新樽の魔術師ドミニク ローラン、20年の熟成を経たシャンベルタン、ラ ロッシュ、リシュモンを利く


こんばんわ。
今日はドミニクローランの古酒、シャンベルタン、ラ ロッシュ、リシュモーヌです。

前回は近年設立されたばかりのドメーヌローランの記事を投稿しましたが、本日は正に新樽の魔術師と呼ばれていた頃のネゴシアン、ドミニクローランの古酒を頂きました。
ドミニクローランは元々お菓子職人で、本職を投げ捨てて1988年からワインの世界に入り始めました。
当初から非常に高品質のワインを作っていることで評価は高かったのですが、新樽に拘りすぎたが故にテロワールを尊重していない、ギイアッカの影響下にあった等と、まぁ賛否両論があります。
しかしながら樽へのこだわりは相当なもので、自身で理想とする樽を作る為に板材の選定から生産まで行ない、しかもそれを他のドメーヌや外国に販売している。
樽を自身で作り始めてから新樽比率は落ち着きはじめましたが、今回のワインは正に新樽200%の時代の代物。
ネゴシアンなのでワイン自体は樽ごと他の生産者のものを買い付けるのですが、その購入条件は「古木から作られた葡萄を手積みした」生産者のもののみ。購入したワインは澱とガスごと新樽に入れ替え、半年後に再度新樽に入れ替える。これが新樽200%の所以。基本的に抽出は弱めのようです。

では行ってみましょう。


生産者: ドミニク ローラン
銘柄: ニュイ サン ジョルジュ プルミエクリュ ラ リシュモーヌ 1993

、WA89pt
色調はこの中で最も濃いルビーで、粘性は高い。
味わいも他の2本と比較するとやや濃い印象で、コリアンダーなどのスパイシーなニュアンスが強く感じられる。
濡れた木材や漢方、炭焼きなどロースト香と熟成香が主体となる。クロ ド ラ ロッシュ、シャンベルタンの様に落ち着いたエレガントな感じではなく、チェリーリキュール、プラムの凝縮した果実味。非常に華やかな薔薇、スミレの芳香。濡れた木材やシャンピニオンの風味が感じられる。
酸味、タンニンはやや強く収斂性もある。3本の中では最も抽出が強くパワフルでスパイシーなワイン。


生産者: ドミニク ローラン
銘柄: クロ ド ラ ロッシュ グランクリュ 1992

約18000円、WA87pt
色調は淡いルビー、粘性は高い。
非常に凝縮した旨味がある。素晴らしい古酒だ。
シャンベルタンと比較すると、やや青さを感じるが、こちらもフランボワーズやチェリーリキュールの凝縮した果実味が感じられる。非常にクリアで澄んでいる。茎っぽさやスミレ、薔薇などの華やかで青っぽい芳香。なめし革、燻製肉、血の香り。そして焦げた木材、紅茶の風味など。クローヴ、沢庵の香りも。
不思議な事にシャンベルタンと比べてもパワー感が突出している。酸味もタンニンも溶け込んでいて凝縮した果実の旨味が楽しめる。
素晴らしいクロ ド ラ ロッシュ。


生産者: ドミニク ローラン
銘柄: シャンベルタン グランクリュ 1992

約34000円、WA93-96pt(1993)
色調は最も淡いルビー、粘性は高い。クロ ド ラ ロッシュ同様非常に状態の良い卓抜した古酒。非常に際立った旨味を有しておりストロベリー、フランボワーズやチェリーリキュールの果実味が液体に凝縮されている。そこに綺麗に現れた濡れた樹皮、腐葉土、紅茶、燻製肉などの熟成香、クルミ、グローヴ、バニラなどの甘やかな風味が複雑に編み込まれている。
タンニンや酸などのボディ部分は限界まで削ぎ落とされ、膨大な熱量を持った核から放たれる複雑な芳香のみが残存している。
いわゆる「鉄の鎧の中の鉄の拳」と称されるシャンベルタンとは異質で、どちらかといえばクロ ド ベーズに近い、芯にエネルギーを持ったシャンベルタンであるという印象だ。
酸味、タンニンはすでに旨味にすべて溶け込んでおり、旨味と凝縮感に満ちた、凄まじいシャンベルタン。


びっくりするほどピュアでエレガント!1993年はやや濃いめの作りですが、素晴らしいのは、なんといっても1992年。

従来のドミニクローランの樽っぽいイメージが一切ない凝縮した旨味と、経年により限界までそぎ落とされたタンニンと滑らかな酸。これが本当に素晴らしい。滋味に溢れている。
フーリエのグリオットシャンベルタン1980に感動したのは記憶に新しいですが、それと同等の素晴らしさ。極めて完成度の高い古酒です。
恐らく樽からのタンニンが起因してこの20年間綺麗に熟成を重ねたのだろうな、と思います。
逆に樽が弱ければ、ここまで熟成する間にタンニンが抜けて酸と果実味にトゲトゲしさが残ったまま終わってたのではないかな、と思います。意図しての樽使いかはわかりませんが、92年はとても良いバランスだったと思います。

さて今回のテイスティングで面白かったのが、1992年と1993年のヴィンテージ差。そしてクロ ド ラ ロッシュとシャンベルタンの差異ですね。

ラ ロッシュは16.9haのモレの特級畑でジュヴレシャンベルタン寄りの一級モンリュイザンに隣接しています。浅い表土で石の多い粘土石灰岩が基岩。標高は約280-300m、傾斜はややキツ目。


シャンベルタンは最も偉大なブルゴーニュワインの王とも言える畑で基岩は浅い泥岩の表土でバジョシアン階のウミユリ石灰岩、泥炭岩、プレモー石灰岩、粘土質石灰岩で構成されている。
グリザール小渓谷からの微風の影響を受けるので、やや冷涼な気候でこちらも標高は約280-300m程度。

通常であればシャンベルタンの方が突出した力強さ、肉厚さとフィネスを放つのですが、ドミニクローランのワインを飲むと、ややラ ロッシュの方がパワー感がある様な気がしますね。やや粗野な部分は感じられるのですが。石灰岩が基岩になるので、ミネラル感が出るはずですが、それがパワー感というか硬さにフィードバックされているのかも。
対してシャンベルタンは非常に柔らかく穏やかなタッチ。一瞬穏やかと勘違いしそうになったのですが、凝縮感は卓抜しています。比類なきフィネスのあるシャンベルタンで、クロ ド ベーズにも通じるタッチ(実はクロ ド ベーズだったりしない??)だと思いました。
92年というヴィンテージ特性と冷涼な気候がタッチを柔らかくしたのでしょうか...。
鉄の鎧のくだりがありましたが、ボディの強さというより、密度や目の細かさでいうならしっくり来るな、というのが所感です。

次にヴィンテージ。
比較的色が薄く、旨味や果実味の凝縮感を除いて限界まで削ぎ落とされた感のある1992に対して1993はより濃く、パワフルでボリューム感のある作りになっていたと思います。
リシュモンはヴォーヌロマネ寄りの標高260-280mに位置する一級畑でややキツ目の勾配が特徴的です。日照条件はなかなか良さそうですし、立地的に悪くないですが、さすがに特級と比較してパワフルなニュアンスが出るのはちょっと想像しにくいので、これはヴィンテージ起因か醸造方法に起因するものだと思います。
ただ醸造方法について年毎の細かいレポートがないので、ヴィンテージに絞って考えるとこんな感じかなと思います。
ヴィンテージの特徴は以下の通り。

■1992年
開花から結実まで雨がちであったが、夏頃には天候が回復。特に問題のない気候が続くが、コート ド ニュイの収穫開始である9月18日から、僅か4日後豪雨に見舞われる事になる。

■1993年
春と初夏に発生した大雨がウドン粉病の問題を起こした。夏頃は夏日が続き非常に素晴らしい天候が続いた。9月二は入り天候がぐずつき92年同様9月22日に大雨に降られた。

共に9月22日に大雨に見舞われたアクシデントはあったものの、93の方が夏場の生育が早かったと思われますので、収穫時期が前倒れていたと思います。
そのため多くの生産者が大雨に見舞われる前に概ね収穫が完了していたはず。
92年はそもそも生育が93年より悪く、収穫開始からわずか4日後に大雨に見舞われていたので恐らくこの禍を逃れられた生産者は偶然生育が良かったか、もしくは早めに収穫を始めた生産者となるので、恐らくドミニクローランは間に合っておらず、影響を受けたと考えられます。
その為、92年は夏場の気候の観点も含めて色合いが淡く、93年に比べるとやや力強さで劣ると考えます。
...そういう考え方をすると92年のバランス感は、やや劣るヴィンテージという条件によるもので、それが良い方向に向かっていったのだと思います。
93年は良い年(といっても2000年代では平準的なヴィンテージであった訳ですが)ですが、2012年の現段階では、やや力強すぎる感じがしますので、92年と同等になるにはもう少し熟成が必要となると思います。

結果的には1992年は今飲んで大勝利といったところですね。マジで美味いです。93年もじきにいい線行くんじゃないかなーと。

新樽の魔術師は熟成によって素晴らしく進化する本当の魔術師でした。


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HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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