【ブルゴーニュ:133】熟成が指し示すのは品種か、テロワールか。ロマネ サン ヴィヴァン5種テイスティング




こんにちは、HKOです。
本日は先日に引き続き、ワイン会で頂いたワインを俯瞰して見ていきたいと思います。



【データ】
僅か9.44haのロマネ・サン・ヴィヴァンの畑の所有者は現在10名。半分以上はDRCが所有し、他の造り手は所有面積1ha以下となっています。
故にグラン・クリュとして希少価値が高く、そのポテンシャルを含め多くの生産者が自身の最高峰のキュヴェとして扱うことが多い。

面積:9.44ha
生産者:10名
全面積の約半分(5.29ha)はD.R.C.が所有。D.R.C.以外は1ヘクタール以下。
ルロワ、ジャン ジャック コンフュロン、ユドロ ノエラが北側に、その南にD.R.C.、南端に、ロベール アルヌー、ポワゾ、ラルロー、シルヴァン カティアール、デュジャック(旧:トマ モワラールの区画)が所有。

標高は247~260m、ヴォーヌ・ロマネのグラン・クリュにおいて最も低い。傾斜はなだらか。斜面は真東向き。傾斜上部にはロマネ・コンティ、リシュブール、北側には1級レ・スショ、南側にはラ・グランド・リュが隣接。
土壌はロマネ・コンティより深く90cm程度で、粘土質の強い酸化鉄を含んだ茶褐色の土壌。母岩はバジョシアンのウミユリ石灰岩。全体の収量は35hl/ha。
情野ソムリエによる評は「偉大なロマネ・コンティの下部に位置している割には、全体的に酸味が豊かなストラクチャーを持つ。ブルゴーニュのグラン・クリュは全てこの畑から始まったとされる歴史的に価値がある畑」。


ニコラ・ポテルは1998年から2008年にかけて活躍したネゴシアン。2004年にラブレ=ロワに経営権を譲渡、2009年にニコラ・ポテルを去るまで醸造に参画していました。
父親はジャック・セイスも師事していた、プス・ドールで辣腕を振るっていたジェラール・ポテル氏。
現在はロッシュ・ド・ベレーヌ、ドメーヌ・ド・ベレーヌを起し、自身のワインを作り続けています。
今回の2002年はニコラ・ポテル本人の手によるもの。
リュットレゾネで作られたブドウを購入し、一部果梗(1/3~2/3)を残して、14~15度で4~5日間低温浸漬。低圧で圧搾され、2週間デブルバージュ。熟成時の新樽比率80%程度。
自身で畑は保有しておらず10の生産者のいずれかから購入しています。

シャルル・ヴァン・カネット率いるアラン・ユドロ・ノエラは1964年に祖父アラン・ユドロが起こしたドメーヌ。シャンボール・ミュジニーの家系ですが、ジャン・ジャック・コンフュロンとも類縁関係にあり、珠玉の特級、一級畑を保有しており、非常に評価の高いドメーヌです。
栽培は場合によってビオを使用する場合もありますが、リュットレゾネ中心の農法を行っています。
収穫後、除梗はせず、10日間の低温浸漬、アルコール発酵、プレス時に種子によるタンニンの抽出を避けるためバスケットプレスでプレス。
新樽比率は村名20%、一級30-50%、特級60%で12ヶ月-17ヶ月で樽熟成を行っています。フラッグシップはリシュブール、ロマネ・サン・ヴィヴァン。
所有区画は北側のジャン・ジャック・コンフュロンの区画に隣接しています。

ジャン・ジャック・コンフュロンはプレモープリゼで18世紀に設立されたアラン・ムニエ率いるドメーヌでシャルル・ノエラと親類関係にあります。
1991年よりビオロジックを導入し、馬での耕作、厳格なヴァンダンジュ・ヴェールトを実施。除梗は特級で70%程度。低温浸漬を行った上でアルコール発酵を行っています。ピジャージュのみで、ルモンタージュは行っていません。キュヴェゾンは2週間前後。新樽比率はクロ・ヴージョおよびロマネ・サン・ヴイヴァンで80-100%。熟成期間は15ヵ月から18ヵ月間。その後無清澄、無濾過で瓶詰め。
フラッグシップはロマネ・サン・ヴィヴァンとクロ ヴージョ。所有区画は北側のルロワとユドロ・ノエラの区画に隣接しています。

ルイ・ラトゥールは1731年にブドウ栽培を開始した、ブルゴーニュを代表する老舗ネゴシアン。現在はルイ・ファブリスが指揮を取っています。醸造はシャルル・トマ、栽培はボリス・ジャンピが担当。
今回のロマネ・サン・ヴィヴァンは除梗の後破砕、オープン大樽で醸造、オーク樽熟成(10-12ヶ月)。新樽比率は100%。
保有畑はD.R.C.とアルヌー、ポワゾ、カティアールらが保有する南端の畑の間に位置する区画。1900年に購入された区画と言われています。

カティアール・モリニエは現シルヴァン・カティアールのシルヴァンの父親アンドレ・カティアールが指揮を取っていたドメーヌです。現在はシルヴァンに全て継承済み。
1930年代に設立し、分益耕作を行いながら1950年に本詰めをスタート。1995年にシルヴァンに継承されるまで、偉大なワインを作り続けていました。元々知名度が低く、しかも古酒のため、現存する数は非常に少なく希少です。
保有する畑は南端の区画で、アルヌー、アルローなどの区画にほど近い場所にあります。




【テイスティングコメント】
生産者: ニコラ ポテル
銘柄: ロマネ サン ヴィヴァン グランクリュ 2002
外観は赤みの強いルビー、粘性は中庸。
比較的若々しく華やかさが前面に出ており、凝縮感も高い。
ドライフラワーのスミレの花の華やかさ、イチジクやラズベリーのジャムなどの濃密な果実味を残しながら、熟成起因の旨味が強く感じられる。ほのかに茎の青さを残した要素。
酸味は滑らかで、繊細ながらフルーティーな余韻を残していく。


生産者: アラン ユドロ ノエラ
銘柄: ロマネ サン ヴィヴァン グランクリュ 2002
外観は赤みの強いルビー、粘性は中庸。
オレンジピールの様な清涼感のある風味、そしてスミレのドライフラワーを思わせる華やかさ。華やかさの方向性は似ている。
果実味が適度に甘みを残した状態で残しており、例えるならばダークチェリーやブラックベリーのコンポートを思わせる果実味が感じられる。二コラポテルほどの青さは無いが茎的な要素は残す。ほのかな紅茶の要素。
酸味と旨味が調合し、加糖していないフルーツのジャムを思わせるより力強い旨味が広がる。


生産者: ジャン ジャック コンフュロン
銘柄: ロマネ サン ヴィヴァン グランクリュ 2002
外観は赤みの強いルビー、粘性は中庸。
この中だと果実味と旨味は強く表出しているタイプで、パワフルさを感じさせる。華やかさの方向性は同じだが、アラン ユドロ ノエラと比べると控えめ。
オレンジピール、そしてブラックベリーやダークチェリーの様な果実味が前面に表出し、ドライフラワーの様な華やかさも並存する。ドライハーブ。非常に甘露な香り。
華やかさや官能性こそ控えめながら、酸味と旨味のバランスが良い。タンニンもシルキー。


生産者: ルイ ラトゥール
銘柄: ロマネ サン ヴィヴァン グランクリュ レ キャトル ジュノー 1985
外観は橙を帯びた赤みの強いルビー、粘性は中庸。
熟成はかなり進んでいるものの、蜜の様な果実の要素がしっかりと残っている。枯葉、土の香りなどの熟成起因の要素が残りつつ、イチジクや梅しば、アセロラなどの風味やクランベリーなどの赤系の果実味がしっかりと感じられる。ドライフラワー。出汁の様な澄んだ液体の中に酸味と甘露さが感じられる。
繊細で酸味は程よく、後味は柔らかな風合い。
出汁の様な旨味の広がり方が素晴らしく、華やかさと甘露さも合わせて綺麗に広がっていく。素晴らしい。


生産者:カティアール モリニエ
銘柄: ロマネ サン ヴィヴァン グランクリュ 1983
外観は橙を帯びた赤みの強いルビー、粘性は中庸。
熟成起因のじんわりとした旨味、広がる様な旨味。
こちらはバランスの良いルイラトゥールと比べると枯淡な風合いを強く感じられる。
枯葉、森の下土の様な熟成香が主体的で、生肉や鉄の様な要素。そして梅しばの様な旨味の表出した果実味が感じられる。ドライフラワーなどの要素が感じられる。
甘みは控えめで、枯れた味わいではあるものの、非常に滋味深い味わいとなっている。
酸味やタンニンはほぼ無く、ほのかな酸味と明確な旨味が出汁の様に広がっていく。




【概要】
若くとも2002年、つまり14年熟成のワインを主軸とし、1985年の31年、1983年の33年の異なる経年、生産者を同一畑(ロマネ サンヴィヴァン)で見比べる試みです。
今回多人数でのテイスティング会になるため、あまり精緻に分析をする事は難しかったので、コメントは簡易版になっています。

まず最も興味深かったのが、熟成を経て、醸造要素が馴染み落ち着いた後の姿を見ると、若い時分は全く違っていたワインが近しい方向を向いている様な印象を受けました。
90年代80年代の削ぎ落とされたものに関してはかなり近い顔になるのは存じていたのですが、15年程度の熟成から既に、華やかさを主軸にする官能的な香りに共通点が見られるとは思いませんでした。
厚くなりすぎない色付きやタンニン、絶妙なオレンジを思わせる清涼感、そしてドライフラワーのむせ返る様な華やかさ。熟成を重ね馴染んできた香り。素晴らしい。

とはいえ、そんな感じで大きな共通点はありながら微細な違いは残っています。
二コラポテルはフレッシュさと幾分かの青さを想起させ、ユドロ ノエラは極めて華やかさが突出しています。そしてジャン ジャック コンフュロンはボディと果実味の厚みが目立ちます。
ニコラポテルとユドロノエラの違いを生み出しているのは、恐らくは低温浸漬の差でしょうか。ニコラは4~5日に対してユドロノエラは10日もの期間を抽出に当てています。
ピジャージュとデブルバージュの頻度は不明ですが、恐らくはユドロノエラの方が多いのではないかと思います。
抽出が際立っているからかもしれませんが、ユドロノエラより二コラポテルの方が除梗比率は高いながらも梗のニュアンスが目立っている様な気がします。
そういう意味でニコラポテルの方がピュアの様な気がしますね。新樽比率はニコラポテルの方が高いですが、あまり影響を感じません。
コンフュロンはこの中だと最も果実味に溢れ、力強いサンヴィヴァンとなっています。
新樽比率は高く、また除梗をしっかり行なっているからか、全体的に味わいに強い凝縮感とクリアさを持っていたのだろう、と推測できます。熟成後も蜜の様な甘露な香りを残しており、強い体躯のワインであることがわかります。
抽出もしっかりとされており、華やかさを感じます。
いずれもサンヴィヴァンを体現したワインだと思いますが、この中だと「それっぽい」のはやはりユドロノエラでしょうか。この華やかさはまさにヴォーヌロマネ、サンヴィヴァンのものだと思います。
エシェゾーであればもっと軽量だし、グランエシェゾーなら果実味や丸みがあります。そう言う意味で華美なユドロノエラはワインはハマってると思います。

次はさらにエイジングされたルイラトゥールとカティアールモリニエ。
ここまで来るとどちらかというとテロワールというよりは品種共通の顔になっているような印象を受けます。
なので、サンヴィヴァンの熟成というよりは、ブルゴーニュのピノノワールの熟成という感じですね。
全体的に枯葉や土の香り、梅しばやイチジクの様な熟成起因の香りが主体的で、極めて枯淡な風合いを感じさせます。
その中で勿論差異はあります。ルイラトゥールはほのかな甘露さを帯びていて、カティアールモリニエは生肉や鉄の様な風味を感じます。これは生産者の違いもありますが、どちらかというとヴィンテージの差かと感じました。
1983年が平均的というには厳しいヴィンテージだったかと思いますが、タンニンが強いのが主要な傾向の様です。
よってカティアール モリニエのワインにも鉄分や生肉の要素が残っているのではないかと。
逆にルイラトゥールは普通の年の様なので、幾分か良くできたのでしょうね。これくらいの時期のネゴシアンはあまりいい話を聞かないのですが、例外的に良くできたのかな?と思うくらい、エイジング後の姿も様になっていると思います。

今回良く分かったのが熟成後テロワールの性質が残るという点と、進みすぎるとテロワールも希薄になるという点でしょうか。長期熟成したものもピノノワールとして非常に美味しいのですが、2002年の熟成と比べるとサンヴィヴァン的な方向性が見て取れるかというとそうではありませんでした。

非常に興味深い体験でした。
前回の冒頭でも述べましたが、改めてお礼を。
ありがとうございました。


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

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プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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