで引き締まった印象を受ける。
ただその凝縮感だからこそか、花開いた時の規模感は村名を大きく超越する。
シナモンやシロップの甘露さと果皮成分の強いダークチェリーやブルーベリーの果実味。それらの甘露さや酸味の際立つ果実味が渾然一体となって芳香する。スミレや薔薇、八角のスパイシーさ、茎、グローヴやタイム、燻製肉のニュアンスも。
じわっとしたタンニンと引き締まった酸味と旨味が綺麗に口に広がる。ものすごいチェリーの旨味と果実味。
引き締まった凝縮感があるので一見硬質な感じですが、そのパワーや甘露さ、ミネラルたるや村名を大きく超越する。


生産者: セラファン ペール エ フィス
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン プルミエクリュ レ カズティエ 2010

約22000円、WA93-95pt
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
全くコルヴォーと村名とは方向性が違う。いかにもジュヴレシャンベルタン的なワイン。
煌びやかだが、村名と比べると、よりボリューム感があり甘露で肉感的で厚みのある香り。
肉厚な印象もあいまってシナモン、黒砂糖、バニラ、八角の様なふくよかな甘みとジャムの様なダークチェリー、ブルーベリーの果実味。
コルヴォーがミネラリーかつ凝縮した甘さの印象を受けるのに対して、カズティエは厚みと甘露さ、複雑さが大きく発露するスタイル。華やかな薔薇やスミレ、鉄釘、果皮の味わい、燻製肉、ミルクティー。わずかにタイムやグローヴが感じられるが、ロースト香や果実味がが非常に強い。
タンニンは柔らかく、酸味と共に溢れ出る旨味が素晴らしい。
こちらも口に含んだ時にフレッシュなジャムの様な果実味が広がって行く。余韻は長い。
凄まじく偉大な一級畑だ。


セラファンのワインを飲んで思うのが、どれも雑味の無い澄んだ果実味と煌びやかで華やかさを備えたピノノワールだなと。そして口に含んだ時の旨味は村名から一級まで驚くくらい滑らかで官能的。どの要素もつけいる隙が無いくらい美味い。

どれもバランスが良く、もう既に村名からして驚異的な甘露さ、完成度。
そして村名から発展する様にコルヴォーは強固でドライなミネラル感、そして強い凝縮感を併せ持っています。
ただドライといっても、カズティエとの比較なので、村名と同程度には豊かな果実味があります。そして時間を経過しても暫くその果実味が向上、持続します。さながら長距離スプリンターの様なピノノワールだと思いました。
やや果皮に由縁する華やかさが強く、ちょっとした青っぽさがあります。
またカズティエはコルヴォーとはまた別方向に村名を発展させたスタイル。濃厚で甘露だけど、とても品の良い豪華さを備えたピノノワール。
さながら新世界が如き強烈な果実味、新樽のクリスピーな風味。ブルゴーニュ的な伸びやかさ、繊細さ。畑のポテンシャルもさることながら、生産者の巧みな技によるところも大きいと思います。

そもそもこの生産者の作りは結構濃いめの作りなのですが、それぞれの畑の特徴と照らし合わせてみると、とてもテロワールに則した作りをしていることがわかります。

コルヴォーはマジシャンベルタンの下部、コート サン ジャックの向いに位置する畑でジュラ紀中期のバトニアン地質(褐色石灰岩と粘土)。ラヴォー渓谷とモレ渓谷の背斜面からの冷涼な風の影響を受けます。
カズティエはクロ サン ジャックと共に別格クラスの一級畑で標高300-360mの急斜面にあり表土に石が多く、泥灰質と沖積土壌で構成されており、中腹部に岩が露出していることから表土は薄めだと思われます。出来るワインはpH値が高くなる事が特徴です。

ややコルヴォーがドライでミネラリーで印象を受けるのは、母岩の褐色石灰岩とラヴォー渓谷とモレ渓谷の冷涼な風の影響を受けている為だと思います。
マジシャンベルタンやフォントニーの方が背斜面に近く、上部で表土が厚いので硬さと凝縮感を併せ持つワインが出来るのですが、コルヴォーはマジやフォントニーと同様の風の影響受けつつ、母岩の影響も併せて強く現れている様に見受けられます。
対してカズティエはコート ド サンジャックでも風の影響を受けにくい場所にあり、かつ南東向きの急斜面でよく果実が熟し、かつ複雑な土壌構成で複雑な要素が出ていると思います。パワフルかつ繊細だと思います。(隣のクロ サン ジャックはより複雑かつミネラリーで、かつよく成熟するであろう事がよくわかる立地ですね)
村名も比較的良くできているのですが、とてもテロワールに則した良いワインが出来ていると思いました。

いや、ドニ バシュレとともにセラファンは個人的にとても大切なドメーヌになりそうです。
ブルゴーニュはどの村にもとても偉大なドメーヌが多いですが、なんだかんだ言って一番衝撃を受けるドメーヌは大体ジュヴレシャンベルタンに多い様な気がしますね。



【ブルゴーニュ:1】ヴァンサン ドーヴィサ、グラス内時間経過の大切さを知るシャブリ2種テイスティング。

こんばんわ。
今日からまたブルゴーニュです。
まずはヴァンサン ドーヴィサのフォレとクロの並行テイスティング。

ヴァンサン ドーヴィサはシャブリのトップドメーヌ。シャブリとしては実に長命でかつ伝統的なワインを造っています。
特級畑、一級畑のシャルドネの樹齢は45年。収量制限をしながら、ビオディナミにて栽培しています。温度管理可能なステンレスタンクでアルコール発酵。130lの小樽でマロラクティック発酵をしながら熟成させます。新樽比率は低く約2割程度。熟成後、軽く濾過を行い瓶詰めされる。
ポートフォリオはグランクリュからプティシャブリまでシャブリ内に複数の畑を所有しています。

ラヴノーとドーヴィサは別格の生産者だと思っておりますので、毎年非常に楽しみにしているのですが、今年も非常に美味しかったです。
いってみましょう。


生産者: ヴァンサン ドーヴィサ
銘柄: シャブリ プルミエクリュ ラ フォレ 2011

外観は淡いストローイエロー、粘性は中庸。
サーヴ直後だと、かなりミネラルが強く、硬質な印象を受ける。クロと比べるとこちらの方が早く解け始め、シナモンや濃縮した白い花の蜜やドライハーブ、ライチやレモンなどの柑橘系の果実味が感じられる様になるが、やや早めに香りに抜けが現れる。
リコリス、白胡椒、シャンピニオンなどの風味も。
酸味はシャープだが、毛羽立った感じは無く、口当たりは柑橘系の黄金飴の様な味わい。
抜けは早いが、味わいは非常に優れている。


生産者: ヴァンサン ドーヴィサ
銘柄: シャブリ プルミエクリュ レ クロ 2011

外観は淡いストローイエロー、粘性は中庸。
ラ フォレと同様、ミネラルが強固であり、硬質な印象を感じるが、こちらも急激にバニラ、シロップや花の蜜などの甘露さ。
カリン、ライチ等の果実味が強く現れてくる。密度、凝縮度がACシャブリ、フォレと比較して他のキュヴェに対して非常に高い。
フレッシュハーブや、白い花、キノコ。僅かにローストナッツとバターの風味もある。
まだ柑橘的なシャープな酸味を感じさせるが、ボディはまとまっており出汁的旨味を感じさせる。
とても素晴らしいグランクリュだと思う。


今回のドーヴィサの水平はとても勉強になりました。
特に時間経過の部分で各々のワインが大きな違いを見せていました。
まずACシャブリが開き始め、そこから5-10分程度でフォレが開き始めます。この時にACシャブリが落ち込み始めてきます。そしてさらに15分程度でクロが開き始めます。
20分以降はフォレも少しずつ落ち込んで行きますが、クロはほぼ40分-1時間程度経過してもピーク時の姿をほぼ崩す事はないです。
時間の経過と共に広域名から開き、そして持続せず落ち込み始めますが、一級、特級は硬いミネラルに覆われて開き始めるまでかなりの時間を要するものの比較的長い間ピークの状態が継続していきます。

それではこれらのピーク時を比較した時にどの様な形になるのか。
ACシャブリは香りを嗅いだだけなので、緻密に分析した訳ではありませんが、かなり強い果実味はあるものの、ややぼんやりとした印象を受けます。
それに対してフォレはやや強めのミネラルと澄んだ凝縮した果実味があります。密度が非常に高い。ACシャブリにしてピーク時は一級並の果実味を有していますが、それを遥かに超える完成度といって差し支えないと思います。
そしてレ クロはまさにグランクリュ。
フォレに見られた強いミネラル感と甘露かつ高密度の果実味を維持しながら、外に力強く広がっていく規模感を感じさせるワインだと思いました。そして何よりもその状態が非常に長い時間保持される事が特徴だと思います。
そして旧樽、そしてバリックの約半分の容量の樽を使用する事で新樽でなくても綺麗な樽香と僅かに酸化(熟成)したニュアンスが感じられるのが素晴らしいですね。

一級 レ フォレ: 保温性が高く、粘土の種類が豊富であり、石が多いため排水性に富む。
特級 レ クロ: シャブリ最高の特級畑。
石灰岩を母岩としている白色粘土土壌で表土が厚い。


無論酸の厳しさ、ミネラルの硬さは上位キュヴェの方が顕著ですが、これはヴァン ド ガルドというか、長熟する事を指し示していると思っています。
厳しさの差異はあれど、いずれも酸味は清涼感がありシャープな印象を受けました。

やはり生産者が同一という事もあり同じ方向を向いているのですが、土壌の特性をキッチリと表現がなされていたと思います。本当に素晴らしいシャルドネでした。
値段もラヴノーと比べると、ダブルスコアで安いので、機会があったら買いたいのですが、何分手に入らないという。ままならないものですね。

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ちなみに余談ですが、ドーヴィサの3種類は簡単にブラインドしてみました。
見事にすべて外しました。
敗因としては①香りだけで判断した。②時間経過を考慮せずある一部分だけで判断した。③畑の特徴を上記①②に照らし合わせて判断した。といった所です。
本来は時間経過の変化を見ながら持久力とワインごとのポテンシャルを見極めなくてはいけなかったのですが、②の様に、その時点で最も強い果実味を放っていたACシャブリをレ クロと判断してしまいました。本来は口に含んだ時の凝縮感である程度の不自然さを見極める事はできたと思いますが①によって考慮に含めることができませんでした。結局の所時間の経過でフォレとクロが開き、ACシャブリを軽く凌駕するポテンシャルを見せたので、ここまで見届ければ十分に正確な判断は下せたのではないかと思います。またフォレとクロは畑の特性でフォレはミネラルが良く出るので、それも恐らく判断可能だったのだと思います。
何れにせよお恥ずかしい限り。
ブラインドは慢心してるとあっさりと足元をすくわれますね。引き締めてかからないと、見事に引っかかりそうです。




【カリフォルニア:4】卓抜したカリピノ。オーベール、ピーターマイケル、リバースマリーを利く



こんばんわ。
今回もカリフォルニア ピノノワール特集です。前回はブルゴーニュスタイルの生産者でしたが、今回はカリフォルニアらしいピノノワールを作る生産者。非常に豪華で濃厚。ピノノワールのひとつの完成された姿をレポートします。
カリピノの名手といえばマーカッシン、キスラー、オーベール、ロキオリ、ピーターマイケルなどが有名です。今回はオーベール、ピーターマイケル含めたカリピノ カルト3種類をレポートします。

リバースマリーは、シュレーダーなどのカベルネソーヴィニヨンを手がける醸造コンサルタント、トーマス リバース ブラウン率いるワイナリー。ソノマコーストで自身の名前を冠したピノノワールを作っています。2009年が初ヴィンテージ。
シルバーイーグルヴィンヤードはウリテス ヴァルデスの所有する畑。土壌は海の堆積物で構成されます。海からの霧の影響を受けるため涼しいですが、日照条件は良い土地です。テクニカルデータは不明です。

オーベールはピーターマイケル、コルギンなどの醸造コンサルタントを務めたマーク オーベール夫妻によって設立されたワイナリー。ソノマでシャルドネとピノノワールをメインに生産しています。 (ちなみにあの気難しいヘレンターリーのアシスタントも務めていたとのこと!)日本への輸入は2010年が初。ウリテス ヴァルデスの所有す?ストーツレーン ヴィンヤード(UV-SL)は冷涼なソノマ コーストにおいてやや温暖な地域にあり、25hl/haという低収量により凝縮感のある力強い果実が産出されます。発酵はフレンチオーク新樽を使い、無清澄や無濾過で瓶詰めされます。新樽比率、キュヴェゾン、除梗の有無は不明です。果実の厚みに隠れていますが、多分全房発酵か、一部除梗だと思います。新樽比率も多分高いかと(70-100%っぽい)

ピーターマイケルワイナリーは「サー」ピーターマイケルによって1982年に設立されたワイナリー。カベルネソーヴィニヨン、シャルドネ、ピノノワールと大きく方向性が異なる品種を作りながら、その全てで高い評価を受けている稀有な生産者です。ナパにおいて最も冷涼なカリストガ地区に拠点を構えており、混在する2つの気候による温度差によって品種の個性を引き出しています。現在の醸造責任者はニコラ モーレ。マルチなヴァラエタルで最高の評価を受けています。今回はソノマのピゾーニヴィンヤードから作られたピノノワール。
テクニカルデータはわかりませんが、ピゾーニらしいピゾーニに仕上がっており、甘酸っぱい味わいになっています。



生産者:リヴァース マリー
銘柄:シルバーイーグル ヴィンヤード ピノ ノワール 2011

約7000円
外観は濃い外観のルビー、粘性は高い。
非常に甘露な味わいで果実味に溢れている。この中だと最もスタンダードなカリフォルニア ピノノワール。ブルーベリーやダークチェリーの非常に熟した黒系果実味が感じられる。バニラ、シロップ、シナモン、黒砂糖の甘露さ。スミレなどの華やかさ。オーベール程濃くはなく、複雑さもやや劣るが甘露さにおいては同等程度。やや土っぽさ、燻製肉、グローヴなどの風味も。全体的に甘露で果実味が強く、非常に魅力的な味わい。酸味もタンニンも滑らか。アタックは強く、豊満な果実味が感じられる。


生産者: オーベール
銘柄: UV-SL ヴィンヤード ピノノワール 2010

約20000円、WA93pt(2009)
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
いわゆるカリフォルニアの力強いピノノワール。シナモン、シロップ、焦がした黒砂糖、キャラメルなどの甘み、豊満な果実味を感じる。ブルーベリーやプラムの凝縮した力強い果実味。樹皮やアーモンド、燻製肉。スミレやドライハーブの自然な華やかさ、わずかに茎やグローヴなどの風味も。
ブヨブヨと膨れ上がった甘さではなく、しっかりしたタンニンと酸味で骨格が象られている。
口の中で甘露で複雑なシロップや黒砂糖の様な果実味が広がる。余韻は長い。ハーブの様な風味も。
果実味と甘さは圧倒的で他のカリピノとは一線を画す重厚なピノノワール。最もパワフル。時間を経ても黒砂糖の様な強烈な甘みが残る。
ブルゴーニュと全く異なるピノノワールだが作りは卓抜している。


生産者: ピーター マイケル
銘柄: ル ムーラン ルージュ ピノノワール(ピゾーニ ヴィンヤード) 2003

約26000円、WA93pt
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
果実の自然な凝縮感のある甘さ。UV-SLヴィンヤードとは異なる、酸味を伴う自然な果実味を感じ取れる。
焼いた黒砂糖や、アメリカンチェリーのリキュールやアプリコットの酸味と旨味を伴う果実味が感じ取れる。とてもピゾーニらしいピゾーニ。そして華やかな薔薇やスミレ、ドライハーブや溶剤、土っぽさ、血液の様な鉄分、紅茶、グローヴ、ローリエなど僅かに青っぽいニュアンスも。
力強さ、パワフル感で言うとオーベールには届かないが、各要素の均衡はとてもよく取れている。03とは思えない程生き生きしているのが特徴的だ。
花や溶剤の華やかな香りが口に広がる。タンニン、酸ともかなり力強く凝縮した印象を受ける。


それぞれ別の方向を向いている。
いかにもカリフォルニアのピノノワールといった感じの甘露で力強いリヴァーズマリー、その甘露さと樽をより強くしたオーベール。酸味と凝縮した果実味を感じるピーターマイケル。
同じカリフォルニアのピノノワールなのにここまで違うのかと。
今回の共通点でいうと、押し並べてサーヴ直後は非常に閉じていたと思います。
果実はどのワインもキッチリと熟しており、かつオーベールとピーターマイケルはブルゴーニュ顔負けの複雑さ。
適度な時間をかけて成熟し、かつ完熟している。ニュイのグレードヴィンテージを飲んでいる様な果実味の豊かさであると思います。
醸造のタイプなのか果実に由縁するものなのかはわかりませんが、やはりブルゴーニュの方が華やかで官能性が高い様に思えます。ミネラル感や華やかさが瑞々しく、テロワールによってはスパイシーな味わいを持つブルゴーニュと比べると、このクラスでも葡萄と樽の力を前に出したキャラクターといえると思います。
この2本のタイプは全体感でいうと似通っていますが、リバースマリーはニュイサンジョルジュ的な構造を持ち、かつ幾分か複雑さに欠ける部分があります。オーベールはジュヴレシャンベルタン的な強固さな構造を持っていると思います。
それらのブルゴーニュ的要素に果実味と甘い樽香を強く前に押し出したのがこれらのワインだと理解しています。
ブルピノとは印象が全く事なりますが、細かくみていくと表現は違えど構成要素に関しては似通った部分が見受けられると思います。

ピーターマイケルのピゾーニはピゾーニらしい作りで甘露でありながら強い凝縮感を感じさせるピノノワールで、非常に酸味と旨味がとても豊か。
完熟した葡萄でありながら豊かな酸味があって、この部分はあまりブルゴーニュには無いスタイルだと思います。
豊満かつ甘酸っぱい。
ピゾーニはカリフォルニアのグランクリュ的なポジションだと思ってるのですが、生産者の技量も含めて流石クオリティがべらぼうに高いです。
タンタラやピゾーニピゾーニ的なスタイル。2003年という事で結構熟成しているのですが、熟成してなおこの凝縮感、噛む様な厚さを持ったピノノワールだと思います。

この3つのピノノワールはいずれも方向性を別々に向きながら、そのクオリティは突出しています。どれも本当に美味しいピノノワール。
ブルゴーニュ好きには「これは違う」と思われるかもしれませんが、品種の個性の一側面としてとても楽しめる作りだと思います。

これからも注目ですね!




【カリフォルニア:3】ブルゴーニュスタイルのカレラ ミルズとオーボンクリマのフラッグシップ

こんばんわ。
今回から2回にわたってカリフォルニアのピノノワール5つのワイナリーをレポートします。
まずはブルゴーニュの強い影響下にあるカレラとオーボンクリマの2つから。

カレラはカリフォルニアでもブルゴーニュに近いスタイルを持つ生産者で、当主のジョシュ ジェンゼンはドメーヌ ド ラ ロマネコンティに師事し、収穫を、デュジャックで醸造を学んだとのこと。そのスタイルはロマネコンティと近いスタイル...の事ですが、正直良いワインだと思いますしブルゴーニュと非常に接近するワインだとは思いますが、DRCとはちょっと違うかな、とは思います。
ちなみにオーボンクリマのジム グレネデンとは仲が良いとの事。ブルゴーニュスタイル同士通じるものがあるんでしょうか。
今回のマウントハーランのミルズ ヴィンヤードは6つある自社畑のなかで南側に位置するヴィンヤードで標高700mで樹齢は30年程度のピノノワールは植樹されています。収穫はすべて手積みで行なわれ、天然酵母で発酵。ピジャージュは1日2回。キュヴェゾンは14日。フレンチオークの新樽30%でMLFを行ないながら16ヶ月熟成。無濾過無清澄で瓶詰めされます。

オーボンクリマはサンタバーバラに拠点を置くブルゴーニュ品種の名手です。
それもそのはず、ジム グレネデンはアンリジャイエに師事した経歴があり、エレガントでブルゴーニュに寄った味わいのピノノワール、シャルドネを作ります。
フラッグシップはイザベルですが、そのイザベルの中でも梗が木質化したヴィンテージのみ作られる特別なワイン(いまでリリースされたのは2ヴィンテージのみ)です。通常この生産者のワインはアンリジャイエスタイル...除梗100%で仕込みますが、このキュヴェに関してはDRCやデュジャック同様全房発酵を行なっています。

かたやDRCとデュジャックに師事したジョシュジェンゼン、かたやアンリジャイエに師事したジム グレネデン。
ブルゴーニュ最高のスタイルを知る2つのカリフォルニアのワイナリー。どうでしょうか。


生産者: カレラ ワイナリー
銘柄: ミルズ ヴィンヤード ピノノワール 2007

約8000円、WA95pt
初日はやや硬質でドライ。冷淡な印象だったが、二日目にはやっと笑顔を見せてくれた。
外観は濃いルビー、粘性は高い。
非常にニュイ サン ジョルジュ的な作りのピノノワール。
幾分かのミネラル感とデーツやドライプルーンの様な甘露で濃厚な果実味、シナモンやシロップ、燻製肉などのニュアンスが主体となり、グローヴなどのハーブ、茎、乾いた土、スミレのアロマオイルなど風味が強く出ている。初日は幾分かドライで硬質な印象があったが二日目には綺麗に打ち解けてきて。やや鉄分っぽさも。
凝縮度がとても高くリッチなピノノワール。後味にやや苦味を感じるが気になるほどではない。
3日目。更に甘く、シロップやシナモンの香りが強くなった。これはカリフォルニアだ!


生産者: オー ボン クリマ
銘柄: サンタリタ ヒルズ ラーム ド グラップ ピノノワール 2005

約23000円
外観は赤みの強いルビー。オーベールと比べると若干淡い色調か。粘性は高い。
他のカリピノと比べるとやや冷涼な雰囲気を感じる。典型的なそれではない。ダークチェリーやブルーベリーの果実味と共に、グローヴ、シナモン、タイムなどの強いスパイス、ハーブ香が感じられる。茎、若葉の青っぽさも。
またコリアンダーや藁、落ち葉、燻製肉、紅茶など。
いわゆる新世界的ではなく、どちらかといえばニュージーランドの様なピノノワール。果実味に寄る味わいではなく、茎やスパイスなどの複雑な味わいが広がる。タンニン、酸はやや強め。いかにも全房発酵といった感じ。
良いピノノワールだが、これは除梗した方が良かったのでは...とも。


やっぱり全房発酵の特徴はどちらもしっかり出ていますね。除梗100%の様な澄んだ味わいにはなっていないですが、代わりに全房発酵ならではのスパイスやハーブなどのニュアンスが強く出ていると思います。
また樽に由縁するニュアンスは共にあまり感じませんでした。

この2つだとカレラのミルズの方がバランスが取れている様な気がします。
ミルズはやや抽出が強めだからかそこまで青臭さは感じず、複雑な味わいに転化しています。対してラーム ド グラップはオーボンクリマが若干全房発酵に不慣れなのか、バランスがあまり良くない様に思えます。複雑は複雑なのですが、ボディや果実味に不足感を感じますね。イザベルは飲んだ事ないですが、どうなんでしょうね。
除梗していれば...澄んだエキス感のある味わいになるんではないかと。

標高300-700m、南西向き緩斜面にあるミルズと標高400mのイザベルだと、熟度はあまり変わらないっぽいので(そもそもソノマとマウントハーランで気温とか違うんでしょうけど、よく分からなかったんで...)やはり抽出によるものかな、と思います。
2年間ラーム ド グラップの方が年を食っているので、そこにも由縁するのでしょうか。価格の割にちょっと満足感が低いです。

もう少し突っ込んで見たいのですが、何分資料が少なく、こんなところです。全房発行の特徴はすごく良く分かったので良かったです。
最高のものになるとデュジャックやDRCみたいになるんでしょうね、きっと。


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【カリフォルニア:2】2つのスタッグスリープを冠する生産者。ワイナリーとワインセラーズを比較する。



こんばんわ。

今回はナパヴァレーの銘醸地スタッグスリープス ディストリクトから2つのワイナリーをセレクトしました。
ひとつはスタッグスリープス ワイナリー、そしてスタッグスリープス ワインセラーズです。
この2つのワイナリー、さながらクラレンス家に併合される前のラ ミッション オーブリオンとオーブリオンがごとく名前が原因で揉めに揉めたワイナリーです。
ワインセラーズのS.L.Vがパリテイスティングでボルドーの1級シャトーを下した事で一躍トップ生産者に躍り出た事は有名な話です。今でこそスクリーミングイーグルやハーランエステート、ボンドやコルギンなどボルドー1級と同等かそれ以上の評価を得るワインが多いですが、70年代というボルドー不遇の時代とはいえ、その敗北には大きなセンセーショナルが走った事でしょう。それによってスタッグスリープス ワイナリーの方が歴史は古いですが、ワインセラーズが圧倒的な知名度を獲得します。
で、そこで揉める訳だ。同じ様な名前だから。
結果、アポストロフィーの入れ方(※写真参照)を変える事で決着するのですが、個人的には「そういう問題か!?」といった感じです...

さてそんな2つのワイナリー。
現在はニッキ プリュスが指揮を執るスタッグスリープ ワインセラーズ。
パリテイスティングの主役とも言える生産者。
樹齢14年から40年のカベルネソーヴィニヨンを持つスタッグスリープ ヴィンヤードとフェイ ヴィンヤードで収穫した良質な葡萄を更にポジティブセレクション。MOGシステムで除梗を行いそれぞれステンレスタンクで醗酵。MLF後、新樽比率90%のフレンチオーク小樽で20ヶ月熟成、ブレンドされ出荷されます。

不遇のお隣、スタッグスリープ ワイナリーは19世紀終盤に設立された老舗ワイナリー。ロバートブリタンが指揮を取り、現在はベリンジャーの傘下となります。カベルネとプティシラーを主に作っており、どちらかといえばプティシラーの方で手腕を発揮しているようです。今回はカベルネソーヴィニヨン。醸造方法は不明。

なお、スタッグスリープの気候と土壌は以下の通り。
標高は20-123m、降雨量は750mm(東京の半分以下)で真夏の平均32 ~34 ℃。基本的に非常に温暖ですが海からの涼風と霧が夜間岩肌を冷やすので寒暖の激しい好適地と言えると思います。表土は50cm ~180cm ほど(大体モレ サン ドニと同じくらい)の厚さで、岩が多く、下には堅い粘土質の基岩。

ではいってみましょう。


生産者: スタッグスリーブス ワイナリー
銘柄: ナパヴァレー カベルネソーヴィニヨン 2005
品種: カベルネソーヴィニヨン 100%


8000円、WA91-93pt
外観は濃いガーネット、粘性は高い。
やや青っぽい風味を残した樽香の強いカベルネソーヴィニヨン。
新世界的なブラックベリーやカシスの過熟的で濃厚な果実味。シロップの様な甘さ。
こちらの方がより炒ったコーヒー、カカオのローステッドなニュアンスを感じる。
そして薔薇や茎、ユーカリ、リコリス、ピーマンの様なやや青っぽいニュアンス。
葉巻の様なスモーキーさを感じる。インク、鉛筆っぽさなど。
やや酸が際立っており、タンニンは穏やか。全体的に丸みがあるシルエット。
口の中で甘酸っぱいカシスや茎の様な風味が広がる。


生産者: スタッグスリーブス ワインセラーズ
銘柄: カスク 23 カベルネソーヴィニヨン 1999
品種: カベルネソーヴィニヨン 99%、プティヴェルド1%


40000円、WA89pt
外観は透明感のある濃いガーネット、粘性は高い。
ややボディはスタッグスリープワイナリーと比較すると軽めに感じる。
ただそれは樽が溶け込んでいるからかもしれない。こちらの方が純粋な果実味の凝縮感を感じる。
新世界的な完熟したブラックベリーやカシスのジャム、シロップの様な甘み。果実味の方向性はスタッグスリープワイナリーと近い。
しかしながら青さというより西洋杉、スーボワ、ミントやユーカリなどの清涼感を感じるニュアンスがやや強め。
そして穏やかなタバコ、炭焼きや燻製肉、血液っぽさ。リコリス、ややスパイシーな風味もある。
酸味やタンニンはやや強めだがトゲトゲしい感じは無く滑らか。
口の中で木材やブラックベリーと果皮が広がる。余韻は長く続く。


ごちそうさまでした。
以下感想です。
まず双方の全体的な印象としては、果実味の出方は非常に近いと思います。新世界的な過熟感のある甘露でボリューミーで分厚い果実味がベースとして存在しています。
その上で、経年による影響もあるかとは思いますが、ワインセラーズの方が樽がしっかりと溶け込んでおり、果実味が澄んでいる様に感じました。その分ボディはワイナリーと比べるとやや軽い印象を受けましたが、ボルドーの様に綺麗に均整が取れていると思います。そしてスモーキーさやちょっとした青さは感じられます。(あくまでボディのみ。風味自体はボルドーっぽさはあまり無いです)
ワイナリーの方はロースト香が強く際立っていると思います。強烈な樽香と濃厚な果実味が際立ち、いわゆる新世界の優れたカベルネソーヴィニヨンといった感じだと思います。こちらも青さを感じるのですが、他の要素がとても強いのでさほど気になりません。

あくまでベースは新世界的であります。スタッグスリープ自体がとても条件であり、納得のいく果実味ではあります。共に隙のない密度の高いカベルネソーヴィニヨンだと思います。
今回は若干カスク23の方が複雑さが垣間見れます。

しかしながら今回の比較はヴィンテージが異なりますし、ワインセラーズはワイナリーに比べて6年間位経年していますのであまり良い比較にはなっていないかと思います。ボディの軽さ(というか穏やかになっているという捉え方)や複雑さは経年で説明出来ますから、ワインセラーズの2005年はより強いものであると想像できます。果実味に大きな崩れが無い事を考えると、ワイナリーと比較してより強いワインと考えるのが妥当かと。2005年を飲んでみない事にはわかりませんがね、勿論。

新世界のカベルネソーヴィニヨンはなかなか自分で飲む機会が無いですから、貴重な経験が出来たと思います。



【カリフォルニア:1】コングスガード、ドリアンヌを思わせるヴィオニエ&ルーサンヌ

こんばんわ。
さて、万を時してのカリフォルニアレポートです。
今回から4回に渡って、白、ピノノワール、カベルネソーヴィニヨンと迫っていきたいと思います。
さて、最初はコングスガードです。
コングスガードはこのブログでも何回か取り上げていて、フラッグシップの「ザ ジャッジ」、そして「シャルドネ」の3ヴィンテージ、貴重な赤である「シラー」は以前レポートしました。
今回は「ヴィオニエ/ルーサンヌ」。
残りは幻の「カベルネソーヴィニヨン」のみとなります。


コングスガードはナパヴァレーに拠点を置くカルトワイナリー。
主にシャルドネ、シラー、ヴィオニエ、ルーサンヌ、カベルネ ソーヴィニヨンを産出していますが、このワイナリーは何と言ってもシャルドネ。ハドソンヴィンヤード、ハイドヴィンヤード(クローンはオールド ウェンテ クローン)から提供を受けており、グリーンハーヴェストによって収量は一般的なワイナリーの約半分。さらに厳格な選果が行われ、100%ブルゴーニュ産のフレンチオークで22ヶ月熟成される。勿論、無濾過、無清張で瓶詰めされます。フラッグシップはシャルドネを使用したザ ジャッジですが、今回は比較的手の出しやすいヴィオニエ ルーサンヌです。


生産者: コングスガード
銘柄: ヴィオニエ ルーサンヌ 2004

約11500円、WA89pt
外観は濃い黄金色で、粘性は高い。
しっかりとしたミネラル感、塩で炒ったカシューナッツやオイルっぽさが強い。ドライシェリーの様な風味。カリンや洋梨の果実味。
最初はややとっつきにくい印象を受けるが、開き始めると実に見事。杏仁豆腐やシロップ、バニラの甘い香り、ドライハーブや白胡椒などの複雑な香りを放つ。
豊かな酸味があり、口のヨーグルトや柑橘系の味わいが広がる。余韻は長い。ギガルのドリアンヌみたいな味わい。
ヨーグルト味のフルーツキャンディを想起させる。


当然ですが、同生産者のシャルドネに似た所もあり、かつ異なる所も多く見受けられます。
色調はヴィオニエ/ルーサンヌの方が濃く、粘度もややこちらの方が強いと思います。全体的な印象として清涼感のある酸味に満ちた果実味、そしてスパイシーさ。口に含んだ時の柑橘系のアタック。対してシャルドネはより豊満で濃厚な印象を受けました、シロップ、ナッツやバターなどの樽に起因する香りが強く出ている感じ。ムルソー的というか。
それに比べると熟成の仕方や果実味の出方は非常にタイプが似通っていると思います。ドライシェリーや炒った塩ナッツの様な熟成香から一気にシロップやバニラの甘露な果実味が溢れかえる所とかホントそっくりで。サーヴ直後の硬さもそっくり。
ここらへんはコングスガードの作りなのかもしれませんね。

...とまあ色々書きましたけれども、個人的な印象ではシャルドネとヴィオニエ/ルーサンヌはびっくりする様な大きな違いを感じませんでした。
というのは、結局かなり日を開けてしまっているため、味わいの記憶か遠ざかってしまってるんですよね。
テイスティングコメントを元に味わいを探っていってかろうじて違いを捻出できる、そんなレベルです。
全体のぼんやりとした印象では「最初硬くて、あとで思いっきり花開くなあ。」くらいしか認識がないので違いは見出せないのですが、そう考えるとテイスティングコメントをつけていく事って重要だと思いました。

今回のコングスガードもとても良かったです。今度は並行で飲んでみたいですねー。


小布施ワイナリー、ドメーヌタカヒコ。北海道と長野のテロワールを示すピノノワール3種


こんばんわ。
本日は日本のピノノワール3種をレポートします。
曽我 彰彦さん率いる小布施ワイナリーと弟の曽我 貴彦さん率いるドメーヌ タカヒコのピノノワールです。

勿論日本のワイナリーを応援したいという贔屓目もあるんですが、そんなの無くてもとても美味しいワインを作ってくれるのでこのワイナリーのワインはついつい買ってしまいます。
ちなみにドメーヌタカヒコのパストゥグランと小布施ワイナリーのメルロー ドゥジェムがセラーにあります。
さて、いつ飲もうか。

さて、例の如くこの生産者の詳細情報は「これでもか!」という位詳しく日本語で書いてありますから是非そちらを読んで頂くとします。

■生産者の詳細な情報はこちら
小布施ワイナリー
栽培醸造責任者: 曽我 彰彦さん
土壌: ソガ ペール エ フィスのピノノワールクレレは隣接する角藤農園の葡萄を使用。地質は不明
栽培: ビオロジック
醸造: 除梗なし、自然酵母にて発酵。
新樽比率、熟成期間、ピジャージュ、キュヴェゾン期間は不明。無濾過、無清張で瓶詰め。

ドメーヌタカヒコ
栽培醸造責任者: 曽我 貴彦さん
土壌: 標高60m、安山岩または火砕岩の母岩の上に風化した礫、砂、粘土。
一年通じて暖かく、降水量も少ない。
栽培: ビオロジック
醸造: 除梗なし。自然酵母にて発酵。キュヴェゾンは26日間(ピジャージュは最低限) 。ヴェスランでプレス後、旧樽で12ヶ月の熟成を行い無濾過、無清張で瓶詰め。

それではいってみましょう。


生産者: 小布施ワイナリー
銘柄: ソッガ ピノノワール クレレ 2011
品種: ピノノワール100%

外観は非常に淡いルビー、粘性は中庸。
生のクランベリーやストロベリーを潰した様な溌剌とした自然な果実味。
若木や若葉や土などの森の様な香り。生肉、紅茶などのニュアンス。ごくわずかにシナモンなど。
酸味は穏やかで、口のなかで綺麗な酸味と旨味が広がっていく。非常に瑞々しいワイン。


生産者: ドメーヌ タカヒコ
銘柄: ヨイチノボリ パストゥグラン 2011
品種: ツヴァイ 65%、ピノノワール 35%

力強さは断然パストゥグラン。
外観は透明度の低い赤みの強い濃いルビー、粘性は高い。
ダークチェリーやクランベリー、ラムネの様な凝縮した果実味。
キュムラと比べると若干濃い印象を受ける。かなり薔薇や茎の強い芳香を感じる。土っぽさ、ドライハーブ、若葉、燻製肉、グローヴ、胡椒などのややスパイシーな雰囲気。シナモンやゴムなど。後味に鉄分。
こちらも酸とタンニンは柔らかく細やかな味わい。瑞々しい。


生産者: ドメーヌ タカヒコ
銘柄: ヨイチノボリ キュムラ ピノノワール 2011
品種: ピノノワール100%

外観は透明度の低い淡いルビー、粘性は中庸。瑞々しく優しい果実味を感じさせるピノノワール。
ストロベリーやラズベリーのフレッシュなジャムの様な果実味。
若葉やフレッシュハーブ、紅茶などの野生の香り。黒檀、ヒノキなどの木のアロマ。燻製肉、コリアンダーなどのスパイシーなニュアンスが感じ取れる。ほんのわずかに八角、五香粉などの香りも。
酸味とタンニンは非常にきめ細やかで瑞々しく軽やか。爽やかなベリーの味わいが広がる。
どこかデュジャックのワインを感じさせるのは全房発酵だからだろうか。
次は是非曽我 貴彦氏の薦める秋頃に飲む事としたい。


3本ともとても良いピノノワールだと思います。煌びやかで過度の華やかさや甘さは無いのですが、非常に端正で近世の取れたピノノワールだと思います。
個人的にとても気に入っているのはドメーヌタカヒコのパストゥグランで、65%のツヴァイゲルトが非常に良い味わいを出していると思います。
普段ちょっと濃いめのピノノワールを好んで飲んでいるので、ツヴァイゲルトのボディや華やかさが、瑞々しいピノノワールの果実味と上手くバランスが取れている様な気がします。
色調を含めこちらの方がよりブルゴーニュのピノノワール的ですね。果皮の華やかさが強く感じられるというか。
最も肌に合う感じがします。

そしてピノノワール単一品種の2種類に関しては、概ね同じ方向を向いている様に感じました。色調から過度の抽出は抑えている感じはしますし、共に全房発酵らしさも感じます。そして何よりもこのフレッシュなジャムの様な瑞々しい果実味!
捉え方によっては落ち着いたデュジャックっぽい。
若干キュムラの方が引き締まっていて液体密度が高い気はしますが、ここは好みの様な気がします。
確か降水量はナガーノより少ないんだったかな? それによるものか?
若干熟度が高い様に感じます。

いずれもとてもよく出来たピノノワールだと思います。
そもそも今国産ワインでそこまでヒドイのに当たった事があまり無いのでレベル自体は高いと思いますが、こういった勢いで業界全体の底上げがなされるといいですね!

応援しています!

ちなみにこれらのワインはオンラインで購入出来ません。購入可能店舗は生産者のホームページに記載されていますので、どうぞ。
ちなみにタカヒコさんのパスグラは入荷当日のラス2の滑り込みでした。
危ねえ...

【オーストラリア:4】オーストラリア最高のシラーズを利く。トルブレックのラン リグとベングレッツァーのアモン ラを利く



こんばんわ。
本日は昨日に引き続きオーストラリアワインです。
昨日はトルブレックのレ ザミとラン リグの比較でしたが、今回はトルブレックとベン グレッツァーのシラーズを比較します。

グレッツァー家は1888年よりバロッサヴァレーでワイナリー(なんとトルブレックより古かったのか!)を営んでおり、当代は天才醸造家ベン グレッツァーが指揮を取っています。トルブレック同様、高樹齢の葡萄を使用されている事が特徴です。樹齢50-110年を使用し、12.5hl/haという超低収量で収穫される。作業は勿論手摘み。解放式発酵槽にてマセラシオン、アルコール発酵後、フレンチオークとアメリカンオーク併用の100%新樽にて15ヶ月の熟成を行います。

トルブレックの方は昨日も書いた通り、フラッグシップであるラン リグはマラナンガ、クーヌンガ・ヒル、モッパ、グリーノック他8つの畑にある最高140年の超古木を使用しています。収量は平均14hl/haと超低収量。収穫は全て手摘みで、発酵前に丁寧に除梗を行ない、畑毎に木製樽とコンクリートタンクの開放発酵槽にて6~7日間のマセレーション、アルコール発酵を行ないます。バスケットプレス後、60%新樽のフレンチオークで30ヶ月熟成を行ない、瓶詰め前日にヴィオニエをブレンド、無清澄、無濾過で瓶詰めされます。

さて、オーストラリアの小規模ワイナリーとしては最高レベルの2本、どうでしょうか。


生産者: ベン グレッツァー
銘柄: アモン ラ 2006
品種: シラーズ100%

約17000円、WA95pt
外観は濃いガーネット、粘性は高い。
こちらもランリグとタイプはよく似ている。
ブルーベリーやプラムのキャンディの様な濃厚な果実味だが、ランリグと比較すると、やや香りに落ち着きがある。
果実味に次いで、ややスモーキーで鰹だしの様な風味。
スーボワやミント、ドライハーブ、プーアル茶などの土っぽい風味。溶剤の様な華やかなニュアンス。
燻製肉、黒檀、クルミのスモーキーさ。そしいてハチミツ、シナモン、キャラメルなどの甘露さ。
こちらも卓抜した酸味が特徴的だが、ランリグ程伸び上がっていく訳ではない。
酸は高く、タンニンも強めたが、卓抜した果実味による非常に高い安定感がある。


生産者: トルブレック
銘柄: ラン リグ 2009
品種: シラーズ95%、ヴィオニエ5%

25000円、WA98pt
外観は濃いガーネット、粘性は高い。
シラーズ主体らしい凝縮したブルーベリーキャンディやプラム、ドライアプリコットの様な酸味を伴う濃厚な果実味。
爆発的に外に広がって行くイメージを感じる。グルナッシュの落ち着いた感じからすると、こちらは非常にに溌剌として、明確な輪郭を感じる。
ワッフル、シナモンや、清涼感を感じるミントやドライハーブ、タバコっぽさ。
わずかに薔薇やラベンダーの華やかな風味が抜けて行く。燻製肉や黒檀、やや黒胡椒の風味も。
強烈な酸を伴う濃厚な果実味。ドライアプリコットの力強い果実味が口の中に広がる。
タンニンも強いが、やはり特徴的なのはこの力強い酸。
パワフルでアグレッシヴだ。時間をかけてもひたすらドライアプリコットの溌剌とした風味を感じる。
素晴らしいオーストラリアワインだ!


素晴らしいです。
主だった骨子、構成要素としてはこの2つのワインのキャラクターは似通っているのかな、と思います。古木に所以する超凝縮した甘露な果実味、際立った酸味。ここは凝縮したシラーズの特徴が強くでていると思います。

ただ若干酸味はランリグの方が強いですかね。そのためか、際立ったスパイシーさも含めて、ランリグは外向きに大きく開いていく力強さを感じました。
対してアモン ラは若干落ち着いた印象を受けます。スモーキーさや鰹だし、土っぽさが若干落ち着いた雰囲気を醸し出している様な気がします。新樽比率が高いことに所以するのでしょうか。
大きな方向性の差異はないですが、細かい構成要素の部分で違った顔を見せるワインだと思いました。

とはいえどちらも卓抜して素晴らしい事に関しては間違いありません。
全体的に見るとラン リグの方が優れてはいますが、価格の差ほど品質の差はないかと思います。

次はグランジとヒル オブ グレースの比較ができるといいですね...!
滅多なことが無い限り無理ですが!

【オーストラリア:3】トルブレックのフラッグシップ、レ ザミとラン リグを並行で利く



こんばんわ。
今日も引き続きオーストラリア。トルブレックのフラッグシップ2本です。
トルブレックはデヴィット パウエル氏が率いるバロッサバレーに拠点を置くワイナリーで、1994年にローヌの生産者に影響を受けてワインを作り始めました。
バロッサバレーのトルブレックの敷地内にはシラー、グルナッシュ、ムールヴェードルの古木(中には樹齢150年のトレ ヴィエイユ ヴィーニュも)が植わっています。

フラッグシップであるラン リグはマラナンガ、クーヌンガ・ヒル、モッパ、グリーノック他8つの畑にある最高140年の超古木を使用しています。収量は平均14hl/haと超低収量。収穫は全て手摘みで、発酵前に丁寧に除梗を行ない、畑毎に木製樽とコンクリートタンクの開放発酵槽にて6~7日間のマセレーション、アルコール発酵を行ないます。バスケットプレス後、60%新樽のフレンチオークで30ヶ月熟成を行ない、瓶詰め前日にヴィオニエをブレンド、無清澄、無濾過で瓶詰めされます。
そしてレ ザミはランリグと対になるグルナッシュ100%の南向き単一畑で作られたワインで、ランリグ同様、樹齢110年級の超古木を使用、平均収量15hl/haという超低収量で栽培された葡萄を使用しています。こちらも収穫は手摘みで、7日間のマセレーション、アルコール発酵の後、バスケットプレスを行ないます。その後100%新樽のフレンチオークで18ヶ月の熟成を経て、無濾過、無清澄で瓶詰めされます。

トルブレックのシャトー ヌフ デュ パプ、そしてエルミタージュとも言うべき、このフラッグシップ2本、いってみましょう。


生産者: トルブレック
銘柄: レ ザミ 2009
品種: グルナッシュ100%

21000円、WA94pt(2006)
外観は濃いガーネット、粘性は高い。
シラーズの様に外に大きく伸びていく風味ではなく、やや穏やかで丸みを帯びた印象を受ける。
こってりとしたブラックベリーのコンポートやドライプルーンの様な果実味。まるでシロップの様。
ラン リグと比べても群を抜いてクリーミーで甘露。
ハチミツやシナモン、キャラメル、バニラ、アニス等の様々な要素を感じる。
全体的に甘露な要素が主張するが、それだけではなく薔薇の華やかな香りや、スーボワやドライハーブ、トリュフ等の大地っぽい香りも。わずかに燻製肉や樹皮、葉巻など。
酸味やタンニンは強いが、口に含むと爆発的な煮詰めたジャムやコンポートにした果実味が広がる。
甘い。パワフル。最高。徐々にハーブやミントの香りが強くなってくる。


生産者: トルブレック
銘柄: ラン リグ 2009
品種: シラーズ95%、ヴィオニエ5%

25000円、WA98pt
外観は濃いガーネット、粘性は高い。
シラーズ主体らしい凝縮したブルーベリーキャンディやプラム、ドライアプリコットの様な酸味を伴う濃厚な果実味。
爆発的に外に広がって行くイメージを感じる。グルナッシュの落ち着いた感じからすると、こちらは非常にに溌剌として、明確な輪郭を感じる。
ワッフル、シナモンや、清涼感を感じるミントやドライハーブ、タバコっぽさ。
わずかに薔薇やラベンダーの華やかな風味が抜けて行く。燻製肉や黒檀、やや黒胡椒の風味も。
強烈な酸を伴う濃厚な果実味。ドライアプリコットの力強い果実味が口の中に広がる。
タンニンも強いが、やはり特徴的なのはこの力強い酸。
パワフルでアグレッシヴ。時間をかけてもひたすらドライアプリコットの溌剌とした風味を感じる。


いや、マジで最高。本当に美味しいです、この2本。
それこそグルナッシュ100%のレ ザミは半端なシャトーヌフデュパプなら吹き飛ばす様な凝縮感と果実味だし、ランリグはシャーヴやギガル、シャプティエの様なスタイルとは違うけれども、近年流行のエルミタージュのスタイルには良く似ていると思う。ドゥラスに近いかも。半端無く良く出来たグルナッシュとシラーズだと思う。

全体的な観点で言うと共に非常に果実味の凝縮感が高く甘露である点がとても目立ちます。
近年の品質重視のシャトーヌフもとても収量が少ないですが、それを遥かに超えるヘクタールあたり16ヘクトリットル程度、約半分。ボルドーの収量からすると約3分の1という超低収量。そしてそれを実現する驚異的な経年を経たトレ ヴィエイユヴィーニュ。フランスはそれこそフィロキセラ渦で植え替え、継ぎ木を余儀なくされましたが、こちらはヴィーニュ フランセーズ。たしかにこの異常な程の凝縮感を生み出すに足る栽培、ちょっと異常なくらいの手の入れ方だと思います。
さて、それぞれの比較でいうと、品種の個性が非常に前に出ていました。
グルナッシュ100%のレ ザミは酸が際立ったシラー種主体のラン リグと比べて丸みや落ち着きがあり、よりクリーミーな甘露さが際立っています。対してシラー95%のラン リグに関してはより果実然とした甘露さ。外向きの溌剌な印象を受けます。どちらが濃厚かという訳ではなく、同じくらいのボディに同じ位の甘露さがあるんですが、向いている方向性が異なっている印象を受けますね。
意外とどちらも複雑で果実味だけではない、他の要素との均整が取れたワインだと思います。
基本的に非常に果実味が高いワインを生み出すシラーズとグルナッシュですが、他のワイナリーと一線を画す部分はこういったところなのではないか、と思います。
フランス、ローヌ地方との差異はグルナッシュに関してはさほど大きくないと思いますが(特に新進気鋭の生産者に関しては大きな時差は無い様に感じます。)シラーがやはり違いますね。
ローヌの方はもっと黒胡椒のニュアンスがしっかりと出ていると思います。果実味ベースか、スパイスと果実味のバランス型か。そんな感じでしょうか。
新樽比率に関しては過剰な焼きを行なった樽っぽい感じは無くて、よりバニラやシナモンなどに寄ったローステッドな風味になっていると思います。

非常に優れたシラーズ、そしてグルナッシュでした。
オーストラリアの本懐というか本気を見た様な気がします。
この手の造りのワインは多いですが、やはり突出したクオリティだと思います。

これくらいのワインをのめるといいんですけどね。なかなか難しいところです。



【オーストラリア:2】ヘンチキ シリル、超硬質なボルドーブレンドを利く

こんばんわ。
今日はオーストラリアを代表するワイナリー、ヘンチキ(ヘンシュケ)のボルドーブレンドです。
ドイツより移民したヨハン クリスチャン ヘンチキが1868年に設立した老舗家族経営ワイナリーで、シラーズの最高峰グランジと双璧を成す、樹齢130年のシラーズを使用した「ヒル オブ グレイス」がフラッグシップとなります。
今回はエデンバレーから作られる「シリル」。4代目当主の名前を関したこのワインは、カベルネソーヴィニヨン、メルロー、カベルネフランから作られるヴァラエタルワインでヒル オブ グレイスと対となるワインです。
栽培や醸造方法に関しては、あまり言及されておらず、真実は闇の中なので個人的な感覚でレポートします。


生産者: ヘンチキ
銘柄: シリル ヘンチキ プロプライエタリー レッド 2002
品種: カベルネソーヴィニヨン75%、メルロー12.5%、カベルネフラン12.5%

15000円、WA94pt
外観は濃いガーネット、エッジにやや橙がある。粘性は高い。
乾いた土と灯油の風味と、タバコのスモーキーさ、ドライシェリーっぽさが特徴的。
熟成感はわずかに感じるものの、ビックリする程若々しい。
カシスリキュールやブラックベリーの内側に向いた凝縮した黒系の果実味。
黒オリーブなどの塩味。焼いた西洋杉。華やかな薔薇のドライフラワー。
全体的にトリュフの様な土っぽさと、燻製肉や炭焼きなどのスモーキーさが主体。リコリス、魚醤などの風味も。
タンニン、酸、そして硬さはべらぼうだが、口の中で1級シャトーが如き、木材と黒い果実の風味が広がる。
時間の経過によって、徐々に開いてくる。甘みが徐々に現れるが、全体的な硬い印象はかわらないい。
やや酸の方が突出しているか。


サーヴ直後の印象はボルドーっぽくなく、ややドライシェリーやオイルっぽさが強いです。
この特徴は一瞬ネッビオーロ(バローロボーイズに代表されるバリック樽を使用した)がやや熟成した感じに似ています。熟成によってちょっと閉じこもっているようで、かなり内向きの果実味。抽出はかなり強めだと感じました。
ただ口当たりやボディ感、解けてきた感覚ははボルドー準拠で、メチャクチャ硬い若いデュクリュ ボーカイユっぽさもあったと思います。気候はやや冷涼なのかな?
全体的に見てオーストラリアのカベルネソーヴィニヨン(例えばマウントメアリーのクインテッドなど)も造りによってはボルドー的な風味がきっちり出ますから、恐らく造りのスタイルではないかと。
偉大なワイン、ヴァン ド ガルドであることには間違いなさそうですが、個人的にはちょっと硬くて好みのタイプではありませんでした。2002年にして開くまで時間が掛かるのはちょっと厳しいかと思います。

ヘンチキはシラーズのヒル オブ グレースが有名なので、そちらも是非飲んでみたいですね。


シリル・ヘンチキ[2002]

シリル・ヘンチキ[2002]
価格:15,000円(税込、送料別)

【オーストラリア:1】豪最高のピノノワール、カーリーフラット マセドンレンジズの超絶技巧。

こんばんわ。
さて、カーリーフラットです。

特段僕に何も発言力は無いのですけど、今個人的にとても注目している...というか好きな生産者で、ぶっちゃけ買い占めたいくらいです。
今のところアメリカに輸出がされていないようで、ワインアドヴォケイトには見つかっていない様ですが、途轍もなく品質の高いピノノワールを作っています。この手の新世界のピノノワールでいうならば、マーカッシンやキスラーと同列に語られてもおかしくないんじゃないかな、と。

カーリーフラットはフィリップとジェニ・モラハンが、オーストラリアのマセドンレンジズに1998年に興したワイナリー。マセドンレンジズはブルゴーニュに良く似たオーストラリアで最も冷涼な産地。気候は大陸性気候で、標高は560m。最高気温は16度。玄武岩のローム土壌の畑で、ピノノワールとシャルドネの栽培に適しています。
2008年以降、ビオディナミへの転向しており、手作業で収穫を行っています。収量は30hl/ha。除梗比率は年によって変えている様ですが、2010年は70%を除梗し、発酵に回します。低温浸漬を行った上で、区画ごと、クローンごとにステンレスタンクで発酵。ピジャージュは1日3回程度。複数階に渡る多重構造の発酵蔵によりグラヴィティフローを行う事が可能です。その後40%新樽で24ヶ月熟成を行い、無清張で瓶詰めされます。


では行ってみましょう。


生産者: カーリーフラット
銘柄: カーリーフラット ピノノワール 2010
品種: ピノノワール100%

約7000円
外観は淡いルビー、粘性が中庸。
深みと滋味に溢れる赤い果実のニュアンス。異常な程の旨味が溢れておりエレガント。とても柔らく、クリーミーな味わい。タイプで言えばヴォルネイっぽい作り。
木苺やフランボワーズのジャムの様な、明るい凝縮した果実味。そして赤い花の蜜やシナモンの程よい甘露さ、スミレの華やかな香りが主体となる。わずかに茎や松の樹皮、タイムなどの青っぽさやなめし革のニュアンスが感じられるが、過度の抽出感は無い。クルミやビスケットの様な軽い樽香がある。
しかしメチャクチャ綺麗な旨味だ。酸味と果実味のバランスがすごくいい。
口に含むと梅しばの様なジワッと広がる様な味わい。余韻も長い。
ほぼ完璧なピノノワールの姿を見たと言っても過言ではない。デュジャックが作ったサントノの様な印象だ。
正直ワインアドヴォケイトのリサ ペロッティMWにいつ目を付けられるか怖い...



いや、本当に素晴らしいです、このピノノワール。ちょっと力強いヴォルネイやデュジャックのマルコンソールの様なタイプ。
全房発酵が約30%ですが、青っぽさを含んだ丸みのある果実味、そしてジワリと広がる綺麗な酸味と旨味があって、適度な華やかさがあるという。
ブルゴーニュ的な天候や温度がもたらす味わいも勿論あるのですが、どちらかというと、新樽比率や除梗比率や抽出の技巧が光る作りですね。
すごく作りが上手い。
この人にブルゴーニュのテロワールを与えたらどんなワインを作るのか気になりますね。
色々と言葉を積み重ねても言い表せない自分が悔しい!

いや、オーストラリア怖いですね、こんな素晴らしいワインが隠れているなんて。ニュージーランドのピノも大層素晴らしいですし、マーカッシンもキスラーも当然素晴らしいのですが、何しろ高いという。
多分ここら辺のワイナリーに匹敵するレベルのワインを作っていながらこの価格帯で出してもらえるのは本当に幸せな事だと思います。

もしピノノワールの醸造の深淵を知りたい、というのであれば、間違いなくこれをお勧めします。
惜しむらくはマセドンレンジズはテロワールとして画一していないですし、生産者の層も薄いので、生産者の個性や土地の個性を比べる事が出来ない所が残念といえば残念。
まあ、それだけ完成しているという事ですけど、生産者の層の厚さとテロワールの違いを楽しむのがピノノワールの面白さでもありますからねー。

今とても注目しているワイナリーなのでちょくちょく取り上げたいと思います。

カーリー・フラット ピノ・ノワール [2010]

カーリー・フラット ピノ・ノワール [2010]
価格:6,615円(税込、送料別)

シャブリ最高の生産者、ラヴノーの卓抜したプルミエクリュ4種の違いを暴く。


こんばんわ。
本日はフランソワ ラヴノーのシャブリ プルミエクリュに絞ってレポートします。一級に絞って飲むのは始めてですが、存外テロワールがしっかりと違いとして現れているのに驚きました。
ミネラル重視あり果実味重視ありと多岐に渡ったラヴノーの表現に、技術力が垣間見えますね。

フランソワ ラヴノーはドーヴィサと双璧を成すシャブリのトップドメーヌ。
ドーヴィサとは親類関係にあります。個人的には価格的にシャブリとは思えない生産者、というイメージですが、品質も一般的なシャブリとは大きく乖離するレベルの仕上がりを見せます。
生産方式もコート ド ボーヌの白ワインが如き手の込み様。
栽培はすべてリュットレゾネ。樹齢50−85年前後の古木を芽掻きなどで50hl/haまで収量を落とし(そんなに減ってはいないですが平準的なシャブリと比べると収量は低いです。)収穫は全て手摘み。除梗はせず、ステンレスタンクで全房発酵ののちマロラクティック発酵を行ないます。その後オーク樽に移し、18カ月以上の樽熟成。基本的には1年以上の旧樽を利用しますが、モント ド トネルの新樽比率は10%程度で発酵を行ないます。
清澄/濾過は軽く行なった上で瓶詰めを行ないます。

ちなみにこの中のフォレ、ビュトーはすべてモンマンの小区画です(この中のモンマンもいわゆる畑ではなくモンマンという小区画を示しています)。傾斜や条件が若干異なるため、小区画名として個別にリリースされています。モント ド トネルだけは別の畑となります。

さあ、征こうぜ!


生産者: フランソワ ラヴノー
銘柄: シャブリ プルミエクリュ ラ フォレ 2008

約12000円、WA92pt
外観は淡いストローイエロー、粘性は高い。ライチやカリンなどの溌剌した明るい果実味。しっかりとした厚みのあるシャブリだが、ボーヌのワインと比べると、やはりミネラル感が際立つ。バターやカシューナッツの風味も感じるが、その要素はグランクリュと比較すると強くは出ていない。あくまで溌剌とした印象を残すシャブリだ。
ただ時間が経過するとバニラや花の蜜、核種類の蜜の風味が強く現れてくる。フレッシュハーブや白檀、西洋サンザシなど。
酸は柔らかで落ち着いているが、集中力のある密度の高い果実味を感じる。


生産者: フランソワ ラヴノー
銘柄: シャブリ プルミエクリュ ビュトー 2009

約15000円、WA91pt
浮遊物のある澄んだストローイエロー、粘性は高い。
前述の2本と比べると果実味はやや抑え気味。果実味より若干ミネラル感の方が強く感じられる。溌剌とした印象を受けるワインで、ライチやグレープフルーツの酸味の強い果実味が主軸となっている。ボディを固める様にナッツやバターの風味も。モンマンやモント ド トネルと比較すると、やや遅咲きで徐々に蜜やシロップの様な甘露さが現れてくる。またフレッシュハーブ、白い花、アカシア、キノコの風味も感じ取れる。
この中では最も酸味豊かで、果実味のタイプもあいまって溌剌とした印象がある。旨味もしっかりとあるが他の二本と比べるとやや劣る印象でラヴノーのワインにしてはやや平凡な出来。


生産者: フランソワ ラヴノー
銘柄: シャブリ プルミエクリュ モン マン 2009

約23000円、WA91pt
浮遊物のある澄んだストローイエロー、粘性は高い。
最初から全開で最も甘露でシロップ漬けのライチや洋梨の果実味が非常に前に出ている。またバニラやバターなどのニュアンスが感じられる。最も丸みのあるスタイル。
こちらもクレームブリュレの様な風味が出てくるが、やはり印象として穏やかで、ドラスティックなモント ド トネルの変化にはやや劣る。フレッシュハーブ、カシューナッツ、火打石の様なミネラル感、白檀などのニュアンスも。
やや酸味やミネラル感は落ち着いており、旨味と果実とバニラの甘さがシルキーに口の中に広がる。非常に心地よい味わいではあるが、卓抜したミネラルと芯のある果実味を持つトネルと比較すると、スタイルの違いがあれど、やや落ち着いてしまった印象が強い。
価格的にはモンマンの方が高いが、複雑さやバランス、パワフルさの格としては明らかにモント ド トネルに軍配が上がる。


生産者: フランソワ ラヴノー
銘柄: シャブリ プルミエクリュ モント ド トネル 2009

約16000円、WA93pt
浮遊物のある澄んだストローイエロー、粘性は高い。
石油の様な強いミネラル感とフレッシュハーブが前に出ており、その裏に白い花の蜜やシロップ、ライチや洋梨の果実味が感じられる。
一見硬めの作りだが、5分程度で急激に開花する。クリームブリュレの様な甘露さ、西洋サンザシの清涼感、そしてキノコっぽさも現れる。
酸味が強いが、旨味の凝縮感も非常に高く、ライチの果実味がビロードの様にジワリと口の中で広がっていく。
途轍も無くグレートなバタールモンラッシェが如きシャブリだと思う。同生産者のフラッグシップ、レ クロやヴァルミール、ブランショに勝るとも劣らない卓抜したクオリティのプルミエクリュだ。


うーん、流石に素晴らしいですね。こういっては失礼なのかもしれませんが、とてもシャブリのワインとは思えません。毎回ドーヴィサやラヴノーを飲んでいて思うのですが、本当にこの生産者たちのクオリティはとてつもないものがありますね。恐ろしい。

フランソワ ラヴノーの一級畑4種、かなり畑によってカラーが異なっていたと思います。
ビュトーに関しては、全体的にドライな印象を感じる作りで、酸味が強く、硬めのミネラルと溌剌とした果実味が主軸に置かれています。このスタイルは時間が経過しても大きく変化はせず、僅かに甘みが現れる程度。強固といえば強固ですが、果実味としてはさほど強く無いのかもしれません。
またフォレはビュトーと同様に硬めのミネラルと溌剌とした果実味が感じられます。ただ時間が経過した際に蜜の香りが強く現れる所と、酸味がやや落ち着いている所が、ビュトーとの大きな違いを生み出しています。丸みを帯びた印象を受けますね。
モンマンになると他の2本と比べてグッとクオリティが上がってグランクリュに非常に近いスタイルになっています。果実味が豊かでアロマティック、複雑さ、樽と果実味のバランス、いずれも非常に高レベルに仕上がっています。ただ他のグランクリュと比べると若干ミネラルが柔らかく、ボディもそれに応じて丸みを帯びた豊満なスタイルになっています。これは日照条件による果実味の突出によるものかもしれません。
モント ド トネルはまさにグランクリュ並といって差し支えないレベルのプルミエクリュ。レ クロに見られた強烈なミネラルと、ドラスティックに変化するドメーヌルロワのワインが如き果実味の甘さ、豊かさ。これらが極めて高レベルで均衡を取っていて、シャブリというより、シュヴァリエモンラッシェのミネラルを持ったムルソープルミエクリュといった所。驚異的な作り込みがなされている。
ミネラルにおいてはグランクリュほどではないのだけど、総合力としては決して劣っていない。


概ね私のレポートはこんな感じですが、土壌のデータとちょっと照らし合わせてみます。

フォレ:保温性が高く、粘土の種類が豊富であり、石が多いため排水性に富む。
ビュトー:白色粘土が多く構成されている。
モンマン:白亜分が多く含まれた南東向けの立地
モント ド トネル:南西を向き白色粘土に多くの石を持つミネラル分と優れた日照。

フォレはミネラル、果実味を併せ持った多面性のあるワインだと解釈しましたが、恐らく排水性が高い部分と保温性が果実味を、石そのものがミネラルを司っていると解釈しています。
ビュトーは白色粘土質がもたらすどっしりとしたボディが現れるとのことでしたが、どちらかというとミネラルが出ています。ただそれにしてもフォレと比べるとミネラル分は同じくらいで、あまりインパクトの無いワインでした。
モンマンも一般的な評価と私の感想が乖離していて、精緻というより、外向けの規模感の大きい丸みのあるワインだなと思います。ふくよかで果実味に溢れている。ミネラルはフォレに劣りますし、持続性と総合力はモント ド トネルに比べると若干劣っていると思います。
モント ド トネルは粘土質かつ排水性が高く日照条件が良い事から、フォレ並のミネラルと、モンマン以上の果実味を高いレベルで両立していることが分かります。

若干モンマンとビュトーのテロワールとの感じ方の差がありましたが、概ね状態とかにもよるので、こんなものじゃないかと思います。
今回最も高いポテンシャルを示したのはモント ド トネルですね。個人的にはグランクリュと同等のクオリティを持ったプルミエクリュだと思います。
区画の広さでいうと最も広く、収穫量も多いので手に入りやすい銘柄ではあるのですが、それがこのクオリティだというのがとても良心的ではないかと。価格的にもモンマンより安いです。

買うならモント ド トネルですね。
ひょっとしたらグランクリュを頑張って買うよりも良年ならいいかもしれません。


ラヴノー/シャブリ 1級 フォレ[2008] 750ml

ラヴノー/シャブリ 1級 フォレ[2008] 750ml
価格:15,435円(税込、送料別)



モンジャールミュニュレ、凝縮感溢れるエシェゾー VV

こんばんわ。
今日はミュニュレのACブルとエシェゾーです。
ここのワインは個人的にファンで、値段も(ACブルは)お手頃なのでよく飲むのですが、基本的には大きなハズレってないんですよね。ヴォーヌロマネのプティモン、スショ、オルヴォー、特級エシェゾー、特級リシュブール、そしてニュイサンジョルジュのブド。どれも本当にいい。

モンジャールミュニュレはヴォーヌロマネでは伝統のある老舗の大ドメーヌでリュットレゾネを1990年から実践しています。一時期評価を落とした時期もある様ですが、2000年に入ったヴィンテージで致命的にダメなワインには当たったことはありません。樹齢は大体30年から50年で、エシェゾーのVVで70年。グリーンハーヴェストを行い、30hl/haに収量を抑えます。除梗は100%。低温浸浸を4,5日と軽く行い、アルコール発酵は12日程度行われます。圧搾は空気圧で行い、過度のタンニンの抽出は抑えます。新樽比率は一級で30%、特級で100%。22ヶ月熟成後瓶詰めします。


さあ、行きましょう。


生産者: モンジャール ミュニュレ
銘柄: ブルゴーニュ ピノノワール 2010

やや樽を強く感じるが、まさにコレコレと言った形のとても好みのブルゴーニュルージュ。
炒ったコーヒー豆やシナモン、キャラメル、ややタニックなダークチェリーやプラムの黒系の果実味。薔薇や茎、ベニヤ板、グローヴなど。
この甘露な香りに対して酸は非常に強いし、タンニンもややキツイ印象。
バランスで言うと良いとは言い切れないが、千円札2枚で新樽の贅沢な風味を感じ取れるブルゴーニュルージュはそう多くは無いだろう。香りに関しては非常にしっかりと作り込まれている。
この生産者の中で言うとプティモン、オルヴォーではなくスショに最も近い造り。


生産者: モンジャール ミュニュレ
銘柄: エシェゾー グランクリュ ヴィエイユヴィーニュ 2010

約19000円、WA91pt(2006)
瑞々しく、華やかで、伸びやかなエシェゾー。
外観は赤みの強い淡いルビー、粘性は高い。
ラズベリーやアメリカンチェリーの瑞々しく凝縮感のある果実味。
酸味と甘やかさのバランスがよく取れている。バニラや赤い花の蜜、シナモン。控えめにワッフルなどの樽香がある。薔薇のアロマオイルの様な華やかさ。なめし革、やや茎の青っぽい風味、紅茶、リコリス、炭焼きなど。
極めて純粋で雑味の無い綺麗なエシェゾーで、果実味の集中力が半端じゃない。
酸味、タンニンは一本筋か通っており、厳しさは無いが、しっかりした骨格を形作っている。余韻は長い。


いや、もうおみそれしました。
流石にいいです。最高ですエシェゾー。

前回2009年のエシェゾーを飲んだのですが、結構日をあけてしまってるので、違いはあんまりよく覚えていません。テイスティングコメントは今回のヴィエイユヴィーニュとほぼ同じこと言ってるんですが、ラズベリーの所がストロベリーだったりする事から察するに、多分こちらの方か酸味と旨味が強い...凝縮感があるんじゃないかと。
甘みでいうと前回のエシェゾーてすが、多分それは2009年というヴィンテージに起因するんじゃないかと思っています。いや、正直水平しないと、これわかんないですよ。

なので今回は比較は差し置いて、スタイルで考慮すると、シルヴァンカティアールとかフェヴレ。新樽比率は高いんだけど、焼きがソフトだからが、コーヒー豆や五香粉っぽさはあんまりないんですよね。バニラっぽい甘い香りの樽香だなと。やや樽の強いエマニュエル ルジェにも似てるかも。
いかにも除梗100%っぽく香りに雑味がなくて澄んでますね。あと抽出が強すぎる生産者はギラギラとした華やかさがあるんだけど、そこまでいかない、適度な抽出だな、と思いました。低温マセレーション期間は普通なんで、ピジャージュをあまりしてないのかな。
澄んだ果実の甘みがしっかりと際立ったバランスの良いエシェゾーだったと思います。

あとついでにACブルも。
雰囲気は上級キュヴェに良く似ているんですが、果実味の差かもしれないですが、ちょっと抽出がキツイ様な気がします。黒系の風味があります。あと新樽は恐らく使われてないと思うんですが、しっかりとした樽香があるのは1年樽や2年樽を使ってるからかなあ。
甘い香りもありますが、なんか雑で澄んだ甘みではなくちょっとゴリ押し系。色々下級らしい至らなさはあるんですが、1000円台でこれだけのものを出せるってのはホント凄いと思うんで、個人的にはオススメです。
しっかりとしたブルゴーニュルージュです。2009年とか2010年とかホントいいと思いますよ。

そんな感じです。


ティボー リジェベレール、特級昇格を目指すレ サン ジョルジュ 垂直2005-2008

こんにちわ。
昨日に引き続き、ティボー リジェベレールの4ヴィンテージ垂直テイスティングです。
前回はクロ ヴージョでしたが、今回はティボーリジェベレールの懐刀、レ サン ジョルジュです。

ニュイ サン ジョルジュ最高の1級畑といえば、基本的にはレ カイユ、レ ヴォークラン、オー ブド、そしてレ サン ジョルジュの4つである事に異論は無いかと思います。その中で最高のクリマはどれかと問われれば、諸説あるかもしれませんが、基本的にはレ サン ジョルジュが筆頭とされている場合が多いです。(個人的にはどの畑も非常に優れていると思いますし、スタイルが異なるので優劣を付けがたいと思うのですが...)
それらの外的要因もあって俄に動き出したレ サンジョルジュのグランクリュ昇格運動。個人的にはカイユもヴォークランも同等のポテンシャルを持っているので、是非その二つも、と思うのですが、どうやらそんな事はなさそうです。
残念。

ティボーリジェベレールはニュイサンジョルジュに拠点を置く生産者で、ヴォーヌロマネのコント リジェベレールと同様、ルイ リジェベレールに連なる家系です。2002年 27歳の時にドメーヌを設立し、現在38歳、ブルゴーニュの新世代生産者であるとともにレ サンジョルジュのグランクリュ昇格運動の代表者でもあります。
※ちなみに他の賛同者はアンリ グーシュのグレゴリーグーシュ(30歳)、メゾン フェヴレのエルワン フェヴレ(30歳)、そしてティボーリジェベレール。若き生産者による運動です。
2005年からビオディナミを始めており、収穫された葡萄は除梗せず全房発酵を行なう。低温浸漬は約1週間程度行なわれ、アルコール発酵も含めキュヴェゾンは4週間程度。ピジャージュは3回程度。新樽は30%程度で瓶詰めされます。

今回のレ サン ジョルジュは東向き斜面で傾斜は7~8度程度。表土は小石(石灰岩、大理石、ウーライト)、濃褐色の粘土質土壌。水はけの良さとミネラルの強さが特徴です
さて行ってみましょう。


生産者: ティボーリジェベレール
銘柄: ニュイ サン ジョルジュ プルミエクリュ レ サン ジョルジュ 2005

約13000円
やや濁りのある濃いルビー、粘性は高い。
熟成香を感じるが、溌剌した力強いダークチェリーやブルーベリーの果実味が感じられる。そして均衡を取りながら線香や五香粉のオリエンタルなニュアンスも感じ取れる。
そして徐々に甘露なビターなカラメルやシナモン。乾いた土や紅茶。
クローヴ、薔薇の華やかな香り。ドライハーブや茎、タイム。わずかに生肉や溶剤などのニュアンスも。
タンニンは柔らかだが、酸味は強め。やや後味に軽い苦味。
グリーンピースやダークチェリーの果実味が口の中で感じられる。
この中で2番目に良好な作りだと思う。酸味とタンニンは強いが、甘みもあり力強さを感じる作り。


生産者: ティボーリジェベレール
銘柄: ニュイ サン ジョルジュ プルミエクリュ レ サン ジョルジュ 2006

約10000円
色調は2005年よりも淡いルビー、粘性は高い。
酸味は最も穏やかでダークチェリーやデーツの様な濃厚な果実味、バニラやシナモン、シロップの様なクリーミーで柔らかい香りが強く感じられる。力強さは2005年に劣るものの、全体の調和が見事に取れている。完成度が高い。
土っぽさ。タイムやドライハーブ、樹皮、茎や薔薇などの強い野生のニュアンス。燻製肉の野性的な風味。オリエンタルスパイスなど。
時間が経過してもひたすら柔らかい甘みが継続する。抽出よりも果実味が勝っている。
酸味やタンニンは滑らかで、苦味も無く、とても良い状態。ダークチェリーの心地よい酸味や果皮成分を感じられる。
最も素晴らしい作りだと思う。
甘やかな香りと溌剌した酸味、やや落ち込んだタンニン。バランスの良い作り。


生産者: ティボーリジェベレール
銘柄: ニュイ サン ジョルジュ プルミエクリュ レ サン ジョルジュ 2007

約10000円
外観は淡いルビー、粘性は高い。
抽出がやや強めか。オレンジやダークチェリーやブルーベリーの果皮っぽい果実味。ややドライで硬質な印象を感じる。鉄っぽさや燻製肉など。
徐々にシナモンやシロップの様な風味が現れる。そして土っぽい香りやドライハーブ、トリュフ。燻製肉やファンデーション。ハーブのアフターがある。
果実味は最も瑞々しい。溌剌した心地よい酸味とやや収斂性の高いタンニン。花のアロマオイルとダークチェリーのやや青さと果皮成分の強さを感じるスタイル。


生産者: ティボーリジェベレール
銘柄: ニュイ サン ジョルジュ プルミエクリュ レ サン ジョルジュ 2008

約10000円
外観は淡いルビー、粘性は高い。
ちょっと茎や土の香りが過剰な気がする。強い抽出感を感じるオレンジやそら豆のニュアンス。そしてダークチェリーやブルーベリーの引き締まった酸味の強い香り。徐々に線香やインセンスなどに近いロースト香が前に出てくる。薔薇やスミレの華やかなタッチ。果実の蜜の様な風味と線香の香りが混ざり合う。謎めいた感じ。茎やドライハーブやタイムの清涼感、なめし革、トリュフなど。
酸味は強く、やや果皮のタンニンが強く感じられる。収斂性も高い。口内ではラムネや線香の香りが広がる。ややキツ目の印象を受ける。後味はやや苦め。


まず今回で言うと最も完成度が高かったのは2006年、次いで2005年といったところでしょうか。
前回のクロ ヴージョでもそうでしたが、2006年はこじんまりとしていながらも果実味が豊かで非常にバランスが良い様に感じました。タンニンも酸も険しい訳ではなく、熟成のポテンシャルとしては恐らく低いと思いますが、現段階ではとてもクリーミーで美味いワインに仕上がっていると思います。
次いで2005年は2006年より随分とパワフルな作りでした。恐らく良好な天候に恵まれた為でしょう。やや強めに効いている樽や梗っぽいニュアンスは太い果実味とバランスをとってい流のではないかと。2006年と比べてこちらは熟成を必要とするワインですね。長い熟成期間に耐えうる様な作りだと思います。
そして2007年、2008年に関してはハーブやスパイスなどの、やや青っぽいニュアンスが強く出ていました。共に引き締まったタンニンとミネラルが特徴的でかなり硬い印象を受けます。ボディはしっかりとしていますが、果実味としてはあまり高くありません。
幾分か2007年の方がこなれているとは思うんですが、やっぱりちょっと印象としては弱いです。2008年は樽と梗の風味は強いんですが、ちゃんと果実味かあるので、ひょっとしたら数年後にもう少し良くなるかもしれません。


■2005年
2005年は水不足による干ばつに見舞われた。4-6月までに一部の地域で雹が降ったが、8月中旬まで雨は降らないものの乾いた冷夏だった。水不足の為葡萄の生育時期が遅れ始めたが、8月末から9月にかけて気温が上昇し、2週目には乾燥した大地に雨が降った。バン ド ヴァンダンジュは12日でその翌日に強い風が吹き、以降好天が続いた。大部分の生産者は下旬には全ての収獲を完了している。

■2006年
3月中旬まで雪が残った状態で、下旬まで下草すら動き出さない状態が続いた。4月から6月にかけて例年より寒い状況が続き(6月初旬でも早朝は氷点下ぎりぎりだった様です。)6月中旬以降やっと開花が始まり7月は暑く乾燥した干ばつの危険性もあったが8月になると涼しく湿った気候となった。その為カビ、ウドン粉、べド病の恐れもあった。9月中旬まで気温が高いがにわか雨が多く、早い生産者は18日より収穫を始めたが、概ね完了したのは25日だった。

■2007年
4月の発芽期は好天に恵まれて暖かい日が続いた。しかし以降8月までは曇天が続き良い天候の日は無かった。8月にはカビが発生している。収穫時期の9月上旬には好天候に恵まれている。

■2008年
4月の発芽期は2007年の様に暖かくなく6月まで曇天が続いた。7月に関しては1週間好天候に恵まれ、暖かく乾燥した日が続いたものの、8月は冷え込みが続いた。下旬から持ち直し暑い日が続いた。9月前半も崩れ気味だったが下旬より良い天候に恵まれ、大部分は9月25日より収穫を開始した。


一般的に2005年は2009年よりも優れたヴィンテージとされており果実味も抜群ですが、その分他の要素を強く施しており、熟成し始めの現状として、やや飲むのには厳しい感じがしますね。
2006年はクロ ヴージョと同様とても良かったです。7月の成熟期に乾燥した空気だったのが、かなり良かったのかな、と思います。
2007年、2008年は共に成熟期にあまり良い天候に恵まれなかった為、2008年はやや取り戻せた感じはするものの、概ね熟度が低いですね。その分やはり2008年には共通したミネラル感がある様な気がします。

個人的にはクロ ヴージョ同様、バランスの取れた2006年が良いと思いました。次に2005年、2008年、2007年といったところでしょうか。
ここまで見るに、やはり2007、2008年はティボー リジェ ベレールとしてあまり良い年とは言えない様です。
狙い目は2006年ですかね。今飲む事を前提とすると最も美味しく頂けると思います。

さて、前回のクロ ヴージョとレ サン ジョルジュを比較すると、共に太い果実味を持つ事に関しては同様なんですが、微妙な差異があってレ サン ジョルジュは土っぽい香りが感じられます。
対してクロ ヴージョはもう少し果実の密度ときめ細やかさ、華やかさが際立っていると思います。
実際に隣において飲んだわけではないのですが、大まかな印象としてヴィンテージごとに照らし合わせてみると、そんな印象が強いです。

個人的にはクロ ヴージョの方が好みですね。若干ヴィンテージごとの安定感もあると思います。
でもまあホント好みですよね。
2008、2007年の方が好みという人も多いので。

ロベール シュヴィヨンのレ サンジョルジュを飲んでると「おお、特級クラス」と思うんですが、ティボーのそれはやや不足感があるんですよね。
ここのリシュブールは本当に凄いんだけど、旗印にすべきレ サンジョルジュにはもう一歩何か抜きん出たものが必要ではないかと思ってしまうんですよね。いいにはいいんですが。
ただその分値段もこのクラスとしては平準的なんで、ヴィンテージによってはお買い得です。

面白かったです。




ティボー リジェベレール、クロ ヴージョ 垂直2006-2009

こんにちわ。
本日はティボー リジェベレールのクロ ヴージョの垂直テイスティングです。

ティボーリジェベレールはニュイサンジョルジュに拠点を置く生産者で、ヴォーヌロマネのコント リジェベレールと同様、ルイ リジェベレールに連なる家系です。2002年 27歳の時にドメーヌを設立し、現在38歳、ブルゴーニュの新世代生産者であるとともにレ サンジョルジュのグランクリュ昇格運動の代表者でもあります。
※ちなみに他の賛同者はアンリ グーシュのグレゴリーグーシュ(30歳)、メゾン フェヴレのエルワン フェヴレ(30歳)、そしてティボーリジェベレール。若き生産者による運動です。
2005年からビオディナミを始めており、収穫された葡萄は除梗せず全房発酵を行なう。低温浸漬は約1週間程度行なわれ、アルコール発酵も含めキュヴェゾンは4週間程度。ピジャージュは3回程度。新樽は30%程度で瓶詰めされる。

さてクロ ヴージョ4種類、行ってみましょう。


生産者: ティボー リジェ ベレール
銘柄: クロ ヴージョ グランクリュ 2006

外観は澄んだ中庸なルビー、粘性は高い。
やや2007年と同程度の熟成感を感じるが、こちらの方が樽が若干強く、果実の甘露さに関してもこちらの方が強く感じられる。凝縮感に関しては、僅かに劣るか。
2009年ほど顕著では無いが甘露なシナモンやシロップ、コーヒー、そして時間が経過するとクレームブリュレの甘いアロマも現れる。
そしてブルーベリー、ダークチェリーの凝縮感のある果実味。薔薇や若葉などの青っぽさも強く感じられる。
酸味と旨味の他の要素とのバランスがいい。徐々に梅しばの様な風味も。そしてなめし革やナツメグ、お香、ファンデーション、焼いたゴムなどの香り。
とにかく滑らかなタッチのタンニンと酸。若干タンニンは強いが、後からググッと旨味と鉄っぽい風味が来る。煌びやか。なかなかバランスが良いヴィンテージだと思う。


生産者: ティボー リジェ ベレール
銘柄: クロ ヴージョ グランクリュ 2007

外観は澄んだ中庸なルビー、粘性は高い。
この中では最も熟成感を感じさせる。液体密度は高く、樽の要素より果実味と熟成香が主軸となっている。2006年や他のヴィンテージと比べて酸味と旨味が最も強い。
ブルーベリーやアメリカンチェリーの酸味を伴う果実味。ドライアプリコット的でもあり、過剰な甘さは感じない。2008年の澄んだドライさとは異なる甘みのないジャムの様。
青っぽさはあまり無く、スミレや薔薇の華やかさ、濡れた土、スーボワなどの大地香を感じる。そしてパストラミハム、生肉。お香、ベニヤ板、グローヴ、タイム、焼いたゴムなど風味も感じ取れる。
タンニンは穏やかだが、酸味は強め。ただ2006年と比較して旨味が突出している為、果実味とのバランスは取れていると思う。ベリーっぽいアタック。甘さと旨味を感じる。


生産者: ティボー リジェ ベレール
銘柄: クロ ヴージョ グランクリュ 2008

外観はやや薄目のルビー、粘性は高め。
樽はまだ溶け込んでおらず、五香粉、焼いたゴムのロースト香が非常に強く感じられる。果実味が目立たない為、やや冷淡な印象を受ける。薔薇や茎などの青っぽさが強いのも、その要因のひとつかもしれない。そしてダークチェリー、ブルーベリーの果皮のアロマ。なめし革、燻製肉の動物的な香り、ナツメグ、グローヴ、リコリスなどのスパイス。お香、ベニヤ板。
酸味やタンニンは2006年、2007年と比較するとかなり強め、収斂性も高い。やはり華やかでドライな印象を受ける。果皮や薔薇などのアフター。余韻は長い。


生産者: ティボー リジェ ベレール
銘柄: クロ ヴージョ グランクリュ 2009

外観は赤みの強いルビー、粘性は高いこの中で最も甘露で果実に集中力が感じられる。かつしっかりとした樽香があり、非常に官能的な素晴らしい味わい。最も完成度の高く感じられる。
強い五香粉の香りと共にシナモン、シロップやバニラの甘いスパイスの風味。そして凝縮感のある完熟したブラックベリー、ダークチェリー。さながらミルクキャンディーの様な果実味。スミレやフレッシュハーブ、なめし革、燻製肉などのニュアンスと樹皮、乾いた土、グローヴ、タイム、甘草、焼いたゴムなどのアロマも感じ取れる。
酸味とタンニンはかなり強め。収斂性も高く、香りと反してやや厳しい印象を受ける。
非常にパワフルで、かつ複雑な構成と豊かな果実味を持った極めて品質の高いクロ ヴージョ。


どのヴィンテージを飲んでも思うのが、(すべてではないものの)全房発酵によるスパイシーな側面がかなり出ていると思います。それを骨子として据えた上で、当然ながら最も完成度の高いのは2009年だと思います。
まず果実味が卓抜しているし、それに合わせる様に(新樽比率が低い割に)樽もしっかりと効いている。
意外と果実味だけに特化しているわけではなく、キチンと複雑性が見えるのもいいですね。
やはり色々利いてみて思うのが、どの生産者も相当2009年の果実味は強く出ているんですが、それでもバランスを取れる生産者が多いなと。このティボーリジェベレールのクロ ヴージョもちゃんとフィネスがありますね。
次に2006年。これはある程度熟成している部分が良さに繋がっていると思います。
そもそもでいうと決して強いヴィンテージではないのは明らかですが、クリームブリュレの様な果実の甘さとややコーヒーの様な樽香が、大きな規模感ではないものの、こじんまりと奇麗に纏まっていると感じました。
少なくとも2009年の様にビッグワインにはなっていませんが、バランスの良いワインだと思いました。奇麗な旨味がアフターにあるのもいいですね。
2006年に対して、2007年はやや熟成を帯びた感じがします。
樽っぽさは少なくて、より熟成香と果実味に満ちた造りだと思います。意外と凝縮感もあって、ジャングリヴォーの様な薄い印象はありませんでした。そこに梗のスパイシーさがちょっと乗る感じ。旨味がしっかりと出ているので、2006や2009の様なシロップやクリームの様な風味はあまり無いんですけど、しっかりしたボディがあると感じました。
2008年は青っぽさと樽のニュアンスが強く出過ぎている感じがします。ちょっとバランスが悪いですね。
非常にドライというか硬い印象を受けます。

それでもテロワール自体が冷涼なボーモンと比べると明らかにクロ ヴージョの方が、まだきっちり生育している感じはします。


■2006年
3月中旬まで雪が残った状態で、下旬まで下草すら動き出さない状態が続いた。4月から6月にかけて例年より寒い状況が続き(6月初旬でも早朝は氷点下ぎりぎりだった様です。)6月中旬以降やっと開花が始まり7月は暑く乾燥した干ばつの危険性もあったが8月になると涼しく湿った気候となった。その為カビ、ウドン粉、べド病の恐れもあった。9月中旬まで気温が高いがにわか雨が多く、早い生産者は18日より収穫を始めたが、概ね完了したのは25日だった。

■2007年
4月の発芽期は好天に恵まれて暖かい日が続いた。しかし以降8月までは曇天が続き良い天候の日は無かった。8月にはカビが発生している。収穫時期の9月上旬には好天候に恵まれている。

■2008年
4月の発芽期は2007年の様に暖かくなく6月まで曇天が続いた。7月に関しては1週間好天候に恵まれ、暖かく乾燥した日が続いたものの、8月は冷え込みが続いた。下旬から持ち直し暑い日が続いた。9月前半も崩れ気味だったが下旬より良い天候に恵まれ、大部分は9月25日より収穫を開始した。

■2009年
5月下旬から6月下旬まで好天が続いたが、7月中旬2日間、下旬2日間に大きな嵐に見舞われ天候を崩した。葡萄は局地的にベド病やカビに見舞われたが健全に生育し始めた。8月中は2日間の嵐以外は素晴らしい天候が続いた9月中旬に素晴らし良い天候のもと収穫が行われた。

上記のヴィンテージの条件を照らし合わせると、2009年は別格として2008、2007年、2006年は概ね同程度とされています。
若干2006年が良い様ですが、これは7月の結実時期に乾いた気候だった事と雹害などが無かったためでしょうか。
実際の所2006年は果実味がしっかり出ており、2007年、2008年に比べるとこじんまりとしつつも安定した造りでした。2007年のやや強く現れている熟成感は若干果実の力が弱かったからでしょうか。ただそんなに弱いヴィンテージだとは思いませんでしたが。
2008年は生育期に厳しい気候が続いた為か、確かに凝縮感の部分でいうとかなり厳しい感じはしますね。
ミネラル感というか硬い感じはしますので、これは多分前回のエントリーでも記載しました、母岩からの養分吸収時期が長かった為かなと。青っぽい感じが過剰に出ているのは、きっと梗が熟しきっていないところに由縁するのかなと。
そういう意味ではジャングリヴォは100%除梗ですので、有利に働いたのかも。もちろんティボーも機械的に除梗有無を決めている訳ではないかと思いますので幾分かは調整しているんでしょうけど。
2009年はやはり良かったですね。
エレガントで果実に力があるという。素晴らしいヴィンテージでした。

ここまで見るとやはり2009年は他を圧倒していますね。
2009年はもっとも飲んでいるヴィンテージなのですが、これを基本とすると他のヴィンテージがどうしても厳しく感じてしまいます。
個人的には2010年の方が好きですが、こちらもタイプとしては2009年に概ね近いと思います。





ジャン グリヴォ、レ ボーモン3ヴィンテージ垂直テイスティング



こんばんわ。
本日はジャングリヴォーのレ ボーモン3ヴィンテージテイスティングです。

昨日はデュジャックの水平でしたが、今日はジャングリヴォーの垂直です。
ジャン グリヴォーはヴォーヌロマネに拠点を置く、近年評価が高まっているドメーヌ。一時期ギィアッカをコンサルタントに迎え強すぎる抽出で評価を落としたものの、現在はリュットレゾネでの栽培や、一部の畑は馬での耕作を行いながら、収量を引き下げ続け、2000年半ば以降は品質を高め続けている。除梗は100%、新樽率は40%-70%。樽業者は4社を利用している。フラッグシップはリシュブール、エシェゾー、クロ ヴージョ。

今回のボーモンはヴォーヌロマネの一級畑でジャングリヴォの中ではオーブリュレ、レ スショ、オー レイニョに並ぶ丁度真ん中よりちょっと上といったグレードのもの。

コンクール背斜谷の左側開口部に位置しており、ヴォーヌロマネ側は南東を向いた斜面で勾配は大きく、冷涼な風の影響を受けます。エシェゾー(ロアシャウス、レ ルージュ デュ バ、クリュオ、ヴィーニュ ブランシュ)とレ スショ、オー ブリュレに囲まれており卓抜したワインを産出します。。


生産者: ジャン グリヴォ
銘柄: ヴォーヌ ロマネ プルミエクリュ レ ボーモン 2007

約14700円、WA90pt。
外観は濃いめのルビーで、粘性は中庸。
やや密度や凝縮度が欠けるヴィンテージ。茹でた野菜の様な風味と、ラムネのようなダークチェリーやブルーベリーの様な風味が強い。薔薇、スミレの様な華やかさは他のヴィンテージと比較すると控えめで、茎や土の様な青っぽいニュアンスが強く感じられる。
時間経過で徐々に輪郭ははっきりしてくるものの、基本的には平たい印象。要素自体は複雑だが、押し出しが少ない。ドライハーブやユーカリなどのハーブのニュアンス。
そして紅茶、松の樹皮、炭焼きなど。
2008年の青っぽさに熟成をさせた様な風味。酸味は穏やかだが、若干苦味やタンニンにキツさが残る。
この生産者としては、やや凡庸な出来のプルミエクリュ。


生産者: ジャン グリヴォ
銘柄: ヴォーヌ ロマネ プルミエクリュ レ ボーモン 2008

約13500円、WA93pt。
外観は濃いめのルビーで、粘性は中庸。
他のヴィンテージに対してミネラルが突出している。オレンジやラズベリー、ダークチェリーなどの清涼感がありつつ酸味の強い果実味と、紫蘇やスミレ、薔薇などの華やかな要素が突出する。また茎や松の樹皮、果皮成分も強く、全体的な印象としてはドライで硬質にまとまっている。
非常に野生的な風味が強く、やや青っぽい雰囲気を強く感じる。
ドライハーブ、クローブ。動物的ななめし革、鉄分。黒檀や炭焼きの香りが感じられる。
濃密だが、ややドライな香りのためか、酸とタンニンが突出している様に感じる。引き締まった印象はある。


生産者: ジャン グリヴォ
銘柄: ヴォーヌ ロマネ プルミエクリュ レ ボーモン 2009

約14700円、WA92-94pt
外観は濃いめのルビーで、粘性は中庸。
鉄分やダークチェリー、プルーンの黒い果実の強烈な果皮成分、ストロベリージャムの様な甘さを強く感じる。アメリカンでワイルドな作風。
薔薇やスミレの華やかな風味と茎やクローヴの野生的な香り。
最も凝縮感があり鋭角的で澄んだ香りがある。徐々に濃厚なシロップやシナモンの甘い風味が現れる。オレンジやローズヒップ、アスパラガス。スパイシーなパストラミハムやリコリスなどの風味も。
酸は2007と2008の間くらいで、タンニンはややキツめ。口の中でスミレや薔薇、黒系果実の甘露な風味を感じる。余韻は長くボディはしっかりしている。
3ヴィンテージの中では最も果実を強く感じる、目が細かく密度の高いレ ボーモン。ほぼ非の打ち所がない素晴らしいワイン。


この中で最も優れていたのは2009年ですかね。
相対的に果実味が不足気味の2008年、2007年と比べると、やや新世界的な過熟感と抽出のバランスがとても良く取れていると思います。人によっては恐らく濃すぎる...ブルゴーニュらしく無いと感じるかもしれませんが、明らかに良く葡萄が良く熟していますし、甘露で華やかな作りになっていると思います。
対して2007年と2008年は、2009年の卓抜した果実味と比べるとやや落ち着いた印象を受けます。
2008年は果実味の代わりにミネラルや柑橘系のアロマなどの清涼感を感じさせる要素が主軸。
果皮の華やかさも2009年と比べるとやや目立ちますね。ただ抽出が強い為、タンニンが際立つ所が難点といえば難点かもしれません。ちょっとタイプは違いますが、良く出来ていると思います。落ち着いているとはいえ果実味は十分に乗っているとは思うんですけどね。
2007年に関しては明らかに前述の2ヴィンテージと比較すると密度と果実味に欠けています。酸味と茹で野菜のニュアンスが強かったので、ひょっとしてあまり状態が良くなかったのかな。熟成感はあまり無かったです。
今まで飲んだ2007年は全体的に酸の要素と果皮の香りが強いものが多く、ここでいう2008年の様なニュアンスを感じられるものが多かったと思います。


ヴィンテージとして総合的な評価に目を向けると当然2009年は別格として、2008年と2007年には大きな差は無いようです。

■2007年
4月の発芽期は好天に恵まれて暖かい日が続いた。しかし以降8月までは曇天が続き良い天候の日は無かった。8月にはカビが発生している。収穫時期の9月上旬には好天候に恵まれている。

■2008
4月の発芽期は2007年の様に暖かくなく6月まで曇天が続いた。7月に関しては1週間好天候に恵まれ、暖かく乾燥した日が続いたものの、8月は冷え込みが続いた。下旬から持ち直し暑い日が続いた。9月前半も崩れ気味だったが下旬より良い天候に恵まれ、大部分は9月25日より収穫を開始した。

■2009年
5月下旬から6月下旬まで好天が続いたが、7月中旬2日間、下旬2日間に大きな嵐に見舞われ天候を崩した。葡萄は局地的にベド病やカビに見舞われたが健全に生育し始めた。8月中は2日間の嵐以外は素晴らしい天候が続いた9月中旬に素晴らし良い天候のもと収穫が行われた。


ヴィンテージの特性を見る限り、次の事が言えると思います。
2007年、2008年は結実後病害やカビに見舞われている為、緻密な選定が必要となり、良い生産者は収量を確実に落としているはず。生育時期にも好天か続かなかった様ですから、果実味の高い葡萄は余程手を入れない限り出来なかったのではないかと想像出来ます。とりわけ2008年に関しては収穫時期がずれ込んでいる為、やや厳しいヴィンテージであったと想像出来ますが、その分母岩からの養分吸収が十分に出来ている為、ミネラル感や複雑さがでているのではないかと。
そして2009年は全体的に好天が続き、素晴らしいヴィンテージだと思いますが、その分選別をする必要が無く、場合によっては落ち込む可能性も考えられますし、母岩からの養分吸収も不十分の可能性も考えられます。

2008年と2007年て言うならば、2007年の方が僅かに天候は良かった為良い葡萄が取れるはずですが、今回のジャン グリヴォーでいうなら2008年はしっかりとしたミネラル感が根底にあり骨格がしっかりしていて、2007年よりも随分とボディが強い様に感じられます。
2009年は言わずもがな、果実味に満ちたパワフルな作りで2008年と比べるとミネラル感が劣りますが、傑出した出来のヴィンテージだと思います。

そういう事を考慮すると、2007年は状態の面もあり、あまり楽しめなかったですが、2009年と2008年は方向性は違えど、非常に素晴らしかったと思います。



ラターシュに隣接する別格一級畑、マルコンソール 2010を生産者別に。

こんばんわ。
デュジャックのほぼバーチカルに引き続き、本日は生産者違いのマルコンソールを水平テイスティングします。

まず早速マルコンソールのテロワールから。

マルコンソールは、DRCのモノポールである特級ラターシュ、一級ゴーディショ、そしてニュイ サン ジョルジュの一級オー ブドに隣接する別格一級畑です。ジャスパーモリスMWはこの一級畑をクロ サン ジャック、レ ザムルーズと同等と位置付けています。土壌は基本的には土石灰分の強い粘土石灰質土壌で構成されており、クリスティアンヌだけは(ラターシュ下部と同等と考えると)バジョジアンの硬いウミユリ石灰岩を基岩としているようです。

生産者は以下3名、デュジャック、モンティーユ、カティアール。
ドメーヌ デュジャックは天才ジャックセイス率いるモレ サン ドニの大スター生産者。
クレールダユやジェラールポテルの元で修行したジャックセイスが1967年に設立したドメーヌで、近年特に畑を買い足し規模を大きくしています。現在は16のAOCを保有しており、特級畑を複数保有しています。
現在は約75%は有機農法が実践されており、一部の畑はビオディナミの実験が成されています。
(程度は変化しますが)基本的には除梗は行わず、数日間の低温マセレーションを行った後、圧搾、破砕。やや高温でアルコール発酵した後、軽く焼いた新樽は一級畑で80%、特級で100%使用され、15ヶ月間熟成されます。そして無濾過、無清澄で瓶詰めされます。

ユベール ド モンティーユはヴォルネイ、ポマールの筆頭ドメーヌでどちらかというとコート ド ボーヌ寄りのドメーヌ。現党首になってからニュイにも大幅に範囲を広げています。
栽培は一貫したビオディナミで行われ、収量は芽掻きと果実選定で30hl/haまで抑えられます。除梗は年によって比率を変えています。アルコール発酵は高めの温度で行われ、過度の抽出(ルモンタージュ、ピジャージュ)はしません。フレンチオークでの新樽はクリスティアンヌで80%、一級では30%とドラスティックに変えているようです。樽熟成の期間は20ヶ月前後で、ノンフィルター、ノンコラージュで瓶詰めされます。

シルヴァン カティアールはヴォーヌロマネに拠点を置く、評価の高い小規模ドメーヌ。非常に評価が高い生産者でワインアドヴォケイトでも09マルコンソールが98ポイントを獲得しています。
栽培はリュット・レゾネで行われ、肥料は有機肥料を使用し、ホルモンカプセルを使用した害虫駆除がなされます。樹齢は約60年。手摘みで収穫後、100%除梗され、2~10日間低温浸漬、アルコール醗酵はコンクリートタンクで高い温度で維持した状態で行われる。空圧式プレス機で圧搾され樽熟成に回される。マルコンソールには新樽比率60~70%程度で18ヶ月間の熟成後、無清澄、無濾過で瓶詰めされています。


それでは行ってみましょう。


生産者: ドメーヌ デュジャック
銘柄: ヴォーヌ ロマネ プルミエクリュ オー マルコンソール 2010

約19000円、WA92-94pt(2009)
外観はカティアールと比べるとやや淡いルビーだが、粘性は高い。
クロ サン ドニと同様、非常に甘露かつ穏やかでありながら、外向きの印象を受ける。
シロップで煮詰めたストロベリーやフランボワーズの明るく凝縮感のある果実味。シナモン、八角などのスパイス、鉄の様な風味が感じ取れる。スミレや薔薇の華やかなアロマや茎っぽさ、スイカズラ、パストラミハム。樽に由縁するであろう仄かなアーモンド香。グローヴ、炭焼きなど。
香りに赤系果実を煮詰めた様な丸みと溌剌さ、そしてヴォーヌロマネらしいお香の色っぽいニュアンスがある。
タンニンや酸はしっかりしているが、こちらも非常に滑らか。やや後味に苦味を感じる。余韻は非常に長い。ボディはしっかりしているが、全体的に柔らかく香り高い印象。


生産者: シルヴァン カティアール
銘柄: ヴォーヌ ロマネ プルミエクリュ オー マルコンソール 2010

約33000円、WA96-98pt(2009)
外観はやや濃いめのルビー、粘性は高め。
デュジャックと比べて、ややローステッドな樽香が特徴的。非常に華やかで妖艶。浮世離れした香りを放つ。方向性としてはコント リジェ ベレールの様なスタイル。
なんかもういきなりオーラが違う。
コーヒーや五香粉などのロースト香や、甘やかなシロップ、バニラの香りが主体となり、ダークチェリーやブルーベリーなど凝縮度の高い黒系果実、スミレの華やかなニュアンスが感じられる。
そしてグローヴやナツメグなどのスパイス。なめし革や鉄。ファンデーション、アーモンド、炭焼きなど風味も。木材の香りとダークチェリーの果実味が強く現れている。
タニックで酸も強いが、ジュヴレの様な肩幅の広い印象は無く、ひたすら妖艶でエロティックなマルコンソール。余韻も長い。


生産者: ユベール ド モンティーユ
銘柄: ヴォーヌ ロマネ プルミエクリュ オー マルコンソール 2010

約25200円、WA92-95pt(2009)
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。スパイシーでやや冷ややかな印象を受ける。
華やかさを重視しているのか、ドライハーブ、薔薇とスミレの香りが突出している。チェリーリキュールとブラックベリーのエレガントで瑞々しい果実味。蕩ける様な甘露な味わいで、僅かにシナモンやコーヒー豆のロースト香、シロップの様な甘やかさも徐々に現れる。またトースト、土っぽさ、茎、グローヴなどの香りも。
密度は高いが、酸、タンニンが刺々しい感じは無くて、シルキーで滑らか。口に含むとスミレやブラックチェリーなどの華やかな果実味が開いていく。
意外とクリスティアンヌよりマルコンソールの方が出来は良いか?


生産者: ユベール ド モンティーユ
銘柄: ヴォーヌ ロマネ プルミエクリュ オー マルコンソール クリスティアンヌ 2010

約37800円、WA92-95pt(2009)
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
スパイシーな印象がありミネラル感も感じる。無名マルコンソールと比較すると何故かこちらの方が果実味が弱い印象で香りも穏やかで一瞬拍子抜けしてしまった。
しかし徐々に妖艶で華美な香りが現れる。基本的にはマルコンソールと構成要素は同じで、ドライハーブや薔薇とスミレの香りが突出している。そして果実味も濃厚で、チェリーリキュールやブラックベリー、プラムの凝縮したエレガントな風味を感じられる。トースト、シナモン、コーヒーの樽香。なめし革、パストラミハムや生肉などの野性的なニュアンス。土や茎、松の樹皮、ミルクティーなどの青っぽさ、スパイシーなグローヴ、オリエンタルスパイスなどのニュアンスも。
徐々に果実味が強く現れ、全体的に香りの強度は無名マルコンソールを上回る。肉厚で高密度だが、スロースターターだ。
酸味、タンニンはクリスティアンの方が強い。特に酸味から生まれる凝縮感は無名マルコンソールを超越する。口に含むと華やかなスミレなどの風味とダークチェリーの果実味。余韻は長い。


まず生産者ごとに比較をしてみると、かなり違いを感じます。
まずデュジャックは非常に甘露さが目立つマルコンソールですね。これは正に生産者のスタイルなのですが、煮詰めたストロベリーやフランボワーズなどの赤系果実のジャムなどの瑞々しい果実味が目立ちます。
スパイシーさは全房発酵によるものでしょうか。他の2本と比べると特に印象が異なっていると思います。
果皮成分より果実の高い糖度を感じさせる造りです。

対してシルヴァンカティアールは、かなり樽がやや強く出ていて、五香粉やコーヒーのアロマ、やや黒系果実の密度の高い果実味が特徴ですね。煌びやかかつ密教的な雰囲気を感じさせる風味が強いです。新樽比率が同じなので、樽熟成期間に由縁するものかと思いますが...3ヶ月なので誤差範囲内ですかね。樽の焼き具合か、はたまたはメーカーなのか...分かりませんが樽の香りが強く、かつ果実味が凝縮した傑出したヴァンドガルドなプルミエクリュだと思います。
こちらはどちらかといえば果実の糖度も高いですが、果皮成分の華やかさを感じます。

ユベール ド モンティーユは、硬いミネラル感と花やハーブの香りが前に出ていて、かつブラックベリーやチェリーリキュールなどの果皮がやや強めのドライな印象、そこに樽が乗りながら徐々に甘露になっていく感じですかね。
やや冷涼な感じというか。デュジャックのシャルムシャンベルタンと同様の方向性を感じさせる造りだと思います。
後からグッと果実味がくる事から、果実の力は強いみたいです。樽熟成期間がやや長めなのが、ちょっと閉じている感覚を与えるのでしょうか。

いつもならば次に共通点を探すのですが、今回は生産者毎のテイスティングですので、ぶっちゃけ共通点を探すのは難しいです。ていうか無理です。いや、言い訳をさせてください。テロワールの違いは、生産者単位の畑ごとの方向性の違いを確認した後、同様の方向性を感じ取ることで理解し得るものだと思っています。なので例えばエシェゾーのテロワールを感じ取るのであれば...

生産者A(除梗100%、低温浸漬あり、新樽100% 20ヶ月熟成 →生産者の個性:パワフルでローステッド)
ヴォーヌロマネ →基準(濃い)
ボーモン →太い(濃い)
エシェゾー →伸びやか、瑞々しい(濃い)

生産者B(全房発酵、低温浸漬なし、新樽20% 12ヶ月熟成 →生産者の個性:瑞々しくエレガント)
ヴォーヌロマネ →基準(エレガント)
ブリュレ →果実味豊か(エレガント)
エシェゾー →伸びやか、瑞々しい(エレガント)

つまりエシェゾーは生産者の個性がエレガントであれパワフルであれ、「他の畑と比べて相対的に瑞々しく伸びやかである」という結論になるということです。同一の畑でテイスティングしたとしても、その生産者の他の畑のタイプを知らないと、ポートフォリオの中での対象の畑の位置づけが分からず、生産者の個性しか理解は出来ません。
なので、今回のモンティーユとカティアールは他のワインが分からないので、ぶっちゃけ生産者の個性しか理解できません。はい、言い訳終了。わかりません。

ただ面白い事に、これらの生産者はそれぞれ拠点が異なっていて、それが同一の畑でも強く影響をおよぼしています。
デュジャックの拠点はモレ サン ドニですし、モンティーユはポマールやヴォルネイ、シルヴァンカティアールはヴォーヌロマネ。共通のマルコンソールというテロワールを表現した時にどうなるかと言えば、正直拠点の味がするんですよね。
デュジャックはモレサンドニの文法で作られたヴォーヌロマネ、モンティーユはヴォルネイの様な繊細さを持ったヴォーヌロマネ、そしてカティアールはヴォーヌロマネの王道の様な(例えばモンジャール ミュニュレの様な)造りをしています。共通する特徴はやはり女性的で東洋風のスパイスの風味を伴った香りでヴォーヌロマネらしい味わいと言えます。

非常に興味深い比較でした。
ただいきなりマルコンソールという別格1級ではなく、村名とかから特徴を追って行けば良かったかなぁとちょっと後悔してます。美味しかったですけどね!




デュジャック2008年水平+マルコンソール。各々の畑の個性溢れる4種類。



こんばんわ。
先月はデュジャックのシャルムシャンベルタンの並行をレポートしましたが、今日は更に視点を変えて、2008年の一級オーコンボット、特級シャルムシャンベルタン、特級クロ サン ドニ。そして2010年の一級マルコンソールを比較します。

ドメーヌ デュジャックは天才ジャックセイス率いるモレ サン ドニの大スター生産者。
クレールダユやジェラールポテルの元で修行したジャックセイスが1967年に設立したドメーヌで、近年特に畑を買い足し規模を大きくしています。現在は16のAOCを保有しており、伝家の宝刀クロ ド ラ ロッシュ、そしてル シャンベルタン、クロ サン ドニ、ボンヌマール、ロマネサンヴィヴァン、エシェゾー、そして今回のシャルムシャンベルタン。綺羅星の如き特級畑を複数保有しています。
現在は約75%は有機農法が実践されており、一部の畑はビオディナミの実験が成されています。
(程度は変化しますが)基本的には除梗は行わず、数日間の低温マセレーションを行った後、圧搾、破砕。やや高温でアルコール発酵した後、軽く焼いた新樽は一級畑で80%、特級で100%使用され、15ヶ月間熟成されます。そして無濾過、無清澄で瓶詰めされます。

非常に豪華なテイスティングだけに気合いが入ります。
さて行ってみましょう。


生産者: ドメーヌ デュジャック
銘柄: ヴォーヌ ロマネ プルミエクリュ オー マルコンソール 2010

約19000円、WA92-94pt(2009)
外観はカティアールと比べるとやや淡いルビーだが、粘性は高い。
クロ サン ドニと同様、非常に甘露かつ穏やかでありながら、外向きの印象を受ける。
シロップで煮詰めたストロベリーやフランボワーズの明るく凝縮感のある果実味。シナモン、八角などのスパイス、鉄の様な風味が感じ取れる。スミレや薔薇の華やかなアロマや茎っぽさ、スイカズラ、パストラミハム。樽に由縁するであろう仄かなアーモンド香。グローヴ、炭焼きなど。
香りに赤系果実を煮詰めた様な丸みと溌剌さ、そしてヴォーヌロマネらしいお香の色っぽいニュアンスがある。
タンニンや酸はしっかりしているが、こちらも非常に滑らか。やや後味に苦味を感じる。余韻は非常に長い。ボディはしっかりしているが、全体的に柔らかく香り高い印象。


生産者: ドメーヌ デュジャック
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン プルミエ クリュ オー コンボット 2008

約15500円、WA92pt
外観は済んだルビー、粘性は中庸。
印象としては豊満でパワフル。瑞々しく甘露な黒系果実のジャムの様な果実味を感じさせる。丁度クロサンドニとシャルムシャンベルタンの中間の様な印象。
アメリカンチェリーやブルーベリーなどの黒系果実の瑞々しく甘露な果実味。なめし革や鉄の香り。そしてスミレや薔薇の香りもあるが、茎や松のニュアンスの方がやや強いか。シナモン、グローヴ、タイムなどのハーブやスパイス。
酸味とタンニンは非常に柔らかく、逆にボディの心配をしたくなるが、ゆっくりとジワリと広がる酸味と旨味を感じる。


生産者: ドメーヌ デュジャック
銘柄: シャルム シャンベルタン グランクリュ 2008

約17800円、WA92-93pt
外観は済んだルビー、粘性は中庸。
凝縮した硬質な黒系リキュールの果実味。はりめぐらされた緊張感のある香り。
ダークチェリーやブルーベリーの果皮成分を強く感じる果実味。甘露さよりドライさが際立つ。濃縮した果実味やミネラル感を感じる。徐々に花の蜜やバニラ、シナモンの風味。なめし革、茎や松の樹皮、クローヴ。最もロースト香が強く出ている。わずかに線香や五香粉、トーストの様な風味も。硬質な印象のまま徐々に甘露な要素が急激に開き始める。
タンニン、酸味は最も強いがそれでも軽やかで滑らか。じわりとしたシルキーな凝縮感がある。
華やかで硬質だが、今日は一瞬甘露な面を見せてくれた。


生産者: ドメーヌ デュジャック
銘柄: クロ サン ドニ グランクリュ 2008

約18400円、WA96pt
外観は済んだルビー、粘性は中庸。
瑞々しく明るい赤系フルーツのジャムの様な風味。凝縮度は高い。
ストロベリーやラズベリーのジャミーで甘露な凝縮した果実味。花の蜜やシロップの様な風味。もっとも強烈な甘さを感じる。
薔薇やスミレ、茎、若葉、松の樹皮などの野生的で華やかな風味。紅茶、パストラミハム、鉄分や土っぽい雰囲気を感じる。そしてローステッドなコーヒーや五香粉の風味も少しずつ現れるが、シャルムほど強くならず、あくまで果実味の強さが主張している。
軽やかで華やかな風味が全体に漲る。酸味は最も強く、タンニンは穏やか。
こちらもシルキーな味わい。瑞々しい果実味に満ちている。


全体的な印象としては、比較的新樽比率が高めなのにも関わらず、強すぎる樽香が無い事が特徴ですね。果実味が強いからか、はたまたは樽熟成期間が短い(ってほど短くないですが)からか、分かりませんが。
もっとも強かったのはシャルムでしたが、それでも一般的なグランクリュと同程度の樽香で、全体的に綺麗な果実味が全面に出たワインが多かったと思います。
ヴィンテージで言うと、全体的に2008年は液体密度の薄さを感じました。香りは2010年と比べて全く遜色無いのですが、2010年の様な目の詰まった酸味と旨味、ボディの厚さは無い様に感じます。もっとジワッと旨味が来る系ですね。
ただそこは考え様で「エレガント」という言葉で代用できると思います。勿論完成度でいえば2010の方が素晴らしいのですが。

まずオーコンボットですが、これはクロサンドニとシャルムの中間を行く様なタイプで黒系果実でありながら瑞々しいジャミーな甘露さを感じました。他の3本に比べると凝縮度や持続性、余韻において劣るものの、香りの方向性としてはクロ サン ドニやマルコンソールに近いと思います。単純にこれらの下位互換といった所でしょうか。
マルコンソールはクロ サン ドニほど外向的ないですが、骨格や果実味の方向性に関しては近い性質を持っていると思います。
果実味の鮮明さや青っぽさは抑えめになり、より煮詰めた様な果実味や八角、鉄分、スパイスなどの風味が前に出ている印象。故に外向的でありながら、非常に妖艶でヴォーヌロマネらしい雰囲気を演出していると思います。
そしてクロ サン ドニはこの中で最も外向的なタイプで、コアに最大級のエネルギーを持ちながら、瑞々しく可憐な赤系のニュアンスを強烈に放射する。
シャンボールミュジニー的な特徴が強いが、ミネラル感が排除され、より肉感的なニュアンスを感じます。背徳的、享楽的と呼べるワインで、一般的なボンヌマールのテールルージュ的な性質を持つワインです。ちなみにシャルムと比べるとやや早いうちから飲めそうな感じで、シャルムが良くなってきた時に、若干の落ち込みを感じさせる造りとなっています。そういう意味で方向性は異なりますが、概ね格としては同等と言えます。
最後、シャルムは前回のテイスティングと同様にドライかつ硬質な印象を受けます。
凝縮度が最も高く、クロサンドニが広がるワインだとしたら、シャルムは内に向かうワイン。
ただそれに留まらず徐々に時間が経つにつれ、シロップの様な甘露さや樽の香りが強く現れる。特に甘露さの発露は顕著で、凝縮した密度の高い香りが現れます。前回は樽が強い印象でしたが、その部分は落ち着いていて、本当の姿を見せてくれた様な気がします。長期的に見ると酒質は最も強いかもしれないですね。


さて、恒例のテロワールです。

ヴォーヌロマネ1級マルコンソールはヴォーヌロマネ最南端のクリマで南東の急傾斜。土石灰分の強い粘土石灰質土壌で構成されています。


ジュヴレシャンベルタン1級オーコンボットはシャルムシャンベルタン、ラトリシエールシャンベルタンに隣接しているものの、表土が薄い他の特級畑と異なり、堆積物があり、ウミユリ石灰岩、コンブランシアン石灰質で構成される。クロ ド ラ ロッシュに隣接し、やや場所によっては水分の含有量は多いものの日照条件は良いようです。
特級シャルムシャンベルタンはラトリシエールシャンベルタンと一級オーコンボットの下部に位置する東向きの斜面に位置するクリマで粘土石灰質土壌、母岩はウミユリ石灰岩、コンブラシアン石灰岩。グリザール小渓谷から冷涼な風の影響を受ける土壌です。
特級クロ サン ドニはジュヴレシャンベルタン寄りのグランクリュで3つのリューディで構成されています。
デュジャックが保有しているのは上部のカルエールと下部のクロサンドニ。
土壌は褐色石灰岩の混じった泥灰質、粘土質。母岩はバジョジアン石灰岩とウミユリ石灰岩。

ここで面白いのがシャルムシャンベルタン、オーコンボット、そしてクロ サン ドニの位置関係です。
オーコンボットを基準にすると、下部にシャルムシャンベルタン、南側上部にクロ サン ドニが隣接しています。
テイスティングレポートでオーコンボットとクロ サン ドニとタイプが近いという事を書きましたが、調べてみるとオーコンボットの土壌構成はシャルムよりクロ サン ドニに近いみたいです。やや表土が厚く標高が高め、そして日照条件が良い事が共通点を生み出しているのかもしれません。対してシャルムシャンベルタンは下部に位置しており、日照条件は良いのですが、グリザール小渓谷からの冷涼な風の影響を受けるため、ややドライでフェミニンな印象を受けるのかも。
ヴォーヌロマネ マルコンソールはちょっと遠すぎてあまり比較は出来ませんが、タイプとしては日照条件が良い感じ。もともと筋肉質で力強い性質のラターシュに隣接するクリマなので、ややジュヴレシャンベルタン寄りの性質を感じますが、そこはヴォーヌロマネ。女性的な艶やかな雰囲気も感じさせます。
次のエントリーはマルコンソール比較なのですが、デュジャックのワインは比較的ジュヴレシャンベルタンよりだと思います。


以上、テイスティングレポートでしたが、また長くなりましたね...!!
やっぱりデュジャックのワインは最高に美味いです。かつ畑ごとの違いを奇麗に書き出してくれるので勉強になります。そして前回も言いましたが...クロ ド ラ ロッシュ飲みたいなぁ。




さながら極楽浄土の美酒か、それともエデンの林檎か。極上の快楽を与えるディディエダグノー、プイィフュメ3種を利く。



こんばんわ。
やっと仕事がひとつひと段落して、更新が続けられそうです。
といってもさほど量は飲めている訳ではないので、溜めてる分量は程々なのですが。
さて、今回はボルドーから一休み、個人的に非常に注目しているロワールです。
ロワールと言えば、有名なのはビオディナミの先駆者ニコラジョリーのクロ ド ラ クレ ド セラン、そしてボンヌゾーやコトー デュ レイヨンなどのシュナンブランの貴腐、シノンの赤、そしてセントル ニヴェルネのプイィフュメとサンセール。
その中のプイィフュメで圧倒的な存在感を放つソーヴィニヨンブランの異端児、ディディエダグノーをレポートします。
ディディエダグノーは、1983年に様々なキャリアを経てプイィフュメにドメーヌを興します。93年から有機栽培を始め、いわゆるソーヴィニヨンブランの枠組みを大きく飛び越える卓抜したプイィフュメを一貫して作り続けています。作付面積は11haほどで、その最高の区画である「シレックス」ヴィーニュフランセーズを使用した「ピュール サン」がフラッグシップとしてリリースされています。
有機農法、大人数での手摘み収穫や選果をおこないます。収穫した葡萄はプレス後、ステンレスタンクで2日間寝かせた後、22度まで温度を上げながら10-12日間木樽でアルコール発酵。マロラクティック発酵はしない。新樽20%-30%程度で12ヶ月シュールリーで熟成し、更に4~8ヶ月間の間ステンレスタンクで熟成する。最長で20ヶ月程度の熟成期間を経て、瓶詰めされ出荷されます。

今回はダグノーのプイィフュメ、そしてプイィフュメ「ピュールサン」「シレックス」です。


生産者: ディディエ ダグノー
銘柄: ブラン フュメ ド プイィ 2010

約7800円、WA91-92pt(2009)
色調は淡いイエロー、粘性は高い。端的に言えばスタイルはプイィフュメの王道を尊重した香りと言える。ただ一般的なプイィフュメと大きく異なるのが赤リンゴやライチの核種系のとろりとした蜜を感じさせる甘露さと、爽やかな酸味を伴う溌剌とした果実味が同居しているところです。そしてその果実味と均整の取るかの様な強いムスクやフレッシュハーブのニュアンスが感じられる。この2点に尽きる。
プイィフュメに見られる燻した様な香り、そしてミネラルもしっかりと現れている。ヨーグルトや白胡椒などの風味も。一般的なフュメと比べると複雑でいて、かつ均整が取れた味わいと言える。
酸味は穏やかで、心地よい林檎の果実味が口に広がる。ラムネの様に広域に抜ける伸びやかな香り。余韻は長い。


生産者: ディディエ ダグノー
銘柄: ブラン フュメ ド プイィ ピュールサン 2010
約10000円、WA92-93pt(2009)

外観は淡いストローイエロー、粘性は高い。
シレックスを含む、このグレードからプイィフュメという枠組みを、その限界を乗り越えた様な感覚を強く受ける。極めてプイィフュメとしては異質である。
シュヴァリエやペリエールすら凌駕する、極端なまでの強烈な石灰の様なミネラル感やオイリーさがありながら、石鹸や百合などの白い花のニュアンスが鮮明かつはっきりとした輪郭で描写されている。さながら白粉の様な香り。
そして核種系の煮詰めたシロップ、黄桃や林檎の蜜の様な際立った果実味を感じる。
強烈すぎるフレッシュハーブ、青草などの清涼感と強固なミネラル、白胡椒などのスパイス、シャンピニオンや白檀などの複雑な香り。
もちろん燻したニュアンスはあるが、それでもプイィフュメというのに抵抗がある位に全体の姿が異質だ。シレックスのような溌剌さはあまり感じられない。
酸味はややブラン フュメ ド プイィと比較すると強めだが、穏やかで、トゲトゲしさはなく余韻は非常に長い。
この世のものとは思えない瀟洒で華やかな香りを放つ。


生産者: ディディエ ダグノー
銘柄: ブラン フュメ ド プイィ シレックス 2010

約13000円、WA93-94pt(2009)
外観は淡いストローイエロー、粘性は高い。
ピュールサンですらそのミネラル感に卒倒しそうになったが、この卓抜したプイィフュメはその上をいとも簡単に乗り越える。まさに岩を破砕した様な最も強固なミネラル感を感じる。その分非常に硬質で内向きの個性を感じるが、2008年の灯油がごときニュアンスには至っていない。こちらも華やかで石鹸や百合の様な白い花のニュアンスを強く感じるが、それらの要素が極端に突出したピュールサンと比べると僅かにその主張は穏やかである。
どちらかといえば果実味主体で、その強烈なミネラルを伴いながら、完熟した赤リンゴやシロップ漬けのパイナップルの様な瑞々しくも豊満な香りが漂う。ピュールサンのネットリとした甘さではなく、こちらは非常に蜜の様な瑞々しい甘さの発露。
コート ド ボーヌで言うならばバタールモンラッシェやルフレーヴのワインによく似ている。
ミネラルの硬質さ、果実味のタイプもあいまって、とても清涼感に満ち溢れている。煌びやかな黄金飴の様な甘露さがある。
そしてシャンピニオンやフレッシュハーブやムスク、白胡椒、ローストナッツなど非常に複雑な風味を放つ。徐々に百合の香りが強くなっていく。
酸味はシレックスが僅かに強い。鋭い酸というより旨味を伴う厚い酸。百合や赤林檎の果実味が広がる。素晴らしいソーヴィニヨンブランだ。


相変わらず途轍もないソーヴィニヨンブラン。
プイィフュメ自体、ボルドーの白に決して劣る事の無い最高のソーヴィニヨンブランだとは思ってるのだけど、ディディエダクノーは遥かにその上を行く。ボーヌのシャルドネの厚さやミネラル感、コンドリューの様な濃密感と生来の果実味の爽快さを併せ持っている。
今回の3本で言うと、ブラン フュメ ド プイィに関しては、いわゆるプイィ フュメを踏襲したスタイルの作りで、爽やかな果実味とムスクやハーブの香りを主軸としている。濃密感はプイィフュメと比べると強いが、まだその枠内で語られるべきソーヴィニヨンブラン。
しかしながら、残りの2本であるピュールサンとシレックスは、その枠組みを大きく飛び越えるスタイルになっている。共通する特徴としてはペリエールやシュヴァリエに比肩する石を舐めたようなミネラル感、そして強烈な果実味の2点が挙げられる。
面白いのが各々で若干別の方向を向いている点だ。単純にピュールサン>シレックスの図式ではない。
ピュールサンの特徴としては、卓抜したミネラル感を持ちながら、最も強く全体の印象を決めているのは果実味と華やかさである。
サーヴ直後は百合や青草、フレッシュハーブの清涼感と特異性が前に出ているが、徐々に現れるその強烈無比の果実味たるや、さながらドーヴネイのムルソーを想起させる。このワインの大きな特徴はまさにそこにある。
清涼感が突出するソーヴィニヨンブランにおいて、ここまでの甘さが現れてくるワインは滅多にないだろう。
そしてフラッグシップ、シレックスについては「均衡、バランス」という言葉が適切だろう。全ての要素が突出して力強く、驚くべき調和を見せる。ピュールサンを凌駕する強固なミネラル、そして方向性は異なるがルフレーヴの一級、特級に比肩する黄金飴やシロップの様な果実味、シャンピニオンやムスクなど。これらの官能的な香りが、見事なバランスで液面から放出されている。
果実味はソーヴィニヨンブランに関わらず本来の葡萄のポテンシャルを表し、ミネラルはその土壌によるもの。各種ソーヴィニヨンブランの要素は確かに存在するものの、本来のソーヴィニヨンブランの特徴に隠れてしまう要素を強く引き出した結果、プイィフュメとしての均衡は崩され、新たな卓抜したワインとして構築されている。
これは、プイィ フュメの「破壊と再構築」。神を恐れぬこの技は、まさに「アンファン テリブル」に相応しい。
なお、シレックスはその名前の通りベクトライトという珪質と粘土質からなる土壌。ピュールサンは泥炭土、アステロイド土壌に植わるヴィーニュフランセーズから作られている。

もし、ソーヴィニヨンブランが軽視されているならば、まずはシレックスとピュールサンを飲んでみて欲しい。
新しいソーヴィニヨンブランの世界を開ける筈だ。

2008年にこの「アンファン テリブル」ディディエダクノー氏は飛行機事故で亡くなっている。現在は息子のバンジャマンが舵を取っている。
オジーオズボーンバンドのランディローズも飛行機事故で亡くなった。
まるで世界が大きな変革を拒むかの様に。残念な事だ。




プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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