Le Clavier Arisugawa(ル クラヴィエール 有栖川: 六本木)

【前提】
※メニュー横の★はHKO主観の「もう一度食べたい度」です。シェフ渾身の一皿を素人如きの尺度と個人の趣味嗜好で、それがさも絶対の事実の様に評価するものでは一切ありません。
当てになりません、メモです。
★★★★★→今日にでももう一度食べたい!
★★★★→明日にでももう一度食べたい。
★★★→必ずもう一度食べたい。
★★→機会があればもう一度。
★→日常的に食べられると最高。

こんにちは、HKOです。
友人にお誘い頂いて面白いバーに行ってまいりました。


ル クラヴィエール 有栖川というバーです。
元カンテサンスのソムリエ 吉田正俊氏が六本木に開いたバーなのですが、コンセプトがとにかく面白い。
店主が作る最高の素材を使った15皿~25皿のTUMAMIと酒とのペアリングを楽しむ、といったものなのですが、もう、びっくりするほど長丁場。我々が行った時はたまたま貸し切りだったのですが、それでも4時間以上はかかりました。(20時入店で、0時半くらいまでいたと思う)

ただそんな時間いて飽きなかったかと言えば、もうこれは絶対的にNO。その理由はまた後ほど。



マンションの地下1Fにあります。平時は扉がもう一段階あり、閉まっているのですが、来店直前に黒い扉が姿を現します。



店内はシックで、カウンターの内側にはベヒシュタインの立派なピアノが鎮座しています。
大きなスピーカーが両脇にあり、チルなジャズが柔らかい音で響きます。


早速1皿目が供出されます。


【食前酒】
■有明産生牡蠣 + アードベッグ10年(★★★★)


まずは築地から仕入れた有明産の生牡蠣にウイスキーを振って。ピーティーなアードベッグのフレーバーと新鮮な牡蠣の甘い味わいと完全に調和。


■1週間熟成の鱚と蕗の薹の天麩羅 + ブリュードッグのパンク IPA(★★★★★)


苦味とハーブの香りを軸にしたペアリング。
ホップの爽やかでハーヴィーな香りが際立つブリュードッグのパンク IPAをやや高めの温度で供出。より華やかな温度が際立っている。爽やかな香りとホップの苦さが、苦くハーヴィーな蕗の薹の天婦羅と完全に一致しマリアージュする。やや淡白でホクホクの鱚の天婦羅は言わずもがな。

蕗の薹に合わせるために、香りを立たせる手法として供出温度を上げ、ワイングラスで提供することにしたとの事。


■フィノッキオーナ(フェンネル)の生サラミ + デルガド スレタのアモンティリャード(★★★★)


熟成の旨みを軸にしたペアリング。
樽の甘やかな香りが特徴的なドライシェリーのアモンティリャード。ソレラシステム起因の熟成の旨味の表出が突出。そこにフィノッキオーナの熟成による旨みがほぐし身によって強化され、アモンティリャードの旨味と同化する。
旨みを軸にして甘い香りとフェンネルの香りが互いに溶け合い完全なペアリングを見せる。
味わいの層の微妙な差異が複雑さを生み出す。

本来はカットして供出するのが普通だそうですが、ほぐし身にする事で、切り口が粗くなり、より旨みを強く感じられるようになるとのこと。


【日本酒】
■青森県産下北半島岩海苔 + 下村酒造店の奥播磨 山廃 純米 生 BY26(★★★)


既存のペアリングの再構築。
磯の香りがダイレクトな岩海苔(年に3回しか取れない)と、荒々しい山廃を生のまま詰めた奥播磨。米由来のニュアンスが強く岩海苔とのペアリングは米に海苔が合うようにすんなりと成立する。ただ日本酒の甘さと岩海苔の塩っぽさの相反する要素も組み込まれていて、さながら甘口とフォアグラのペアリングも想起させる。
そこに分厚いナッツやダイコン、岩海苔由来の磯の香りが付加され複雑さを助長する。


■大間の熟成2016年初鮪と杉樽仕込み醤油、山葵 + 菊乃里酒造の大那 特別純米 一号無濾過 生 初絞り(★★★)



初物同士のペアリング。
チーズとナッツの既存のペアリングを軸としたペアリング。
熟成した鮪はほのかにチーズを思わせる香りを帯びていて、鉄分と共に強靭な旨みを内包している。
そこにナッツやダイコン、杉の様な香りを帯びた大那が、ナッツの香りを軸として鮪のチーズの香りと合致する。鉄分の様な風味とチーズの様な濃密さ。鉄分と杉の様な風味が複雑さを助長する。


鮪は初競りで落札されたサク。これを1週間エイジングしている。
次からワインのフェーズに入っていきます。

まずはシャンパーニュから。


【シャンパーニュ】
■巨大ハマグリ + ポール エラルドのブリュット ブラン ド ノワール NV(★★★★)


アピアランス抜群の巨大ハマグリに合わせるのはピノノワール100%のシャンパーニュ。
包含する繊細な旨味の濃度を軸としたペアリング。
マロラクティック発酵をしたバターや蜜の香りが甘やかなシャンパーニュだけど、味わいにはピノノワール由来の旨味とリンゴの様な含み香がある。磯の香りと繊細な旨味があるハマグリとは旨味で調和し、酸と出汁の旨みが美しく調和する。


■島根県産白魚のフリット イチゴ + ポール エラルドのブリュット ブラン ド ノワール NV(★★★)


プレーンな塩気と酸味を軸としたペアリング。
フリットした白魚の塩気とシャンパーニュの酸味が非常に良く合う。白魚のプレーンさと酸味のペアリングが巧み。
イチゴのタイミングではシャンパーニュが無くなっていたので、残念だったが、極端に糖度の高いものではなく、酸味もきっちりと包含されているものなので、恐らく良く合いそうだ。極端に甘いものの後のシャンパーニュは辛いだけだし、シャンパーニュの後の甘いものは苦味を残す。


【白ワイン】

いろいろ出てきました。


■オイル・塩のシンプルなサラダ + ヴィラ マリアのワイラウ ヴァレー ソーヴィニヨンブラン 1996(★★★★)


店主にして「今世紀最大の発見」と言わしめるペアリング。
オイル・塩・ビネガーの構成にワインをペアリングさせるとビネガーの酸化的なニュアンスがワインの要素に影響が出るのですが、それならオイルと塩だけにしてしまえばワインが合うのではないか、という部分に切り込んだペアリング。
まさに素晴らしい作用。
ソーヴィニヨンブランにある青草やグリニッシュな要素が軸となり、見事にサラダとペアリングする。
ワインの本来の良さも生きている。※個人的にここまで青くシベットの香りがするソーヴィニヨンブランも初経験だったが。
完全にソーヴィニヨンブランがドレッシングの作用をしていて、酸や果実味が複雑さを与えている。そこに果実味をうまくオイルが丸めている。シンプルなサラダだけど、果実味がすごくすんなり合う。


■1週間熟成のサヨリ・鬼海老 + ヒルツベルガーのシュタインテラッセン フェーダーシュピール 2013(★★★★★)




昆布の様な旨味が生成されたサヨリとネットリとクリーミー、かつプリプリの鬼海老。それにオーストリアのリースリングを。
フレッシュで濃密な果実を感じる若々しいリースリング。昆布のようなサヨリの旨味がリースリングの厚い果実味、柔らかい酸味が上手く溶け合い、双方の良さを引き立てている。鬼海老はリースリングと合わせると多少生臭さを感じる部分もあるが、基本的に厚みがあっていて、酸の厚みが綺麗に余韻を残してくれる感じ。


■炙った鱈の白子 + ジェラール ブレのサンセール クロ デ ボーシュ 2013(★★★★★)


燻香を基軸にしたペアリング。
最上の鱈の白子を炙ってワインとのペアリング用に調整。そもそもクリーミーで香ばしく単体での味わいも素晴らしいが、サンセールとのペアリングも絶妙。
燻香といえばプイィフュメだが、サンセールにもある要素で、燻した白子が樽香的な役割を果たしている。
白子の丸みとサンセールの酸。そしてサンセールの燻した余韻が、白子の焦がした感じが合う。
完璧にマリアージュしている。


■茹でた熟成車海老 + ドメーヌ コフィネ デュブルネイのシャサーニュ モンラッシェ レ ブランショ ドスュ 2013(★★★★)



非常に美味しい車海老でプリプリしてるし、そもそも非常に強い味を持っている。甲殻類の風味や香りが強烈。濃密で濃厚、極めて力強い味わい。
対して村名シャサーニュはカイユレと同様のモンラッシェに隣接する畑。モンラッシェの様な濃密なタイプの果実味。
お互い高品質でレベルの高い食材。よく調和をしているが、他のペアリングの様に理知的な組み合わせというよりはベーシックな合い方をする感じかも。


白ワインと野菜、魚介類の素晴らしいペアリングの後は赤ワインのペアリングに移っていきます。
まずは椎茸とピノノワールのペアリングから。


【赤ワイン】
■巨大椎茸 + ボーデッカー セラーズのピノノワール アシーナ 2009(★★★)


将来的に得る事が分かっている要素を前借りするペアリング。
オレゴンのピノノワールと共に大きい椎茸を頂く。
オレゴンのピノノワールは2009年という微妙に熟成香が出始めた位のヴィンテージで、そこに椎茸のグアニル酸ナトリウムをペアリングさせる事で、若い果実味と熟成香と旨味を両立させている。若々しいピノノワールだが、椎茸の旨味がかなり間を埋めてくれる。
さながら熟成したビッグヴィンテージのピノノワールの様な風合いがある。


次は肉料理。山鳩、山鶉、土佐赤牛、鹿ロース、尾長鴨、軽鴨と多種多様に富む展開。罠みたい。


■山鳩、山鶉のロースト + ピエール ジャック ドゥルエのブルグイユ キュヴェ グランモン 1996(★★★★★)


ペルドリとピジョン ラミエ、それに熟成ブルグイユをペアリング。ブルグイユはそもそも果皮の要素が強そうな上、熟成によってかなり鉄分が表出されていて、かつ旨みが強くなっている。
山鳩に含まれる血や内臓の要素が、カベルネフランの鉄分や華やかさが綺麗にペアリングする。独特の癖はうまい具合に中和されていて、ベストな組み合わせだと思う。
山鶉は多少淡白ながら旨みが充実しており、カベルネフランの熟成の旨みを基軸にして、こちらも綺麗にペアリングしている。また山鶉の穀物的な風味がロースト香とも合っている。


■ウルトラドライエイジングの土佐赤牛のランボソと鹿ロース + シャトー デュフォール ヴィヴァン 2011 + ル クロ ダン ジュールのカオール アン ジュール 2011(★★★★★)




旨みと血の風味を軸にしたペアリング。
熟成によって旨みを強く感じさせる土佐赤牛と、鳩ほとでは無いものの血や野生の香りを感じさせる鹿ロース。それに合わせるのはカオールのコー100%のワインと、シャトーデュフォールヴィヴァン。
カオールの果皮の要素とスパイシーな要素が、鹿、土佐赤牛共に完璧なペアリング。ボディの濃度も近いので、すんなりとマリアージュする。また鉛筆と血の香りを感じるデュフォールヴィヴァンとも合うが、やはりコーのペアリングが最高だと感じた。


■尾長鴨、カルガモのロースト + アルヌー アントのヴォルネイ プルミエクリュ サントノ ディ ミリュー 2006(★★★★★)


こちらも旨みと血の風味を軸にしたペアリング。
鳩ほどではない血の風味、強い歯ごたえとエキス感と旨みのある鴨。これにムルソーの生産者、アルヌーアントのヴォルネイのサントノをペアリング。やや熟成したヴォルネイは鉄分や鉛の様な香りがあり、力強い味わいの鴨の血と滑らかにペアリングす。軽鴨は淡白で、それでいて濃厚。こちらもよくペアリングする。


【食後酒】
■ソーテルヌに漬けたチョコ掛けブドウ + ジェラス アルマニャックのバ アルマニャック50年(★★★★)

熟成したアルマニャックは干したぶどうの甘い香りとキャラメリゼした様な香りが感じられる。当然ながらソーテルヌとのペアリングは最高。

思えば4時間が一瞬。

今回様々なペアリングを試してみて、今まで「これは合う!」と思っていたペアリングは所詮素人感覚と思い知らされました。
それだけ今回吉田氏が提案するペアリングは全てが寸分と隙の無い精緻なペアリング。
しかも単一の切り口ではなく、例えば同一要素を軸とした複雑さを向上させるペアリング、例えば互いの不足する要素を補いながら複雑性を付与するペアリング、例えば断面の時系列でしか表出し得ない要素を別時系列に前借りするペアリング。
様々な角度から手を変え品を変え酒と食材を調和させていく技巧は驚愕の一言。

そうそう、こういうのどこかで見たことあると思ったら、アレですね、DJだわ。
複数の異なる曲をミックスする時に、同じ4つ打ちで共通する要素のある曲をミックスする方法もあるし、ブレイク時にBPMやピッチの異なる曲を繋げる方法もある。ただ滑らかに繋げるには曲の要素だけではなくて、曲自体に手を入れる事も必要という。例えばBPMを調整したり。
ペアリングでいうと供出温度の調整や食材の手入れがそれに当たるのかなと。

クラヴィエール有栖川では経験豊かな吉田氏が構築した15皿のペアリングから、数多くのマリアージュのヒントを学ぶ事が出来る。
よりペアリングに対して理解を深めたい。成功事例を数多く知りたいという人にはオススメ。

場当たり的なペアリングではなく、極めてインテレクチュアルなペアリングを身を以て感じる事が出来ると思う。

ちなみにこのお店は好事家向けの店です。
なので楽しむ為に、ある程度の知識は絶対的に必要です。
ただ、そこは柔和で話好きな店主がしっかりと補ってくれるので、安心しても良いかもしれません。

価格帯は15皿で20000円と割高感を感じるかもしれませんが、タパス15皿と15種類のお酒と考えれば個人的には妥当かなと思います。
まずは7皿からお試しをお勧めします。


住所: 東京都港区元麻布2-1-20 有栖川ナショナルコートB1
店名: Le Clavier Arisugawa(ル クラヴィエール有栖川)
電話番号: 03-6721-7142(予約必須)
営業時間:
18:00~23:00
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プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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