【ローヌ:3】ドゥラス、北部ローヌを比較する。コートロティ単一畑とサンジョセフ

こんばんわ。
今日も引き続きローヌです。

ドゥラスは北部ローヌ地区に19世紀に設立された老舗ドメーヌ。1997年、ジャック グランジが就任してから急激にその品質を伸ばし、現在ではベッサールやランドンヌが常にパーカーポイント90点後半を獲得しています。年によっては100点も出ます。
ポートフォリオはヴァンドペイからエルミタージュ最高の畑「ベッサール」、コートロティ最上級の畑「ランドンヌ」まで。
葡萄は全て手摘みで収穫し、コンクリートタンクで2日間低温浸漬。ルモンタージュとピジャージュを20日間行いながらアルコール発酵を行う。フレンチオーク新樽で14ヶ月の熟成が行われます。

この生産者のワインのクオリティはべらぼうに高いのですが、どうにも私にはちょっと合わないみたいで。
他のエルミタージュの様に果実味爆弾といった訳でもないですし、かといってシャーヴ、その他の地域を含めるとアンリボノーやラヤスの様に異端な作りではなく、こう今ひとつパッとしないんですよね。
今回のヌフとサンジョセフはいったいどうなんでしょうか?
ではいってみましょう。


生産者: ドゥラス
銘柄: サンジョセフ フランソワ ド トルノン 2010

4000円、WA91-93pt(2009)
外観は黒に近いガーネット、粘性は高い。
黒胡椒の香りが非常に強い。とてつもなくスパイシーなシラー。
燻製肉、パストラミハムの野生的な香り。ブルーベリーやプラムの瑞々しい果実味。薔薇や白マッシュルーム、香ばしいトースト。徐々に甘いシロップの香りも現れてくる。
タンニンや酸は強く十分に濃いが、ランドンヌと比較するとやや密度が低めに感じる。
口に含むと瑞々しい黒系果実と黒胡椒の風味が力強く広がる。
超スパイシー。

生産者: ドゥラス
銘柄: コート ロティ ラ ランドンヌ 2010

23000円、WA98-100pt(2009)
外観は黒に近いガーネット、粘性は高い。わずかに濃いブルゴーニュを想起させる。とてもインキーで甘露なシラー。
サンジョセフで前に出ていた黒胡椒の香りはやや控えめに、豊かな果実味が全面に現れている。樽っぽいミルクコーヒーや、プラム、ブルーベリーの甘露な果実味、そして燻製肉やパストラミ、黒胡椒。インクや焼いたゴム、香ばしいトースト。薔薇、スミレ、タイムの香りと白マッシュルーム、プーアル茶、グローヴなど。
非常にねっとりとした液体、柔らかな酸と力強いタンニンのバランスが非常によく取れている。
口に含むとねっとりとしたシロップの様な甘い果実味と黒胡椒、樽の風味が感じられる。
やはりコートロティはエルミタージュと比べると圧倒的にエレガント。樽の感じがブルゴーニュっぽい。


流石にいいですね...凄まじいレベルの高さです。特にランドンヌがとてもいい。
まずサンジョセフ。
サンジョセフは北部ローヌのアペラシオンでシラーが100%使用されるのがメジャー。こちらはとてもスパイシーで瑞々しい果実味があります。いわゆるシラーっぽいですね。サンタデュックのエリタージュというロープライスで有名なワインがありますが、方向性としてはそれと近いと思います。ボディの質も含めるとシャプティエのクローズエルミタージュでしょうか。
スタンダードなローヌの作りだと思います。
そして本命ランドンヌ。
ランドンヌはコート ロティの中でもコートブリュンヌに位置する最上の畑。ルネロスタン、ギガルもリリースしている事で有名です。
さて、ドゥラスはどうでしょうか。
誤解を恐れずに言うと樽の使い方が濃いブルゴーニュに似ていると思いました。ミルクコーヒーの様なニュアンス。それでいてしっかりと熟したプラムやブルーベリー、そして特徴的なブラックペッパーなどのシラーらしい要素がキッチリと存在しています。
僅かに野生的な要素がありますが、シラーとしては基本的にはエレガントなスタイルだと思います。
液体は同生産者のエルミタージュ ベッサール同様かなり濃厚で、濃密なシロップの様な風味が感じられます。
シラーはシラーなんですけど、ちょっとブルゴーニュと共通点が見られるのが面白いですね。
全然土壌も気候も違うのですが...

さて、サンジョセフ、ランドンヌを頂きましたが、前回飲んだエルミタージュとはやはり違いますね。
エルミタージュは若干ボルドーっぽいんですよね、この生産者。
ギガルやシャプティエはもっとわかりやすくローヌなのですが。
完成度は高いし、美味いんですが、何故か自分の好みとはちょっと逸れるんですよねえ。


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【ローヌ:2】南部ローヌ、2人の卓抜したCNDPを利く

こんにちは。
今回と次回はローヌです。
本日はローヌのカルトワイン、ヴィエイユ ジュリエンヌのCNDP、CNDP最高の生産者シャトー ラヤスのセカンドラベル ピニャンを。

ヴィエイユ ジュリエンヌはジャンポール ドメーン率いるシャトーヌフのカルト的ワイナリー。
平均樹齢60年、最長樹齢104年のヴィーニュフランセーズが植わったシャトーヌフの畑を保有しており、ただでさえ収量が落ちる古木から、さらに20hl/ha程度に収量を落す。(ローヌでもかなり切り詰めている方だと思う。)掘り起こしは乾燥対策にあまり行わない。栽培はすべてビオディナミで行われている。収穫は全て手摘み。
除梗は100%行い、コンクリートタンクでアルコール発酵、10-15日程度のマセラシオンを行う。新樽比率は分かりませんが、多分高そうな気がする。

シャトーラヤスは現当主エマニュエル レイノー率いるシャトーヌフデュパプ最高の生産者のうちの一人です。
フラッグシップのシャトーラヤス、そしてセカンドはピニャン。アペラシオンはシャトーヌフデュパプです。
わずか15hl/haという徹底した収量制限を行い、丁寧に栽培を行っています。
新樽は使用せず、10年来の旧樽を使用して熟成を行っています。他の醸造に関する文章は見つかりませんでしたが、個人的に恐らく除梗はしてないんじゃないかな、と思います。多分。

ではいってみましょう。


生産者: ヴィエイユ ジュリエンヌ
銘柄:シャトー ヌフ デュ パブ 2005

13000円、WA95pt
外観は濃いガーネット、粘性は高い。
ややインキーで香りは閉じている。トーストやスミレ、オリーブの風味が前面にある。そして強烈なアプリコットとプラムの濃厚な果実味を放っている。白マッシュルームや果皮の硬い風味。そしてスパイシーな燻製肉や黒胡椒。甘露な焼いた黒砂糖。グローヴ、リコリス、漢方などの風味も。
口に含んだ時の重みが違う。非常にどっしりとしておりドライフルーツや黒果実の果皮の様な風味が強く感じられる。タンニンはパワフルで収斂性が高い。


生産者:シャトー ラヤス
銘柄: シャトー ヌフ デュ パプ ピニャン 2007

約20000円、WA93pt
素晴らしい!果実味に溢れた粘性の高いドライリアプリコットを想起させるパワフルな果実味がある。
外観はやや茶を帯びた澄んだ淡いガーネット、粘性は高い。
瑞々しいブラックベリーやブルーベリーのジャムの様な果実味。僅かにスパイシーなパストラミハムや胡椒、グローヴ、リコリス、青い草などのハーブのニュアンス。このフレッシュハーブやスパイスの香りはとてもラヤスらしい。
徐々にシロップや蜜の強烈な甘さが現れてくる。スミレやトーストの香ばしい香りも。
酸は柔らかで非常に強固なタンニンがある。ボディは力強く、口に含むとドライアプリコットなどの干したフルーツの濃厚な果実味がドカンと押し寄せる。凄い濃密でブリブリのCNDP。


生産者: シャトー ラヤス
銘柄: シャトー ラヤス 1992
約55,000円、WA89pt
外観は濃いルビーで、粘性は高い。とても華やかな香り。
グルナッシュ100%でありながら濃密さやねっとりとした甘みは控えめに、青い草やフレッシュなハーブなどの自然の香り、芯の通ったミネラル感と果実味が感じられる。
液体に強い清涼感があり、タイムやリコリスなどの澄んだフレッシュハーブの香りや、草を潰した様な青っぽいニュアンスが強く感じられる。そして果実味も豊かでブラックベリーやブルーベリーのジャムの様な味わい。若干のスパイシーさも感じられる。
タンニン、酸味も未だ生き残っており、果実味はとても豊か。甘露な味わいが感じられるアフター。


いやー、やはりラヤスはすごいですね...半端ないです。
なんというかシャトーヌフにおいても本当に特異的な存在というか、全く、他の生産者とスタイルが違いますね。
他の生産者、特に近年評価の高い生産者のスタイルは古木の凝縮度、収量の極端な制限によるリッチで豊満な(ともすれば新世界のグルナッシュと同一方向の)果実味に満ちたスタイルなのですが、ラヤスはその点、少し違います。
果実味が高く密度が高い部分は、他と同じですが、圧倒的に複雑でエレガントなワインに仕上げられています。
特徴で言えば、ハーブやスパイス(シラー的な黒胡椒のニュアンスではありません)の香りが前に出ています。
具体的な製法は不明ですが、これと同じ特徴をデュジャックやフィリップパカレで感じた事があります。恐らく除梗に起因するものであろうと思います。
悪い言い方だと「青さがかなり目立つ」のですが、果実味に不足がある訳ではなく、むしろ密度で言うと他のワインと比べると高いと思います。故に青いニュアンスを複雑さを構成する一因として上手く昇華出来ているのではないかな、と。
果実味はジャムや果実の蜜を強く感じさせるもので、いわゆる黒糖やキャンディを想起させるものではありません。それに青草やハーブの要素が綺麗に乗ってくる事で、その特異な姿を形勢しています。ローヌとしてはかなり異端のCNDPだと思います。(流行のスタイルとも伝統的なスタイルとも異なると感じました。)果実を噛む様な豊かな質感、密度も感じられます。グルナッシュの別の可能性といったところでしょうか。
さて、シャトーラヤスとピニャンに関してはヴィンテージ的な差異が大きいので2本の間では何が違うのかは全くわかりませんでしたが、このスタイルの経年による変化という意味ではいくつか。
まずこのハーブやスパイスのニュアンスは殆ど落ち込みを見せませんし、姿も変わりません。ただ構成する果実味はフレッシュさを失い、熟成による更なる複雑さを獲得しています。
しかしながら、変化としてはブルゴーニュやボルドーほど顕著ではなく、1992年でも驚くくらい若々しさを保っていたのが印象的でした。
この2本を頂いて、もう、一気にファンになりましたね。もともと綺麗な全房発酵を感じさせるワインが好きなのですが、アンリボノーとラヤスはCNDPではもう別格ですね。素晴らしいです。
ヴィエイユジュリエンヌはラヤスと比べると典型的な流行を捉えたヌフスタイル。若干の硬さ...というか閉じてる状態だったのですが、これも開き始めると比類なきヌフである事が良く分かります。旨味もしっかりとあり高い評価なのも頷けます。果実の凝縮度も高く、素晴らしいCNDPだったと思います。
ただラヤスのインパクトと比べると、想像の域を出ない作りでしたので、今回のインパクトはやや薄い感じでしたね。もったいない。
とはいえ、こちらも優れたワインである事は間違いないので、価格も比較的良心的ですし、オススメと言えばオススメです。

やはりほぼ生産者による品質が確定してしまっているブルゴーニュやボルドーと比べると、まだまだローヌは面白いですね。


【ポルトガル:1】1900年、130年マデイラ。

こんにちは。
本日はマディラワインです。基本的に酒精強化ワインはそんなには飲みません。稀に食後に頂く程度です。
今回のマディラの凄い所は何と言っても熟成期間。なんせ1900年。生まれてない所の話じゃないですね!

酒精強化ワインの特徴は既にご存知かと思われます。
ワインの発酵途中にブドウを原料とした度数90%以上の蒸留酒を添加、糖→アルコールへの発酵を中断し、アルコール度数が高い状態を維持しながら甘口に仕上げたワインです。
ものによってはソレラシステムを使うことからポートやシェリーとタイプは同じですね。ヴィンテージ表記があるので、多分今回のは使われていないのでしょうけども。


生産者: アデガ エクスポータドラ ド ヴィノス ド マデイラ
銘柄: マルムジー 1900
品種:マルヴァジア 100%

約120000円
なんと113年熟成を経たスイートマデイラ。
酒精強化ワインなので長熟するが、ここまで古いマデイラは飲んだ事が無い。不思議な気分。
外観は茶色で、粘性は非常に高い。
ざっくりとした印象としては1921のリシュブールと香りの方向性は近いと思う。
非常に旨味が凄く現れている。スモモやイチジクの酸味を伴なう果実味、生肉、パストラミハムの野性的な香り。
生ハムに近いかも。また濡れた樹皮や紅茶などのニュアンスも強く感じ取る事が出来る。
香り自体はとても複雑で滋味に溢れるワインになっている。
ただ口に含んだ時にその印象は大きく変わる。香りとしては熟成しきった後のワインですが、非常に甘露な口当たり。アフターはシロップ漬けのドライアプリコットの様な強い味わいと、旨味が強く現れている。
100年を超える熟成による深みと甘口ワインならではの濃厚な甘み、粘度がこれでもかというほど官能的だった。


今回はマルムジーということですが、赤なんでマルヴァジア ネラですかね。
以前レポートしたリシュブール1921年に香りの要素としては近いと思います。ただ当然ですが酒精強化ワインなんで液体の中の甘露さはしっかりと残っていて、その力強い液体に熟成香が溶け込んでいます。
ある種朽ちてしまったリシュブールと比較すると酒精強化の恩恵とはいえ強い生命力に満ちている様に感じます。
113年前のヴィンテージですが、まだまだ飲めますね。肉などの旨味やスパイスをたっぷり含んだフルーツティーといった感じです。
香りは完全に熟成を終えているのに甘さがしっかり残っているのはなんとも不思議な感覚。そういう意味ではシャトーディケム1941の方がポテンシャルを感じるとともに均整は取れています。まあ当然比較すべき対象では無いんですけどね。
ただ、こちらもリシュブールとともに飲んだこと自体に価値のあるワインだと思いました。
あまりポートやマデイラなどの酒精強化ワインは飲んだ事がなかったので、これから始めてみたいと思っています。

いやでも面白いですなー。

【イタリア:1】最高峰のスーパータスカン2種とアマローネを利く

こんにちは。
本日もイタリアで。
昨日まではピエモンテのバローロとバルバレスコでしたが、今日はスーパータスカンとアマローネです。
何を隠そうこのわたくし、スーパータスカンはあまり飲んでいません。
オルネライアやサッシカイア、ソライアの有名どころは一通り飲みましたが、それより小さい小規模生産者のものや新進気鋭の生産者はほぼ素人です。
と言うのも、結局「既に値段も高くて、国際品種なら他の所飲めばいいーじゃん」となってしまうわけです。
きっとテロワールによって微妙な差異はあれど、国際品種向けの砂利質や粘土質の土壌、海洋性気候が整っていて日照が良ければ結局ボルドーやカリフォルニアでいいんじゃねえの?と。そりゃ美味いですけど、特に3万、4万クラスともなれば、イタリア以外の選択肢もあるよね...?
そんな感じでスーパータスカンには若干引き気味で接してきました。

今回はジャストスーパータスカン。
さて、「替えがいくらでもある」スーパータスカンの印象は変わるかな。

レ マッキオーレはボルゲリに1983年に設立された国際品種の評価の高い生産者。所謂スーパータスカン。ボルゲリのテロワールを表現したモノセパージュワイン、カベルネフラン100%のパレオロッソ、メルロー100%のメッソリオ、シラー100%のスクリオを生産しています。
生産はビオロジックを採用し、植樹密度を上げる事で本当たりの収量制限を行っています。収穫した葡萄は100%除梗されセメントタンクでアルコール発酵を行っています。30%新樽、70%1年樽を使用し20ヶ月のMLFを行いながら樽熟成、瓶詰めされた後18ヶ月の熟成を経て出荷されます。

テヌータ ディ オルネライアはスーパータスカンの中心的生産者。カリフォルニアで経験を積んだロドヴィコ アンティノリ氏によって、1981年ボルゲリに設立されたワイナリーです。ポートフォリオはオルネライア、そして旗艦銘柄であり、わずか7haの畑から作られるメルロー単一品種のマセット。
オルネライア同様、選定を行いながら手摘みした葡萄を再度選果し、除梗した後、温度管理機能付きのステンレスタンク、木製発酵槽で高めの温度でアルコール発酵。約ひと月のキュヴェゾンの後、100%新樽で20ヶ月間熟成される。12ヶ月目にブレンドされ、残り8ヶ月間はさらに熟成。16ヶ月間の瓶熟成後出荷されます。

ジュゼッペ クインタレッリは1924年にヴァルボリチェッラ地区に設立された老舗ドメーヌ。アマローネ最高の生産者のひとり。フラッグシップはこのアマローネクラシコとレチョート。
収穫はすべて手摘みで行われ、竹で作られた棚の裏で半乾燥させた葡萄を、約2ヶ月アルコール発酵させ、スロヴェニアオーク大樽で7年間の熟成後リリース。高いアルコールとエキス分の濃さ、このアマローネは良年にしか造られず、90年代には5ヴィンテージのみ造られています。

ではいってみましょう。


生産者: レ マッキオーレ
銘柄: パレオ ロッソ 2009
品種: カベルネフラン100%

9000円、WA93pt(2008)
外観は赤みの強いガーネット、粘性は高い。
全体的に甘い樽香と果実味が漲る。
またタバコのスモーキーさや、タイムの風味と共に、ミルクやワッフル、甘い糖蜜の香り。
そしてブラックベリー、カシスの蜜の様な自然かつ甘露な果実味。そしてミント、燻製、枯葉、シナモン、炭焼き、グローヴなどの風味も感じられる。
カベルネフランの割にはシシトウやピーマンの様な青っぽい風味や力強い酸があまり感じられないのか特徴で、シャトーフィジャックの様なエレガンスが感じ取れる。
柔らかでじわっとした酸、タンニンも穏やかで非常に全体の風味が柔らかく感じられる。極めてエレガントかつ果実味に満ち溢れた素晴らしいカベルネフラン。


生産者: テヌータ ディ オルネライア
銘柄: マセット 2009
品種: メルロー100%

35000円、WA96pt(2008)
外観は黒く濃いガーネット。
濃厚て豊満なブラックベリー、ドライプルーン、カシスの果実味。
ポムロールを連想させる濃厚なメルローの風味。素晴らしい。
非常に甘露な糖蜜のニュアンスが前に出ている。
僅かにスモーキーで、ビターなカカオ、枯葉、西洋杉。そしてピーマンや毛皮。ミルクなど。
グローヴのニュアンスが感じ取れる。
先述の通り非常にポムロール的だが、酸味はかなり強めに感じられる。またタンニンも強く収斂製が高い。ただ飲みにくさは感じられず、キャッチーなブラックベリーとミルクの甘い余韻が楽しめる。レディガフィの様なイタリアの産む突出したメルローだと思う。


生産者: ジュゼッペ クインタレッリ
銘柄: アマローネ デッラ ヴァリボリチェッラ 2003
品種:コルヴィーナ&コルヴィオーネ55%、ロンディネッラ30%、カベルネ&ネッビオーロ&クロアティーナ&サンジョヴェーゼ15%

約30000円、WA96pt(2000)
外観は中庸なガーネットで粘性は高い。香りは華やかでどこかネッビオーロを想起させる味わい。
極めてスパイシーで白胡椒やハーブ、コリアンダーなどの強い個性が感じられる。また溶剤、スミレ、葉巻、樽に由縁する糖蜜やバニラの様な風味が徐々に現れる。ドライプルーン、ブラックベリー、ドライトマトの果実味。グローヴ、タイム、シシトウのニュアンスも。
16%というアルコール度数に裏付けられたボディは極めて強固。タンニン、酸はかなり強めで、スパイシーな後味と青さの余韻が残る。濃厚かつ重厚、それでいてスパイシー。不思議な要素の一体感を持つアマローネ。


正直文頭の印象はあまり変わりませんでした。イタリアである必要はないかな...という印象。
しかしメチャクチャ美味い。マセットも美味しかったけど、パレオロッソがメチャクチャ美味い。
共に凄まじく良く出来たスーパータスカンで、マセットはポムロールのシンデレラワインを想起させるし、パレオロッソはサンテミリオンのシャトーフィジャックの様な複雑さやキャッチーさがありますね。とてもいいと思います。
まずパレオロッソの特筆すべきポイントは何よりもカベルネフラン100%。
有名なカベルネフランのモノセパージュはシュヴァルブランですが、受ける印象はむしろフィジャックの様にキャッチーな味わい。シシトウやピーマンなどの品種特性のマイナス要素は限りなく排除されています。(※これは葡萄の成熟度に由縁するものでしょうか。青い印象は受けませんでした。)
やや際立った樽香と、極めて瑞々しく甘露な黒系果実の果実味。青い風味は排除して複雑さや華やかなさなどのエレガントな風味だけを抽出している感じですかね。酸やタンニンの質感も滑らかで香りや風味と口当たりも合致しています。本当に完成度の高いワインです。
マセットはまさにポムロールのシンデレラワイン。黒系果実のリッチでダイナミックな果実味。糖蜜の様な甘露さ。そして燻した様なスモーキーさ。タンニンも例に漏れずとても強固でパワフル。ただ一点ポムロールと異なるのは、なんといってもこの突出した酸味。全体的にはボルドースタイルではあるものの、この酸味の強さはさながらシラーを想起させますね。その分とてもボディが強い様に感じました。
ちなみにボルゲリのテロワールは海が近く、河川から運ばれた砂利質土壌で構成されるボルドー的な要素と、寒暖の差が穏やか(ボルゲリは10-20度、ボルドーは6度から20度で降雨は頻繁)で夏に乾燥する地中海性気候などの新世界的な要素が見られます。日照条件も良く、確かに国際品種向けの良い土壌ですし、それらの側面を持っていると思いました。なるほど、それがスーパータスカンの個性なんですかね。
そして最後はアマローネ。
いや、濃くて凄い粘度、ちょっと喉が乾くくらいボディが強い。
その割には香りは比較的爽やかでスパイス、干草の香りが感じられます。ドライトマトやドライプルーンなどの干した果実の甘露さもしっかりある。
アルコール度数16%ってことで、殆ど残糖は無いんだろうな、と思いましたが、結構風味に甘みは残っています。
強いボディに見合うだけの果実味を有しながら、とても複雑な風味を放っています。
以前飲んだプラのアマローネはどちらかと言えば甘露さが先行していたと思います。複雑さはジュゼッペの方が上ですね。ただボディは同じくらい強かったです。
ちなみに余談ですがアマローネの意味は「苦味」。甘露なのに苦味とはこれいかに。

特にスーパータスカンは想定の範囲に収まる作りでしたが、偉大で素晴らしいワインでした。でも、やっぱりイタリアの国際品種は値段見合いでグランヴァンよりもデイリーの方がいいなあ、というのが正直な感想かも。
ネッビオーロやサンジョベーゼは面白いと思うんですけどね。




【ピエモンテ:2】ガヤのバルバレスコ単一畑、コスタルッシ、ソリ サン ロレンツォ、ソリ ディルティンを利く




こんにちは。
さて、今日もガヤです。
昨日はバローロでしたが、今日はバルバレスコ。コスタ ルッシ、ソリ サン ロレンツォ、ソリ ティルディンの単一畑三種類です。

生産者説明は前回書いたので、今回は省略します。
こちらもバローロ同様個性豊かで非常に優れたバルバレスコだったと思います。

ではいってみましょう。


生産者: ガヤ
銘柄: コスタ ルッシ 2006

外観はやや赤みの強い澄んだルビー、粘性は高い。
ダークチェリー、ドライプルーン、アプリコットの酸味の強い濃密な果実味と焦がしたトースト、華やかな薔薇の香りが主体となる。本来サン ロレンツォの方が甘露になるはずだが、こちらも徐々に強烈なシロップやワッフルの甘みが現れる。ブリオッシュ、スミレ、乾いた土や紅茶、タイム、クローヴ、燻製肉。
酸味、タンニンは強め。
シャープな酸味、華やかなスミレや薔薇のアロマ主体でわずかにハーブが感じられる。
酸味が豊かな熟したボリューミーな果実。余韻は長い。


生産者: ガヤ
銘柄: ソリ サン ロレンツォ 2006

外観はやや赤みの強い澄んだルビー、粘性は高い。
ブラックベリー、ドライプルーンなどの甘露で豊満な果実味とグローヴ、ドライハーブの清涼感。焼いたワッフルやフルーツケーキの芳香が感じられる。ボディは最も強固でパワフル。外向きの力強さが感じられる。そしてなめし革やタイム、グローヴ、スーボワ、マッシュルームなどの大地香が感じられる。筋肉質で凝縮のある果実味が主体的。
酸味、タンニンはやはり強め。
甘露で豊満でありつつ、薔薇や強烈な青い草やハーブの様な味わい。果実味が豊かでありながら、スパイシーで樽のしっかり効いた味わい。余韻は長い。


生産者: ガヤ
銘柄: ソリ ティルディン 2006

外観はやや赤みの強い澄んだルビー、粘性は高い。
バローロ3兄弟で最も異質な味わい。
やや細身の果実味でミネラルを強く感じさせる。そしてドライハーブや濡れた土、そしてオイルや薔薇の香りが主体となっている。
そしてブルーベリーやチェリーの果実味。黒胡椒、焦げた樹皮、燻製肉。マッシュルーム、鉄観音、タイム、グローヴ、リコリスなどの香り。
タンニン、酸味は2つと比べるとやや穏やか。とあると同時に花とハーブの味わいの均衡がとれている。
この中だとオーブリオン的な存在と言える。異端的なバルバレスコ。果実味ではなく全体的な要素が非常に複雑な骨格をかたどっている。


さて、ガヤのバルバレスコ3兄弟です。
全体的にバローロと比較すると、穏やかで華やかな印象を受けます。取りつく島の無いバローロのタンニンと比べると幾分か柔らかいと思います。
その分バローロの方が熟成ポテンシャルは高いとは思うのですが。まあ、ここまでのクラスになれば30年か40年かそのレベルなんで、あんまり関係ないかもしれませんね。
あと40年生きられるかわかりませんし。

さて、ではバルバレスコの中での違いはどうなのかというと、圧倒的な異質感を感じさせるのはソリ ティルディン。
コスタルッシ、ソリ サン ロレンツォは甘露で果実味豊かな味わいなのですが、ソリ ティルディンは果実味よりミネラル感やハーブ、草や花の香りを前に押し出しています。勿論一定の果実味はあるのですが、突出したコスタルッシやサン ロレンツォと比べると、やはりその部分は相対的にやや落ち込む感じですね。その分他の要素と均整が取れていて非常に複雑であるとも言えますが。メドックの一級シャトーで言うとオーブリオン的なポジションに近いかと。
次にコスタルッシとサン ロレンツォは共に方向性の近い瑞々しく甘露な果実味が充実しています。
前者は華やかで豊かな酸味を感じさせるのに対して、後者は樽が強く感じられ、甘露で力強いボディを有しています。コスタルッシの方が澄んだ印象があると思います。
語弊があるかもしれませんが、メドックで言うとコスタルッシはムートン的で、サン ロレンツォはラトゥール的なポジションかな、と思います。
それぞれカラーが別れた非常に個性的なバルバレスコですが、いずれも共通して華やかでリッチな味わいだと思いました。
他のバルバレスコ・バローロはたまに塩っぽい味わいが目立つもの(モンソルドやアルドコンテルノとか)がありますが、ガヤのバルバレスコ・バローロにはそういったものは感じませんね。とてもエレガントでキャッチーに仕上げられていると思います。
土壌の事も書きたかったのですが、詳細が探せなかったので、無しで。
ヴィンテージに関してはまずまず良い様ですね。

ちなみ詳細に書くほどではないのですが、以前ガヤのバルバレスコの古酒(70年代くらいだったかな?)を飲んだのですが、若干アンモニアの風味がしてあまり良いとは思えませんでした...


[2006] ガヤ コスタ・ルッシGAJA COSTA RUSSI 750ml

[2006] ガヤ コスタ・ルッシGAJA COSTA RUSSI 750ml
価格:37,590円(税込、送料別)



【ピエモンテ:1】ガヤのバローロ単一畑、コンテイザ、スペルスを利く。




こんにちは。
長いこと続いたブルゴーニュ特集は一旦ストップ。
3回に渡ってイタリアのバローロ、バルバレスコ、トスカーナ、アマローネをやっていきたいと思います。
今回はガヤのバローロ単一畑です。

さて、今更説明が居るのかわかりませんが、ガヤはピエモンテにおける最も偉大な生産者のうちの一人です。
ポートフォリオも膨大でバルバレスコやバローロ、そして各々の単一畑。国際品種を使用したダルマジ、買収した生産者のブルネッロなど。いずれも比類なきレベルの高さ。価格も比類なき高さ。
国際品種の導入、単一畑、バリック樽の使用などイタリアにおいて革命的なシステムを数多く取り入れています。
特に単一畑はバルバレスコやバローロの名前をあえて使用せずランゲに格下げして生産しています。
なので、ボトルにはバルバレスコやバローロの表記こそありませんが実態としてはバローロ、バルバレスコの偉大な畑から産出される卓抜したネッビオーロです。
収量制限がなされて収穫された葡萄は、果皮と共に3週間ステンレスタンクで発酵が行われます。 バリック樽で12ヶ月熟成、その後さらにオーク大樽で約20ヶ月間の熟成を行われます。
通常伝統的なネッビオーロは大樽を使用しますが、最近のモダンバローロよろしく(最近は少なくないですが)バリック小樽を使用しています。技術革新も受け止めて比較的モダンな作りと言えると思います。

さて今回はバローロの単一畑、スペルスとコンテイザです。

生産者: ガヤ
銘柄: スペルス 2007
品種:ネッビオーロ94%、バルベーラ6%

外観は濃いガーネット、粘性は非常に高い。
非常に華やか。
薔薇やスミレ、花の蜜、紅茶やタイムの様なとても華やかな香り。トースト。
コンテイザと比較するとより華やかで柔らかいソフトタッチの風味。
ダークチェリーのリキュールやプラムの甘やかで澄んだ果実味。
ドライハーブ、マッシュルーム、なめし革、グローヴ、リコリス、ゴムなど。
酸味、タンニンともに非常に強い。
口の中でダークチェリーの果皮のアフターが感じられ、余韻は長い。


生産者: ガヤ
銘柄: コンテイザ 2007
品種:ネッビオーロ 92%、バルベーラ8%

外観は濃いガーネット、粘性は非常に高い。
こちらもスペルス同様、非常に華やか。
より抽出が強く太めの厚いシロップの様な甘露さとワッフルの様な香ばしさ、塩漬けの強い薔薇のアロマがある。
強い甘露さを放つドライプルーンやダークチェリーのコンポート、レモングラス、紅茶、なめし革、茎や乾いた土、ドライハーブ、マッシュルーム、グローヴ、リコリス、炭焼きなど。
口の中で豊かなタンニンと酸、強烈なスミレのアフターが感じられる。
ややざらついた味わいだが、現在でも十二分に楽しめる。


最近若いネッビオーロばかり飲んでいたので、ちょっとそのタンニンの厳しさと味わいの濃さにウッとなっていたのですが、やはりキツさが抜けてフレッシュな味わいが楽しめる、これくらいのタイミングのワインを飲むと落ち着きますね。
非常に素晴らしかったです。
さてガヤのバローロ単一畑、スペルスとコンテイザです。
コンテイザはラ モッラ、スペルスはセッラルンガという畑から産出されています。(※意味合い的には小区画(パーセル)なのかな。)
なおラ モッラは砂質で柔らかい土壌、セッラルンガはラ モッラと比べると150mほど高い位置にあり粘土質で冷たい土壌のようです。
以前同一ヴィンテージのスペルスを飲みましたが、こちらの方がなぜか圧倒的に柔らかく落ち着いており華やかな味わいでした。個人的にはこれだよこれ、と言った感じですね。
非常に偉大で豪華なネッビオーロで、液体にエネルギーを纏わせています。
さて個々の違いを見てくと、こんな感じです。
まずスペルスは花の香りや蜜、大地香が主体的な非常に華やかなワインです。対してコンテイザは太く濃厚なシロップやワッフル、プルーンの様な果実味が主体的な甘露でボリューム感のあるワイン。と言えるかなと思います。
ちなみにボディは共に力強く密度も高く、またネッビオーロの特徴の華やかさと複雑さがとても突出している様に感じました。
なので、スペルスは華やかといってもひ弱なボディではないし、コンテイザも決して果実味だけではなく、きっちりと華やかさがあります。
単純に砂質のラ モッラは水はけが良く、過剰な水分を吸収しないため凝縮感のある葡萄が出来るんですかね。
そうなるとコンテイザの粘土質土壌は保水性は良いけど過剰な水分は弾いてくれるからそれはそれで良いのか...?
とりあえずどちらかのバランスが悪いという訳ではなく、バランスが良い事は大前提として、タイプの違いが明確であると、そういう事でございます。樽の利かせ方はボルドーに似ているなぁと思いました。
甘露でありながら、華やか。これぞネッビオーロといった感じですね。

しかし当然ですが、そもそもネッビオーロは長期間の熟成を経て真価を発揮する品種の為、未だ酸とタンニンはかなり厳しいと思います。
決して悪い訳ではないのですが、もう少しタンニンと酸が落ち着いたタイミングで飲んでみたいですね。

いわゆる伝統的なバローロとは異なりますが、とても偉大なバローロだったと思います。

ガヤ スペルス 2007

ガヤ スペルス 2007
価格:24,405円(税込、送料別)


【ブルゴーニュ:12】2人の生産者の卓抜したシャブリ特級レ クロを利く。



こんにちわ。
今日はシャブリです。毎度思うのですが、シャブリをブルゴーニュに入れていいか結構微妙な所だと思うのですが、まあ、そこのところはあまり気にしません。

生産者はフランソワ ラヴノーとウィリアムフェーブル。
フランソワ ラヴノーはドーヴィサと双璧を成すシャブリのトップドメーヌ。
ドーヴィサとは親類関係にあります。個人的には価格的にシャブリとは思えない生産者、というイメージですが、品質も一般的なシャブリとは大きく乖離するレベルの仕上がりを見せます。
生産方式もコート ド ボーヌの白ワインが如き手の込み様。
栽培はすべてリュットレゾネ。樹齢50−85年前後の古木を芽掻きなどで50hl/haまで収量を落とし(そんなに減ってはいないですが平準的なシャブリと比べると収量は低いです。)収穫は全て手摘み。除梗はせず、ステンレスタンクで全房発酵ののちマロラクティック発酵を行ないます。その後オーク樽に移し、18カ月以上の樽熟成。基本的には1年以上の旧樽を利用しますが、グランクリュの新樽比率は10%程度で発酵を行ないます。
清澄/濾過は軽く行なった上で瓶詰めを行ないます。

ウィリアムフェーブルはシャブリの老舗ドメーヌ。アンリオ買収後は現在はブシャールで修行したディディエ セギエが指揮をとっています。
シャブリにコートドールのスタイルを持ち込み、シャブリとしては珍しい手積み、ビオロジックを導入し、旧ウィリアムフェーブルで使用していた新樽を極限まで抑え、ミネラル感を引き出すことに成功しています。
平均樹齢は30-50年、栽培はビオロジックを実践し、収穫はすべて手積み。選果台で厳密な選別を行う。
醸造はグラビティーフローを導入し、アルコール発酵はすべて樽で行います。6ヶ月の旧樽熟成の後、ステンレスタンクで更に熟成する。新樽は使用しない。

ではいってみましょう。

生産者: ウィリアム フェーブル
銘柄: シャブリ グランクリュ レ クロ 2011

約10000円、WA94pt(2009)
外観は緑がかったイエロー、粘性は高い。
石灰岩を砕いたかの様なミネラル感。ややオイルの様な風味もある。赤りんごやライチの様な、とてもフレッシュな清涼感のある果実味を感じる。白い花の蜜やフレッシュハーブ、イースト、キノコの様な風味が感じられる。
徐々に花の蜜の様な清涼感のある甘露さが強く現れ、丸みを帯びてくる。
口に含むとハチミツの様な甘みとリンゴの様な引き締まった強い酸味を感じる。口の中でもややミネラルを感じられる。シャープでありながら甘露さがしっかりと現れている。ラヴノーと比べるとドライ。徐々に心地よい甘みが感じられる。

生産者: フランソワ ラヴノー
銘柄: シャブリ グランクリュ レ クロ 2010

約17000円、WA94-96pt(2009)
外観は緑がかったイエロー、粘性は高い。
フェーブルと比較するとより粉っぽい石灰岩を砕いた様なミネラルとキノコっぽさが強く感じられる。完熟した赤りんご、ライチの果実味。石鹸のような白い花、核種系の甘い蜜の様な甘露さが強く現れる。フレッシュハーブ、エシレバター、杏仁豆腐、アスパラガスの様なより太さを感じさせるレ クロ。
口に含むとバターと核種系シロップの濃厚な甘みと、シャープな酸味が感じられる。ふくよかでいて濃厚な味わい。


さて、シャブリです。
ワインを飲み込んでいくと、結構軽視されがちな大量消費のアペラシオンですが、かなりクオリティの高いワインも存在します。
その筆頭としてフランソワ ラヴノーとヴァンサン ドーヴィサが居ますが、それだけではなく、大手のウィリアムフェーブルの作るワインもとても素晴らしいと思います。個人的にはワインを意識して飲み始めて、最初に飲んだのがウィリアムフェーブルのシャブリだったので思い入れがあります。

では比較してみます。今回は特級畑のレ クロです。
共通点で言うと多い少ないの違いはあれど強固なミネラルとシャープな酸が感じられました。
ただ結論から言うとやはりラヴノーのレ クロは突出していますね。
ウィリアムフェーブルのレ クロも大変素晴らしく、いわゆるシャブリの最上級。断然清涼感があり、ミネラル豊かで爽やかな果実味と複雑な風味を包含していますが、あくまでシャブリの枠内に収まる味わいだと思います。徐々に丸みと果実味が現れてきますが、ラヴノーのそれと比較した時、やはりいささかドライに感じられる様な気がしますね。
ではラヴノーはどうなのかといえば、もうこれは毎度の事なのですが、本当に素晴らしい。
シャブリとは思えない濃厚な果実味があり、太い果実の甘みが感じられます。
ただそれだけではなく強烈なミネラル感を包含しており、さながら酸の強いコート ド ボーヌのグランクリュの様な味わいを放っています。
まぁしかし、これに関しては人によるかな、と思います。
トラディショナルなシャブリであれば、ウィリアムフェーブルだと思いますし、優れたワインであるならばラヴノーだとは思います。ここは好みでしょうかね。
ともに美味しいですしシャブリ的なワインであることは間違いないので、どちらを買っても満足感は得られるのではないかと思います。

私は以外とウィリアムフェーブルの方が好きかも。ラヴノーは優れたワインですが、ウィリアムフェーブルの方が「らしい」ので。


【ブルゴーニュ:11】ドミニク ラフォン、フリースタイルな赤白を利く



からのー、ドミニクラフォンです。
こんにちは、未だ自転車操業が解消しないひとりぼっちのテイスティング勉強会です。
ドミニク ラフォンといえばコント ラフォンの現当主。そのコントラフォンそのものである天才生産者ドミニクラフォンのプライベートラベルがこちら。
同じ人が作っていて何が違うの?という疑問が当然ついて回りますが、こちらはコントラフォンのワイン作りに囚われないブランド。
本人曰く「老人になった時なにもする事がなかったらつまらないだろ?」「コントラフォンのワインは一族とその作業者の生産者の生活がかかっている」
なるほど、伝統と格式とブランドイメージを守る必要のあるコントラフォン、当然品質を担保しなければならないドメーヌではあまり挑戦的な事に関しては慎重にならざるを得ないかもしれませんね。
そんな中で一族ではなく自らの為に作るワインがこのドミニクラフォンと言う事ですかね。
実際、味わってみるとスタイルこそ近しいものがありますが、向いている方向はちょっと違うみたいです。

ドミニクラフォンの栽培はコントラフォン同様ビオディナミによって行われ、アルコール発酵はすべて木樽で行われます。新樽比率はわかりませんがオーク樽でマロラクティック発酵をしながら24ヶ月熟成を経て瓶詰めされます。
ポートフォリオはムルソー、ヴォルネイの他にピュリニーモンラッシェ、サンヴェラン、ボーヌの村名、一級の畑をコントラフォンとは別に保有しています。

さて、行ってみましょう。



生産者: ドミニク ラフォン
銘柄: ヴォルネイ 2010

約6090円
外観は赤みの強い濃いルビー、粘性は高め。
やはり方向性は似ている。
ドライハーブや紅茶。スミレ、薔薇の華やかな香り、茎などの瑞々しい青い雰囲気とトリュフやトーストなどの風味。果皮の厚くドライでありながら、ブルーベリーやクランベリーの様な濃い果実味を感じられる。なめし革やクローヴ、アーモンドなどのニュアンスも。
主体としては瑞々しく繊細な大地の香りが漂う味わい。
青さとベリー類の豊かな酸味を伴う繊細な果実味。滑らかで心地よい余韻が残る。
時間が経つと最高に瑞々しく甘露なベリージュースやワッフルの様な風味も。


生産者: ドミニク ラフォン
銘柄: ムルソー 2010

約7600円
外観は淡いストローイエロー、粘性は中庸。
コントラフォンとほぼ同じ様な方向性ではある。
石灰を想起させるミネラル、塩ナッツ、シャンピニオンの風味。青リンゴと洋梨の清涼感と凝縮感を併せ持った果実味。そしてハチミツ、ヨーグルト、ハーブのニュアンスが感じられる。
果実味は非常に強く、凝縮した噛む様な密度がある。濃密で力強いがラフォンにはやや劣る。シャープというより酸が強い、硬い印象を受ける。瑞々しい味わいのムルソー。


ドミニク ラフォンのプライベートドメーヌのムルソーとヴォルネイです。
全体感の方向性としてはコントラフォンに近いのですが、大きく異なる点と致しまして、手を抜いている訳ではないと思うのですが、全体的にしっかり樽を効かせているコントラフォンのヴォルネイ、ムルソーに比べてに瑞々しい味わいのワインを作っていると思います。
例えばヴォルネイに関しては一級、村名の違いがあれど、コントラフォンのヴォルネイは樽がしっかりと効いた黒系果実の濃密なノンシュガージャムの様な味わいでしたか、ドミニクラフォンは樽が控えめで華やかな花の香りやドライで果皮成分が強く感じられる風味だったかと思います。品種はことなりますがガヤのバルバレスコによく似た味わいだと思いました。
ムルソーも全体的なスタイルとしてはコント ラフォンと近いです。
とてもミネラリーでシャンピニオンやナッツ、バターの風味は共に感じられますか、村名同士で比べてみた時にドミニクの村名はやや酸が強く感じられ、果実味にリンゴの様な風味がある為、清涼感を纏っています。
対してコントラフォンのムルソーはミネラルが非常に強く(もちろん前述の通り一級畑と比べると劣りますが)甘露なシロップの様な果実味と樽香を感じ取る事か出来ました。
これらを解きほぐした時、この2つのドメーヌは似てはいますが、全く目指す方向性か異なっていると言えます。畑の位置も勿論違いますか、伝統的なコントラフォンの当主であるドミニクが、あえてコントラフォンに囚われず自由に作りを変えているという風に考えるのが妥当かと思います。

格でいうならばコントラフォンの方が上なのは間違いありません。
それは手の掛け方、新樽の使い方、あるいは畑かもしれません。
ただ方向性こそ同じですが、想起させるワインは別のもので、単純比較は出来ません。
そう考えると、ドミニクのこれらのワインも非常に優れたワインと言えると思います。


ヴォルネー[2009]ドミニク・ラフォン

ヴォルネー[2009]ドミニク・ラフォン
価格:5,859円(税込、送料別)

【ブルゴーニュ:10】コントラフォン、ブルゴーニュ最上級の赤白を比較する。



こんにちわ。
本日はコントラフォンのムルソー4種類、ヴォルネイ1種類です。村名、畑名付村名デジレ、一級ジュヌヴリエール2種類。
コントラフォンは個人的にとても好きなドメーヌで機会があれば極力飲んでいきたいと思っているのですが...何分高い...!折角4種類を近い期間で飲む機会が出来たので気合い入れていきたいと思います。

説明不要かもしれませんが、コントラフォンはムルソーに拠点を置くドメーヌで、ブルゴーニュ、世界の生産者の中で常にルフレーヴ、コシュデュリと共にトップドメーヌとして語られる、シャルドネのスペシャリストです。
栽培醸造に関しては全ての畑でビオディナミを実践し、収量を25-40hl/haにまで落とし栽培を行う。収穫後2回の選定を行った上で圧搾、その後ステンレスタンクでデブルバージュ。新樽と旧樽へ移し低めの温度でアルコール発酵。
マロラクティック発酵を行いながら最大40%の新樽比率で21ヶ月の熟成を経て、無濾過、無清張で瓶詰めを行っています。
赤は除梗後、ステンレスタンクで6日間程度の低温浸漬。20日程度でアルコール発酵後圧搾。ピジャージュは最後の10日間のみ1日2回ピジャージュを行う。新樽比率は30%程度で18ヶ月から20ヶ月の熟成を経て瓶詰めされます。
コントラフォンの旗艦銘柄は特級モンラッシェ、ムルソー ペリエール、ジュヴヌヴィエール、シャルム。どの銘柄も人気が高く、上位銘柄は 価格も併せなかなか入手しづらいのが現状です。



生産者: コント ラフォン
銘柄: ヴォルネイ プルミエクリュ サントノ ディ ミリュー 2010

約16800円、WA89pt(2008)
外観は赤みの強い濃いルビー、粘性は高め。
平年のサントノに比べるといささか華やかさと果実味に欠けるような気がする。たっぷりとした樽香がある。
ミルクティーやコーヒーの様な樽香。樽とミネラルに覆い隠されているジャムの様なダークチェリーやラズベリーの果実味、強烈なスミレや薔薇の風味。茎やタイム、グローヴ、トリュフの大地香や、なめし革、アーモンド、黒胡椒など。
徐々に非常に甘露で黒砂糖の様に濃密な味わいが現れてきた。やはりロースト香が強い。
酸味は豊かで果実味も充実している。凝縮感がある。
瑞々しいが濃い味わい。ドミニクの軽妙で清涼感のある味わいとかなり異なる。


生産者: ドメーヌ コント ラフォン
銘柄: ムルソー 2010

約18900円、WA88pt(2009)
外観は淡いストローイエロー、粘性は中庸。
非常に甘露で果実味豊かだが、ラフォンらしい強烈なシャンピニオンやナッツの芳香を強く感じる。
2010ジュヌヴリエールと比較するとシャンピニオン、石油のようなミネラルがやや抑え目で、若干果実味が先に前に出ている印象。濃厚な洋梨、ライチの果実味。そして塩ナッツとエシレバター。シナモン、フレッシュハーブなどのニュアンスを強く感じる事が出来る。
酸味はとても豊かで口内に硬いミネラルが広がる。若干ザラつきも感じる。
ライチと洋梨の噛む様な豊かな果実味と力強い出汁の風味が感じられる。
余韻は長い。


生産者: コント ラフォン
銘柄: ムルソー プルミエクリュ レ ジュヌヴリエール 2010

約33600円、WA92-95pt
外観は淡いストローイエロー、粘性は中庸。
コーヒーやローストナッツの樽香。そして石油の様な強固なミネラル、シャンピニオン、ノワゼットとエシレバターの風味が前に出ている。
最初は石を舐める様な強固なミネラルに覆われているが、徐々に香ばしい甘露さを増していく。
洋梨やライチの核種系の濃厚な果実味と、バニラやシロップの様な甘みが感じられる。そしてフレッシュハーブ、リコリス、杏仁豆腐などの風味も。
すでに非常に複雑で、かなりコーヒーの様な風味が感じられる。
酸味はやはり強い。口の中で洋梨、ライチなどの豊満な果実味と強いミネラル、ナッツ、バニラの香りが感じられる。ここまでで40分はかかった!噛む様な果実味。余韻は長い。


生産者: コント ラフォン
銘柄: ムルソー デジレ 1990

約30000円、WA87-89pt
外観は浮遊物のある濃いイエロー。粘性は高い。
濃厚でありつつ、かなり複雑な風味が現れている。
白マッシュルームやノワゼット、塩バターなどのオイリーで濃密な出汁の様な香りが主体となるが、徐々に熟成ジュヌヴリエールに見られた糖蜜に漬けたワッフルや黄桃や洋梨の様な香りに。ノワゼットや塩バターが甘みを帯びているからか。ドライハーブやバニラ、ナッツの香りも。
非常に甘露で、かつナッツの香ばしい香りが強く現れている。甘さはジュヌヴリエール程ではない。
酸は充実しており引き締まっている。ナッツとキノコの出汁から、甘露なシロップを漬けたワッフル、そして口に含むと酸味の強い洋梨の風味が広がる。


生産者: コント ラフォン
銘柄: ムルソー プルミエクリュ レ ジュヌヴリエール 1989

約125,000円、WA94pt
外観は濃いめのストローイエロー、粘性は高い。
ミネラルに閉ざされていたラモネのビアンヴニュに対して、ラフォンのジュヌヴリエールは強力なエネルギーを外に放っている。超濃厚でありつつ非常に上品な果実味が感じられる。蕩ける様な官能的なムルソーだ。
ラモネ程ではないが、しっかりとミネラル感もあり、豊満なだけではない芯の力強さがある。
糖蜜をたっぷりとかけたワッフル、バニラ、シナモン。そして洋梨やマンゴーなどの核種系の甘い香りが力強く芳香する。
また白い花、マッシュルーム、杏仁豆腐など熟成シャルドネならではの複雑な香りが感じられる。
香りは非常に力強く豊満で上品。
やや酸味が強く旨味もしっかりと漲っている。ただ刺々しさは無くて、非常に滑らかな口当たり。
濃厚なシロップと核種系果実ののアフターが感じられる。こちらも余韻は非常に長い。


いや、ラフォンファンとしてはたまらんラインナップです。
最新の村名とジュヌヴリエール、1990のデジレと1989のジュヌヴリエール。そしてラフォン最高の赤も。最高。
まずは赤から行くと過去のヴィンテージと比較すると、やや華やかさと果実味に劣る様な気がします。2010年は良いヴィンテージですが、あまり恩恵を受けられていない印象です。2006年ほど華やかではないし、2009年程果実味に溢れていない。均整はとても取れているのですが、突出している部分があまりないので、既存の突出した個性の2本に比べると、やや地味な印象を受けるんですね。
では、良くないかというと、決してそうではないと。2006年以上の果実味があり、2009年以上の華やかさや繊細さをきっちり持っていて、それを支える強固な樽香を放っています。
バランス感で言うとかなり良いと思います。樽もしっかりと効いていますし長熟しそうですね。平年と比べるとやや弱いですが、それでもヴォルネイの中では果実味が突出していると思います。ドミニクのヴォルネイはある種王道といった印象を受けますか、こちらはよりリッチだと思いました。

次に白2010年ヴィンテージ。村名とジュヌヴリエールの2本の差は果実味と樽香の出方だと思いました。
方向性自体は、ほぼ同じなのですが、村名の方がより果実味が前に現れています。開いてくるのが早い。ミネラルやノワゼット、バターの風味は押さえ気味です。現段階では流石に硬すぎますが、あと数年もすれば美味しくなるのではないかと思います。
対してジュヌヴリエールは液面が完全にミネラルに覆われていて、ノワゼット、バターの風味が全体の大部分を占めています。ただ徐々にそれらの要素が解けていき、シロップの様な非常に甘露な姿を表していきます。その甘露さは村名を遥かに超える。
また樽も白ワインとしてはしっかりと効いていて、コーヒーの様な焦がしたニュアンスを感じ取る事が出来ます。
開いた時に非常に豊かな果実味を見せるとはいえ、現段階ではそれでもミネラル豊かで樽も強く、強烈なバター、ノワゼット香がある為、その味わいが安定するには時間を要する事がわかります。
次に熟成した1990のムルソーデジレ、そして1989のジュヌヴリエール。れらは若いヴィンテージで個別に強く主張していた要素(ミネラル、果実味、樽香)が溶けこみ渾然一体となっています。
まずムルソーデジレ。これはジュヌヴリエールと比較すると、若干熟成途上の様な味わいです。
デジレは畑名付き村名なので、2010年の村名と比較するのが適切でしょうか。比較的若い印象は受けましたが、2010年のミネラルやノワゼット、バター香はやや丸みを帯びて、メイプルシロップをたっぷりかけたワッフルの様な味わいを感じます。出汁の様な風味も感じられますが、やや酸味が際立っており、甘露さの主張は押さえ気味だったと思います。2010年と比べたら飛躍的に良くなっているのですが、ジュヌヴリエールの味わいと比較するとやはり不足感があるのは事実です。
対してジュヌヴリエールは正に天上の味わいといって差し支えないです。本当に素晴らしい。
基本的にはデジレと方向性は同じで、メイプルシロップをかけたワッフルの味わい。それにバニラやナッツ、清涼感を感じさせる白い花の複雑な風味があります。非常に上品でありつつ濃厚、デジレと比べるとその密度と外側に伸びていく香りは突出しています。そしてそれらの要素を受け止める旨味と酸味。非常に膨大な一塊の要素を感じ取る事が出来ます。もともと樽もミネラルも豊かだったので、熟成によって際立った強烈な果実味をしっかりと受け止める体躯があると言う事ですね。

これらを統合し、ラフォンの熟成の方向性を要素で見て行くと下記の様に言えると思います。
若いうちはバター、シャンピニオン、ノワゼットの要素とミネラルが非常に強い。徐々に解けてシロップの様な風味が現れるが、全体の要素がくっきりと明確に分割されている。様々な要素を個別に感じ取る事が出来ます。
対して熟成したラフォンは、樽とシロップが焦げ目をつけたワッフルとメイプルシロップの風味を生み、バターとノワゼットは前述の甘露さに塩気を与えます。複雑でありながらバターとメイプルシロップをたっぷりとかけたワッフルの様なキャッチーさを強く感じさせるワインとなっていきます。
若いうちは個別の要素がそれぞれ主張していたものが、一塊となって感じ取る事が出来ます。
つまり熟成によって複雑さを増しながら、独立していた要素が一塊になってその姿を現すのがラフォンの熟成の真価と言えると思います。そして熟成を経てこそラフォンの本当の素晴らしさを感じ取る事が出来ると。
ムルソー最高の生産者の中でも、かなりテクニカルでロジカルな生産者だと思います。


※右上がサントノ デュ ミリュー、左下がジュヌヴリエールです。

ジュヌヴリエールはムルソーの3つの最高の一級畑のうちの一角(ペリエール、シャルム、ジュヌヴリエール)。ペリエールほどでは無いにせよ非常にミネラリーなワインが算出される畑で、ボリューム感に至ってはペリエール以上と言われています。土壌構成は石灰と粘土。
サントノ ディ ミリューはヴォルネイ最高の一級畑サントノの最上の区画になります。行政区分上はムルソーにある畑ですが、AOC上はヴォルネイになります。石灰か多い緩斜面に位置します。
デジレは畑名付き村名畑(他に単一畑クロ ド ラ バールがあります。)です。現在は同区画名は廃止されているそうです。


今回はコントラフォンでしたが、次回はコントラフォンの当主、ドミニクラフォンのプライベートブランドと比較します。






【ブルゴーニュ:9】ラモネの超高品質な古酒、レアなブドリオット、至高のビアンヴニュを利く

こんにちわ。
自転車操業状態のひとりぼっちのテイスティング勉強会です。
かなりギリギリの更新でやってます。
事前にある程度書いていたとはいえ、毎日更新はなかなかキツイものがありますね...とはいえ、先月は結構休んでいたので泣き言はいってられません!
気合い入れて仕事の邪魔にならない程度に頑張ります!

さて、今回はラモネの2種です。
熟成したクロ ド ラ ブドリオット、そしてビアンヴニュ バタールモンラッシェです。

ラモネはブルゴーニュ白においてルフレーヴ、コシュデュリ、コントラフォンに匹敵するスター生産者。ただし例の如く球数がべらぼうに少ないです。
平均樹齢はブドリオットで55年、ビアンヴニュで50年程度の古木。18年以下の葡萄に関しては除外しています。収量制限はヴァンダンジュヴェールは実施せず、春先の摘芽で代用。アルコール発酵はタンクと木樽を併用してやや低めの温度で行います。ピジャージュは1日3回程度機械で行われます。新樽比率は一般的に30%程度(モンラッシェは100%)。18ヶ月の熟成の後、軽い清澄と濾過を行い瓶詰めされる。
フラッグシップは特級ル モンラッシェ、シュヴァリエ、バタール、ビアンヴニュ。特にシュヴァリエのわずか1haのにも満たない占有面積から産出されるワインはほぼ手に入らない。

個人的に何気に出会う機会がそこそこ多い生産者で、一級や村名、グランクリュでいうとシュヴァリエ、赤ならクロ サン ジャンを頂いた事があります。
今回はランクでいうと最上とは言い難いですが、熟成したラモネは極上の味わいでした。


生産者: ラモネ
銘柄: シャサーニュ モンラッシェ プルミエクリュ クロ ド ラ ブドリオット 1983

23100円
外観はエッジに淡いオレンジを帯びたレンガ色、粘性は低い。
綺麗に熟成しているが、流石に液体密度や香りは落ち込み気味。
澄んだ紫スモモやイチジクのエキス感のある果実味。沢庵の様な強烈な旨味を放っている。そしてなめし革、森の下草、トリュフなどの野生的な風味とクローヴなどのスパイシーなニュアンスも感じられる。
酸味は柔らかく滑らかで、口に含むと綺麗な旨味が口の中に広がっていく。
イチジクと腐葉土のアフター。
余計なものが削ぎ落とされて、滋味深いスープの様な味わいになっている。
素晴らしい。


生産者: ラモネ
銘柄: ビアンヴニュ バタール モンラッシェ グランクリュ 1985

約170,000円、WA97pt(1988)
外観は淡いストローイエロー、粘性は高い。
しっかりと熟成を経ており、驚異的な味わいとなっている。
非常にクリスピーかつミネラル感が豊富であり、石油の様なミネラルの堅さにクリームブリュレやバニラ。
香ばしいナッツの風味。そして洋梨、赤リンゴ、ライチの濃密な風味。
わずかに胡椒やキノコ、杏仁豆腐などのニュアンスが感じられる。
果実味は非常に瑞々しい。このワインで最も優れている点は酸味、ミネラル感、旨味、甘みの均衡の図抜けたバランス。
口に含んだ時に奇麗な酸味が広がり、ミネラルと共に旨味が広がる。そして静かに旨味が甘みに転化し長い余韻を残す。
とても完璧な流れ。クリスピーでスパイシーなアフター。素晴らしい熟成シャルドネ。驚愕した。


熟成ラモネです。
概ね赤も白も年代が近いので熟成の方向性はとても勉強になりました。
全体的にいうと熟成を経た後のラモネのワインは赤白ともに濃密さや濃厚さといった要素とは無縁の穏やかさで、とても優しい味わいの古酒となっていました。
いわゆる最上の生産者と呼ばれる方々のワインと比べると、やや密度の低さを感じますが、その分熟成を経た後のバランス感がとても良いのが印象的でした。いやもう本当に感動的なくらいに絶妙なバランス。
特に素晴らしかったのはやはり特級畑ビアンヴニュバタールモンラッシェでしょうか。
まさに掛け値なしに凄まじいブルゴーニュ、奇跡的なシャルドネでした。そもそもラモネのワインは比較的ミネラルが強く感じられるのですが、このビアンヴニュは28年の熟成を経てなお、強固なミネラル感を維持しています。
そのせいか、熟成後のラモネのグランクリュは独特の雰囲気を放っていて、甘露でありながらミネラルがとても豊かで、クリスピーで香ばしい香りが強く現れています。甘露さでいうならコントラフォンには大きく及びませんが(それでも十分すぎるほど甘露です。)、このラモネのビアンヴニュの素晴らしい所はアタックから余韻に至るまでの脅威のバランス感と演出能力にあります。
口に含んだ時にまず奇麗な酸味が広がり、徐々にミネラルと共に旨味現れる。そして静かに旨味が甘みに転化し長い余韻を残していく。酸味から旨味、旨味から甘みへの切り替わりは芸術的かつ官能的です。
派手な要素や突出した要素は平準化されて、総合的に突出した古酒になっています。
赤白の違いはありますが、その美しさたるやフーリエの1980年グリオットシャンベルタンに比肩する出来だと思います。
赤の方もバランス感が素晴らしい。これも白同様密度や濃厚さは感じさせず、フーリエのグリオット程では無いのですが、綺麗に熟成を経たピノノワールだと思いました。エキス感が充実しており、旨味も酸味も申し分ないと思います。腐葉土やイチジクの雑味の無い酸味が綺麗に広がるところがいいですね。とても上品だと思います。
まさにブルゴーニュの伝統的な古酒だと思います。


さて、いつものです。
ビアンヴニュバタールモンラッシェはバタールモンラッシェの下部に位置する特級畑です。斜面は南向きで粘土質が強く、厚い褐色の石灰岩土壌で構成されています。
クロ ド ラ ブドリオットはモルジョの下部に位置する一級畑でモルジョと比較すると石灰岩が多い土壌で構成されています。斜面は東向き。
共に熟成していた為、土壌はあまり参考にならないと思いますが、両方とも果実味が突出しているわけではなく、ミネラルなどの要素とバランスが取れた作りだったと思います。
それは特級、一級とはいえ、かならずしも傑出しているテロワールでは無い故に生産者が手を入れて形を整えてあげる事で完成された努力の成果にも見えますね。素晴らしいワインでした。


【ブルゴーニュ:8】ジョルジュルーミエ、80年代ボンヌマールと2010年村名に思いを馳せる。

こんにちは。
本日はシャンボールミュジニーの生産者、ジョルジュ ルーミエの村名と熟成ボンヌマールです。
嫌いな人なんていませんね、私も非常に好きな生産者ですが、まあ、当然ですが手に入りません。手に入れようとしても真っ当な値段じゃ無理ですね...
2011年もどうなることやら...

ジョルジュルーミエは恐らくブルゴーニュで最も人気がある生産者のうちの一人で、そもそもの生産量が少ない&市場で瞬間蒸発してしまうため滅多に見かけない、見かけてもプレミアがついてべらぼうな金額で取引されている生産者です。化学薬品、化学肥料、除草剤は使用せず、グリーンハーヴェストによる収量制限、そして無清張、無濾過で果実本来の力を引き出す造りをしています。新樽比率は村名25%、一級40%、特級50%と比較的少ない使用率となります。

さて、いってみましょう。

生産者:ジョルジュ ルーミエ
銘柄: シャンボール ミュジニー 2010

別インポーターのもの。


生産者: ジョルジュ ルーミエ
銘柄: ボンヌ マール グランクリュ 1988

約236,000円、WA87pt
外観は橙を帯びた濃いめのルビーで、粘性は高い。かなり熟成香が強く出ている。
やや硬めだが、さすがはルーミエ、高密度で果実味に噛む様な厚みがある。凝縮感も強い。
濡れた樹皮や生肉、燻製の様な熟成香に、梅干やスモモ、イチジク、ブラックチェリーなどの酸味が際立つ果実味が感じられる。
ちょっとしたドライシェリーの様な風味がある。そして華やかなドライフラワー、森の下草、紅茶、クローヴ、タイムなどの大地香が感じられる。
タンニン、酸味は引き締まっているが、熟成を十分に経ているだけに柔らかく滑らか。パワフル。
ただこれからさらに熟成するであろうポテンシャルは残している。
枯れ草と梅しばなどの綺麗な旨味と熟成香のアフター。濃厚なスープの様な味わいが感じられる。やや棘を感じる味わいなので、もう少し熟成が必要だと思う。


ルーミエの村名とボンヌマールです。
村名の同ヴィンテージは以前ブログでレポートいたしましたので、あまり詳しくは記載しませんが、前回はフィネスさん輸入、今回のは別のインポーターさん(自社販売もやってるあそこ)のものです。
個人的にほぼ同じ感想で、そこまでボトルに大きな差は無いんじゃないかな...と思いました。まあ、いずれにせよとても美味しいです。何度飲んでも「すっごいな...」としか思えません。
若干(フィネスと比べると)濃いかな?と思いましたが、まあ多分気のせいでしょう。相変わらずの噛む様な果実味と強烈な旨味。村名にしてこれですから、本当に凄い。
さて、本命は熟成したボンヌマール。前回、熟成したクロ ヴージョ1996、そして最新ヴィンテージのボンヌマール2010を頂きました。
記憶を頼りにそれらと比較してみようと思います。
まず2010年のボンヌマールは、村名、一級(レ クラ)と比較して、その強い果実味と共に、新樽比率50%としてはとても樽のニュアンスが突出しているように感じました。対して1988年は当然ですが、かなり全体の印象が変わっています。
まずその果実味はジャミーなクランベリーやダークチェリーのニュアンスから梅干やイチジク、ブラックチェリーに変化しています。熟成による妥当な変化だと思いますが、全体の果実味としてはほぼ落ちていない印象です。
噛む様な厚みは残しつつ、要素がまるっと変わった感じですね。
最新ヴィンテージのフレッシュさ、強烈な樽香に対して、熟成香と旨味が全体の味わいを引き締めている感じです。
樽香に関しては最新ヴィンテージはロースト香が際立っていましたが、腐葉土や紅茶の様な複雑な風味に転化して、かなり味わいに溶け込んでいます。全体的に大地香が豊か。
芯のあるミネラル的な硬さはあまり感じず、果実味豊かで柔らかい印象を受けました。濃厚なスープの様な旨味ですが、もう少し際立った酸味とタンニンが落ち着くと、もっと良くなりそうな気がします。
それでも1996のクロ ヴージョと比べると大分エレガントですね。96のクロ ヴージョはよりアーシーで強く熟成を感じさせる作りでした。熟成途中というのもあるのですが、若干トゲトゲしさを感じる作りでした。

そんな感じで村名、ボンヌマール共にとても素晴らしいと思うのですが、なんかちょっとシャンボールミュジニー的ではちょっと無いかな、と。
「シャンボールミュジニーの顕現と言える生産者に何言っとるんだ」と思われると思うんですが、まぁ、ちょっと待ってください。違うんですよ。
個人的にこの感想はヴィンテージ起因だと思うんですね。2010年はやや果実味に富みすぎてるというか、ミネラルはあるんですが、あまりにも艶とリッチさが目立っている様な気がするのです。(イメージと合わないだけで、ワインとしての完成度は他のヴィンテージより高いと思います)
そう、ジャック フレデリック ミュニレの2009年ヴィンテージみたいなものというか。そんな感じです。彼の2010年はとても綺麗な、テロワールの生き写しの様なシャンボールミュジニーでしてたが、2009年はブリブリでリッチでしたね?そんな気配がルーミエの2010年にはするのですよ。いや、もちろん美味しいんですけれども!
あと1988年のボンヌマールは熟成によるミネラル感の落ち着きが「それっぽくないな」と思わせるんじゃないかな、と。若い時分に飲めばまた違うのかも。

まあ、基本的にはそんなこと語るのも無粋な程美味いんですけどもね。



【ブルゴーニュ:7】アルマンルソー、2004年ヴィンテージ4種を検証する

こんにちは。
前回に引き続きジュヴレシャンベルタンです。
偉大な生産者を多く抱えるジュヴレシャンベルタンですが、その代名詞とも言える5人の生産者が居ます。デュガ ピィ、クロード デュガ、フーリエ、ドニ モルテ、そしてアルマンルソー。
いずれもブルゴーニュを代表する生産者で個性豊かな極めて高品質なワインを生み出します。
とりわけ評価が高くファンが多いのが、アルマンルソー。彼の作るシャンベルタン、シャンベルタン クロ ド ベーズ、1級クロ サン ジャックはまさに別格。ブルゴーニュでも群を抜いた偉大なワインとされています。

アルマンルソーはジュヴレシャンベルタン最高の生産者のひとり。ルーミエ程では無いにせよ、旗艦銘柄の特級シャンベルタン、クロ ド ベーズ、一級クロ サン ジャック、リュショットは瞬間蒸発銘柄です。
葡萄の平均樹齢45年以上。ただでさえ収量の少ない古木。かつ収量を25hl/haにまで絞った葡萄はリュットレゾネに則って栽培、熟したタイミングでやや早めに収穫されます。除梗は90%程度行われ低温浸漬を経て、アルコール発酵が行われます。ピジャージュは1日2回程度。キュヴェゾンは20日間。その後シャンベルタン、クロ ド ベーズ、クロ サン ジャックが100%新樽、その他の特級は80%新樽で20ヶ月程度の熟成を経たのち軽く濾過、卵白での清澄を行ったのち瓶詰めされます。

さて、今回は特級クロ ド ラ ロッシュ、特級シャルム シャンベルタン、特級マジ シャンベルタン、そして旗艦銘柄1級クロ サン ジャックを比較します。


生産者: アルマン ルソー
銘柄: クロ ド ラ ロッシュ グランクリュ 2004

21000円、WA92-94pt(2005)
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
とても綺麗に熟成している。視覚的に果実が見える様なリアルさを持っている。
瑞々しい旨味と酸味に満ちたダークチェリーやラズベリーのジャミーな果実味。グレープフルーツ(スーパーのフルーツコーナー)。生肉の様な野生的な旨味があり凄まじいまでの凝縮感を感じる。
そして華やかなスミレのドライフラワー。徐々にシナモン、果実の蜜の甘やかさ。森の下草、ドライハーブ、ローズヒップティー、トリュフなど。透明感があり瑞々しい味わい。
アタックはとても綺麗な酸味で梅しばの様なじわりとした旨味。強いベリージャムのアフターが広がる。強烈な凝縮感を感じる味わいだ。余韻はとても長い。


生産者: アルマン ルソー
銘柄: シャルム シャンベルタン グランクリュ 2004

21000円、WA89-91pt
外観はやや淡い澄んだルビー、ややエッジに煉瓦色を帯びている。粘性は中庸。
やや熟成香を帯びているが、まだ十分に若々しい。オレンジのニュアンスと、ダークチェリーやブルーベリーの瑞々しい果実味と煮詰めたイチジクなどのソースの様な香り。徐々にキャラメルの甘露さも現れてくる。腐葉土や濡れた樹皮、パストラミハムなどの熟成を経た香り、香草、紅茶、ローリエなどの風味も。
やや茎っぽい風味とスミレや薔薇の華やかさ、ソースの様な風味が渾然一体となって口の中に広がる。酸味はマジほど柔らかくなく、クロ サン ジャックほど強くない。タンニンも同様で、心地よい舌触りを感じられる。
旨味と果実味のスープみたいな味わい。


生産者: アルマン ルソー
銘柄: マジ シャンベルタン グランクリュ 2004

21000円、WA93pt(2003)
外観はやや淡い澄んだルビー、ややエッジに煉瓦色を帯びている。粘性は中庸。
シャルムと比べるとやや冷ややかなタッチ。少しずつダークチェリー、ブラックベリー、イチジクの果実を潰したの様な瑞々しい果実味。ちょっとびっくりするくらいのスミレや薔薇の明確なニュアンスが感じられる。そしてタイムやグローヴなどのやや草っぽいドライハーブの香りや腐葉土、漢方、焼いた木材、生肉など。徐々に黄金飴の様な濃密な甘みが現れてくる。果実味がリアル。
酸とタンニンはとても柔らかで、スミレキャンディの様な華美な風味と、腐葉土、果実の風味が口に広がっていく。基本的にこちらもややドライなタッチの味わい。


生産者: アルマン ルソー
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン プルミエクリュ クロ サン ジャック 2004

31200円、WA94-96pt
外観はやや淡い澄んだルビー、ややエッジに煉瓦色を帯びている。粘性は中庸。
もっとも若々しくエレガントでありながら力強い液体。強いオレンジの香りとダークチェリーやブルーベリーの清涼感のある果実味、圧倒的に煌びやかで緊張感がある。果皮のニュアンスが強い。スミレや薔薇の華やかな風味や舐めし革やミルクを垂らした紅茶、タイムやグローヴなどのドライハーブ、トリュフ、オリエンタルスパイス、僅かにワッフルの風味も。
マジほど柔らかさはなく、やや酸が強く、タンニンも強め。口内の余韻としてはスミレや薔薇などの華やかな風味はマジ同様強いが、それに加えて果皮の煌びやかな成分が明確に感じられる。
甘露さは控えめでドライ。エレガントだがエネルギーに満ち溢れた味わい。この中で最高の出来ではあるものの2009年の燦然たる造りを見ると、精彩を欠く造りだと思う。


さて今回の2004年を一通り味わってみると、やはりヴィンテージの負というか、若干2009年と比較すると精彩を欠く出来だったかと思います。といっても十分に素晴らしいのですが。
2009年は非常に葡萄がよく出来た年だった為、それに比べると果実味はかなり落ちている印象です。
エレガントともいえるかもしれませんが、ややドライな印象を受ける酸が目立つヴィンテージだったと思います。
そんな中で非常に健闘していたのがジュヴレシャンベルタンの特級畑ではなく、クロ ド ラ ロッシュ。
1級クロ サン ジャックが素晴らしいのは当然だとして、クラスとしてはシャルムシャンベルタンと同等のクラスであるクロ ド ラ ロッシュの安定感は非常に素晴らしかったです。
この4本の中では非常に若々しく、瑞々しい果実味を感じる事が出来ました。
基本的にはジャミーで煮詰めたフルーツやグレープフルーツの清涼感のある味わいで、旨味と果実味のバランスが非常によく取れています。この中だとクロ サン ジャックに次ぐ濃密度、凝縮度。そして瑞々しさ。元々の畑の特徴でもありますが、他の畑と比べた時突出した若々しさだと感じました。
それに対してちょっと弱さが目立ったのはマジシャンベルタンとシャルムシャンベルタン。ロッシュの若々しさが特別なのかもしれませんが、共に既に若干熟成感が出ています。経過年数を考えると熟成の進みはやや早めの印象です。
とはいえ、熟成したルソーのグランクリュが美味しくないかといえば絶対にそんなことは無く。
シャルムとマジに関しては丁度熟成し始めの豊かな旨味やイチジクや大地香、それと同時にベリー系フルーツの風味が感じられます。液面が落ち着くと蕩ける様な甘みも。
と、こういう書き方をすると全く同じに思われると思いますが、方向性は当然同じです。ただ構成する要素が細かく異なります。
まずどちらが上位かと問われれば間違いなくマジ シャンベルタンでしょうか。
サーヴ直後こそシャルムと比べてドライな印象を受けるのですが、徐々に現れピークに至った際の果実味の高さは本当に突出しています。また香りが非常に華やか。スミレの強い香りが液面を満たしています。
最初から芳香が素晴らしく、時間をおいて強い甘露さを放つ2009年ヴィンテージと比べるとやや落ちるのですが、十分に偉大なワインだと思います。
シャルムに関してはマジと比べると果実味は控えめで蜜の様な甘露さが感じられます。しかし熟成香とバランスが取れており、かなり複雑な香りを放っています。また茎やオレンジのニュアンスやがあり、冷ややかであると共に、清涼感も感じられます。
この4本で言うと最もパワー不足で、熟成も早く進んでいますが、決してバランスが悪いわけではありません。シャルムというテロワールに所以するものかもしれませんが...
そして最後は1級クロ サン ジャック。
いわずもがな、この4本の中では素晴らしい作りでした。ただ同時に個人的にはこの畑に期待する値が大きく、その期待値と比べるとやや平準的と感じました。
そもそも大変パワフルなワインを生み出す畑ですが、御多分に漏れず2004年も最も若々しく華やかで伸びやか。ついでにタンニンも酸もとても充実しています。マジと比べると甘露さは控えめで、未だ硬い印象を受けます。
ただ液面に満ちるエネルギー(抽出、凝縮度に起因するものでしょうか)は随一で、かつ伸びやかに花や柑橘系の香りが伸びて行く。ここからさらに熟成を経ることによって、より甘露さに溢れてくるのではないかと思います。
惑うことないヴァンドガルド。熟成方向を考慮すると、より素晴らしいワインに成長すると思います。
もっとも、現状ではクロ ド ラ ロッシュやマジシャンベルタンの方が飲んでいて心地の良いワインだと思いますが。
ちなみに2009年は当然ながら硬かったですが、ここまで頑ななわけでは無く、同様の質量、密度がありながら、もう少しキャッチーだったと思います。


ちなみに行政区分上はしっかりと分けられていますが、クロ ド ラ ロッシュはオーコンボットと隣接しておりラトリシエールシャンベルタンと近い性質を持っているのかな、と思います。
マジシャンベルタンはクロ ド ベーズ北側に隣接するグランクリュですね。序列でいうとシャンベルタンとクロ ド ベーズに次ぐ第三位とされている時が多いです。ジュラ紀中期のバトニアン地質(褐色石灰岩と粘土)で表土はやや厚め。ラヴォー渓谷とモレ渓谷の背斜面からの冷涼な風の影響を受けて硬質で骨格の強いワインになります。
クロ サン ジャックは白色泥炭質、茶色の粘土質、全体に小石が多い土壌、そして南東に向く急斜面。完璧な立地。
男性的で筋肉質でありながら華やかな雰囲気。
シャルムシャンベルタンはこれらと比べるとやや標高低めでなだらかな斜面に位置します。しかもマジシャンベルタンと同様、背斜面からの風の影響を受けるので、全体的に酒質の体躯は劣るのかな、と思います。

これらは一般的な特徴ですが、ルソーの各ワインを比較してみると、まさにこれらの特徴がしっかりと現れているのがわかります。
テロワールの再現という意味で、まさにジュヴレシャンベルタンを体現した生産者と言えると思います。

お家で比較テイスティング出来たら幸せだろうなあー!




【ブルゴーニュ:6】フーリエの絶妙な一級畑(シェルボード、コンブオーモワンヌ)を利く

こんにちは。
本日はジュヴレシャンベルタン、ドメーヌ フーリエの一級シェルボード、コンブ オー モワンヌの2本です。

フーリエはブルゴーニュでジュヴレシャンベルタンに拠点を置く生産者で、非常に手に入りにくいドメーヌのひとつです。価格は高騰しているとはいえ、品質を考慮するとまだ良心的な生産者とも言えます。特にフラッグシップの一級クロ サン ジャック、そして特級グリオットシャンベルタンは毎年争奪戦です。僕の知ってる酒屋でもグリオットは辛うじて一本。なんて厳しい...!
リュットレゾネで自然のまま栽培、摘房はせず摘芽で収量制限を行い、厳重に選果を行った葡萄を100%除梗、この手の生産者では珍しい20%の新樽比率で18ヶ月熟成させます。そしてノンフィルター、ノンコラージュで瓶詰め。いかに自然な果実の風味を大切にしているかわかります。
そんなこだわりのフーリエの2つの一級畑を利いてみました。



生産者: フーリエ
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン プルミエクリュ コンブ オー モワンヌ 2007

12000円、WA90pt
浮遊物のある、やや赤みの強いルビーで、粘性は高い。
しっかりとしたミネラル感。
強すぎない均整の取れたワッフルや焼き栗などの樽のニュアンス、アニスのスパイシーさ。デーツ、チェリーリキュールの様な澄んだ甘やかさ、スミレのシロップ漬けの様な甘露な風味を感じる。わずかに五香粉などのニュアンスも。
鉄分や燻製肉。ドライハーブや紅茶、茎、グローヴ、タイムなどのニュアンスも。しっかりした骨格で複雑だ。
タンニンは柔らかいが、酸はとても充実している。瑞々しく澄んだ高密度の果実味。ダークチェリーなど果実味、そして綺麗な旨味も感じられるアフター。煌びやかで密度の高いワイン。2010年のルーミエのスタイルと少し似ている。ジュヴレシャンベルタンとしてはミネラリーで澄んでいる。(2010ルーミエはシャンボールとしては濃いと思う。)


生産者: フーリエ
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン プルミエクリュ シェルボード 2000

約30,000円、WA92-94pt(2002)
外観は透明度の高い淡いルビー、粘性は高い。
若いヴィンテージほどではないにせよ非常に甘やかな香りを放つ。
フーリエのワインはこういったキャッチーさがありつつ、複雑で幾らでも深入りできるのがいい。
アニスやバニラ、濃厚なシロップの様なスパイシーさを伴なう甘露さ。ミルクティーの様なまろやかさ。
そしてやや熟成を帯びた梅しば、ダークチェリーの引き締まった果実味が中心に感じられる。
周辺を固める様に華やかなスミレや、濡れた樹皮、若い葉、トリュフなどの大地香。イーストや燻製肉などの風味も。
酸味とタンニンは柔らかく綺麗な印象。
口に含むと塩っぽい出汁や梅しばの奇麗な旨味が感じられる。しっかりとした熟成感があるが、若干樽がまで少し強めか。
バニラ香と梅しばのアフター。シルキー。優しい土の香りが感じられる。素晴らしい。


やはりフーリエは最高だ。
熟成させても良し、若い時分に飲んでもよし。どれを飲んでも様々な顔を見せてくれる。無理に若作りするわけでもなく、無理に背伸びするわけでは無い。
という訳で比較的若めのフーリエです。
以前1980グリオットシャンベルタン、2010クロ サン ジャック、コンブ オー モワンヌ、シェルボードを頂きましたが今回はその間を埋める形の2本です。
まず概ねその特徴としてはジュヴレシャンベルタンとしては澄んだ味わいと噛む様な密度の高い果実味が特徴だと思います。(濃い訳ではなく、目が細かく高密度)、ジョルジュルーミエ的なスタイルだと思います。その中で熟成を経ていくとどうなるか、という所。
まず10年くらいなら果実味が全く衰えない。これはメオ カミュゼのリシュブールにも言えるのですが、2000年のシェルボードは一級畑としては格下の位置付けではあるものの、依然強い果実味を残しています。若い頃に目立った果皮の華やかな風味と綺麗な酸味は熟成によってかなり落ち着いている...というか熟成香に転化しています。そもそも控えめだった樽も完全に溶け込んでいます。
その中で瑞々しく太い果実味が際立っていて、風味としては若いヴィンテージと比較するとかなり丸みを帯びた印象に感じました。それでいて口当たりは1980年のグリオットシャンベルタンに見られた梅しばの様な凝縮した旨味も感じられます。非常に複雑な状態になっていますので、グリオットの様な澄み切った旨味、という訳ではないですが、いい具合に果実味、熟成香、旨味のバランスが取れた味わいだと思います。
2007年のコンブオーモワンヌは2010年とさほど大きな差異は感じられませんでした。しかしながら若干の熟成によるものか、もしくは単純にヴィンテージの差かは分かりませんが、2010年は2007年と比べて、より高密度で果実味と樽も強め。酸に関してはやや控えめだと思います。対して2007年はやや酸が強く、ミネラルがしっかりと感じられる。清涼感のある作りだと思います。ただ共通して瑞々しくもしっかりとした果実味を感じられる良い作りです。


ちなみにシェルボードとコンブ オー モワンヌの位置関係はこんな感じ。
コンブオーモワンヌはラヴォー丘陵、カズティエの隣に位置する畑でクロ サン ジャック、ラヴォー サン ジャック、カズティエに比べて真東に向いています。背斜面からの風も受けにくい場所なので、基本的にはふくよかな体躯になるのでは、と思います。
シェルボードはシャペルシャンベルタンに隣接する一級畑でこちらも風の影響は受けにくい立地で、標高としても低めに位置します。
どちらの方が優れているかといったら、土地的にはそうでもないと思うのですが、一般的な話とフーリエとしての位置付けとしてはコンブオーモワンヌが上位になる場合が多いです。

今回ヴィンテージが7年差あり、テロワールというより熟成による変化が大きく出てますんで、あまりここは気にするべき部分ではないかと思いますが。

2010年を例にとってみると、華やかなシェルボード、豪華なコンブオーモワンヌという印象でしたが、熟成期間による影響もあり、より極端にそれらの特徴が出ていたと思います。


【ブルゴーニュ:5】1921年、リシュブールの古酒

こんにちわ。
今日は本日はちょっと特殊なワインです。生産者不明、とあるネゴシアンがボトリングしたリシュブール。
私の良く行くお店でたまたま出ていて(都内のワイン愛好家にはとても有名なあそこですね)興味本位で飲んでみました。

生産者がわからないので製法も誰の葡萄から買い取ったものかはわかりません。現在の所有者は11名ですが、既に生産から90年近く経過しておりますので、予測もつかないです。恐らくは4世代くらいは最低でも分割統合されているとは思うのですが。ただブルゴーニュに燦然と輝く卓抜したテロワールを持つ特級畑ですから期待も高まるというものです。

さて、どうでしょうか。


生産者: 不明(ネゴシアン)
銘柄: リシュブール グランクリュ 1921

約265,000円
素性不明の謎のリシュブール。
1921年のラベルとともに今のブルゴーニュのなで肩ボトルとは一風違ったオーラを感じさせる一品。
外観はかなり橙を帯びたオレンジ、粘性は高い。
当然ながらかなり熟成は進んでいる。しかしながら密度の薄い抜けた味わいではなく、しっかりとした旨味がそこに存在している。
まずリコリスや消毒液、塩を降ったナッツ、強いドライシェリー。黒オリーブ、梅などの果実味が主体的だ。
そして濡れた木材、腐葉土、鉄観音、燻製などの熟成香、そしてドライフラワーの香り。
かなり塩辛く、しっかりした出汁の旨味が現れている。
特段美味いとは思わないが、他の若いヴィンテージワインと比べると、凄まじい深みがあり、極端に複雑な香りを放っている。
未だ酸味は生きており、旨味と共に口内にじわりと広がる。一言で言い表すのであれば、とても滋味深い。
紅茶、枯れ草のアフター。とても貴重な経験となった1本。


1921年、92年前のピノノワールです。
凄いですね。生まれてないどころのレベルでは無いです、逆にこの生まれ年の存命の方はそう多くないのではないでしょうか。
そんな訳で、こんな古いブルゴーニュ...しかもリシュブールを飲めるなんて思いませんでした。私や母親、祖母ですら見たことのない風景をこのワインは知っている、そう考えると、とても厳かで感動的なワインに思えます。
味わい如何より飲む事自体に意義がある。そんなワインでした。

まあ言うてもですね。
このブログはそんなロマンを語るブログでもないので、味にもボチボチ追って行こうと思います。
で、肝心の味といえば...個人的には「??」という感じです。まあ、当たり前っちゃ当たり前ですね。
ただなんというか、深さというか、滋味深さみたいなのを強く感じました。タンニンや酸は全て溶け込んで、旨味だけになった液体。若干フェノール系の香りも感じられましたが、何かこの際どうでもいい様な気がします。なにせ古いので。
さすがに果実味はとうに朽ちていて、シェリーや大地の香りがする旨味エキス、と言った感じ。
ただ恐ろしいのはスカスカの水っぽい感じではなくって、ちゃんと密度があるっていう。梅干しや沢庵の汁を思いっきり複雑にしたような液体。
さほど美味しいとは思わないんだけど、もうこれは美味い不味いを超越していると。ただ偉大なグラスだと思いました。

ちなみに特にリシュブールのテロワールが云々ってのはないです。他の畑の同一ヴィンテージ飲んだ事ないし。ただリシュブールだからこそ、未だ力が残っているというのはあるかもしれませんね。
とてもいい経験にはなりました。
熟成を重ねていくとこういう風になるんだなー。すげえ。

【ブルゴーニュ:4】DRC、ロマネ サン ヴィヴァン 2009、そして1989。熟成を比較分析する。



こんにちわ。
本日は昨日に引き続き、ブルゴーニュ特集でございます。
ちなみにしばらく続きますのでぜひよろしくお願いいたします。
気分によって、たまにほかの地域のものに混ぜるかもしれません。

さてDRCは言わずとも知れたブルゴーニュに置けるトップドメーヌであり、燦然と輝く最高のグランクリュ、ロマネコンティを所有する唯一のドメーヌでもあります。
その歴史は一冊本が出来るくらいなので割愛しますが、どのワインも異常に品質が高く、そしてお値段も高い事で有名ですね。現在の共同経営者はA.P.ヴィレーヌとアンリ フレデリック ロックの2名です。以前はラルー ビーズ ルロワが参画していました。保有する畑は特級エシェゾー、特級グランエシェゾー、特級ロマネサンヴィヴァン、特級リシュブール、特級ラターシュ、特級モンラッシェ、そして特級ロマネコンティです。2009年からは新たに特級コルトンをリリースしています。また各特級の若木を使った1級デュヴォープロシェなんてのもあります。
ヴォーヌロマネの特級およびモンラッシェではいずれも区画最大所有者となっています。
ちなみに自社で瓶詰めはされませんがバタールモンラッシェと一部ヴォーヌロマネの1級畑も保有しています。
基本的にビオディナミで栽培を行い馬を使って耕作をします。除梗はせず長い期間を32度から33度のマセラシオンを行ない、新樽100%で熟成を行います。清澄は卵白を使用して行います。
今回はそのポートフォリオの中でも比較的上位に位置するグランクリュ、ロマネ サン ヴィヴァンの2009年ヴィンテージと1989年ヴィンテージを比較します。


生産者: ドメーヌ ド ラ ロマネコンティ
銘柄: ロマネ サン ヴィヴァン グランクリュ 2009

263000円、WA94-97pt
色調はやや赤みの強いルビー、粘性は高い。
サーヴ直後から凄まじい芳香。
強烈な凝縮感、実体がすぐそこにある様な花と果実の香り、強靭なミネラル感。別格感が漂う。
とても官能的な薔薇やスミレの華やかさ、そしてダークチェリーやフランボワーズ、オレンジの凝縮感のある果実味。ユーカリ、グローヴ、森の下草、紅茶の自然の香り。胡椒のスパイシーな香り。強烈ななめし革や生肉。
ドライハーブ、トリュフ、わずかにシロップの甘さを感じさせる。
硬い、開く気配なし。
しかしながら凄く目の詰まった凄まじいくらいの凝縮感、雑味が無く、びっくりするほど澄んだ液体。
恐ろしく優美で複雑な世界観。抜群に酸味もタンニンも柔らかで滑らか。
しかしながらその液体密度は群を抜いている。アタックは複雑で茎や果実や様々な要素が渾然一体となって芳香する。
ややドライだがとても澄んだ味わい。最後に少しだけその美しい横顔くらいは見えたかな。
澄んだ果実味、渾然一体となった自然の要素。綺麗な旨味。固さを感じるものの、さすがの完成度を感じた。


生産者: ドメーヌ ド ラ ロマネコンティ
銘柄: ロマネ サン ヴィヴァン グランクリュ 1989

約236,000円、WA92pt(1990)
外観は橙を帯びたルビー、粘性は高い。
前回頂いた1972年のDRC エシェゾーと同様の味わい。焼いた帆立の塩っ気のある出汁の風味が強い。
今回も熟成が足りないのかと諦めかけたが、見事数十分で開き始めた。
DRCらしい非常に澄み切った味わいで強い芳香を放ち始める。
シロップに漬け込んだ薔薇やスミレの香り(ドライフラワー?)、そして高密度に凝縮されたダークチェリーや紫スモモの果実味。ドライハーブ、タイム、茎、ミントの清涼感を強く感じさせるニュアンス。
そして熟成に由縁する濡れた木材の大地香や燻製肉、梅昆布茶など。
非常にエロティックで妖艶で華やかな芳香。
アタックは滑らかでシルキー。酸味はしっかりと存在するけれど、同時に強烈な旨味を放っておりスープの様な濃縮感がある。
旨味成分の固まり。シロップ漬けの花や梅しばの綺麗な旨味のアフターが長く続いていく。
しなやかで素晴らしいロマネサンヴィヴァン。突出している。流石DRC。


今回の2009年ヴィンテージは全然開いていない状態でした、当然ですが。
しかしながらDRCらしい透明感のある複雑な風味はしっかりと感じられて、バランス維持が難しい全房発酵で見事に果実味と梗のスパイシーな風味の均整が取れている。
アタックは羽のように柔らかだが、液体密度や凝縮度は非常に高い。とても目が詰まっている。
あと数年でジャムのような果実味が溢れる様になるはず。例えば2004年のヴィンテージの様な。
さすがに芳香性は高い。ただ現段階でルーミエやフーリエ、アルマンルソー程の高密度の芳香は感じられない。
しかし時間経過による香りに落ち込みはほとんどなく、その強度は非常に高い事がよくわかる。
これからの熟成にとても期待できるサンヴィヴァンだと思った。
次に89年のサン ヴィヴァンは、どちらかというと以前飲んだ70年代エシェゾーと比較するべき代物。
エシェゾーは焼いたホタテの風味から開くことはなかったが(開くというか、果実味が現れなかった)サンヴィヴァンは数十分で綺麗に開き始めた。熟成香が主体でありながら、ドライハーブや薔薇、スミレなどの芳香が強く感じられた。
同じ古酒とはいえ、単純に89年と72年とだとかなり年代に差があります。
エシェゾーは熟成が進みすぎたため、上記の要素がなくなっていたのではないかな、と思います。
当然方向性は同じ。熟成香の出方や強さは同等だと思いますので、単純にエシェゾーは果実味が落ち切ってしまっている。そういう意味だと89年のサンヴィヴァンはなかなか良かったのではないかと。
若いヴィンテージとだとあまりに違いすぎて分かりにくいですが、基本的には要素はそのままで透明感や清涼感を失う代わりに熟成香と旨味が前に出ている様に思いました。
ちなみにDRCの保有している区画はロマネコンティ下部ではなく、リシュブールの下部にあるようです。
樹齢は15年から50年。収量は35hl/haとのこと。これが黄金比なのでしょうか。
みる限りだと収量は十分落としているという風に思いますが、樹齢はローヌを見るともう少しあってもいいのでは・・・?と思ってしまいます。ただこの味わいを出すにはこれくらいがちょうどいいんですかね。
高樹齢で収量を20hl/haまで落としたら、それはそれで何か別のワインになってしまいそうな気がしますね。
澄んだ透明感のある味わいを出すには実はこれが黄金比なのかもしれません。
凄まじい存在感を感じられたDRCのサンヴィヴァンの垂直でした。


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価格:136,500円(税込、送料別)

【ブルゴーニュ:3】エマニュエル ルジェ、2010年ヴィンテージ4種を検証する

こんにちは。
本日は昨日に引き続きブルゴーニュ アンリの弟子特集。エマニュエル ルジェ5種でございます。

エマニュエル ルジェはヴォーヌロマネに拠点を置くスター生産者で最もアンリジャイエに近い生産者と言えるでしょう。ルーミエやフーリエの様に争奪戦が起こる訳ではないものの、ヴォーヌロマネ最上の生産者である事は間違いないでしょう。
ヴァンダンジュヴェールトによる収量制限、除梗は100%、コンクリートタンクでのマセラシオンには自然酵母の使用し、約1週間の低温浸漬。新樽比率は1級以上は100%で村名は50%、 無濾過、無清澄で瓶詰めされる。※栽培は完全なビオや有機農法では無いようです。
クラシックな造りですが、彼の手から作り出されるワインはエシェゾーは勿論サヴィニー レ ボーヌまで息をのむ程に素晴らしい。
フラッグシップは一級レ ボーモン、特級エシェゾー。そしてアンリジャイエから引き継いだ一級 クロ パラントゥ。


今回はブルゴーニュアリゴテから2種の村名、特級エシェゾーのルジェラベル、ジョルジュジャイエラベルの合計5種。最下級からの水平からルジェのスタイルを感じ取ってみたいと思います。
ちなみに今回ジョルジュジャイエのエシェゾーも入っていますが、これはジョルジュジャイエの畑を使用しているだけで、栽培から瓶詰まですべてエマニュエルルジェが行っています。つまりルジェのワインです。
過去、ジョルジュ畑はアンリジャイエが作っていましたが、代替わりでこの畑もルジェが作る事になっています。
ここらへんはとても微細な違いになるかな、と思ったのですが意外と大きな差異がありました。

また超どうでもいいですが、私はこの生産者の大ファンで(何回も書いていますが)非常に楽しくいただく事ができました。
ああもう、超官能的ですね...!最高...!


生産者: エマニュエル ルジェ
銘柄: ブルゴーニュ アリゴテ 2010

3100円
外観は淡いストローイエローで粘性は高い。
酸味とミネラルに満ちた清涼感のある味わい。とても軽妙で清涼感のある香りで、ボーヌのシャルドネの様な濃厚さは無い。
ライムや青リンゴの様な清涼感のある果実味。そして白い花やハチミツ、ムスク、フレッシュハーブなどの溌剌とした風味が強く感じられる。
アタックは甘露、ふくよかなリンゴのニュアンス。甘酸っぱい、心地よい酸味が感じられる。
キリッとした印象でありながら口当たりに甘みがある。香りや酸味はシャープなのに、口当たりに豊満な味わいが感じられる。


生産者: エマニュエル ルジェ
銘柄: ニュイ サン ジョルジュ 2010

約13000円、WA89-90pt(2009)
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
まず村名にして、これだけの煌びやかさや華やかさがあるのに驚いてしまう。そういえば、最初にルジェのワインを飲んだ時も同じ部分で驚いたような気がする。
とても華やかで甘露。そして煌びやか。村名ヴォーヌロマネと比べると、重心が低めで太い味わい。ややタンニンと果皮の風味が強いからかもしれない。
コリアンダーや八角などのスパイシーな風味、ジャミーなダークチェリーやブルーベリーの凝縮した果実味、そして華やかな薔薇やスミレの強い香り。これらと均衡を取る様なシロップやワッフルなどの甘露さが中心にある。液体密度が高く、噛む様な厚みがあり、これらの要素を良いバランスでまとめ上げている。
そしね茎、若い葉、クローヴ、わずかに土っぽさ。
アタックは強い薔薇やスミレの華やかさとシロップや蜜の甘やかさ。タンニンと酸は生き生きとしているが、ボディに厚みがあり厳しさを感じる事は無い。非常に濃厚でありながら、透明感のある味わい。


生産者: エマニュエル ルジェ
銘柄: ヴォーヌ ロマネ 2010

約15000円、WA90-92pt(2009)
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
ニュイサンジョルジュも村名クラスを遥かに超える品質だったが、ヴォーヌロマネは更に凄い。
どちらが上という訳ではないのだけど、NSGと比べるとより果実に凝縮感、一塊感がある。
また酸のシャープさ、ミネラル感も突出している。スパイシーさはやや押さえ気味。
NSGにも増してスミレの華やかが強調されている。また硬水の様なミネラル感も強め。
ダークチェリー、ブルーベリーの凝縮した果実味とオレンジの酸味の強い果実味があり、非常に伸びやかで、細身な印象を受ける。
そしてミルクティーやシナモン、アニス。甘露なシロップやワッフルなどのニュアンスと共に、タイム、松の葉、茎、クローヴの複雑な風味も。控えめながら燻製肉の要素も感じられる。
香り同様アタックは酸、タンニン共に溌剌としている。
蜜やシロップの濃厚な味わいと綺麗なベリージャムの酸味が感じられる。
とても清涼感があり、柔らかでいて芯の通ったヴォーヌロマネ。


生産者: エマニュエル ルジェ
銘柄: エシェゾー グランクリュ 2010

約46000円、WA93-95pt
凄まじい芳香、これがエマニュエル ルジェのエシェゾー。いつだって感動してしまう。確かなミネラルと強烈な果実味と華やかさ。
しかしジョルジュ ジャイエ畑に比べると遥かに華やかで甘露な風味が漂う。こんなに違うとは...!
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
シナモンやシロップ、キャラメルなどの甘露な風味と、完熟したデーツやチェリーリキュールの果実味、スミレ、薔薇の華やかさ。村名と同様に伸びやかでありつつフワッと空間の広がりも感じる。そしてミルクティーの風味が主体となる。
なめし革、グローヴ、八角、白マッシュルーム。
凄まじくキラキラした味わい。蕩ける様に甘露で驚くくらい華やか。
口に含むとタンニン、酸味が溌剌としつつ、強烈なスミレと薔薇の華やかなニュアンスと完熟したダークチェリーの甘みと旨味が広がる。若くして驚異的なバランスを持ったエシェゾー。凄まじい美味さ。華やかさから甘みと旨味が押し寄せる感覚は途轍もない。
厚みというか凝集した味わいがある。余韻は長い。2009年よりバランスは良い様な気がする。


生産者: ジョルジュ ジャイエ(エマニュエル ルジェ)
銘柄: エシェゾー グランクリュ 2010

約28000円
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
ややジョルジュ畑の方が硬い印象、抽出とミネラルが強く、甘さは劣る。
思った以上にジョルジュジャイエ畑は伸びない。
清涼感のあるオレンジや、ダークチェリー、ブルーベリーの熟した果実味。徐々に甘露さが強くなってくる。ワッフルやシロップ、シナモンが徐々に香ってくる。遅咲き。ただしっかりとした甘露な味わいは感じる。
ミルクティー、ドライハーブ、なめし革、お香、グローヴ。
口に含むとややキツイ薔薇のニュアンスと、果実の酸味と旨味が綺麗に広がって行く。方向性は同じで華やかさの後に旨味と酸味が広がっていく。ただ若干酸味とキツ目の抽出も感じる。ただ突出したエシェゾーではある。甘やか。


いや、エマニュエル ルジェを飲むと、毎度の事ながら、凄い幸福感があります。最初に村名ニュイ サン ジョルジュを飲んだ時から「こりゃ只者じゃないぞ」と以来ずっとファンです。まあ、嫌いな人なんていないと思いますが。
さて、早速。
今回はブルゴーニュアリゴテ、そして村名2種類、エシェゾーですが、まずアリゴテから。
ローレンジのワインでありながら、非常に良く出来ています。
鋭い酸と清涼感が特徴のアリゴテですが、意外とふっくらとしている印象。確かに、酸味が豊かで青りんごや柑橘系のニュアンスがいかにもアリゴテなのですが、非常に甘露なシロップの様な果実味があって全体的に丸みを帯びた印象を受けます。ドライなタイプではありません。
同じアリゴテでもシャンパーニュのブラン ド ブランの様なポンソのモン リュイザンとはちょっと違いますね。
ポンソのモン リュイザンはもっと複雑ですが、硬質でドライです。
そういう意味でこのアリゴテはボディにおいてはシャルドネっぽいのかな、と思います。

そして本命の赤。
ニュイサンジョルジュとヴォーヌロマネの差はボディと香りの太さ、そして微妙に異なる香りの要素でした。
まず全体でいうと、こちらも
NSGは非常に力強いです。果皮の成分によるものなのかわかりませんが、かなり煌びやかで太い果実味が感じられます。ボディの重心が低いです。
対してヴォーヌロマネは同じ質量を縦に伸ばした感じで、煌びやかさと酸、そして華やかさが突出しています。果皮の成分自体は同じくらいなのではないかとも思うのですが、重心が低いNSGに対してヴォーヌロマネは伸びやかで澄んだ高域に伸びるワインだと思います。
適切な分析はできないのですが、ヴォーヌロマネの華やかさはその強いミネラル感と酸味の強い果実味に支えられているのではないかと思います。
ミネラル、酸味、瑞々しい果実味、そしてその構成要素のスミレやアニスが渾然一体となって「伸びやかなヴォーヌロマネ」を象っていると。
対してニュイサンジョルジュはジャミーな果実味とミネラル、充実したタンニン、スパイシーな要素によって「力強いパワフルなニュイサンジョルジュ」が表現されているのでは、と思います。

そして大本命エシェゾー。これは本当に凄い。メチャクチャ濃密で甘露で官能的な味わい。伸びやかなヴォーヌロマネを更に順当に深化させた感じ。綺麗に一本筋が通った味わいは村名と方向性は変わらないけれども、その中に膨らみのある華やかさと確かな果実味の力強さがあるという。高域に伸びていきながら、広く拡散していく味わい。そしてシロップやキャラメルのような甘みが濃縮されている。
香りも驚くべき部分はたくさんあるんだけど、何より口に含んだ時のバランス感が凄い。綺麗なベリー系の酸味が旨味とシナモンやキャラメルなどの甘みを伴って広がっていく。焼いた肉を食べた時に肉汁が広がる、あの感覚。
しっかりした甘みや果実味があるんだけど、決して重さやベトつきはなくて、芯の通った極めてピュアな味わい。
対してジョルジュジャイエ畑はルジェのワインと比べると若干見劣りしてしまいます。
ルジェと比べるとミネラルに覆われており若干果実味と甘みが足りていない感じ。だから硬く感じる。徐々に時間を置くと綺麗に解けてくるんだけど、一歩ルジェのワインに届かない物足りなさを感じる。果実の凝縮度や集中力はほぼ変わらないんだけど、外に広がっていかない。
かなり勿体無いエシェゾーだと思います。ただ凡百のエシェゾーと比べると突出したエシェゾーではあると思います。明らかに手を抜いているのか...それとも畑に起因するものなのか...
ちょっとそこんとこ不明ですが、2回このヴィンテージのジョルジュとルジェを飲み比べてみて同じ感想が出るんだから間違いあるめえ。
ただ価格差を考えるとなんとなく仕方ないのかな?とも思います。

いや、とはいえ凄いテイスティング体験でした。やっぱりルジェは最高だ!





エマニュエル・ルジェ[2010] エシェゾー 750ml

エマニュエル・ルジェ[2010] エシェゾー 750ml
価格:69,000円(税込、送料別)


【ブルゴーニュ:2】メオカミュゼ、最上の2つの特級畑を利く

こんにちわ。
今日と明日はアンリの弟子特集。
本日はメオカミュゼの特級、クロ ヴージョ、そしてリシュブールの2本です。
明日はもちろんあれです。

メオカミュゼはヴォーヌロマネに拠点を置く大手ドメーヌで、一時コンサルタントとして、分益耕作人としてアンリジャイエがいた事でも有名です。
1985年からアンリ ジャイエの指導を受けた現当主ジャン ニコラ メオがドメーヌの指揮を取っています。醸造責任者はクリスチャン フロワが担当しています。
グランクリュとプルミエクリュを複数持つドメーヌ部門と拠点外の村名やプルミエクリュを生産するネゴシアン部門がありますが、今回はドメーヌものの方です。減農薬農法、夏季剪定や除葉によって葡萄の腐敗を防止し、健全な葡萄を手摘みで収穫します。厳しい選果した葡萄はほぼ100%除梗。コンクリートタンクでのマセラシオン ア フロワ。新樽率は特級と1級は100%、その他は約50%で18か月間熟成。ノンフィルターで瓶詰されます。新樽率はやや高めです。
メオカミュゼの不思議な序列は以下の通り。

1: リシュブール グランクリュ
2: プルミエクリュ クロ パラントゥー
3: プルミエクリュ オー ブリュレ
4: クロ ヴージョ グランクリュ or コルトン ロニェ グランクリュ
5: エシェゾー グランクリュ

前回はメオの序列2位と3位をやりましたので、今回は1位と4位を。

ではいってみましょう。


生産者: メオ カミュゼ
銘柄: クロ ヴージョ グランクリュ 2001

24000円、WA91-93pt
外観は淡いルビーで、粘性は高い。
こちらもとても綺麗に熟成している。
すごく華やかで清涼感のある香り。
華やかな薔薇やスミレのドライフラワー。ドライイチジクやブルーベリー、オレンジの濃厚な果実味。
茎や若い葉、森の下草、ドライハーブなどの野生的な香り。生肉や燻製肉の熟成香。樹脂、グローヴ、タイム。徐々にキャラメルなどの甘やかなニュアンスも。
非常に力強く複雑な要素が芳香する。パワフルでエレガント、そして清涼感のある味わい。
タンニンは柔らかく酸も穏やかで、均整の取れた華やかな熟成クロ ヴージョ。


生産者: メオ カミュゼ
銘柄: リシュブール グランクリュ 1988

約300,000円、WA97pt(Clos Parantoux)
外観は橙を帯びたオレンジ。粘性は高い。
サーヴ直後は塩っぽい焼いた帆立の風味が支配的。非常に硬く目を覚ます様子が見られない。
徐々に開いていくが、最後まで旨味が凝縮された出汁の様な味わいが続いて行く。
炭焼きや炒ったカカオ。出汁、そして黒胡椒、クローヴ、甘草のスパイシーな風味。
トリュフや濡れた樹皮や土などの大地香。そしてチェリーリキュール、紫スモモの力強い厚みのある果実味。
燻製した肉の香りが強く感じられる。こちらもルーミエのボンヌマール同様凄まじいポテンシャルを包含している。
タンニンこそ柔らかいが酸味は非常に強い。強烈な旨味成分。それから想起させられる果実の凝縮感。
梅しばや出汁が奇麗に余韻に乗ってくる。とても重厚で濃厚なリシュブール。
こちらもルーミエのボンヌマール同様、もう少し熟成が必要と思う。


今回の2種類は熟成したクロ ヴージョ、そしてリシュブールという最高のメオカミュゼの特級畑。先日飲んだクロ パラントゥ、オーブリュレが些か樽のコーヒー香が強すぎるきらいがあったものの、この2種類はその部分に関してはかなり落ち着いている。
まず2000年のクロ ヴージョは熟成香と果実味の均衡がとても良く取れています。薔薇やスミレなどの華やかな香りとオレンジ、ブルーベリーなどの果実味に熟成に起因する生肉や腐葉土の風味が乗ってくる感じ。そして徐々にキャラメルの甘露さが漂ってくる。
果実味が十分に残存している状態での最も良い飲み頃ではないかと思います。
対してリシュブールはやや閉じこもっている様に感じました。時期的には丁度飲み頃なんだけど、もう少し熟成を経る必要があると思う。
甘い果実味は前に出ておらず現段階では濃厚な魚介スープになっていた。ほのかにチェリーリキュールや紫スモモの果実味は残っているものの、あくまで主体は熟成香。旨味の塊になっている。熟成途中で様々な要素が混在していて、際立って複雑ではあるものの、味わいとしては意外と澄んでいる。不思議。
個人的にはここはさらに熟成を経る事で良くなるのではないかと思う。
2010年のクロ パラントゥーおよびオーブリュレ、2001年のクロ ヴージョ、1988年のリシュブール。
これらを考慮した時、一番際立った変化は新樽のニュアンスだろうか。
クロ パラントゥとオーブリュレはかなり強くローストされた新樽の香りが際立っていたが、クロ ヴージョはロースト香はスーボワや濡れた樹皮となり、その分内包している果実味が前に出ている。リシュブールは大地香に加えてさらにトリュフなどの風味も現れている。ただ、その分フレッシュな果実味は奥に引っ込んでいる。
テロワール毎の違いは今回のテイスティングではちょっと不明だったが、未だ酸と凝縮感を強く残すリシュブールのヴォーヌロマネ的な官能性はクロヴージョには無いものだった。

最初に書いた様にメオカミュゼのグランヴァンはとてもその真価が現れるまで非常に時間がかかる。先日飲んだクロ パラントゥやオーブリュレなどの特級クラスの卓抜した1級もあと10年もすれば最初の飲み頃を迎えるのではないだろうか。
意外と値段を考えると、すぐに飲むのならネゴスかな、という気がする。それでも高いが。ただ熟成したグランクリュは流石だと言わざるを得ない。


【ブルゴーニュ:1】鮮烈なるエシェゾー。高密度のエシェゾーを醸す2生産者

こんばんわ。
さて、久々にブルゴーニュです。
このブログでブルゴーニュが無いなんて...と思われた皆様大変お待たせいたしました。(本人的には本気ですが)眉唾情報ブルゴーニュエントリーでございます。

今回はブルゴーニュはジャイエジル、リュシアン ル モワンヌのエシェゾーです。

ジャイエ ジルはアンリジャイエの従兄弟のドメーヌ。現当主の父であるロベールはDRCに従事し、ジャイエの後を次ぎ、ジャイエジルを立ち上げています。
今回のエシェゾー デュ ドスュはエシェゾー上部の小区画。植わっているピノノワールは樹齢60年。
通常より遅摘みを行うことで糖度の高い葡萄を収穫します。収穫後、除梗はせず、セメントタンクで5、6日の低温浸漬を経て高温でアルコール発酵を行います。
ピジャージュは1日2回程度。新樽100%で18ヶ月熟成を行い、無濾過、無清澄で瓶詰めされます。
フラッグシップはエシェゾー デュ ドスュ。その他は村名と広域名のキュヴェを醸しています。

リュシアン ル モワンヌは、1999年に立ち上げられた名だたる1級特級のみを瓶詰めする新進気鋭のネゴシアンです。
年間生産量は100樽以下。発酵後のワインを買い付けて瓶詰めするが、このネゴシアンの最も卓抜したところは、優れた生産者を見抜く力と、購入したバルクワインに適した樽を仕付けるセンス。
購入したワインは(当然バルクで買ったワインなので)徐梗されているもの、されていないものにバラツキがあるが、そのスタイルにあわせてシャサン社と連携を取りながら100%新樽で熟成、マロラクティック発酵を行っていく。
その評価はかなりのもので、もともとのワインの品質の良さと樽熟成の巧みさが非常に高く評価されています。
フラッグシップは白はモンラッシェ、赤はシャンベルタン クロ ド ベーズ。


生産者: ジャイエ ジル
銘柄: エシェゾー デュ ドスュ グランクリュ 2010

21000円、WA92-94pt(2009)
色調はより赤みの強いルビー、粘性は高い。
甘露で強靭なバネを持つパワフルなエシェゾー。
強烈なスミレのニュアンスと、甘露なアニス、カラメル、シナモン、徐々にクリームブリュレの様な風味も現れる。ダークチェリーやラズベリーを煮詰めたジャムの様な果実味。
トリュフやタイム。煮た小豆。わずかにスモーキーでパストラミハムなどのニュアンス。紅茶、リコリス。焼いたゴムなどの風味も。
とても甘露で柔らかい印象だが、やはりヴォーヌロマネに共通する緊張感のあるミネラルが漲っている。
酸はかなり強めでタンニンも比較的強く、パワフルで強固な体躯をしている。酸味の強いクランベリーのアフターが極めて長く続く。梅しばの様な極めて綺麗な旨味もある。まるで濃厚なフルーツチーズケーキを口に含んでいる様だ。
素晴らしい。


生産者: リュシアン ル モワンヌ
銘柄: エシェゾー グランクリュ 2010

25200円、WA92-95pt(2009)
強烈なスパイス。
色調は赤みの強いルビーで、粘性は高い。
こちらも豊満なエシェゾーだが、樽のニュアンスがやや強めに出ており、謎めいた官能的な印象を醸し出している。しかしエシェゾーらしい伸びやかな印象があり、そのミネラル感も十分に感じられる。
五香粉やコーヒー豆のロースト香。そしてダークチェリーやブルーベリー、オレンジなどのヴォーヌロマネらしい煌びやかな果実味。華やかな薔薇やスミレの香りも。基本的にはロースト香と抽出はやや強めに感じる。徐々にシナモンやシロップやベリージャムを掛けたワッフルなどの甘露さが現れる。
そしてフレッシュハーブ、なめし革、ヒノキ、森の下草、トリュフ、メントール、タイムなどの細やかなニュアンスも。
タンニンはあまり強くないが酸がとにかく際立っている。綺麗に伸びていく酸で凄まじく液体密度が高い。イチゴの様なアフターが長く続く。


まず、ジャイエジルのエシェゾーとリュシアンのエシェゾーの違いは樽にあると感じました。
リュシアンの方が樽が強くローストした風味が前に出ており、対してジャイエジルは果実味を強く前に押し出されていると思います。
しかしリュシアンは樽こそ強いものの、エシェゾーらしい果実の伸びやかさやミネラル、華やかさはしっかりと表現されていて、なおかつリュシアンらしいシナモンやシロップ、ベリーのジャムの甘露な風味が現れています。そういう意味ではテロワールを尊重したワイン作りがなされていると。
ジャイエジルは取りつく島の無い2009年のエシェゾーとは異なり2010年は幾分かはキャッチーで濃厚な作り。
クレームブリュレやカラメルの甘露な風味とスミレの華やかな風味、ジャムの様なベリーのニュアンスが前に出ています。とても非常に良くできたエシェゾーではあるものの、エシェゾーらしい伸びやかさ、華やかさにおいてはリュシアンの方が忠実にテロワールを再現していると感じました。豊満で濃厚な印象が中心で、酸は強いがシャープさがあまり見られない印象です。ともすれば鈍重にも感じますが、ボディの強度はなかなかのもので、時間が経過してもへこたれない。
比較でいうのならリュシアンの方がテロワールの再現度や樽、果実味ミネラルのバランスは上。
ただ若干まだ樽が強いのでもう少し熟成すると良い感じになるかもしれない。
ジャイエジルのエシェゾーはミネラル、酸はしっかりと存在するものの突出して果実味が際立っています。若干パワフルになりすぎてエシェゾーらしさは感じませんが、ブルゴーニュのピノノワールとしてはとても良い出来だと思います。
共に新樽100%という共通点はありますが、ここで決定的に異なるのはリュシアンはしっかりと樽をローストしている点と、ジャイエ ジルはやや遅摘みである点が差異を生み出している原因だと思います。
リュシアンは明らかにローストしたニュアンスが強いのと、ジャイエ ジルはかなり糖度が高い、果実味が強い部分が主軸になっている。これらは共に製法に由縁する相違だと思います。

いずれにせよ両方ともとてもよくできたエシェゾーだと思います。
特にジャイエ ジルはいささか固さが目立った2009年と比較するといい意味で軟化し、より近づきやすい味わいを保っていると感じました。
ちょっとお高いですが、試してみる価値は十分にあると思います。


【ローヌ:1】区画名付きエルミタージュ、シャプティエとジャブレの絶妙シラー



こんにちは。
今日はローヌはタン エルミタージュでございます。
念願のシャプティエのセレクションパーセレール2種類と、ポール ジャブレ エネのラ シャペル。

同じ北部のシラー主体のワインとしてコート ロティと並び立つエルミタージュ。この恵まれたテロワールから生み出されるすばらしい区画名ワイン。
どんな感じでしょうか。

Mシャプティエは1808年にタン エルミタージュに設立された老舗ドメーヌ。点字ラベルで有名なこの生産者は、コート デュ ローヌなどのデイリーラインに力を入れる一方で、ローヌ随一のフラッグシップラインも手がけています。
それが「セレクション パーセレール」。単一畑区画名入りのエルミタージュで畑の個性を強く押し出したスタイル。現在は「パヴィヨン」「レルミット」「メアル」「ロレ」「グレフェ」などの合計14の畑がリリースされています。今回はパヴィヨン ルージュとロレ ブランの2本です。
共に完全なビオディナミによって栽培がなされています。
パヴィヨンは樹齢70-140年のシラーの古木を使用し、手摘みにて収穫した葡萄は木製開放桶で野生酵母でアルコール発酵。毎日1-2回程度ピジャージュを行います。発酵温度は20-32度とやや高めで、キュヴェゾンは3-4週間。新樽100%で20ヶ月の熟成を行った後、無濾過、無清澄で瓶詰め。
ロレ ブランはビオディナミで栽培したマルサンヌを手摘みしフレンチオークとステンレスタンクで30日間17度で発酵。 フレンチオークの新樽30%、ステンレスタンク70%でMLFを行いながら16ヶ月間熟成の後無濾過、無清澄で瓶詰めされる。

ポールジャブレは1834年にエルミタージュに設立されました。
北部南部ローヌ一帯に自社畑を保有し、
シャペルはエルミタージュ最高の畑べサールに加えてグレフェ、メール、ロクールのアッセンブラージュ。
平均樹齢40年、平均収量10-18hl/ha。
除草材畑を使用せずキャノピーマネージメントを行いながら、全て手作業での栽培が行われています。
収穫した葡萄は丁寧に選果され、低温浸漬の後、セメントタンクでアルコール発酵。オークの旧樽で12-25ヶ月熟成を経て瓶詰めされます。


さて、行ってみましょう。


生産者: ポール ジャブレ エネ
銘柄: エルミタージュ ラ シャペル 2000
品種: シラー100%

14000円、WA86pt
外観は薄目のガーネット、粘性は高い。
ヴィンテージにしてはかなり熟成感を帯びている様に感じる。
ドライイチジクやブルーベリーの果実味、そして生肉や、ドライフラワー、黒胡椒など。熟成したソースの様な濃厚な風味が現れる。非常にスパイシー。
そしてこちらも華やかな花の香りが強く感じられる。ドライハーブやタイム、漢方などの非常に豊満で複雑なな香りが強く感じられる。
酸味、タンニンは非常に強く感じられる。ソースの様な濃厚な旨味が口内を占める。アフターはとてもスパイシー。熟成の方向性としてはボルドーに近いと思う。


生産者: M シャプティエ
銘柄: セレクション パーセレール エルミタージュ ラ パヴィヨン 2007
品種: シラー100%

23000円、WA92-94pt
外観は濃いガーネット、粘性は高い。非常に濃密で、強い薔薇の華やかさ、そしてブラックチェリーやプラムの甘露で凝縮感のある果実味が感じられる。キャンディの様なポッテリとした果実味が感じられる。また胡椒や燻製肉、ジビエなどの野性的でスパイシーなニュアンスやドライハーブ、ミントやリコリス。ファンデーション、ヒノキやお香の様な複雑な香りが感じられる。
酸味とタンニンはかなり強い。華やかな花の香りが強く感じられると同時にスパイシーな味わいもあらわれる。スミレ黒系果実のアフター。余韻は非常に長く、官能的な味わい。


生産者: M シャプティエ
銘柄: セレクション パーセレール エルミタージュ デ ロレ ブラン 1992
品種:マルサンヌ100%

約42,000円、WA96pt
外観は濃いストローイエロー、粘性は高い。
折り目正しい奇麗なミネラル感が感じられる。
タイプとしてはジャン ルイ シャーヴに方向性は似ていると思う。
濃厚な黄桃やアプリコットの甘酸っぱい凝縮した果実味。
清涼感のある白い花、ハチミツやヨーグルトなどの酸味を伴なう力強い味わい。
カマンベールチーズの様な風味も感じられる。
とても甘露で、シャルドネの様に上品な訳ではないが溌剌とした個性豊かな味わいのマルサンヌ。
酸味は際立っているが舌触りは柔らかい。とても豊満な旨味が口の中で広がる。とても濃厚で肉厚な味わい。
セレクション パーセレールの「ル パヴィヨン」も当然素晴らしかったが、白の「デ ロレ」もべらぼうに良かった。


2000年と2005年だと、かなり年代が遠く比較は難しいので、今回はひとつひとつ行きます。
まずエルミタージュの全体感からいくと、赤はコートロティの様なスパイシーで繊細なタイプではなく、より野性的で果実味に溢れ、力強いと感じました。どちらかというと新世界寄りの甘露でパワフルなシラーといった所でしょうか。
そして、白はシャーヴのエルミタージュ ブランの様な溌剌とした黄桃、アプリコットの風味が際立った複雑かつ力強いマルサンヌでした。濃厚なグリューナーヴェルトリーナー的な風味ですかね。
全体的にはそんな感じです。個々で言うとまずヴィンテージが違いますので熟成を考慮しながらいきます。
まずシャプティエのパヴィヨンは非常に力強く、酸味もタンニンも極めてパワフル。新世界的な濃厚で甘露な果実味がベースにありつつ、ローヌのシラー特有のスパイシーさや果皮由縁の華やかさがあります。燻製肉の様な野性味も感じられます。
凄いブリブリではち切れんばかりの果実味があるんだけど、そこに対して様々な要素が溶け込んでいて、高いアルコール度数と濃度を維持しながら、とても複雑な風味が現れていると思います。
そしてポール ジャブレ エネのエルミタージュ ラ シャペル。
これは単一畑ではないのですが、複数の一線級の畑を混醸したワイン。
年代としてはかなり熟成を経ている印象で、ボルドーのグランヴァンに似た熟成の方向性だと思います。ブルゴーニュの熟成で現れるグルタミン酸ナトリウムではなく、グアルニル酸2ナトリウム系の熟成という事ですね。それに加えて品種由縁のスパイシーさや枯れた葉の様な風味が現れています。
綺麗に熟成しておりとても複雑ですが、ボディはまだ丸まっておらず、その熟成香と比較して、ややタンニンと酸が際立った味わいになっている様な気がします。
シラーの熟成は今回始めてしっかりと味わったので勉強になりました。
最後はマルサンヌ。これは熟成したセレクションパーセレールの白。
これが熟成してなお肉付きの良いボリューム感たっぷりのマルサンヌで、アプリコットや黄桃の甘露で心地よい酸味のある果実味。十分にマロラクティック発酵したまろやかな乳酸の風味、清涼感のある白い花の風味。さながらジャン ルイ シャーヴのエルミタージュ ブランを想起させる様な風味がとても魅力的。
正直パヴィヨンやロレなどのパーセレールを飲むと、一般的に幅広く販売されているコート デュ ローヌとはやはり一線を画しているなあ、という印象。
そもそも一般的なキュヴェも十分に品質は高いのだけれども。例えばクローズエルミタージュ レ メゾニエなんか、本当に美味い。
ただ完成されたエルミタージュの絵をこちらは垣間見せている様な気がしますね。併せてポールジャブレのシャペルは熟成の姿を見せてくれたと思います。

ちなみに、パヴィヨンはべサールの中にある一区画だそうですね。なるほど...。ちなみに区画ごとの違いが分かるほどローヌは飲み込んでいないんで、感想だけにとどめます。素晴らしい体験でした。



【ボルドー:1】1940年、悠久の時を刻む不死の薬、シャトーディケム1940

こんにちは。
本日はボルドー、ソーテルヌの古酒です。ソーテルヌのシャトーディケムの73年古酒です。なかなか飲む機会がない貴重な一本でした。

シャトーディケムはソーテルヌに拠点を構える世界最高の貴腐ワインを産出するシャトー。現地ソーテルヌの格付けでは、ただ唯一の特別一級(プルミエクリュスペリュール)として君臨しています。
驚異的な低収量が特徴で、平均して葡萄一本につきグラス一杯のみしか取れない、これは木の樹齢の高い事、貴腐粒だけを丁寧に選別している事、そして長期間の樽熟成に伴う蒸発に起因します。100%オーク新樽で42ヶ月の樽熟成。全行程に渡って当然ながら補糖補酸は行われません。不作の年はリリースされません。(直近だと2012年ですね)


生産者、銘柄: シャトー ディケム 1940
品種: セミヨン80%、ソーヴィニヨンブラン20%


約200000円、WA91pt(1945)
外観は焦げた茶色、粘性は高い。
およそ70年。悠久の時を経て抜栓されたその液体は、当然ながら熟成香に満ち溢れているが、それでも想像をはるかに超える若々しさを保っていた。
濡れた樹皮や腐葉土、キノコ、タール、そしてカマンベールなどの強い熟成香。若いヴィンテージに見られた清涼感や透明感は見られない。
ただ失ったそれらの要素を補う様に、熟成による複雑で深遠な要素が液体に満ち溢れている。
その複雑な要素の中に核として洋梨やマンゴーの濃厚な甘露さが生き残っている。そして濡れた土や藺草やドライハーブ、白胡椒、香ばしいナッツなどの風味が徐々に解きほぐされていく。
貴腐による生来の甘露さは全く衰えておらず、その酸味もしっかりと残存している。口内で香ばしくほのかなカラメルの香り。70年を経たそのボディは不死身かと思わせる様に強固さを保っている。


いやあ、シャトーディケムのここまで古いヴィンテージは初めてです。
正直「色調はもはや茶色だし、本当に飲んで大丈夫だろうか」という杞憂を吹き飛ばす様な複雑で深淵で生命力に満ち溢れたワインでした。凄まじいです。
さて、そんな凄まじい古酒と若いヴィンテージと比較するとどうでしょうか。
2000年代のディケムは若いながらもとても偉大なワインで羽の様な軽やかさと清涼感がありつつ、芯は膨大でアプリコットや黄桃のコンポートのような甘露さを持っていました。
また、90年代は清涼感は落ちましたが、濃厚なクリームブリュレや洋梨、黄桃の果実味が液体に体躯を与え、クリームチーズや木材の様な複雑な風味が現れてきます。
1940年はどうでしょうか。
既に70年の時を経ている為、その複雑さ、厚さの代償に清涼感は失われています。枯れた草やドライハーブ、白胡椒、濡れた土などの熟成香が主体となりますが、そのカラメルのような甘露さはしっかりと残っています。
いや、不朽の存在であることを強く認識させられますね。
熟成も本当に綺麗に熟成していくし、どのタイミングでも、そのタイミングならではの良さがありますね。甘露さが一本筋にあって、そこに纏う要素が時代に寄って変わっていくという。

当然ですが、いずれのヴィンテージも偉大だとは思います。
ただ、美味い不味いで言えば90年代が最も熟成とバランスが取れていると思います。

やはりこの手の古酒は、実際の味わいよりも飲んだ事に意義がある様な気がしますね。その時代に思いを馳せながら飲むと、より深い感動を感じられる一本だと思います。

日本が戦争に向かっていった年。そして、まさにかのフランスの地にナチスドイツが侵攻した年。
そんな閉塞感に満ちた時代に産み落とされたヴィンテージが、今この時代に抜栓されるのは、何か因果めいたものを感じてしまいますね。

シャトー・ディケム[1940](1987年にリコルク)

シャトー・ディケム[1940](1987年にリコルク)
価格:199,500円(税込、送料別)

【シャンパーニュ:1】ジャック セロス、そしてその甥セロスパジョンが作る最上級シャンパーニュ2種を利く

こんばんわ。
今日はシャンパーニュ、パジョン セロスとジャック セロスです。

ジャック セロスは説明不要なレコルタンマニピュラン最高の生産者です。現在はアンセルム セロスが指揮を取っており、アイ、アヴィーズ、クラマン、オジェ、メニル、アンボネイなどに畑を保有しています。平均樹齢38年、栽培は全てビオディナミ。バリック木樽での発酵、新樽比率10%の樽で熟成を行い、瓶内で24ヶ月から36ヶ月熟成後デコルジュマンを経て出荷される。このブリュット ロゼは自社生産のシャルドネ93%、エグリ ウーリエから調達したピノノワール7%(現在はアンボネイにピノの畑を保有しているらしいので、他者からの調達はしてないみたいです)。ノンヴィンテージシャンパーニュです。

そして、その甥ジェローム セロスが運営するセロス パジョン。
アンセルム セロスの下で修行を行い、現在は自らのメゾンで4種類のシャンパーニュを仕込んでいます。栽培はビオ...だと思いますが、情報が無かったのでわかりません。収穫の後フランソワフレール社の木製樽でアルコール発酵後、MLF。8-9ヶ月の樽熟成を経て、瓶内二次発酵を行う。ドサージュは10.6g/l。ちなみに今年が初入荷との事です。


生産者: セロス パジョン
銘柄: キュヴェ フュ ド シェーヌ NV
8000円

外観は淡いストローイエロー。
粘性は高く、泡も力強く立ち上る。
比較的ミネラルは強めでありながら、とても豊満な作りのシャンパーニュ。
樽がしっかりと効いており、バターや西洋サンザシ、甘露なシロップやバニラの風味やスモモやパイナップルの豊満な果実味が楽しめる。香りに関してはとても品が良く均整が取れていて、心地よい酸味とナッツの豊満な風味。フレッシュハーブなどの風味も感じられる。
非常に力強い酸があるが、若干余韻は短く、そのシャープさと豊満な甘露さは波が引く様に消えていく。瞬発的に心地よい官能性を楽しめるシャンパーニュ。


生産者: ジャック セロス
銘柄: ブリュット ロゼ NV

約25000円、WA95pt
外観はやや濁ったオレンジ、粘性は高い。泡は穏やかでゆっくりと立ち上る。
かなり熟成を帯びたニュアンスが強く現れている。リザーブワイン多めかも。熟成したピノノワールの香りがしっかりと現れている。
焼きたてのパンの様な香りと共に、ラズベリーやアプリコット、そして赤リンゴの噛む様な肉厚な果実味が感じられる。甘い核種系の蜜の様な豊満な香り。華やかなスミレの香りや徐々にクローヴ、タイムなどの青っぽいニュアンス。徐々にモカやバニラ、燻製肉などの風味も現れる。
最初はトースト香が強く、やや素っ気ない印象を受ける。
しかしながら開き始めると、その液体密度はべらぼうに高く、まるで果実を噛んだ様な濃厚さを内包している事に気がつく。
酸や泡は柔らかく滑らか。穏やかでありながら噛む様な溌剌とした豊かな果実味が素晴らしい。
最初は??といった感じだったが、やはり素晴らしいシャンパーニュを作り出している。余韻も長い。


まずはセロス パジョン。
「また親類関係か、どうなんだろうな」とちょっと疑問だったのですが、これが非常に良く出来たシャンパーニュでした。基本的にはフレッシュで若々しい味わいが魅力です。非常に甘露で豊満な香りを放っていて、まるでよく出来たブルゴーニュのシャルドネの様な味わいがあります。
それに対して酸味は切れ味が鋭く、シャープな印象を受けます。複雑ではなく、余韻もやや短めですが、価格見合いで考えると、かなり良いシャンパーニュじゃないかと思います。
セロス パジョンは見たところまだ若いヴィンテージしか無い様ですから、これからリザーブワインが増えていくたびによりこのキュヴェの完成度は上がって行きそうな気がしますね。
そしてジャックセロスのロゼ。
こちらはとても複雑でルーミエのシャンパーニュ版といった果実味の厚さを感じさせる群を抜いたシャンパーニュだと思います。
テイスティングノートにも書きましたが、リザーブワインの比率が高いのか、かなり熟成したピノノワールの風味を強く感じます。ピノノワールの比率自体は僅か7%で、ほぼシャルドネですが、かなりピノの風味が強く出ていると思いました。噛む様な厚い果実味があり、酸味と旨味が充実しています。最初はやや素っ気ない印象を受けますが、香りが開き始めた時に見せる規模感は、やはり只者ではありません。そしてヴィンテージシャンパーニュに現れるモカやバニラの風味もまた、非常に官能的だと思います。
余韻の長さも含めて、流石にレベルの高い作りをしているな、という印象です。素晴らしい。

利き比べてみて思ったのが、やはりジャックセロスは半端ないな、という事。こんなに分厚いシャンパーニュは今まで飲んだ事が無かったです。それこそサロンやヴィンテージクリュッグでもそう思ったのですから、それだけの厚みと特異性があるシャンパーニュと捉えています。(熟成したグランダネやRDは別として)その上で個人的にはセロス パジョンの方が今のところ好みだったような気がします。
値段と希少性が高く、かつ個人的にはやや苦手なロゼという事もあると思いますが、セロス パジョンは余韻の面を除けばとても良い造りだったと思います。これは先述した様にリザーブワインの比率で変わるのでこれからでしょう。

とりあえずジャックセロスはブランドブランを飲みたいな...と思いました。

【セロス・パジョン】フュ・ド・シェーヌ[NV]

【セロス・パジョン】フュ・ド・シェーヌ[NV]
価格:7,100円(税込、送料別)


プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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