【カリフォルニア:2】2つのスタッグスリープを冠する生産者。ワイナリーとワインセラーズを比較する。



こんばんわ。

今回はナパヴァレーの銘醸地スタッグスリープス ディストリクトから2つのワイナリーをセレクトしました。
ひとつはスタッグスリープス ワイナリー、そしてスタッグスリープス ワインセラーズです。
この2つのワイナリー、さながらクラレンス家に併合される前のラ ミッション オーブリオンとオーブリオンがごとく名前が原因で揉めに揉めたワイナリーです。
ワインセラーズのS.L.Vがパリテイスティングでボルドーの1級シャトーを下した事で一躍トップ生産者に躍り出た事は有名な話です。今でこそスクリーミングイーグルやハーランエステート、ボンドやコルギンなどボルドー1級と同等かそれ以上の評価を得るワインが多いですが、70年代というボルドー不遇の時代とはいえ、その敗北には大きなセンセーショナルが走った事でしょう。それによってスタッグスリープス ワイナリーの方が歴史は古いですが、ワインセラーズが圧倒的な知名度を獲得します。
で、そこで揉める訳だ。同じ様な名前だから。
結果、アポストロフィーの入れ方(※写真参照)を変える事で決着するのですが、個人的には「そういう問題か!?」といった感じです...

さてそんな2つのワイナリー。
現在はニッキ プリュスが指揮を執るスタッグスリープ ワインセラーズ。
パリテイスティングの主役とも言える生産者。
樹齢14年から40年のカベルネソーヴィニヨンを持つスタッグスリープ ヴィンヤードとフェイ ヴィンヤードで収穫した良質な葡萄を更にポジティブセレクション。MOGシステムで除梗を行いそれぞれステンレスタンクで醗酵。MLF後、新樽比率90%のフレンチオーク小樽で20ヶ月熟成、ブレンドされ出荷されます。

不遇のお隣、スタッグスリープ ワイナリーは19世紀終盤に設立された老舗ワイナリー。ロバートブリタンが指揮を取り、現在はベリンジャーの傘下となります。カベルネとプティシラーを主に作っており、どちらかといえばプティシラーの方で手腕を発揮しているようです。今回はカベルネソーヴィニヨン。醸造方法は不明。

なお、スタッグスリープの気候と土壌は以下の通り。
標高は20-123m、降雨量は750mm(東京の半分以下)で真夏の平均32 ~34 ℃。基本的に非常に温暖ですが海からの涼風と霧が夜間岩肌を冷やすので寒暖の激しい好適地と言えると思います。表土は50cm ~180cm ほど(大体モレ サン ドニと同じくらい)の厚さで、岩が多く、下には堅い粘土質の基岩。

ではいってみましょう。


生産者: スタッグスリーブス ワイナリー
銘柄: ナパヴァレー カベルネソーヴィニヨン 2005
品種: カベルネソーヴィニヨン 100%


8000円、WA91-93pt
外観は濃いガーネット、粘性は高い。
やや青っぽい風味を残した樽香の強いカベルネソーヴィニヨン。
新世界的なブラックベリーやカシスの過熟的で濃厚な果実味。シロップの様な甘さ。
こちらの方がより炒ったコーヒー、カカオのローステッドなニュアンスを感じる。
そして薔薇や茎、ユーカリ、リコリス、ピーマンの様なやや青っぽいニュアンス。
葉巻の様なスモーキーさを感じる。インク、鉛筆っぽさなど。
やや酸が際立っており、タンニンは穏やか。全体的に丸みがあるシルエット。
口の中で甘酸っぱいカシスや茎の様な風味が広がる。


生産者: スタッグスリーブス ワインセラーズ
銘柄: カスク 23 カベルネソーヴィニヨン 1999
品種: カベルネソーヴィニヨン 99%、プティヴェルド1%


40000円、WA89pt
外観は透明感のある濃いガーネット、粘性は高い。
ややボディはスタッグスリープワイナリーと比較すると軽めに感じる。
ただそれは樽が溶け込んでいるからかもしれない。こちらの方が純粋な果実味の凝縮感を感じる。
新世界的な完熟したブラックベリーやカシスのジャム、シロップの様な甘み。果実味の方向性はスタッグスリープワイナリーと近い。
しかしながら青さというより西洋杉、スーボワ、ミントやユーカリなどの清涼感を感じるニュアンスがやや強め。
そして穏やかなタバコ、炭焼きや燻製肉、血液っぽさ。リコリス、ややスパイシーな風味もある。
酸味やタンニンはやや強めだがトゲトゲしい感じは無く滑らか。
口の中で木材やブラックベリーと果皮が広がる。余韻は長く続く。


ごちそうさまでした。
以下感想です。
まず双方の全体的な印象としては、果実味の出方は非常に近いと思います。新世界的な過熟感のある甘露でボリューミーで分厚い果実味がベースとして存在しています。
その上で、経年による影響もあるかとは思いますが、ワインセラーズの方が樽がしっかりと溶け込んでおり、果実味が澄んでいる様に感じました。その分ボディはワイナリーと比べるとやや軽い印象を受けましたが、ボルドーの様に綺麗に均整が取れていると思います。そしてスモーキーさやちょっとした青さは感じられます。(あくまでボディのみ。風味自体はボルドーっぽさはあまり無いです)
ワイナリーの方はロースト香が強く際立っていると思います。強烈な樽香と濃厚な果実味が際立ち、いわゆる新世界の優れたカベルネソーヴィニヨンといった感じだと思います。こちらも青さを感じるのですが、他の要素がとても強いのでさほど気になりません。

あくまでベースは新世界的であります。スタッグスリープ自体がとても条件であり、納得のいく果実味ではあります。共に隙のない密度の高いカベルネソーヴィニヨンだと思います。
今回は若干カスク23の方が複雑さが垣間見れます。

しかしながら今回の比較はヴィンテージが異なりますし、ワインセラーズはワイナリーに比べて6年間位経年していますのであまり良い比較にはなっていないかと思います。ボディの軽さ(というか穏やかになっているという捉え方)や複雑さは経年で説明出来ますから、ワインセラーズの2005年はより強いものであると想像できます。果実味に大きな崩れが無い事を考えると、ワイナリーと比較してより強いワインと考えるのが妥当かと。2005年を飲んでみない事にはわかりませんがね、勿論。

新世界のカベルネソーヴィニヨンはなかなか自分で飲む機会が無いですから、貴重な経験が出来たと思います。



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No title

スタッグスと聞いて(ガタッ!

カスク23を一度三日間にわたってティスティングカウンターに通った程度しか飲めていないのですが、スタッグスって割りとキレ味がいいというか甘味よりも鋭いタンニンっ気が目立つ印象がありました。
清涼感が――それもカベソーとメルロ主体から――際立っているのが面白いなぁと思っているのですが、それって畑効果でしょうか?醸造の違いかしら?

アメリカも案外畑の色々が複雑なのでサブAVA把握(同じ畑、違う畑で同じ生産者とか)ってもっと大々的にやって欲しい所ではあります

No title

ヴィンテージや醸造かもしれませんね。同じスタッグスリープディストリクトでワイナリーの方はかなり濃く仕上げていますので。
勿論畑が涼しかったりしたら畑の影響もあるかもしれません。
カリフォルニアのカベルネはそこまで飲んでいないので何とも言えませんが、ピノノワールは有名どころの単一畑が少しずつ定着している様に思えます。ただヴィンヤードの上位にあるリージョンやサブリージョンは広大かつ、好き放題品種栽培しているので、今後も有名な産地以外は定着が難しいのではないかな、と思っています。
プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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