【ブルゴーニュ:30】クロ サン ジャック 2010、個性と品質を改めて感じる水平3本。

こんにちは。
ここ最近暑くて参りますね、まあ夏だから当たり前なんですけれども、そうはいっても、やはりしんどいですね。
なんといってもワインをあまり飲みたくなくなりますからね、筆が止まるわけです。

はい、そんな事情は置いておきまして、今回はクロ サン ジャック水平です。生産者はアルマンルソー(こないだやりましたね)、ブリュノ クレール、ドミニク ローラン。いずれもタイプが異なる生産者ですが、どうでしょうか?

さて、いってみましょう。

ドミニクローランは元々お菓子職人で、本職を投げ捨てて1988年からワインの世界に入り始めました。
当初から非常に高品質のワインを作っていることで評価は高かったのですが、新樽に拘りすぎたが故にテロワールを尊重していない、ギイアッカの影響下にあった等と、まぁ賛否両論があります。しかしながら樽へのこだわりは相当なもので、自身で理想とする樽を作る為に板材の選定から生産まで行ない、しかもそれを他のドメーヌや外国に販売している。ネゴシアンなのでワイン自体は樽ごと他の生産者のものを買い付けるのですが、その購入条件は「古木から作られた葡萄を手積みした」生産者のもののみと徹底しています。更に自身の樽に詰め替える事で、このドミニクローラン節を作り出しています。
ただ現在のドミニクローランは当初とは全く異なったイメージを放っている事は飲んだ人は必ず理解すると思います。樽が過剰すぎる、というのは過去の話。現在は樽の要素は残しながらも主体は甘露でありながら果実味に溢れたとても優れたワインを作っています。

1979年に設立されたブリュノ クレールはマルサネに拠点を置く生産者。出生はクレール ダユだが、相続によって多くの畑を失い、後にブリュノクレールとしてそれを買い戻している。現在は合計23haを保有する大ドメーヌとなっている。
栽培はリュット レゾネによって行われている。樹齢は40-60年の古木を使用。収穫は手摘みで、除梗は多くて10%とほぼ全房発酵がなされている。低温浸漬を行い、自然酵母による発酵が行われる。
発酵後、新樽比率20~50%で16~22ヶ月の樽熟成が行われる。清澄は行われません。

そしてジュヴレシャンベルタンでとりわけ評価が高くファンが多いのがアルマンルソー。彼の作るシャンベルタン、シャンベルタン クロ ド ベーズ、1級クロ サン ジャックはまさに別格。ブルゴーニュでも群を抜いた偉大なワインとされています。ルーミエ程では無いにせよ、旗艦銘柄は瞬殺です。
葡萄の平均樹齢45年以上。ただでさえ収量の少ない古木。かつ収量を25hl/haにまで絞った葡萄はリュットレゾネに則って栽培、熟したタイミングでやや早めに収穫されます。除梗は90%程度行われ低温浸漬を経て、アルコール発酵が行われます。ピジャージュは1日2回程度。キュヴェゾンは20日間。その後クロ サン ジャックは100%新樽で20ヶ月程度の熟成を経たのち軽く濾過、卵白での清澄を行ったのち瓶詰めされます。


さて、いってみましょう。

生産者: ドミニク ローラン
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン プルミエクリュ クロ サン ジャック 2010

約12000円、WA93-94pt
外観は濃いルビー、粘性は高い。
甘露でボリューム感のあるしっかりとした果実味が感じられる。とてもドミニク ローランらしいが、エシェゾーほど樽が効いている訳でもなく甘露な訳ではない。至極真っ当なレベルに収まるブルゴーニュ。香ばしいワッフル、シロップ、コーヒーなどのローステッドな風味に、自然な甘露さを感じられるブラックベリー、ダークチェリーの果実味。華やかなスミレや薔薇の香り。やや抽出は強めだろうか。そしてオリエンタルスパイス、クローヴ、なめし革などの風味が感じられる。凝縮感はしっかりとある。
タンニンは他のクロ サン ジャックと比較してわずかに強いが、酸味は柔らかく滑らか。
余韻は長いし、染み出る様なじわっとした旨味がとてもいい。
スタイルとしてはエマニュエルルジェに近しい様にも感じられる。


生産者: ブリュノ クレール
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン プルミエクリュ クロ サン ジャック 2010

19000円、WA93-95pt
外観は浮遊物の多い濃いルビー、粘性は高い。
干したダークチェリーやブラックベリーの凝縮感のある甘露な果実味が主体となり、紅茶、濡れた土、紫蘇、スミレなどのナチュラルな香り。そしてワッフルなどの樽起因のローステッドな香りや舐めし革の香りが感じられる。
とても甘露でありながら、ジューシーな梅しばの様な広がって行く綺麗で強烈な旨味がある。酸味とタンニン、旨味のバランスがとても良い。素晴らしい。
ギュッと引き締まった凝縮感がある。
ドミニクローランほどあからさまな甘露さではなく、均等に酸味と旨味を纏った卓抜したクロ サン ジャック。


生産者: アルマン ルソー
銘柄: ジュヴレ シャンベルタン プルミエクリュ クロ サン ジャック 2010

約29000円、WA91-94pt(2009)
外観は澄んだ中庸なルビー、粘性は高い。
村名と比べるとより目の詰まった凝縮感のある果実味が感じられる。ややミネラルも。
方向性としては分厚い黒系果実、ブラックベリーやプラムのジャムの様な甘露な風味が感じられる。オレンジ、薔薇やスミレの様な清涼感のある風味が漂ってくる。
スミレやミルクティーやローズヒップ、ドライハーブ、野生的な熟成肉の様な旨味、僅かに茎、五香粉、タイム、グローヴなど。シャンベルタン程樽は感じない。清涼感を感じさせつつ、非常に自然を感じさせる豊かな香り。
口に含むと綺麗な旨味を感じるが、やはり酸味とタンニンは突出している。酸味と同時にうまみがくる。若干果皮のニュアンスが強いか。


個人的にはブリュノ クレール>ドミニクローラン>アルマンルソーと言った感じ。
こう書くと本当に頭がおかしいんじゃないかと思われる方もいらっしゃるかと。ただ実際の所ブリュノ クレールもドミニクローランも非常によく出来ているし、対してアルマンルソーは「こんなんだっけ...?」という印象。
それだけ単一でアルマンルソーを利いた時と印象が違っていて結構衝撃を受けました。当てにならんなあ、感じ方って...。
さてこの中で流石に全く異なるタッチを感じたのはドミニクローラン。
果実の熟度が明らかに高く、かつ樽もしっかりと利いています。モンジャールミュニュレの様な樽使いで、確かに樽のニュアンスは強いのですが、ロースト香が効きすぎているメオの上級キュヴェと比べると、かなりキャッチーだと思います。しっかりと熟した果実(これは古木も起因していると思います)が樽のニュアンスを受け止めている。
基本的には果皮の厚いスミレや薔薇のニュアンスとシロップを想起させるブラックベリーなどの甘露な果実味、ワッフルの樽香がバランス良くしっかりと感じられます。
この中では比較的濃厚で極めて甘露ですが、同じドミニクローランの超濃厚なエシェゾー2010と比べると、極めて自然に近い仕上がりです。
次はブリュノクレール。
ブリュノクレールとアルマンルソー、共通点が多く、共にリュットレゾネで低音浸漬を実施、樽熟成は20ヶ月程度行っていますが、幾つか異なる部分があります。

1:除梗比率
ブリュノクレールはほぼ全房発酵(10%程度除梗)、アルマンルソーはほぼ100%除梗です(90%くらい)

2:新樽比率
ブリュノクレールは50%、アルマンルソーは100%新樽。

3:収穫時期
ブリュノクレールは比較的遅摘みで、ルソーは早摘みです。

ここら辺はいい感じで真逆で、その違いが結構素直に感じられます。
まず一番良く現れているのが除梗比率の部分。よりブリュノクレールの方が土っぽさや茎っぽさ、紅茶のニュアンスがしっかりと出ています。
対してアルマンルソーはよりオレンジなどの清涼感のある澄んだ味わいが感じられます。梗の有無によって複雑さやスパイシーさが現れるか、澄んだ味わいになるか、かなり違いが現れていますね。
次に収穫時期。当然ですが収穫時期が遅くなれば遅くなるほど熟度の高い葡萄が採れます。ただルソーは熟しきった葡萄より適切な時期に葡萄を収穫する事をポリシーとし、ブリュノクレールはやや遅めにしっかりと熟した葡萄を収穫をするらしいです。
その為かブリュノクレールのワインには干した凝縮した黒系果実の様な果実味が感じられ、ルソーのワインには瑞々しい(が決して薄くない)果実味が感じられます。
今回結構ここの影響が大きいと感じました。
というのも2010年は2009年と比べてヴィンテージとしては「よりブルゴーニュらしい」作柄。些かルソーが弱く感じるのは、2009年と比べて2010年より収穫時の熟度があまり上がってなかったからなのかな、と思いました。
ヴィンテージをもろに受けている感じですね。
最後、新樽比率。
両方とも高めの新樽比率ですが、どちらも露骨に樽のニュアンスは現れてはいない様です。
ルソーのクロ サン ジャックは五香粉の様な香りが、ブリュノクレールのクロ サン ジャックはワッフルの様な香りが前に出過ぎない程度に適度に主張しています。樽とのバランスはとても良いですね。
さて、全体を見渡すとよりルソーは澄んだ果実味と調和を、ブリュノクレールはスパイシーさ、複雑さ、熟した果実味が前に出る様に作られています。
そしてブリュノクレールで最も素晴らしいと感じた点は、何よりも口に含んだ時の酸味、旨味、タンニンのバランスが極めて良いということ。
ドミニクローランはややタンニンが勝っているし、ルソーは酸味と収斂性が目立っています。
ともに時間を置けば落ち着いてくるものと思われますが、現状でいえばブリュノクレールが最も香り、口当たり、余韻共に優れていると思いました。

当然ですが、このクラスともなれば外れはほぼありません。ただ結構生産者のカラーがはっきり出たな、といった印象。
クロ サン ジャックとしての共通点としては、黒系果実の筋肉質な体躯が感じられました。ただ生産者ごとの違いの前では微細な共通点だと思います。
※あくまでその生産者の他のワインと比較した時に現れる違いの共通点です。

以上、ルソーの優位性を微妙に疑ってしまう結果となりました。
いや、でもどうなんだろう。この中でルソーがエレガントっちゃエレガントですよね...難しい...。



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プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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