【アルザス・ロワール:2】ロワール最高峰、クロルジャールとドメーヌユエ、ニコラジョリーの卓抜したキュヴェを利く。

こんにちは。
本日はロワールです。
ロワールはブルゴーニュやボルドーほど有名な産地ではありませんし、こだわる消費者もいません。その為今ひとつ地味な印象があります。ただその実、今回のクロ ルジャールやニコラジョリー、ユエ、そしてディディエダグノーを飲んだ人は必ずその素晴らしい品質に驚きを覚えるはずです。ここまで懐の広い産地だったのかと。
ロワールはペイ ナンテ、アンジュ エ ソーミュール、トゥーレーヌ、セントルニヴェルネの4地域に大別されます。
ペイナンテは白主体でミュスカデ、アンジュ エ ソーミュールとトゥーレーヌは白(と貴腐)はシュナンブラン、赤はカベルネフラン。そしてセントルニヴェルネは白はソーヴィニヨンブラン、赤はピノノワールとガメイ...といった具合に地域によってかなり大きな違いがあります。当然懐も広くなるという。
面白い産地です。優秀な生産者も沢山います。
今回はその中でも粒ぞろいの生産者です。

ドメーヌ ユエは1928年にガストン氏が設立したヴーヴレイの伝説的なドメーヌ。
所有畑はル オー リュー、ル クロ デュ ブール、ル モン、ドメーヌ・ド・ヴォダニ。土壌は緑色の粘土や二酸化ケイ素を含む石灰岩土壌。
現在はノエル パンゲが指揮を行っており、以降ビオディナミを1991年から試験的に栽培を始めています。
収穫時は成熟した葡萄のみ丁寧に選定し収穫を行い、3日間かけて収穫を行います(熟度を見ながら)。
収穫した葡萄は発酵には小樽、または大樽、ステンレスタンクを使用し自然酵母のみで発酵を行います。

ニコラジョリーはロワール サヴィニエールに拠点を置くビオディナミの第一人者で、その農法は世界中の自然派ワイナリーに広く伝播しています。
保有している畑はサヴィニエール クロ ド ラ クレ ド セラン(7ha)、サヴィニエール ロッシュ オー モワンヌ(3ha)、サヴィニエール(3ha)。
1984年からすべての畑でビオディナミで栽培が行われており、いわゆる今のプリミティヴなビオディナミ...牛や羊などを飼い、ハーブを育て、そこからプレパラシオンを作る。そして家畜による除草、耕作を行っている。
発酵時も自然酵母による発酵で温度コントロールしません。デブルバージュ、コラージュはせず、古樽で数ヶ月間熟成後、瓶詰め前にフィルター処理を行い出荷されます。

クロ ルジャールは1664年に設立された世界最高峰のカベルネフランを作り出すソーミュールシャンピニーの生産者。現在はシャルリー フコー、ナディ フコーが指揮を取っています。
樹齢は40年~45年。栽培はビオディナミで行われており、収量は春の芽掻きや冬場の摘芽により最大限にまで抑えられています。(なんと30hl/ha。低収量主流のローヌに劣らない低収量!)、そして収穫は手摘みのみ。
選果された葡萄は100%除梗、選果台で更に選果を行います。発酵は主にステンレスタンク、もしくはセメント槽で行われ、自然酵母で発酵。30日程度の長いマセラシオンの後、新樽とシャトーラトゥール使用の1年樽で36ヶ月の熟成が行われます。
今回のポワイユーは南向き斜面の上部に位置し、風通しが良く温暖な気候となっています。
何故か知る人ぞ知るワイナリーになっていますが、事実最高のカベルネフランを作り出している事に関しては疑いようの無い事実。実際シュヴァルブランも訪問しているほど。是非一回飲んでみてください。

さて、いってみましょう。


生産者: ドメーヌ ユエ
銘柄: ヴーヴレ ル モン ドゥミセック 2008
品種: シュナン ブラン100%

3000円、WA85pt
外観は淡いストローイエロー、粘性は高め。
ニンニクや魚介出汁の風味、白い花やドライハーブ、クリーム、ヘーゼルナッツ、シャンピニオンなどを想起させる香り。またシベットや西洋山査子など風味も感じられる。スパイシー。
香りとしてはやや還元的で、若干閉じこもっている印象がある。
当然ながら残糖分はあり、アプリコットやパイナップルなどの豊かな酸味を伴う果実味を強く感じる事が出来る。甘みを伴った綺麗な酸味、旨味が広がる。余韻も長い。


生産者: ニコラ ジョリー
銘柄: ロッシュ オー モワンヌ クロ ド ラ ベルジュリー 2002
品種:シュナンブラン100%

外観は黄金に近いイエロー、粘性は高い。重々しい辛口。
しっかりとしたミネラル感、甘口ワインの様な香りやボディを感じさせるが驚きの辛口。
ハチミツや、酸味や厚みを伴うアプリコット、レモンの様な香り。セメダイン、ドライハーブ、出汁、ナッツやキノコ。青リンゴの様なシャープさもある。
適度な熟成感があり、酸味と旨味に満ちた味わい。力強い凝縮感のある口当たりでボディも柑橘系の酸味と旨味がかなり強く出ている。


生産者: クロ ルジャール
銘柄: ソーミュール シャンピニー レ ポワイユー 2005
品種:カベルネフラン100%

7000円、WA91-92pt
外観は濃いガーネットで粘性は中庸。ボルドー右岸のカベルネフラン主体のグランヴァンに近い。
西洋杉、豊かな土の香り。そしてカシスやブラックベリーの瑞々しい果実味。煮た小豆、燻製肉、甘草、わずかにピーマンっぽさが感じられる。
シシトウの様な風味はあまり感じられない。
ボルドーの様にタニックではなく、ボディも重々しくない。綺麗なタンニンと酸が感じられる。より瑞々しいブラックベリーやカカオの味わいが広がる。とても調和が取れている。澄み切っているのにも関わらず、ときめく様な旨味がある。そしてとてつもなく繊細。ボルドー右岸を感じさせるが、その実ボディ含め全く異なるワインである事がよくわかる。


さて、まずは白のシュナンブランから。
ヴ―ヴレイとサヴィニエールはそもそも地域が異なりますし(ヴ―ヴレイはトゥーレ―ヌ地方、サヴィニエールはアンジュ エ ソーミュール地方)ヴィンテージも生産者も残糖も異なりますので単純比較はできませんね。
なのでひとつひとつ行こうと思います。
まずヴ―ヴレですが、かなり複雑な味わいのワインで、樽の影響を感じられる風味が特徴的でした。
熟成したローヌ白とコントラフォンのムルソーを樽香を足したような風味です。野性的で出汁の様な風味とヘーゼルナッツやシャンピニオン、クリームの様な濃厚な樽香が感じられます。やや還元的ではあるのですが、酸味もしっかりとあり、ポテンシャルはかなり高いのではないかと思われます。糖度もしっかりと残してますしね。

次はニコラジョリー。
以前このブログでも紹介したクロ ド ラ クレ ド セランはメチャメチャ硬くてミネラリーでしたが、ロッシュ オー モワンヌは幾分か柔らかい印象を受けました。熟成しているからでしょうか。
しかしともかく驚くのが、その果実の力ですかね。なんでしょう、このネットリ感。貴腐ぶどうでも使ったんじゃないかと驚くくらいの濃厚さ。
それもそのはず、なんとアルコール度数14%。ロワールだぜ。新世界じゃあるめえし。
ちょっと驚くくらいの濃厚さがあるワインです。
さて、前述しましたが、香りは完全に貴腐ワイン、もしくはレイトハーヴェストに起因する完全に熟した葡萄のそれです。香りを嗅いだだけでは絶対にこれが辛口だと思わない。そして飲んでみても「え・・辛口・・だよねこれ?」と思ってしまう。
純粋な果実酒の極まった香り。樽とかそういうのは一切なくて、限りなくピュアで重厚なワインだと思う。
おそらく若いヴィンテージではミネラルの硬さとなっていたであろう旨味と酸味が口の中で力強く広がっていく。
クレ ド セランも恐らくは熟成をするとこんな感じになるのでしょうか。なるほど偉大なワインですね。

最後はクロ ルジャール。これがもう本当に美味い。
方向性は違えどスーパートスカーナのパレオ、右岸のシュヴァルブランに匹敵する美味さ。
無論、その芳醇な香りは上記のカベルネフラン100%のワインのスタイル(特にシュヴァルブラン)を踏襲しているのですが、構成するボディが全く違う。
シュヴァルブラン程樽が効いている訳でも、パレオ程濃厚な訳ではなく、とにかく目が細かく繊細なタッチのワイン。
一見瑞々しく軽ささえ感じるのですが、その実内包する要素が不可測なく敷き詰められており、すばらしい調和が取れている。そもそもボルドーほど葡萄が成熟しないロワールだからこそ成し得た技。誤解を恐れず言うとボンヌマールとレ ザムルーズの関係性に近いと思う。
このワインが7000円前後で買えるのはほとほと信じられませんね。今後見つけたら必ず買っておこう・・・

いや、素晴らしいワインでした。
ロワールは通好みの部分が多分にあり地域も広いのでわかりにくいですが、ブルゴーニュとボルドーだけ見ているのは勿体ないと思うくらい素晴らしいワインがあります。是非探してみてください。



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HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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