【ピエモンテ:12】モダン バローロ、近代派の成熟と今

こんにちは、HKOです。
本日はちょっと毛色が変わりまして、バローロを幾つかレポートします。

バローロといえば80年代に起こったバローロボーイズ達の革新が有名ですね。
結果として改革運動の末、国外市場での立ち位置を確保して、ランゲに富をもたらしたという。
主に革新派のバローロといえば、バリック樽の使用、マセラシオンの短縮、剪定の厳格化が、主な特徴として挙げられるのですが、どうにも紐解いていくともっと概念的で。
飲みやすいキャッチーなバローロであるべき、という部分に集約していると感じました。
革新派だからといって100%バリック新樽な訳でもないし、伝統派だからといってヴァンダンジュ ヴェールトをしない訳でもない。
単純に長期熟成型か、すぐに美味しく飲めるものを作るのか、スタイルの違いに過ぎないと。

今回は2回にわけて伝統派と革新派の仕事を見ていきたいと思います。
まずはロベルト ヴォエルツィオの古酒、そしてヴィエッティの新しいヴィンテージです。

【データ】
ヴィエッティはピエモンテ カスティリオーネ ファレットに20世紀初め頃に設立されたワイナリー。
現在もヴィエッティ家によって保有されており、オーナーはマリオ コルデーロと醸造家も務めるルカ クッラード。バローロのアメリカへの市場を開拓したワイナリーの一つ。
今回のバローロ ロッケはカステリオーネ・ファレットにある単一畑ロッケによるもので、ヴィエッティのフラッグシップとも言える一本。
収量は28hl/ha、ステンレスタンク内でポンピングオーバーを行いながら5日間アルコール発酵。30~32度で20日間発行。マセレーション20日間。
バリック樽で4週間マロラクティック発酵させ、31か月間スラヴォニアン・オークで熟成を行う。

ロベルト ヴォエルツィオは1986年にピエモンテ ラ モッラに設立されたワイナリー。近年特に評価が高いワイナリーで近代的な特徴と古典的な特徴双方を併せ持っています。
このワイナリーの大きな特徴は徹底した低収量です。
冬季に5~8芽を残して強剪定、7月中旬に1本の樹当たり5房だけ残して、約50%以上の房が取り除かれます。8月中旬頃きは房の下部をカット。
これによって1ha当たり6,000~8,000本の樹からバローロに使用する葡萄は1本の樹からわずか500~700gに抑えられます。化学肥料や除草剤、殺菌剤、防カビ剤は一切使用しない。セラーでは醸造からボトリングまで基本的にはシンプルに行っています。
今回のラ セッラはラ モッラらしい若干の砂質が入り混じる土壌のもの。バリックと大樽を併用し24ヶ月熟成、さらにステンレスタンクで8ヶ月熟成&瓶熟成。
年間生産本数は約4万~6万本。


【テイスティングコメント】
生産者: ロベルト ヴォエルツィオ
銘柄: バローロ ラ セッラ 1995

約12000円、WA87pt
外観はややオレンジを帯びた均一的なガーネット、粘性は高い。
バローロボーイズながらクラシックな風合を感じるバローロ。薔薇やスミレのドライフラワーの華やかな香り、濡れた木材や土、茎の様な極自然的な香りと共に、リコリスやスパイス、ほのかなクレゾールの香り、黒オリーブやブルーベリーの様な果実味があり、鉄観音や藁、パストラミハムの様なスパイシーな風味と生肉の様な風味、ユーカリやナツメグ、ほのかにニンニクの要素や炭焼きなどの樽の要素、ミルクの香りも帯びてくる。華やかさが突出しており、それと共に強い旨味が突出。特に甘さを伴った感じは無い。凝縮した旨味とドライフラワーの奔流。焼いたゴムなどの風味が感じられる。
タンニンはかなり強めで、それに対して酸は穏やか。感じられるタイヤの様な焦げ香、鉛筆の芯、リコリス、ブルーベリーの様な戻し香が感じられる。


生産者: ヴィエッティ
銘柄: バローロ ロッケ 2005

32000円、WA95pt
外観は澄んだ濃いめのガーネット、粘性は中庸。
かなりモダンなスタイルにも見えるバローロで、明らかなマロラクティック発酵と新樽の影響が前に出ている。バニラや熱したバターの様な滑らかな香りの中に、干したブルーベリーやダークチェリーの様な果実味、薔薇の様な華やかさが見事に収まっている。凝縮感が感じられる。香木などの香りが強いが、徐々にイースト的な香りや葉巻、燻製肉、溶剤などの要素。
クローヴ。徐々にカラメルトフィーにも似た甘い芳香が強く表出してくる。アタックはボルドー的だが、その奥にあるのはまごうことなくネッビオーロ。
酸とタンニン共に生き生きとしている。若干タンニンの方が優勢で引っかかりがある。ダークチェリーの果皮やバニラの様なまろやかな戻し香が極めてエレガントで余韻も長い。


【所感】
ロベルト ヴォエルツィオのラ モッラにある単一畑ラ セッラ。
超低収量で、熟成にバリック、大樽、ステンレスタンクを併用したバローロ。このワインを飲んで思ったのは、熟成によって醸造的な要素を差し引いていくと、ネッビオーロの本来の味わいが出てくるという点。スペルスやサンドローネのラ ヴィーニェはまだ醸造的要素が強く残っていました。(故にボルドー的な古酒の風合いがありました)
ラ セッラはその点、早く熟成が進んだのか、極めて古風なネッビオーロの味わいが感じられました。
フラワリーなネッビオーロの個性とバローロらしい藁の風味、それと共に熟成したニュアンスとクレゾールの香りが感じられます。
まだ熟成過程であるのは間違いなさそうなので、美味しいかは別問題ですが、先進的であるにも関わらず、極めてネッビオーロの特徴がハッキリと表出している感じです。ゴムの香りは樽が変質した感じですかね。
タンニンもまだまだ鋭角です。
もう少し熟成すればこなれてくると思います。

次にヴィエッティのカスティリオーニ デル ファレットにある単一畑ロッケ。
どうやらざっと見る限りヴィエッティ、パーカーポイントメッチャ高いですね。07なんて99点...
そんな感じで、いかにもアメリカ市場向け、といった感じのモダンバローロです。ガヤとかに近いと思いますが、まあ近いだけで違います。
マロラクティック発酵のニュアンスと甘い樽香が特徴的な極めてキャッチーなネッビオーロだと思います。
熱したバターやバニラのまろやかな風味、熟した黒系果実、華やかな薔薇の風味、カラメルトフィーや燻製肉などが力強く立ち上ってきます。
極めて豪華で近づきやすいネッビオーロ。
でもやっぱりネッビオーロだからタンニンは鋭角的。
醸造で分かりやすく、そして徐々にゆっくりとその本質を伝えるという部分に関しては、とてもユーザーフレンドリーだし、バローロの良さが伝わりやすく素晴らしいと思います。
こうあるべきだからお前ら理解しろ(プロダクトアウト)ではなく、ほらいいでしょ、でもよく見るとちゃんとネッビオーロしてるんだよ?(マーケットイン)って歩み寄る姿勢が今の現状に繋がってるんですねえ。なんとも素敵な事です。

ただとはいえ名声を高めるのも大切ですが、片一方でその地域ならではの、地域を象徴するような確固たるポリシーを持った生産者も、地域の特徴を確立させる為に必要です。
次回は伝統的生産者をレポートします。



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プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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