【南アフリカ:3】クリスタルム5種テイスティング

こんにちは、HKOです。
本日から南アフリカをちょっと見ていきたいと思います。

ハーテンバーグやブーケンハーツクルーフなどはこのブログでも以前から紹介していましたが、本格的に南アフリカを紹介するのはおそらく初めてではないかと思います。

今回の記事の背景には、去年から今年にかけて大きな盛り上がりを見せている南アフリカを、HKOから見た時にどうなのかというのを認識しておきたかったという理由があります。
その為、独自の判断で選びテイスティングしていく、というよりは主に高い評価を受けている生産者、ティム アトキン氏のケープ クラシフィケーションで上位に位置している生産者を主に取り扱っていく予定です。

以下のワインを今後テイスティング予定なので是非よろしくお願いします。

・クリスタルム
・フュールバーグ
・ラール
・カノンコップ
・ポール グルーヴァー
・AAバーデンホースト
・ニュートン ジョンソン
・アルヘイト
・グレネリー
・マリヌー

まずはクリスタルムからです。


【データ】
クリスタルムはウォーカーベイのヘルマナス地方、ヤマル・アルデ・リッジに2007年に設立された家族経営の小さなワイナリーです。現当主はアンドリューとピーター・アラン兄弟。
冷涼な気候を生かしてシャルドネとピノ ノワールに特化し2008年よりリリース。年産3万本強。
ブドウは手摘みで収穫。
ピノノワールは小さなステンレスのタンクで自然酵母で発酵。フレンチオーク樽で11~16か月熟成。シャルドネは、全房でプレスされ、自然酵母で樽発酵。瓶詰されるまで11か月そのままにしておきます。
今回は白2種類、赤2種類。
ジ アグネス シャルドネはへメル アン アード地区の3つの畑のシャルドネを使用。土壌は粘土質、頁岩、砂岩。収穫後、全房のままプレスしジュースをタンクに入れ、その後225リットルのフレンチ・オーク樽に移します。その後自然に樽の中で発酵が始まり、瓶詰まで9か月熟成。
クレイ シェールズ シャルドネはヘメル アン アード地区に隣接する標高300mの区画に植えられたシングルヴィンヤードのシャルドネ100%。海洋性気候で涼しく、泥や粘土鉱物から成る堆積岩が砕けた頁岩(shale)と粘土(clay)で構成されている土壌。11ヶ月樽熟成。
ピーター マックス ピノ ノワールはウォーカーベイのヘメル・アン・アード地区の2つの畑と、内陸の標高の高い新しい畑の3つの異なる畑のブドウを使用。75%は除梗、25%は非除梗。4週間スキンコンタクト。11~16ヶ月木樽で熟成。
マバレル ピノ ノワールはウォーカーベイ ヘルマナスの標高700mの位置にあるシングルヴィンヤードから作られたピノノワール100%。100%除梗、自然酵母でステンレスタンクにて発酵、木樽で11~16か月熟成。無清澄、ノンフィルター。
ケープクラシフィケーションでは1級を獲得しています。


【テイスティングコメント】
生産者: クリスタルム
銘柄: ジ アグネス シャルドネ 2015

外観は淡いイエローで粘性は中庸。
爽やかでクリーンなシャルドネでMLFの影響は強くない。
果実味は強く、ピュアなブドウ(そのもの)が高い糖度を帯びた甘やかさに満ちている。それでいて冷涼。
ミネラル感に満ちていて、マスカットやカリン、シトラスの様な果実味、そしてメロン。バニラやフレッシュハーブの香り。リコリスや白胡椒、青草の様なニュアンスが感じられる。
酸は柔らかく、果実のボリューム感は比較的大きい。
シトラスやカリンの様な果実味の余韻があり、爽やかな青草とほのかな苦みが余韻に残る。


生産者: クリスタルム
銘柄: クレイ シェールズ シャルドネ 2015

外観は淡いストローイエロー、粘性は中庸。
シャサーニュモンラッシェのスタイルに近しいワイン。各要素のバランスが極めてそれに近い。
ミネラル感こそ控えめながら、良年に近い果実味を放っている。しかしてモンラッシェ的ではなく、いい意味で抑制の効いた1er Cru的な側面を持っている。
シトラスや洋梨の様な果実味と共に、蜜やシロップの様な甘やかさとMLFと結合したバニラ、そしてハーブの香りが主体的に感じられる。果実の方が主体的なので、カスタードの様には至らないが、甘露さの方向性は近しいものがある。フルーツケーキにも近いかもしれない。
ブリオッシュやバター、白い花の様な香りが感じられる。
徐々にミネラルが表出してきて石の様なニュアンスも感じられる。
酸はしっかりと感じられる。酸味はシャープとは言えないまでもややエッジが効いていて、ここもブルゴーニュ的。
余韻にほのかな苦みを感じさせるのは新世界的かもしれない。果実をそのままいただいた様な甘やかな作り。


生産者: クリスタルム
銘柄: ピーターマックス ピノノワール 2015

外観は赤みの強いルビーで粘性は中庸。
ブルゴーニュのグランヴァンとカリフォルニアのピノノワールの合いの子に近いスタイルのピノノワール。
ややマバレルと比べると熟度が低く、ブルゴーニュというより品の良いニュージーランド的かもしれない。
やや青さを感じるクローヴや茎、フレッシュハーブの香り、牛脂、そしてフレッシュなダークチェリーやブラックベリーの果実味を感じられる。少し全房的だろうか。そこにスミレなどの華やかさが混じってくる。紅茶やビスケット、そしてエナメルリムーバーや鉄釘、生肉や毛皮などの要素。ユーカリの風味が感じられる。
酸は柔らかく、タンニンはやや目立つ。マバレルほどタンニンが甘くなく、少し毛ばたちはある。しかしながら、口当たりの滑らかさは大したもので、余韻も黒系果実をしっかりと感じられるものとなっている。


生産者: クリスタルム
銘柄: マバレル ピノノワール 2015

外観は赤みの強いルビーで粘性は中庸。
凝縮した甘露な果実味と華やかな花の香りが鮮烈なワインで、ヴォーヌロマネのテクスチャーに豊かな果実味を付加したかの様な造り。バランス感としてはやや極端ではあるものの、非常にクオリティは高い。
シロップ的な、煮詰めたブラックベリーやダークチェリーを思わせる豊満な果実味と共に、スミレや薔薇の蜂蜜漬けの華やかさと甘やかさ。獣っぽさはほぼない。
わずかな青さがあり、クローヴ、茎や若い葉、そしてキャラメルやワッフルの様な樽を思わせる香り、バターを思わせるまろやかさ。パストラミハム、シナモン、そしてユーカリなど複雑な要素が感じられる。
甘い果実味が主体的だが、そればかりにはならず、上手くブルゴーニュ的なテクスチャーを押し出しながら熟度は高く仕上げている。
酸はしっかりとありながら滑らか。タンニンも毛羽立ったところはなく甘みを感じる、フレッシュなベリー類の余韻が残る。


生産者: クリスタルム
銘柄: マバレル ピノノワール 2013

外観は赤みの強いルビーで粘性は中庸。
2015年と比べるとわずかに馴染んだ様な、熟成が進んだ様な香りを帯びるが基本骨子は変わらない。凝視した甘露な果実味が主体的。華やかさはわずかに減退し、代わりに樽の香りが少し強めに感じられる。ヴォーヌロマネっぽさはなく、むしろカリフォルニアのピノノワール的な側面を強く感じる。
熟したブラックベリーやダークチェリーの様な果実味と共に、黒糖を思わせる焦がした樽香、そして五香粉やドライハーブの様な香りが前面に感じられる。甘露。そしてほのかな鰹節やパストラミハム、ベーコン。そしてスミレのドライフラワーの香りも。クミンやグローヴの様な要素もある。
徐々にミルクチョコレートやバニラの香りを帯びてくる。
酸はしっかりとありながら滑らかでタンニンに甘みを感じる。果皮のスミレの要素とハーブ、そして旨味が余韻として広がっていく。フレッシュさは希薄。
変わらず完成度は高い。


【所感】
まずは白からです。
スタンダードキュヴェはアグネス、フラッグシップはクレイシェールズです。
ジ アグネスはクリーンな質感を持っています。熟度の高いシャブリを想起させますが、よりナチュラルな葡萄そのものの果実味を強く感じるワインです。甘露かつ青草の要素を感じます。
あまりMLFや樽の要素は感じ取れません。フレッシュで豊かな果実味が魅力的なシャルドネになっています。
対して、クレイシェールズはよりコート ド ボーヌのシャルドネを想起させる作りになっています。豊かな果実味とMLFとのバランスはシャサーニュモンラッシェ的とも言えます。洋梨を思わせる果実味はリッチでバニラやブリオッシュ、フルーツケーキなどの風味も付帯しています。ミネラルは控えめですが、徐々に表出。
酸はブルゴーニュ的ですが、ほのかに余韻に苦味が残るのはカリフォルニア的にも見えます。
どちらのキュヴェも基本的には豊かな果実味がありますが、少しタイプが違いますね。
単純に熟成期間が短いからフレッシュなのか...それとも樽熟成やMLFをあまり行なっていないのか...
クレイシェールズの醸造要素を少し落とした様な作りがアグネスといった感じがします。
タイプは違いますが、共に優れたシャルドネだと思います。個人的にはクレイシェールズの方が好みのスタイルではあります。

次に赤の比較。
ピーターマックスとマバレルの2015水平、マバレルの2015、2013の垂直です。

マバレル2015、凄まじいワインです。
多少語弊があるかもしれませんが、極端に成熟度が上がったヴォーヌロマネ的な側面があります。
果実味はブルゴーニュの暑い年やソノマヴァレーのクラシックなピノノワールに近い感じ、華やかさや樽香はどこかヴォーヌロマネ的です。煮詰めたブラックベリーやダークチェリーの様な香りに付帯してスミレや薔薇のシロップ漬けの様な華やかさがあります。ジュヴレシャンベルタン程抽出に寄っており、さりとてシャンボール程瑞々しくない。
果実味と華やかさの中で程よい青さを感じさせるのは、そんな感じだなあと。ブルゴーニュ的なテクスチャーを強く感じるキュヴェです。
酸やタンニンは滑らかで、ほのかなグリセリン的な甘みを感じさせます。カリフォルニア程ではないですが、熟度が高くクオリティの高いピノノワールになっています。
ブルゴーニュの暑い年の1級畑の様なイメージでしょうか。例えば、2009年とか。

次にマバレル2015を起点にして比較してみます。

ピーターマックス2015はマバレルが高標高の単一畑である事に対して複数ヴィンヤードのアッサンブラージュ。
除梗比率はマバレルが100%、ピーターマックスは75%となっています。
何故スタンダードキュヴェであるピーターマックスだけ75%なのかは不明ですが(梗がよく熟さないと、ワインにとってネガティヴな要素が出やすい)、やはりマバレルとはかなりの違いがあります。
暑い年のヴォーヌロマネを思わせるマバレルに対して、ピーターマックスは品の良いニュージーランド的だと感じました。
まず先行して青さが、そこに折り重なる様にフレッシュな黒系の果実味、適度な華やかさが感じられます。紅茶のニュアンスは感じますが、そこまで強くはありません。
対比して考えると、マバレル程熟した感じはなく、グリニッシュさと華やかさを主軸とし、甘酸っぱい果実味を感じさせるものになっています。ただそこをACブル的な仕上がりにせずニュージーランド的なクリアさを持って作ったのは好感が持てますね。
あそこらへんのワインが好きな人が飲むと違和感を感じないと思うのですが、マバレルと比較すると、悪く言うと作りの手の抜き方と言うのかな、そういったものを顕著に感じます。悪くはありませんが、少しお金を出してマバレルを購入した方が幸せになれるのではないかと思います。

マバレル2013は高い熟度に変わりはありませんが、ややエイジングが進んでいます。南アフリカの収穫時期は2~3月と北半球と比べて半年早いので、イメージとしては2012を飲んでいる感じでしょうか。フレッシュさが控えめになり、果実味はジャミーに、樽の要素がより強く感じられる様になりました。若々しい華やかさや熟した風味がなくなった事で、よりカリピノっぽいスタイルを感じさせます。
いや、ひょっとしたら2013年はこういう作りなのかもしれませんが、少なくとも果実味や華やかさは馴染んでいます。熟成香は殆どないですね。
凝縮感もあり、良いのですが少しビッグなワインだなと感じました。
ひょっとしたらマバレルはブルゴーニュ的に楽しむのであればリリース直後が良いかもしれません。またコッテリしたスタイルが好みなら2013の方が良いかも。
ちなみに2013年、アンチオックスで5日目に酸化を感じる様になりましたが、香りはさすがに酸化的ではあるものの、タンニンのタッチが更に柔らかくなり更なる飲みやすさを感じました。
意外とこれはこれで美味しいかもしれません。

キュヴェごとの土壌や気候が詳しくわからないので、キュヴェごとの際は醸造部分でしか感じませんでしたが、上位キュヴェはブルゴーニュ的に仕上げていてスタンダードキュヴェはよりクリーンに仕上げている印象を受けました。
雑というと語弊がありますが、あまり手を掛けている印象はありません。なので、クオリティの差が結構ある様に感じましたね。
また赤のエイジングに関しては、華やかさが先に減退し、樽や果実味が目立ち始めるのが顕著でした。
これはこれで今後も確認すべき点ですが、年の取り方が独特にも思えます。これ要確認ですね。

以上クリスタルムの5つのワインを比較してみました。



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

マバレル・ピノ・ノワール [2013] クリスタルム
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プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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