【ボルドー: 26】Back in 1988. ボルドー左岸(グラーヴ)

こんにちは、HKOです。
先日は1988年のサンジュリアンとポイヤックでしたが、今回はグラーヴの3つのシャトーです。
パプクレマン、ドメーヌ ド シュヴァリエ、そしてラ ミッション オーブリオンの3本です。


【データ】
ドメーヌ ド シュヴァリエはペサックレオニャン南西の郊外に拠点を置く、メドック二級シャトーにも匹敵するシャトー。
保有する30haの小さな畑の土壌は砂礫質かつ粘土質と鉄分、そして相当量の黒砂を含む。春の遅霜と雹に見舞われる事が多い。平均樹齢は30年、平均収量は45~48hl/ha。
赤は30℃以下での発酵、3週間のマセレーションは温度管理された100hl、150hl入りのステンレスとエポキシ張りの槽で実施。熟成は毎年3分の1ずつ更新される樽で18~22ヶ月。清澄も濾過も行う。
生産量は8万本、セカンドラベルが9万本。

シャトー パプ クレマンは、1299年から歴史が続くシャトーオーブリオンから数キロ程度の距離に位置するグラーヴのシャトー。「バビロン捕囚」の法王クレマン5世がフランス革命まで保有していたこともある。
その後農業工学者であるポール・モンターニュ、そして現在はその相続人が管理し、運営はベルナール・マグレが、醸造コンサルタントはミシェルロランが担っている。70年代に品質を落としたが、80年代に復活している。
パプ クレマンの畑(30ha)は極度に軽い砂利質の土壌の上にある。平均樹齢は27年、平均収量は39hl/ha。
コールドマセレーションは3日間。発酵とマセレーションは温度管理された木製槽で実施。ビジャージュは手作業で行い、新樽でマロラティック発酵、20ヶ月の熟成。清澄はしないが濾過はヴィンテージによる。
平均年間生産量は9万5000本。

シャトー ラ ミッション オーブリオンはシャトー オーブリオンに隣接し、長年ライバル関係にあったペサックレオニャンのシャトー。
17世紀、ラ ミッションの信徒によって設立されたが、フランス革命後、1983年にオーブリオンの現在の所有者であるクラランス ディロン家に売却されるまでウォルトナーによって管理された。1982年以降は新樽の使用比率を増やし、現在は100%新樽。メルロの割合は45%まで増加され、カベルネソーヴィニョンとカベルネフランは減らされた。
一般的にはオーブリオンよりもはるかにリッチで、力強いワインで、貧弱なヴィンテージによいワインをつくることにかけてはラトゥール同様、随一。
ラ・ミッション・オー=ブリオンは依然として一級シャトー並みの品質。
畑は20ha、平均樹齢21年、平均収量45hl/ha。
発酵とマセレーションはコンピューター制御で温度管理された180hl入りのステンレスタンク、熟成はオークの新樽で20ヶ月。清澄するが、濾過はしない。


【テイスティングコメント】
生産者、銘柄: ドメーヌ ド シュヴァリエ ルージュ 1988
品種: カベルネソーヴィニヨン55%、メルロー35%、カベルネフラン4%、プティヴェルド6%

約24000円、WA90pt
外観は橙を帯びた若々しいガーネット、粘性は中庸。
香りは比較的若々しい。
トーストやミルクコーヒー、鉄分、そしてほのかな腐葉土や燻製肉。オリーブやダークチェリーの果実味。
徐々に果実の蜜を思わせるほのかな甘い香りが漂う。
スミレや椎茸や蒸れた靴下、メイプルシロップ、甘草などの要素も感じられる。
この中では最もトースティーで果実味豊かで若々しい、極めて良いタイミングの古酒。堅牢さや密度はラミッションやピジョンバロンには劣るものの、十分な魅力がある。
酸味もタンニンも生き生きしており、バランスの良いアタック感がある。ダークチェリーや腐葉土、スミレの様な余韻が長く続く。


生産者、銘柄: シャトー パブ クレマン 1988
品種: カベルネソーヴィニヨン54%、メルロー46%

約27000円、WA92pt
外観は赤みの強いガーネット、僅かに橙を帯びるが若々しい色彩、粘性は中庸。
腐葉土や熟成肉、オリーブ、潰したブラックベリーの様な果実味、カマンベールチーズやミルクティーなどの香り。トリュフ、鉄分や濡れた樹皮、炭焼き、徐々にドライフラワーが強く現れる。
全体的にしなやかで丸みがあり柔軟な体躯。強い熟成香とは裏腹に穏やかな雰囲気が漂う。
酸味もタンニンは穏やかだが、凄まじい旨味があり、木材や腐葉土、ベリーの果皮の様な余韻を残していく。この中では飲みやすくスムーズ。


生産者、銘柄: シャトー ラ ミッション オーブリオン 1988
品種: カベルネソーヴィニヨン62%、メルロー35%、カベルネフラン3%

約60000円、WA90pt
外観は濃い橙を帯びた若々しいガーネット、粘性は中庸。
力強い腐葉土や熟成肉、タバコ、オリーブや果皮の厚いブラックベリーの果実味。ドライフラワーや鉄分、そしてカマンベールの皮、キノコ、枯葉などの熟成した要素が強く感じられるのが特徴だが、ボディはしっかりとしており、パブクレマンと比べるとくっきりとした輪郭で堅牢さを感じる。
徐々に丸みを帯び、ジャムのようなブラックベリーの芳香を感じさせる。
タンニンは柔らかいが酸が少し立っている。
タバコや腐葉土、黒系果実の果皮の余韻がある。スモーキーで個性的な余韻を感じる。
この中では最も堅牢で力強く、長期熟成を期待させるような強烈なプレセンス。まだまだ熟成する。


【所感】
どれも優れた古酒でありながら、かなり方向性というか、違いが手に取るように見えますね。とても面白い比較になりました。
特にドメーヌ ド シュヴァリエは何度も飲んだ事はあるものの、実際他のグラーヴのシャトーと比較した事が無く、今回改めてその差をハッキリと認識する事が出来ました。
まず今回の比較の前提ですが、どのワインもカベルネソーヴィニヨン主体でありながら、相当比率メルローが混醸されています。1988年はメルローが良く出来た年。なるほど、ポイヤックとサンジュリアンと比べると安定感がある様に思えました。
まずスタンダードなグラーヴのパプ クレマン。
しっかりとした熟成香と共に潰したブラックベリーの果実味、MLF的な要素がしっかりと現れており、果実味も相まって丸みを感じさせる体躯です。多分MLFによって酸が丸くなった部分に起因するのかもしれません。ドライフラワーの様な華やかな要素や、グラーヴらしいスモーキーな雰囲気ももちろんあります。
非常にキャッチーて飲みやすい雰囲気を纏うワインです。
対してラ ミッション オーブリオンはオーブリオンに並び立つに相応しいハッキリとしたテクスチャーと筋肉質な体躯を持った古酒に仕上がっていました。
MLFで丸みを帯びたパプクレマンと比較すると、しっかりと各要素が際立っていて、熟成香を主体としながらも、グラーヴらしいタバコやジャムの様なブラックベリーの果実味、強い果皮の要素、そしてチーズのようなアロマが際立っています。大枠スモーキーで果皮のニュアンスが強く、また果実味も豊かですが、その裏腹に堅牢という印象も受けます。タンニンも酸もしっかりあるので、まだ少し熟成しそうです。
最後はドメーヌ ド シュヴァリエ。
何故最後にこれを持ってきたかというと、先述したように、今までのこの2種のグラーヴとは全く違うから。極めて若々しくキャッチーな味わいに満ちています。
ロースト香とMLF起因の要素がはっきりと残っており、そこに混じり込むように熟成の腐葉土のニュアンス、果実の蜜を思わせる果実味、メイプルシロップの様なアロマが現れます。密度こそラ ミッションやバロンに劣るものの、若々しいアロマと熟成香両方を楽しめるという点でとても魅力的です。メルロー比率が多めのメドックワインに近い。酸味やタンニンもしっかりとありますが、ボディは熟成なりなので、熟成ポテンシャルは高くないと感じました。
そんな感じで3本ですが、ラ ミッション以外は基本的に丸みを帯びていました。MLFの要素が残留していたのと、そもそも若いスタイルの2本だったのでそう感じたのかも。あとは果実味が意外と残っているものか多かったのも印象的ですね。
1988年のグラーヴはなかなかいいと思います。
というかメルロー比率が多いのが良いという感じでしょうか。せっかくなんでオーブリオンも飲んでみたいですね...1988。




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HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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