ボルドー スーパーセカンド 1: 第二級デュクリュボーカイユ2000、第二級レオヴィルラスカーズ1993, 1999。水平垂直で比較する。

こんばんわ。
今日から3回くらいに渡ってボルドーです。幾つかはなかなか面白い考察というか、比較ができたと思いますので、もし宜しければ是非お付き合いください。ちなみにただでさえ長いこのブログですが、今回はかなりの長編となります。

メドック格付2級、レオヴィル ラス カーズ、および同じく2級デュクリュボーカイユのオールドヴィンテージです。


レオヴィルラスカーズはサンジュリアンのメドック第二級シャトーですが、その実力は時に一級を凌ぐ、いわゆるスーパーセカンド。ジャン ユベール ドロンが指揮を取っています。その強烈なこだわりは年によっては50%程度の収穫量をデクラッセしセカンド、サードラベルに回します。
生産量は約21万ボトル。
畑はラトゥールに隣接する主要な畑が40ha、総面積は97ha。平均樹齢は30年で、平均収量はローヌやブルゴーニュの生産者と比べるとやや多い50hl/ha(ただ年によって20hl/ha代になることも)。
木製タンク、コンクリートタンク、ステンレスタンクの槽で20日間程度マセレーションとアルコール発酵を行い、新樽50~100%で12~24ヶ月程度の熟成を行った後、無濾過で瓶詰めを行います。

デュクリュボーカイユはオレンジ色のラベルが特徴的なメドック第二級シャトー。こちらも年によっては第一級を凌駕する事からスーパーセカンドとされています。2003年からメドックの名士、ボリー家のブリュノ ボリーがこのシャトーを牽引しています。
ボリー家が所有して以降30年間に渡ってその品質を高めたため、現在の地位を築き上げたといえる。
栽培面積は52ha、平均樹齢38年、平均収量49hl/ha。畑で選果を行い手摘みで収穫後、除梗機で除梗。温度管理されたステンレスとコンクリートのタンクで17~21日間、アルコール発酵とマセレーションを行う。新樽50~65%で18~20ヶ月樽内熟成を行います。


さて、まずはレオヴィルラスカーズのヴィンテージ比較からいきます。


生産者、銘柄: シャトー レオヴィル ラスカーズ 1993
品種: カベルネ ソーヴィニョン65%、メルロー19%、カベルネ フラン13%、プティヴェルド3%

17000円、WA90pt
色調は濃いガーネット、粘性は中庸。
やはりレオヴィル ラスカーズはすごい。
熟成香はあるが、今現在非常にバランスの良い状態となっている。
濡れた土や燻製肉、落ち葉、シベットなどの熟成香に、西洋杉やソースの様なニュアンスが混ざる。果実味はしっかりと残っており旨味も十分に現れている。紫スモモやカシスの穏やかな果実味、スミレ、タバコ、甘草や焼いたゴム、栗の香り。
酸味やタンニンは穏やかでシルキーな口当たり。とげとげしさは一切感じない。重心は高めで密度はやや低め。滋味を感じる作り。
口の中で木材とカシスの風味が広がる。突出した個性はないが、ボルドーらしさという意味では、やはりレベルが非常に高いワインだと感じた。


銘柄: シャトー レオヴィル ラスカーズ 1999
品種: カベルネ ソーヴィニョン62.4%、メルローとカベルネ フランで37.6%

約36000円、WA91pt
外観はやや小豆色になった濃いガーネット。粘性は高い。
やや熟成感を感じるが、完璧に果実味が残っている。丁度最初の飲み頃といったタイミング。
酸やタンニンは非常にイキイキとしている。
リコリスや薔薇やスミレなどのドライフラワー、腐葉土、トリュフなどの熟成香。濡れた樹皮。
ドライイチジク、ブラックベリーの滑らかな果実味、生肉の野性的なニュアンス。ユーカリ、炭焼きなど。
全体的には木材の香りとイチジクなどの複雑な果実味を強く感じる。
タンニンは優しく酸も穏やかで滑らか。パワー感、エレガントさが綺麗に現れている。


【ラスカーズの垂直比較】
熟成としてはいずれも最初の飲み頃に差し掛かった位ですが、非常に美味かったです。
90年代のレオヴィルラスカーズは何度か飲んだ事がありますが、作柄の良し悪しとしては下記の通り。

■1999年>1998年>1993年
1999年と1998年は大体同じ位の水準で、2004年などと同程度の作柄です。対して1993年はあまり良い作柄とは言えず、2000年代、1990年代通じて、最悪の作柄である1991年に次ぐ不作と言われています。

そんな中で極めてバランスが良く卓抜した味わいだったのは1998年ですね。
あれは神懸かり的で作柄を超越した味わいだったと思います。想像以上に若々しく、適度に熟成を感じる作り。
1999年は作柄もそこそこ良かったせいか、果実味の方が目立っていました。
ボディはムートンの様なリッチなタイプですが、やや土っぽいラトゥールの様な要素も感じられます。ボルドー王道系を突き詰めた味わいだと思います。
93年はかなりエレガント、というと凄くいい感じですね。その実素晴らしいには素晴らしいんですが、今ひとつ他のヴィンテージに比べると密度が薄い様にも思えるんですが(これは熟成に起因するものである可能性も高いです)熟成香がすごい綺麗に出ていて、とても良い古酒に纏まっていると思います。
逆にオフヴィンテージだからこそ、現状美味しく飲める様になってるのかな、と。
個人的には1998が最も好きですが、品質としては1998と1999は拮抗していたと思います。1993は美味しいですが、やや1998と1999に劣る様な印象です。

ちなみに1998のアッセンブラージュはカベルネソーヴィニヨン76%、メルロー15%、カベルネフラン9%と、今回の2ヴィンテージと比較して、かなりカベルネソーヴィニヨンの比率が高くなっています。個人的に最も好みだった1998年のレオヴィルラスカーズにどこかオーブリオン以外の第一級の影が見えたのは、このヴィンテージのカベルネ比率の高さに起因するものかもしれません。だからこそ、1998が最も好みに感じたのかもしれません。


さて、次はデュクリュボーカイユです。


生産者、銘柄: シャトー デュクリュ ボーカイユ 2000
品種: カベルネソーヴィニヨン78%、メルロー20%、カベルネフラン2%

約20000円、WA95pt
外観は濃いガーネット、粘性は高い。
13年前のヴィンテージとは到底信じられない位に若々しく、散漫さが無く、雑味を感じない化け物クラスのボルドー。
香りからして、既にその目の細かさや密度の高さは感じ取れるが、同時に若干インクっぽさやピーマンっぽい若いボルドーのニュアンスも感じられる。
果実味は凝縮感に満ちており高密度のカシスやプラムの果実味を感じられる。そして西洋杉、小豆や濡れた土の様なニュアンス、葉巻やドライハーブ。シベットや生肉の野生的な風味。トリュフ、リコリス、溶剤、炭焼きやゴムの様なロースト香が現れる。
エレガントさがありつつ、野性的な側面も見られるボルドー。
酸味やタンニンは落ち着いてきているが、今だ強め。しかしながら卓抜した果実味と麗しい木材の香りが非常に心地よい。より若い状態か、あと10年程度熟成を重ねれば美味しく頂けるのではないか。余韻は長い。


【ラスカーズとボーカイユの(ほぼ)水平比較】
今回のレオヴィルラスカーズとデュクリュボーカイユを比較する方法は2点あります
1:シャトーの特徴を知る為にどちらかの作柄に近いヴィンテージ、もしくは同一ヴィンテージで比較する。
2:作柄の個性を知る為になるたけ近い条件(ヴィンテージ)で比較する。

1でいうと、今回のデュクリュボーカイユはミレニアムヴィンテージですので、比較できるとしたら09か10になると思います。まあこれだと熟成年月が長すぎて良い比較にならないので、妥当に2番でいきます。

デュクリュボーカイユ2000とレオヴィルラスカーズ1999。
前述の通り2000年のサンジュリアンは未曾有の良ヴィンテージでした。いまでは05、09、10と同程度ですが、今ひとつだった90年代と比べると、奇跡的なヴィンテージです。対して1999年は決して悪いヴィンテージではありませんし90年代としてはそこそこ良いヴィンテージに含まれます。
共に約13年程度の熟成を経たものを飲み比べてみると、まず2000年のデュクリュボーカイユの若々しさに驚愕します。もともと硬くて強固なデュクリュボーカイユですが、10年の熟成を経てなお、インクっぽさやピーマンのニュアンスが残っている。果実味もフレッシュな果実味は落ち着いますが、タンニンも酸もギチギチで、まだまだ飲み頃が始まっていない印象。そして、とてもではないですがあと一年で何とかなる様な硬さではありません。
対してレオヴィルラスカーズは丁度最初の飲み頃を迎えていて、熟成香とイチジクの様な果実味のバランスが取れています。酸もタンニンも心地よい。まだまだ熟成はしますし、人によってはまだまだ若いと感じるかもしれませんが、とてもいい状態だと思います。
少なくともピーマンやインクっぽさは無くて綺麗に溶け込んでいます。
2000年と1999年は大分ポテンシャルが違いますね。

そして、セパージュとしてはデュクリュボーカイユのカベルネ比率は約78%、レオヴィルラスカーズは62%。
メルローに関してはレオヴィルラスカーズの方が上回っています。
なるほど、ピーマン香やインクっぽさはカベルネ比率が高く若いヴィンテージに出やすいですが、デュクリュボーカイユについては、ヴィンテージとしても強く、カベルネソーヴィニヨンの比率も高い為顕著に現れたのだと思います。対してレオヴィルラスカーズは、デュクリュボーカイユに比べてややカベルネ比率が低く、かつ良く熟成しているのもあり、出ていたとしても早い段階で溶け込んでいたのではないかと思います。
※最近の良質な生産者は若くてもこれらの要素を出さないらしいので、こと最近に限ってはあまり意識する必要はないのかもしれません。
またヴィンテージ特性もあるのかも知れませんが、若干レオヴィルラスカーズは丸みがある様な気がしますね、割とカベルネソーヴィニヨンの比率が高いものは若い時に青さやソリッドさを感じるのですが、メルロー比率の若干の高さがうまい具合にリッチさに反映されたのかな、と。
新樽比率がレオヴィルラスカーズの方が幾分か確かに高いですが、特段デュクリュボーカイユと比べてレオヴィルラスカーズに新樽の強さは感じませんでした。
樹齢に関してはデュクリュボーカイユの方が高いですが、8年差は誤差範囲だと思いますね...いやシャトー ヌフ デュ パプとか80-100年のとかありますから...収量とマセレーションに至ってはほぼ同等。
ここらへんの要素よりもセパージュやヴィンテージによる個性の方が出ていたと感じました。


■テクニカルデータまとめ

※総合ポイントはF1形式を採用。ただどれだけ手を混んだ作りか、ヴィンテージの良し悪ししか判断していない為、調和を重視するワインの旨さとしては指標にはあまりなりません。
※ピジャージュ、ルモンタージュ、ビオの有無、除梗ありなし、圧搾時の手法などは資料が見つからなかったので考慮していません。なので一部、これらの要因が突出していた場合上記の指標通りの作りにはなっていません。


以上です。
大半の人が「なげーよ!」と思って流し読みか、もしくはブラウザバックものの日記だったと思います。
総評としては、やはりボルドーにおいてはセパージュが最重要だと思いました。
その中でカベルネソーヴィニヨンは若い内はやや厳しいですが、そのものの果実味が強い時や、熟成が上手く進んでいる時は非常に魅惑的な味わい。ただ半端な時期は正直キツイ。それに対してメルローは若い内は茹でた小豆の様なニュアンスが感じられますが、カベルネソーヴィニヨンとのアッセンブラージュを行った際は、丁度中間を埋めるが如く補助している品種だと思います。
勿論メルロー主体も素晴らしいワインが作られますが、ことメドックにおいもなくてはならない品種だと。


いやー、勉強になりました。俺がね。




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No title

ラスカーズの1997年ではありますが自分にとって思い入れのあるワインになります。一度しか飲んでおらずワインを飲み始めたばかりで味も覚えてませんがワインがこんなに美味しいものなんだと感じたのを覚えています。家のセラーに一本ありますがいつ飲むかは決めていません。もし1997年を飲む機会があればぜひレポートして頂きたいです。いつもブログ拝見しています。

No title

いつもご覧いただいてありがとうございます!
そういうお言葉をいただけますと大変更新の活力になります!

レオヴィルラスカーズは本当に美味しいですよね。
私が最初に感動したワインはシャトータルボーでした。
最初に感動したワインって味は覚えていなくても、心に感動だけ強く刻まれるのですよね。
今となってはそれが本当に素晴らしいかは結構微妙な所ですが、特別なワインだと思っています。
レオヴィルラスカーズ1997はぜひ機会があれば!
プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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