【ブルゴーニュ: 65】ブルゴーニュ熟成の頂点、J.L トラペの特級シャンベルタン

こんにちは、HKOです。
先日素晴らしいブルゴーニュをご相伴させて頂きました。
今日の2本はその際に供されたワインなのですが、抜栓は小生が行わせて頂きました。
お恥ずかしい限りですが80年代のワインの抜栓は、まあほぼ100%失敗してます。
90年代以降のワインはあまり失敗したことがないのですが。
今回、シャンベルタンというクラス感もあり、かなり緊張しました。


キャップシールを剥がし、カビと汚れを拭く。


プルタップスの2段階ソムリエナイフを中心部に差し込み抜栓。
おっ、行けるかなーとコルク側面を見るとやーな亀裂が。


あっ



失敗しました。
期待を裏切らない処理...仕方ないので、コルクを貫通させて、残りを引っ張り上げる事になんとか成功。若干コルクかすが落ちたものの、なんとかいい状態で抜けたと思います。

これだから古酒は難しい...

それはさておき、今回のワインに行きます。


ジャン ルイ トラペは非常に有名なジュヴレシャンベルタンの生産者です。
一時評価を落としましたが、また徐々に現在は高い評価を戻しつつあり、96年からビオディナミを始めています。
春に厳しい摘芽を実施、収量の制限を行い凝縮した葡萄を収穫しています。
収穫した葡萄は30.%除梗され、低温浸漬の後、ピジャージュを行いながら2.3週間アルコール発酵を行います。
重力で樽貯蔵庫に移され30−70%の新樽比率で15ヶ月程度の熟成を行う。区画は特級シャンベルタンから村名格まで。

ユベールリニエはモレ サン ドニの代表的な生産者。ユベールが高齢の為、息子のロマン リニエが畑を引き続いだが、34歳にして他界。現在は引退したユベールとロマンの弟ローランがドメーヌを運営しています。代表的な畑はクロ ド ラ ロッシュとシャルム シャンベルタンの2枚看板。比較的広い地域の畑を保有している様ですが。
樹齢は30年から40年ほどの古木が中心。栽培は有機農法。収量を抑えて収穫されたぶどうは100%除梗。低温浸漬を、1週間弱。アルコール発酵は2~3週間程度。ピジャージュ回数も比較的多めに行い、しっかりと色素、構成要素の抽出をおこなう。
新樽の割合は1級、特級で50%で熟成する。無濾過、無清澄で瓶詰めを行う。

では行ってみましょう。


生産者: ユベール リニエ
銘柄: ニュイ サン ジョルジュ レ ポワゼ 2010

外観は赤みの強いルビー、粘性は高い。
若いワインだが、グロフィエのワインにも似たエキス感のあるブルゴーニュに感じられる。それでいて果実味は豊かで甘露さがある。果皮の要素、旨みが凝縮し調和している。熟したダークチェリー、ブラックベリーなどの果実味。果皮によるスミレの華やかな要素、マロラクティック発酵に起因するミルクティーなどの要素が前に出ている。またクローヴや土っぽさ、紅茶、なめし革、 ローズヒップティーなど。焼いた木材の様な香りを若干感じるが、極端に樽っぽさはあまり感じられない。
旨味と酸味は突出している。
ユベールリニエのワイン全体に言えるが、酸と旨みと調和が素晴らしい。タンニンは柔らかく、イチゴやクランベリーなどの赤系果実の果実味のアフターが広がって行く。
ボディはしなやかで凝縮感がある。


生産者: ジャン ルイ トラペ
銘柄: シャンベルタン グランクリュ 1982

外観は透明感のある橙色、粘性は低い。
樽、タンニン、酸、果実味が有機的に絡み合い、変化し、その上で余計な要素はすべて削ぎ落とされた、ほぼ完璧な熟成ブルゴーニュ。相応熟成感はあるものの、まだまたポテンシャルは残している状態。強烈なエキス感、旨みの凝縮度が極めて高い状態にある。
熟成によりエキス感に変化した梅しばやアセロラ、イチジクなどの濃密な果実味が。そして濡れた木やスーボワ、枯葉などの複雑な樽から変化した要素、出汁の香り。トリュフ。ドライハーブや動物的なムスクや毛皮。オレンジ。多様なの要素が結合し、一塊となって立ち上ってくる。
酸やタンニンは熟成によって極めて柔らかくなっており、緻密できめ細かい。球体のタッチ。口に含むとアセロラや梅、クローヴなどの優美かつ凝縮したエキス感が広がる。素晴らしい熟成ブルゴーニュ。


まずユベールリニエ。
2010年はその他にシャルムシャンベルタン、シャンボール ミュジニー1級シャビオを飲んだことがあります。
その時にシャルムとシャビオの色調が全く違う事に驚かされましたが、今回のポワゼは大体その中間、ややシャルム寄りの濃い色調となっています。
味わいは外観通りで、果皮の要素が感じられるのですが、その本質は全キュヴェに共通の巧みなエキス感の抽出の仕方だと思います。
シャビオならブルーベリーやイチゴジャム、シャルムならブラックベリーやプラム、
ポワゼならダークチェリーやブラックベリーの瑞々しく凝縮した果実味が感じられます。
その後にマロラクティック発酵によって発生した乳酸系の風味や樽に起因する紅茶の要素が現れます。
ユベールリニエとしては大体この様な骨子のワインになっているわけですが、キュヴェごとに細かく構成する要素が異なっています。
例えばシャルムは突出した黒系果実の完熟度があり、それでいて堅牢な果皮の強烈な華やかが感じられます。またシャンボールなら最低限の抽出だけで樽と乳酸系の風味、瑞々しいる赤系の果実味の結合が感じられます。(これが極端にシャンボールの生産者の作り方によく似ているんですよね)
今回のニュイはシャルムの熟度や抽出をやや落として樽と乳酸系の要素を前に出した味わいになっていると思います。
シャンボールはきっと異端なんですかね。
シャルムと同一線上にある味わいだと思いました。実際男性的なニュイ サン ジョルジュの印象を考えると妥当な表現で、やはり極端にテロワールを表現を上手い生産者だな、と思いました。
しかしポワゼって村名の畑なのですが、なぜかコルクには一級畑の焼印...適当だなー。


次にシャンベルタン。
これがぐうの音も出ない程の完璧な熟成ブルゴーニュでした。
上にも書きましたが、樽、タンニン、酸、果実味が有機的に絡み合い、経年変化し、その上で余計な要素はすべて削ぎ落とされた、岩清水たるワイン。
トラペのシャンベルタンは2009、そして2001(tasting at 2012)を飲んだことがあります。
最新ヴィンテージの傾向としては、抽出及び果実の熟度、は平均よりやや高めで、樽のロースト香がしっかりと感じられます。また強烈な密度も特徴的です。甘露な果実感を内包しながら樽と果皮によってガッチリ堅牢になっているシャンベルタンといった印象をうけました。

9年熟成はどうかというと、かなり熟成香が現れてきているのですが、樽と果実の残滓が今だ力強く残っており、甘露ではあるのですが、ややタニックかつ酸が目立ちます。
果実味、樽、酸、タンニンはバラバラのバランスで存在しており、バランスが取れているとはあまり思えません。

それらの前提を置いた上で今回のワインを見ると、タンニンと酸はほぼ抜け切っており、残ったエキス感、酸から転化した強烈な旨味成分、濡れたアーシーな要素が調和が取れた状態で存在しています。重さや硬さが存在しない。
よくシャンベルタンを示す言葉に「ビロードに包まれた鉄の拳」というのがありますが、ビロードも手甲も無い、純粋な掌がそこにあります。
限りなく純粋で静かな威厳をもったシャンベルタン。しかして王の勅命が如く広域にまで広がる余韻。
恐ろしいワインです。
決して80年代のトラペの評価は高くないですが、熟成によってここまでのポテンシャルを発揮するワインですから、評価を見直していいんでは...と少し思ってしまいますね。
ギイアッカのワインも再評価傾向にありますから。
「無責任な話だよなあ、徹底的に排斥したのはどこのどいつだよ...」とか思いつつ、評論家の意義も分かるし、未来の事なんて誰も見渡せないのだから、せめて大声で「これはダメだ」って言わない様にしよう、と自戒しました。
いや、素晴らしいシャンベルタンでした。





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HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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