【ボルドー:35】2013年ボルドーテイスティング



こんにちは、HKOです。
本日は大変興味深いボルドー2013ヴィンテージの水平テイスティングです。
2013年ヴィンテージのボルドーといえば、もう物凄い格安になった事からもわかる様に、言ってしまえばオフヴィンテージ。プリムール市場で奮わないのは致し方なし。
特に赤は専門誌での評価もあまり良くなく、2013年の左岸最高とも言えるシャトームートンロートシルトですらワインアドヴォケイトで91~93点と辛口の評価がなされています。
まあ、ただ人は人、飲んでみるまでは自分の好みかわかりません。という事で5種類飲める機会があったので、ちゃんと見直してみましょう、というのが今回の試みです。

では行ってみましょう。



【データ】
シャトージスクールはマルゴーのコミューンの最南部に位置するシャトー。
ぶどうの栽培区画はわずか1/3ながら240haを超す広大な敷地を保有している。現在の所有者はエリック アルバダ イェルヘルスマ。1950年代までそのポテンシャルを発揮することは無かったピエール タリにより品質が向上し、多くのシャトーが不調に陥った1970年代1980年代を乗り切っている。(これは同年代の間同氏がユニオン デ グランクリュの会長であった事に起因するのかもしれない)、ただその格付けに対する価値については至極妥当なものであると評される場合が多い。作付面積は80ha、平均樹齢30年、平均収量45hl/ha。
収穫されたぶどうは温度管理されたステンレスタンクで15~18日間マセレーション、6~8日間の発酵。
新樽30%程度で18ヶ月の熟成、無濾過で瓶詰め。

シャトー モンローズはメドック第二級格付けのシャトー。現在はジャン リュイ シャルモリュ氏の下良質なカベルネソーヴィニヨンが生み出されている。
所有する67haの粘土と泥炭土の表土、砂利質で構成された畑は、なだらかに川に傾斜しており、葡萄が熟度が上がる事に一役を買っている。
平均樹齢は40年、収量はわずか32hl/ha。収穫は手摘みで行われる。
醸造はオーク槽(カベルネソーヴィニヨン)とステンレスタンク(メルロー)を30度で発酵を行なう。醸しは20日程度。澱引きは6回。
新樽を25~30%使用で24ケ月熟成の後、濾過はせず瓶詰めされる。

デュクリュボーカイユはオレンジ色のラベルが特徴的なメドック第二級シャトー。こちらも年によっては第一級を凌駕する事からスーパーセカンドとされています。2003年からメドックの名士、ボリー家のブリュノ ボリーがこのシャトーを牽引しています。
ボリー家が所有して以降30年間に渡ってその品質を高めたため、現在の地位を築き上げたといえる。
栽培面積は52ha、平均樹齢38年、平均収量49hl/ha。畑で選果を行い手摘みで収穫後、除梗機で除梗。温度管理されたステンレスとコンクリートのタンクで17~21日間、アルコール発酵とマセレーションを行う。新樽50~65%で18~20ヶ月樽内熟成を行います。

シャトー ラ ミッション オーブリオンはシャトー オーブリオンに隣接し、長年ライバル関係にあったペサックレオニャンのシャトー。
17世紀、ラ ミッションの信徒によって設立されたが、フランス革命後、1983年にオーブリオンの現在の所有者であるクラランス ディロン家に売却されるまでウォルトナーによって管理された。1982年以降は新樽の使用比率を増やし、現在は100%新樽。メルロの割合は45%まで増加され、カベルネソーヴィニョンとカベルネフランは減らされた。
一般的にはオーブリオンよりもはるかにリッチで、力強いワインで、貧弱なヴィンテージによいワインをつくることにかけてはラトゥール同様、随一。依然として一級シャトー並みの品質。
畑は20ha、平均樹齢21年、平均収量45hl/ha。
発酵とマセレーションはコンピューター制御で温度管理された180hl入りのステンレスタンク、熟成はオークの新樽で20ヶ月。清澄するが、濾過はしない。

シャトー ムートン ロートシルトはポイヤック村に拠点を置く、メドック第一級シャトー。5大シャトーの中では唯一1973年に格付けの変更を実現させた。現在はその格付け変更を成功させたフィリップ ド ロートシルト男爵の娘であるフィリッピーヌが指揮を執り、パトリック レオン、エルヴェ ベルローと共にこの1級シャトーを牽引している。
毎年変わるアーティスティックなラベルが特徴的なシャトーでコレクターズアイテムにもなっています。
今回はセカンドラベル、プティ ムートン ド ムートン ロートシルト。
栽培面積は78ha、平均樹齢は45年、平均収量は40hl/ha程度。
除梗は100%、完全な果実のみ選定され木製槽で15~25日間、発酵とマセレーションが行なわれる。新樽にて19~22ヶ月熟成。無濾過で瓶詰めが行なわれる。



【テイスティングコメント】
生産者、銘柄: シャトー ジスクール 2013

この中では比較的落ち着いていて、やや酸味を感じさせる果実とヨーグルトを想起させるMLFの要素が主軸として感じられる。強烈な香りの放出はないが、品のある落ち着いたキュヴェ。残念ながらやや青さを感じる古典的なボルドーを想起。
ダークチェリーやブルーベリージャムを含めたプレーンヨーグルト、そしてピーマンやミントなどのハーブの要素、紅茶の茶葉を思わせる香りが感じられる。滑らかな質感はあるものの、やや力が足りず、かなり繊細な作りになってしまっている。華やかなスミレやインク、若い葉や生肉、ユーカリなどの要素を感じられる。日本のボルドーブレンド的。
酸味が突出、タンニンはかなり弱くパワー不足感がある。
華やかなスミレやヨーグルト、黒系果実の余韻を残す。


生産者、銘柄: シャトー モンローズ 2013
品種: カベルネソーヴィニヨン61%、メルロー30%、カベルネフラン8%、プティヴェルト1%

線は細いが高域に伸びていく、華やかで甘やかなキャンディ、あるいは黒系果実の蜜を凝縮させた様な香りが蠱惑的なワイン。しっかりとMLFがされており滑らかな質感がある。
よく熟した甘やかなカシスやブラックベリーの果実味、糖蜜、メイプルシロップ。MLFの影響を強く感じるミルクティーの香りが主軸になり、西洋杉やトースト、バニラの要素。加えてスミレの華やかさや燻製の香り。ほのかにユーカリやリコリスの要素を感じ取ることができる。
ピーマンやミントなどのハーブを感じさせる要素は控えめ。よく熟しているが生来のヴィンテージの問題か、すこしボディが弱い印象をうける。
香りの印象通り、タンニンというより酸の方が際立っている。ミルクティーやフレッシュな黒系果実の余韻を残す。
やはりグリセリン感は低いが品があり、よく出来ている。


生産者、銘柄: シャトー デュクリュ ボーカイユ 2013
品種: カベルネソーヴィニヨン90%、メルロー10%

繊細で華やかかつ甘やかで、黒系果実の蜜を感じさせる果実味があるが、モンローズの様なヒステリックな伸び方をするわけでは無く幾分か落ち着いたキュヴェ。MLFの要素も強く、滑らかでシルキーな香りの質感がある。
わずかにグリニッシュさも感じる。
主軸は果実味でカシスとブラックベリーの素直な果実味とミルクコーヒー、炭焼きのニュアンス、ほのかなユーカリやピーマンの要素が折混じる。糖蜜の様な甘露さはあるがモンローズなどの比べると控えめ。スミレなどの華やかさもあり、パストラミハムやベーコン、リコリスやクローヴなどのスパイスの風味。トマトの様な要素も感じられる。
樽やMLF、果実味はあるが、全体的に控えめに収まっているがバランスは良い。
酸はやはり例年と比べると際立っているが、タンニンとのバランスは良い。酸味と旨味の遷移も良く、繊細ながら口当たりの完成度は高い。ミルクコーヒーや黒系果実の余韻。


生産者、銘柄: ラ ミッション オー ブリオン 2013
品種: カベルネソーヴィニヨン62%、メルロー37%、カベルネフラン1%

かなりスモーキー。甘やかな果実味と比較的控えめなMLFの要素はあるが主軸はタバコやモカの風味が中心となっている。親しみやすさに欠けるが厳格なワインだと思う。
炭焼きやタバコの要素など樽的なニュアンス、そしてリコリスやクローヴなどのスパイスの要素が抜きん出ている。
そこにスミレや鉄分、燻製肉の要素、そしてバターやブラックベリーやダークチェリーの果実味、西洋杉のニュアンスが調和していく。アセロラ、トーストなどの香りも存在する。糖蜜感はあり、熟度は感じるものの、モンローズやムートンの様な甘露さは控えめ。
またスモーキーさに舵を切ったワインで、モンローズなどの高域に伸びる感じはなく、繊細でありながら控えめな印象がある。
ただ口当たりのバランスがいい。
酸味とタンニンは共に控えめでしなやか。そしてシルキーである。球体感こそないが、舌の上で暴れるタンニン、酸は無く、ミルクポーションや炭焼きのニュアンス、黒系果実、血液の余韻が続く。


生産者、銘柄: シャトー ムートンロートシルト 2013
品種: カベルネソーヴィニヨン89%、メルロー7%、カベルネフラン4%

例年より幾分か線が細いながらも、凝縮感があり、高域に伸びていく様な中域の黒系果実の甘やかさ、加えてシダーやモカの樽香しっかりと感じられるキュヴェ。
やや抽出が強くスモーキーで、MLFの影響は強いものの果実、樽起因の要素の方が目立つ。
よく要素が一体化していて、糖蜜、メイプルシロップの様な甘やかさをベースにして熟したブラックベリー、カシスと共にミルクポーションやモカや西洋杉の様な樽香が調和している。渾然一体。ボリューム感のある香り、それでいて華やかで、鉄分やスミレの様な花の香りも充実している。ワッフルやバニラ、燻製肉、ユーカリやリコリスの風味もある。やはり香りからは青い要素は感じられない。
しかしながらこちらもタンニンより酸味が際立っている。
というより、よくバランスよくまとまっている。タンニンが強すぎない。繊細さがある。
フレッシュな黒系果実を中心にほのかにミルクポーションが混ざる。酸と旨味を主軸にした余韻。


【所感】
うーん...なんともパッとしませんね...
基本的に近年のボルドーの凝縮感や高アルコール感(実際はそんなに変わらないんですけど)に慣れてしまったせいか、ボルドーとしてはかなりボディが弱い様な気がします。流石にクリュクラッセの上位のものは綺麗にまとまっているものの、口に含んだ時の粘性やタンニンの甘さが控えめで、やや酸が立っている様な気がしますね。
ありありと「いつもよりちゃんと熟しませんでした...」といった感じがワインから伝わってきます。
ムートンやモンローズなんかは華やかかつ甘露でよく出来ているのですが、いわゆる例年の...特にムートンなんかの様な明らかな別格感は無いですし、デュクリュボーカイユはやや青さを感じます。ラ ミッションはペサックレオニャンの方程式に従った例題の様なワインですが、タンニンの目の荒さが顕著です。
ジスクールに至っては香りもボディも控えめ、酸だけ立っている状態で明らかに格付けの価値を見出す事は出来ませんでした。

いや、ホントあんまり悪い事書かないブログなんですが、ここ最近のボルドーの中ではかなり奮わないと思いますよ。
いわばどのワインもベイシュヴェルと同等のボディしかなく、かつ不慣れなのか良い部分もありながら2013年なりの良さを演出しきれていない感じがします。
今回はモンローズとムートンが比較的良く、次いでラミッション...ただこれは比較的堅牢なワインなので馴染むまでに幾分かかかりそうですが...そんな感じでしょうか。
一本一本はテイスティングコメントを見て頂ければ概ねご理解頂けると思いますが、やはり肝心要は果実なのだな、と強く認識させられるワインとなっています。

ちなみにかなり穿った見方をしてしまうと、従来と収量を変えていないのでは...と思ってしまいます。
特にボルドーはかなり商業的な側面が強いので、収支は明確に見ていると思います。プリムールで予め価格が下がる事を見込んでいたならば、収量を下げすぎてもダメで収益見込みありきで収量の水準を決めてたりするんじゃないかな...とか。
まあ真偽のほどはわかりませんが、もしそうなら1ヴィンテージくらいコケても余裕の体力はあるとは思うんで、数は少なくとも従来通りのヴィンテージ程度には持って行って欲しかったですね。

基本的に従来より格段に安いので、特にモンローズなんかはなかなかいいと思います。












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プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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