【ブルゴーニュ:7】アルマンルソー、2004年ヴィンテージ4種を検証する

こんにちは。
前回に引き続きジュヴレシャンベルタンです。
偉大な生産者を多く抱えるジュヴレシャンベルタンですが、その代名詞とも言える5人の生産者が居ます。デュガ ピィ、クロード デュガ、フーリエ、ドニ モルテ、そしてアルマンルソー。
いずれもブルゴーニュを代表する生産者で個性豊かな極めて高品質なワインを生み出します。
とりわけ評価が高くファンが多いのが、アルマンルソー。彼の作るシャンベルタン、シャンベルタン クロ ド ベーズ、1級クロ サン ジャックはまさに別格。ブルゴーニュでも群を抜いた偉大なワインとされています。

アルマンルソーはジュヴレシャンベルタン最高の生産者のひとり。ルーミエ程では無いにせよ、旗艦銘柄の特級シャンベルタン、クロ ド ベーズ、一級クロ サン ジャック、リュショットは瞬間蒸発銘柄です。
葡萄の平均樹齢45年以上。ただでさえ収量の少ない古木。かつ収量を25hl/haにまで絞った葡萄はリュットレゾネに則って栽培、熟したタイミングでやや早めに収穫されます。除梗は90%程度行われ低温浸漬を経て、アルコール発酵が行われます。ピジャージュは1日2回程度。キュヴェゾンは20日間。その後シャンベルタン、クロ ド ベーズ、クロ サン ジャックが100%新樽、その他の特級は80%新樽で20ヶ月程度の熟成を経たのち軽く濾過、卵白での清澄を行ったのち瓶詰めされます。

さて、今回は特級クロ ド ラ ロッシュ、特級シャルム シャンベルタン、特級マジ シャンベルタン、そして旗艦銘柄1級クロ サン ジャックを比較します。


生産者: アルマン ルソー
銘柄: クロ ド ラ ロッシュ グランクリュ 2004

21000円、WA92-94pt(2005)
外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
とても綺麗に熟成している。視覚的に果実が見える様なリアルさを持っている。
瑞々しい旨味と酸味に満ちたダークチェリーやラズベリーのジャミーな果実味。グレープフルーツ(スーパーのフルーツコーナー)。生肉の様な野生的な旨味があり凄まじいまでの凝縮感を感じる。
そして華やかなスミレのドライフラワー。徐々にシナモン、果実の蜜の甘やかさ。森の下草、ドライハーブ、ローズヒップティー、トリュフなど。透明感があり瑞々しい味わい。
アタックはとても綺麗な酸味で梅しばの様なじわりとした旨味。強いベリージャムのアフターが広がる。強烈な凝縮感を感じる味わいだ。余韻はとても長い。


生産者: アルマン ルソー
銘柄: シャルム シャンベルタン グランクリュ 2004

21000円、WA89-91pt
外観はやや淡い澄んだルビー、ややエッジに煉瓦色を帯びている。粘性は中庸。
やや熟成香を帯びているが、まだ十分に若々しい。オレンジのニュアンスと、ダークチェリーやブルーベリーの瑞々しい果実味と煮詰めたイチジクなどのソースの様な香り。徐々にキャラメルの甘露さも現れてくる。腐葉土や濡れた樹皮、パストラミハムなどの熟成を経た香り、香草、紅茶、ローリエなどの風味も。
やや茎っぽい風味とスミレや薔薇の華やかさ、ソースの様な風味が渾然一体となって口の中に広がる。酸味はマジほど柔らかくなく、クロ サン ジャックほど強くない。タンニンも同様で、心地よい舌触りを感じられる。
旨味と果実味のスープみたいな味わい。


生産者: アルマン ルソー
銘柄: マジ シャンベルタン グランクリュ 2004

21000円、WA93pt(2003)
外観はやや淡い澄んだルビー、ややエッジに煉瓦色を帯びている。粘性は中庸。
シャルムと比べるとやや冷ややかなタッチ。少しずつダークチェリー、ブラックベリー、イチジクの果実を潰したの様な瑞々しい果実味。ちょっとびっくりするくらいのスミレや薔薇の明確なニュアンスが感じられる。そしてタイムやグローヴなどのやや草っぽいドライハーブの香りや腐葉土、漢方、焼いた木材、生肉など。徐々に黄金飴の様な濃密な甘みが現れてくる。果実味がリアル。
酸とタンニンはとても柔らかで、スミレキャンディの様な華美な風味と、腐葉土、果実の風味が口に広がっていく。基本的にこちらもややドライなタッチの味わい。


生産者: アルマン ルソー
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン プルミエクリュ クロ サン ジャック 2004

31200円、WA94-96pt
外観はやや淡い澄んだルビー、ややエッジに煉瓦色を帯びている。粘性は中庸。
もっとも若々しくエレガントでありながら力強い液体。強いオレンジの香りとダークチェリーやブルーベリーの清涼感のある果実味、圧倒的に煌びやかで緊張感がある。果皮のニュアンスが強い。スミレや薔薇の華やかな風味や舐めし革やミルクを垂らした紅茶、タイムやグローヴなどのドライハーブ、トリュフ、オリエンタルスパイス、僅かにワッフルの風味も。
マジほど柔らかさはなく、やや酸が強く、タンニンも強め。口内の余韻としてはスミレや薔薇などの華やかな風味はマジ同様強いが、それに加えて果皮の煌びやかな成分が明確に感じられる。
甘露さは控えめでドライ。エレガントだがエネルギーに満ち溢れた味わい。この中で最高の出来ではあるものの2009年の燦然たる造りを見ると、精彩を欠く造りだと思う。


さて今回の2004年を一通り味わってみると、やはりヴィンテージの負というか、若干2009年と比較すると精彩を欠く出来だったかと思います。といっても十分に素晴らしいのですが。
2009年は非常に葡萄がよく出来た年だった為、それに比べると果実味はかなり落ちている印象です。
エレガントともいえるかもしれませんが、ややドライな印象を受ける酸が目立つヴィンテージだったと思います。
そんな中で非常に健闘していたのがジュヴレシャンベルタンの特級畑ではなく、クロ ド ラ ロッシュ。
1級クロ サン ジャックが素晴らしいのは当然だとして、クラスとしてはシャルムシャンベルタンと同等のクラスであるクロ ド ラ ロッシュの安定感は非常に素晴らしかったです。
この4本の中では非常に若々しく、瑞々しい果実味を感じる事が出来ました。
基本的にはジャミーで煮詰めたフルーツやグレープフルーツの清涼感のある味わいで、旨味と果実味のバランスが非常によく取れています。この中だとクロ サン ジャックに次ぐ濃密度、凝縮度。そして瑞々しさ。元々の畑の特徴でもありますが、他の畑と比べた時突出した若々しさだと感じました。
それに対してちょっと弱さが目立ったのはマジシャンベルタンとシャルムシャンベルタン。ロッシュの若々しさが特別なのかもしれませんが、共に既に若干熟成感が出ています。経過年数を考えると熟成の進みはやや早めの印象です。
とはいえ、熟成したルソーのグランクリュが美味しくないかといえば絶対にそんなことは無く。
シャルムとマジに関しては丁度熟成し始めの豊かな旨味やイチジクや大地香、それと同時にベリー系フルーツの風味が感じられます。液面が落ち着くと蕩ける様な甘みも。
と、こういう書き方をすると全く同じに思われると思いますが、方向性は当然同じです。ただ構成する要素が細かく異なります。
まずどちらが上位かと問われれば間違いなくマジ シャンベルタンでしょうか。
サーヴ直後こそシャルムと比べてドライな印象を受けるのですが、徐々に現れピークに至った際の果実味の高さは本当に突出しています。また香りが非常に華やか。スミレの強い香りが液面を満たしています。
最初から芳香が素晴らしく、時間をおいて強い甘露さを放つ2009年ヴィンテージと比べるとやや落ちるのですが、十分に偉大なワインだと思います。
シャルムに関してはマジと比べると果実味は控えめで蜜の様な甘露さが感じられます。しかし熟成香とバランスが取れており、かなり複雑な香りを放っています。また茎やオレンジのニュアンスやがあり、冷ややかであると共に、清涼感も感じられます。
この4本で言うと最もパワー不足で、熟成も早く進んでいますが、決してバランスが悪いわけではありません。シャルムというテロワールに所以するものかもしれませんが...
そして最後は1級クロ サン ジャック。
いわずもがな、この4本の中では素晴らしい作りでした。ただ同時に個人的にはこの畑に期待する値が大きく、その期待値と比べるとやや平準的と感じました。
そもそも大変パワフルなワインを生み出す畑ですが、御多分に漏れず2004年も最も若々しく華やかで伸びやか。ついでにタンニンも酸もとても充実しています。マジと比べると甘露さは控えめで、未だ硬い印象を受けます。
ただ液面に満ちるエネルギー(抽出、凝縮度に起因するものでしょうか)は随一で、かつ伸びやかに花や柑橘系の香りが伸びて行く。ここからさらに熟成を経ることによって、より甘露さに溢れてくるのではないかと思います。
惑うことないヴァンドガルド。熟成方向を考慮すると、より素晴らしいワインに成長すると思います。
もっとも、現状ではクロ ド ラ ロッシュやマジシャンベルタンの方が飲んでいて心地の良いワインだと思いますが。
ちなみに2009年は当然ながら硬かったですが、ここまで頑ななわけでは無く、同様の質量、密度がありながら、もう少しキャッチーだったと思います。


ちなみに行政区分上はしっかりと分けられていますが、クロ ド ラ ロッシュはオーコンボットと隣接しておりラトリシエールシャンベルタンと近い性質を持っているのかな、と思います。
マジシャンベルタンはクロ ド ベーズ北側に隣接するグランクリュですね。序列でいうとシャンベルタンとクロ ド ベーズに次ぐ第三位とされている時が多いです。ジュラ紀中期のバトニアン地質(褐色石灰岩と粘土)で表土はやや厚め。ラヴォー渓谷とモレ渓谷の背斜面からの冷涼な風の影響を受けて硬質で骨格の強いワインになります。
クロ サン ジャックは白色泥炭質、茶色の粘土質、全体に小石が多い土壌、そして南東に向く急斜面。完璧な立地。
男性的で筋肉質でありながら華やかな雰囲気。
シャルムシャンベルタンはこれらと比べるとやや標高低めでなだらかな斜面に位置します。しかもマジシャンベルタンと同様、背斜面からの風の影響を受けるので、全体的に酒質の体躯は劣るのかな、と思います。

これらは一般的な特徴ですが、ルソーの各ワインを比較してみると、まさにこれらの特徴がしっかりと現れているのがわかります。
テロワールの再現という意味で、まさにジュヴレシャンベルタンを体現した生産者と言えると思います。

お家で比較テイスティング出来たら幸せだろうなあー!




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2004マジ・シャンベルタン アルマン・ルソー

はじめまして。私も先日、アルマン・ルソーの2004マジ・シャンベルタンを飲みました。タンニンと酸のバランスが良く、優しい印象を受けました。香りも素晴らしくピノノワールの素晴らしさを再認識しました。パワー不足かもしれませんがちょうど飲み頃だったようです。

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HKOです。こんにちは。

アルマンルソー2004、いいですね。
ヴィンテージにはヴィンテージの楽しみ方があるのでパワー不足でも失敗をしていない生産者であれば、面白いですよね。
このブログは比較して素人なりに考えるブログなのでどうしても差を出してしまいますが、個人的にはどのワインも楽しんで飲んでいます。
プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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