【ピエモンテ:12】モダン バローロ、近代派の成熟と今

こんにちは、HKOです。
本日はちょっと毛色が変わりまして、バローロを幾つかレポートします。

バローロといえば80年代に起こったバローロボーイズ達の革新が有名ですね。
結果として改革運動の末、国外市場での立ち位置を確保して、ランゲに富をもたらしたという。
主に革新派のバローロといえば、バリック樽の使用、マセラシオンの短縮、剪定の厳格化が、主な特徴として挙げられるのですが、どうにも紐解いていくともっと概念的で。
飲みやすいキャッチーなバローロであるべき、という部分に集約していると感じました。
革新派だからといって100%バリック新樽な訳でもないし、伝統派だからといってヴァンダンジュ ヴェールトをしない訳でもない。
単純に長期熟成型か、すぐに美味しく飲めるものを作るのか、スタイルの違いに過ぎないと。

今回は2回にわけて伝統派と革新派の仕事を見ていきたいと思います。
まずはロベルト ヴォエルツィオの古酒、そしてヴィエッティの新しいヴィンテージです。

【データ】
ヴィエッティはピエモンテ カスティリオーネ ファレットに20世紀初め頃に設立されたワイナリー。
現在もヴィエッティ家によって保有されており、オーナーはマリオ コルデーロと醸造家も務めるルカ クッラード。バローロのアメリカへの市場を開拓したワイナリーの一つ。
今回のバローロ ロッケはカステリオーネ・ファレットにある単一畑ロッケによるもので、ヴィエッティのフラッグシップとも言える一本。
収量は28hl/ha、ステンレスタンク内でポンピングオーバーを行いながら5日間アルコール発酵。30~32度で20日間発行。マセレーション20日間。
バリック樽で4週間マロラクティック発酵させ、31か月間スラヴォニアン・オークで熟成を行う。

ロベルト ヴォエルツィオは1986年にピエモンテ ラ モッラに設立されたワイナリー。近年特に評価が高いワイナリーで近代的な特徴と古典的な特徴双方を併せ持っています。
このワイナリーの大きな特徴は徹底した低収量です。
冬季に5~8芽を残して強剪定、7月中旬に1本の樹当たり5房だけ残して、約50%以上の房が取り除かれます。8月中旬頃きは房の下部をカット。
これによって1ha当たり6,000~8,000本の樹からバローロに使用する葡萄は1本の樹からわずか500~700gに抑えられます。化学肥料や除草剤、殺菌剤、防カビ剤は一切使用しない。セラーでは醸造からボトリングまで基本的にはシンプルに行っています。
今回のラ セッラはラ モッラらしい若干の砂質が入り混じる土壌のもの。バリックと大樽を併用し24ヶ月熟成、さらにステンレスタンクで8ヶ月熟成&瓶熟成。
年間生産本数は約4万~6万本。


【テイスティングコメント】
生産者: ロベルト ヴォエルツィオ
銘柄: バローロ ラ セッラ 1995

約12000円、WA87pt
外観はややオレンジを帯びた均一的なガーネット、粘性は高い。
バローロボーイズながらクラシックな風合を感じるバローロ。薔薇やスミレのドライフラワーの華やかな香り、濡れた木材や土、茎の様な極自然的な香りと共に、リコリスやスパイス、ほのかなクレゾールの香り、黒オリーブやブルーベリーの様な果実味があり、鉄観音や藁、パストラミハムの様なスパイシーな風味と生肉の様な風味、ユーカリやナツメグ、ほのかにニンニクの要素や炭焼きなどの樽の要素、ミルクの香りも帯びてくる。華やかさが突出しており、それと共に強い旨味が突出。特に甘さを伴った感じは無い。凝縮した旨味とドライフラワーの奔流。焼いたゴムなどの風味が感じられる。
タンニンはかなり強めで、それに対して酸は穏やか。感じられるタイヤの様な焦げ香、鉛筆の芯、リコリス、ブルーベリーの様な戻し香が感じられる。


生産者: ヴィエッティ
銘柄: バローロ ロッケ 2005

32000円、WA95pt
外観は澄んだ濃いめのガーネット、粘性は中庸。
かなりモダンなスタイルにも見えるバローロで、明らかなマロラクティック発酵と新樽の影響が前に出ている。バニラや熱したバターの様な滑らかな香りの中に、干したブルーベリーやダークチェリーの様な果実味、薔薇の様な華やかさが見事に収まっている。凝縮感が感じられる。香木などの香りが強いが、徐々にイースト的な香りや葉巻、燻製肉、溶剤などの要素。
クローヴ。徐々にカラメルトフィーにも似た甘い芳香が強く表出してくる。アタックはボルドー的だが、その奥にあるのはまごうことなくネッビオーロ。
酸とタンニン共に生き生きとしている。若干タンニンの方が優勢で引っかかりがある。ダークチェリーの果皮やバニラの様なまろやかな戻し香が極めてエレガントで余韻も長い。


【所感】
ロベルト ヴォエルツィオのラ モッラにある単一畑ラ セッラ。
超低収量で、熟成にバリック、大樽、ステンレスタンクを併用したバローロ。このワインを飲んで思ったのは、熟成によって醸造的な要素を差し引いていくと、ネッビオーロの本来の味わいが出てくるという点。スペルスやサンドローネのラ ヴィーニェはまだ醸造的要素が強く残っていました。(故にボルドー的な古酒の風合いがありました)
ラ セッラはその点、早く熟成が進んだのか、極めて古風なネッビオーロの味わいが感じられました。
フラワリーなネッビオーロの個性とバローロらしい藁の風味、それと共に熟成したニュアンスとクレゾールの香りが感じられます。
まだ熟成過程であるのは間違いなさそうなので、美味しいかは別問題ですが、先進的であるにも関わらず、極めてネッビオーロの特徴がハッキリと表出している感じです。ゴムの香りは樽が変質した感じですかね。
タンニンもまだまだ鋭角です。
もう少し熟成すればこなれてくると思います。

次にヴィエッティのカスティリオーニ デル ファレットにある単一畑ロッケ。
どうやらざっと見る限りヴィエッティ、パーカーポイントメッチャ高いですね。07なんて99点...
そんな感じで、いかにもアメリカ市場向け、といった感じのモダンバローロです。ガヤとかに近いと思いますが、まあ近いだけで違います。
マロラクティック発酵のニュアンスと甘い樽香が特徴的な極めてキャッチーなネッビオーロだと思います。
熱したバターやバニラのまろやかな風味、熟した黒系果実、華やかな薔薇の風味、カラメルトフィーや燻製肉などが力強く立ち上ってきます。
極めて豪華で近づきやすいネッビオーロ。
でもやっぱりネッビオーロだからタンニンは鋭角的。
醸造で分かりやすく、そして徐々にゆっくりとその本質を伝えるという部分に関しては、とてもユーザーフレンドリーだし、バローロの良さが伝わりやすく素晴らしいと思います。
こうあるべきだからお前ら理解しろ(プロダクトアウト)ではなく、ほらいいでしょ、でもよく見るとちゃんとネッビオーロしてるんだよ?(マーケットイン)って歩み寄る姿勢が今の現状に繋がってるんですねえ。なんとも素敵な事です。

ただとはいえ名声を高めるのも大切ですが、片一方でその地域ならではの、地域を象徴するような確固たるポリシーを持った生産者も、地域の特徴を確立させる為に必要です。
次回は伝統的生産者をレポートします。



【ピエモンテ:11】古典派、モダン織り交ぜたバローロ5種類を効く Part2

こんにちは、HKOです。
先日の続き、バローロです。
本日は熟成したモダンバローロ2種類です。


【データ】
ガヤはピエモンテにおける最も偉大な生産者のうちの一人です。
ポートフォリオも膨大でバルバレスコやバローロ、そして各々の単一畑。国際品種を使用したダルマジ、買収した生産者のブルネッロなど。いずれも比類なきレベルの高さ。価格も比類なき高さ。
国際品種の導入、単一畑、バリック樽の使用などイタリアにおいて革命的なシステムを数多く取り入れています。
特に単一畑はバルバレスコやバローロの名前をあえて使用せずランゲに格下げして生産しています。
なので、ボトルにはバルバレスコやバローロの表記こそありませんが実態としてはバローロ、バルバレスコの偉大な畑から産出される卓抜したネッビオーロです。
収量制限がなされて収穫された葡萄は、果皮と共に3週間ステンレスタンクで発酵が行われます。 バリック樽で12ヶ月熟成、その後さらにオーク大樽で約20ヶ月間の熟成を行われます。
通常伝統的なネッビオーロは大樽を使用しますが、最近のモダンバローロよろしく(最近は少なくないですが)バリック小樽を使用しています。技術革新も受け止めて比較的モダンな作りと言えると思います。


ルチアーノ サンドローネはエリオアルターレなどと共にモダンバローロの枠内で語られるバローロボーイズのうちの一人。大手ネゴシアンで仕事をする中で、カンヌビの畑を1978年に購入した事でワイナリーをスタートさせます。現在はルチアーノと弟のルカは栽培醸造を行っています。
カンヌビの麓にある醸造所は近代的な設備を備え、バローロ、ランガ、ロエロの地区に最上の畑を所有しています。
今回のレ ヴィーニャは4つの異なる畑のワインをブレンドさせて作るバローロ。 内訳は標高250m、樹齢20年、石灰岩粘土質のヴィニャーネ(バローロ地区)、
標高400m、平均樹齢25年、石灰岩質マール他、密度が濃く多様な土壌のメルリ(ノヴェーロ地区) 、
標高450m、平均樹齢45年、石灰岩質マール他、密度が濃く多様な土壌のコンテルニ(モンフォルテ ダルバ地区) 、標高250m、平均樹齢15年、石灰岩質マール、砂質のチェレッタ(モンフォルテ ダルバ地区) 。
それらの畑から収穫したブドウを畑別に醸造。ステンレスタンクでマセラシオン9~10日間、発酵28日間。フレンチバリックで5ヶ月程度MLF。個々の樽を翌年夏にブレンドし、同じ樽で秋まで熟成後、さらに18ヶ月瓶熟。


【テイスティングコメント】
生産者: ルチアーノ サンドローネ
銘柄: バローロ レ ヴィーニェ 2002

WA88pt、25000円
外観は淵にオレンジを帯びた均一な淡いガーネット、粘性は中庸。
枯葉や濡れた土、萎れた薔薇の様な香り、そしてブルーベリーやオリーブの様なやや塩気を感じさせる果実味、サフラン、クミンなどのスパイス、消毒液とともにお出汁にも似たキノコ系の旨味が表出している。
バニラのアロマが全体の印象をまろやかに。ドライハーブや燻製肉、鉄観音、炭焼きやイーストの様な香りを帯びる。ボルドー的な熟成感と共にバローロ的なアロマもしっかりと残している。徐々に渾然一体となったナツメグを含むソースのような香りも。
酸とタンニンは泣くほど絶妙で、優美の一言。
引っかかりは一切なく、滑らかで、土やドライフラワー、熟したベリーのような余韻が残る。
華やかかつエレガント。モダンスタイルが醸し出す絶妙な熟成香。


生産者: ガヤ
銘柄: スペルス 1999

WA94pt、41000円
外観は淵にオレンジを帯びた均一な淡いガーネット、粘性は中庸。
熟成したボルドーの様な見事な熟成感をまとった一本。腐葉土やキノコの様な熟成香と、円熟したブラックベリーやダークチェリーのジャムの様な果実味、ドライフラワーの様な香りが入り混じる。そこバニラのまろやかな芳香が香りにしなやかさを与えている。葉巻、西洋杉などの香り、そして熟成肉、タイムやリコリス、ナツメグなど熟成によるスパイシーな香り。炭焼きの様なアロマが漂う。
ボルドーの2回目の飲み頃を思わせる香り、ただしその中にある酸味の豊かさとなめし皮の様なアロマは非常に官能的。
枯葉や鉄観音、腐葉土、キノコ、ブラックベリーなどの様々な要素の余韻を残し、口の中のボディも厚い、さりとて酸とタンニンは穏やかで、完全に素晴らしい状態になっている。ほのかに苦味はあるが、ほぼ完璧な状態だと思われる。


【所感】
何これ最高かよ...
ちょっと絶句してしまう位いいです、この2本。
両方ともモダンバローロなんですが、メチャクチャ綺麗に熟成してる。経年としてはさほどではないので、奇跡的にバランスの良いタイミングで飲めたかもしれません。
私の中での認識では、いくらモダンバローロでもタンニンと熟成香とタンニンが張って微妙な時期であると思っていたのですが...これはすごいですね。
やっぱり実際飲んでみない事にはわからんなぁ。
うまい具合にタンニンも酸もこなれていて、いい感じの熟成感と適度な果実味が残っていて、綺麗な旨味があります。エレガントです。
ルチアーノ サンドローネはまだそれでも足りてないと思いますが、ガヤの方は1次ピークを迎えていると思います。まだ熟成香主体の2次ピークは先でしょうが、その一つ前のベストな状態だと思います。
というか1999ってこんなに熟成しているものか???

という前提の下、個別に。
まずルチアーノ サンドローネ。
枯れた葉や濡れた土、萎れた薔薇の様な香りを主体としながら、ブルーベリーやオリーブなどの塩気を感じる果実味、様々なスパイス。バニラのアロマやイーストの香りが感じられます。
熟成香ははっきりしていながら、まだまだボディは若々しく張ってます。酸とタンニンはテイスティングコメントの通り滑らかで優美。受けた感じではボルドースタイルの熟成香とネッビオーロの本来の香りの丁度真ん中くらいの風合いってところでしょうか。
ガヤほどではありませんが、こちらも突出した熟成ネッビオーロといった感じでしょうか。

次にガヤ。
ひょっとしたら今まで飲んだ熟成ネッビオーロの中ではほぼベストだったのでは...という感じ。
ネッビオーロは熟成に極めて時間が掛かるという話から80年代、70年代を幾つか飲んだのですが...勿論いいものはありましたが、全体的にどこかアンモニア香が強いものが結構多く苦手意識がありました。
ただこれは凄い!行ってしまえば、まるでボルドーの最上の古酒の様ではありませんか!
腐葉土やキノコ、そして熟成して円熟した黒系果実のジャムの様な果実味、ドライフラワーの香りがこれがもう見事にバランスが取れていて素晴らしい。そしてフレンチバリック的なバニラ、葉巻、西洋杉の香りもあり複雑さも演出してくれています。なめし革の様な要素もあり、非常に官能的でもあります。
酸とタンニンは落ち着いていながら、ボディは厚く熟成ポテンシャルも十二分に感じられます。

凄いですね、バローロの熟成したの。
少なくともモダンバローロの熟成はかなり半端ないってことが分かりました。
いや、奥が深い。ネッビオーロ、もっと試してみたいと思います。



【ピエモンテ: 10】古典派、モダン織り交ぜたバローロ5種類を効く Part1

こんにちは、HKOです。
本日はバローロ5生産者のうち比較的若いヴィンテージ3本のレポートです。
一言でいうとプルノットがものすごいいいです....


【データ】
マッソリーノはセッラルンガダルバに1896年に設立されたワイナリー。初代のジョバンニマッソリーノ氏から現代に至るまで100年以上続く老舗ワイナリーで、現在のオーナーはフランコ氏とロベルト氏。ヴィーニャ リオンダ、パラファーダ、マルゲリアという、フラッグシップとなる3つの畑を含む23haの畑を保有。
設立当初からワイン造りは変えておらず、伝統的なバローロの造り方に則り熟成に大樽を使うなど、自社畑を最大限に表現したワインを造り出しています。
セッラルンガは、バローロの中で最も東側に位置している石灰と砂の多い土壌です。

エルヴィオ コーニョはランゲ ブリッコ ラヴェーラの丘に1990年に創設された比較的新しいワイナリー。
ランゲの中でも最南端に位置する場所にあります。
3代目エルヴィオ コーニョは1950年代末「マルカリーニ」で醸造を担当した実績を持っており、現在は娘のナディアと夫のヴァルテール・フィソーレが担当しています。
ミクロクリマの影響を受ける石灰質土壌のランゲにおいて南東向きの丘陵地帯に位置している為、日照条件も良く、海洋性の穏やかな気候の恩恵も受けています。降水量は少ないです。栽培には除草剤などは使用しません。
醸造では自然酵母を利用し、最新技術と伝統的製法を併用し、酸化しやすいネッビオーロ種へのアプローチとして厳密に温度管理をする最新式ステンレスタンクを使用、熟成はクロアチア産の伝統的な大樽を使用しています。
今回のヴィーニャ エレナ リゼルヴァはブドウの良年にのみ作られるフラッグシップワイン。クラシックなスタイルのバローロです。

プルノットは1923年にランゲワイン協同組合をアルフレッド・プルノット氏が買取り、自身の名前でワイナリーを設立しています。拠点はモンフォルテダルバ。1956年の引退以降は醸造家ペッペ コッラ氏に引き継がれ、更に1989年にアンティノリに引き継がれています。畑の概念を早くに導入した生産者でもあります。
アンティノリに引き継がれて以降は優良畑「ブッシア」をはじめ、バルバレスコにも畑を買い増し、自社畑を少しずつ増やしています。
醸造に関しても、1999年には老朽化したセラーを最新の温度管理機能を備えた施設に一新し、発酵用のタンクは、古いコンクリート製のものから、ステンレス製に変更。熟成用の樽はバリックを採用しながら、スロベニアンオークの大樽もより小さい5,000~7,500リットルサイズへ変更しています。
今回のブッシア コロネッロはブッシアの畑内にあるコロネッロと呼ばれる僅か1haの区画を使用したもの。砂層、ローム層、粘土層が入り混じった土壌で、西南西向きで樹齢35-40年のブドウを使用しています。醸造においてはフレンチオーク大樽と一部バリック樽を使用、24ヶ月樽熟成の後、12ヶ月の熟成を経てリリースされます。


【テイスティングコメント】
生産者: マッソリーノ
銘柄: バローロ 2010

7000円
外観は淡いルビーで透明度は高く、粘性は中庸。
上白糖や濃密なイチゴ、ラズベリーのジャム、そしてほのかに焦げ香が混じる。イースト的な酵母の香りもあり、トーストを思わせる。香ばしいタバコ、土。 してドライハーブ、燻製肉や消毒液、鉄観音、甘草なとスパイス香もある。時折血のような香りもある。
基本的な印象としては伝統的なバローロ。
タンニンは意外にも丸く酸も穏やか。ほのかに後味に苦味が残るが悪くない。消毒液やイチゴジャム、枯葉の余韻が残る。舌触りが滑らかだから、意外にもキャッチーなキャラクターにも感じる。


生産者: エルヴィオ コーニョ
銘柄: バローロ ヴィーニャ エレナ レゼルヴァ 2009

15000円、WA96pt(2007)
外観は赤みの強いルビーで均一的な光彩、粘性は中庸。
強い抽出と瑞々しい薔薇を思わせる華やかな香り。こちらも比較的伝統的なバローロに思える。ザラメのような香りがあるが、より鉄分や血の香りを強く感じさせる煌びやかで華やかな香り、そしてイチゴやチェリーリキュールの様な果実味がある。少し土の様な風味もある。ローズウッドやユーカリ、リコリスの様な風味もある。炭焼きの様なアロマ。強い抽出と共に潤沢な果実味を包含している。こちらも伝統的。最終的には血と枯葉の香りに。
タンニンは丸く、酸も過剰な強さを感じない。わずかに苦味がある。イーストや薔薇、鉄分の余韻が残る。
柔らかいタンニンと裏腹に、意外と収斂性は高い。


生産者: プルノット
銘柄: バローロ レゼルヴァ ブッシア ヴィーニャ コロネッロ 2008

24000円、WA91-93pt
外観はバローロとは思えないほど極めて淡いルビーで粘性は中庸。
瑞々しく熟したイチゴやドライベリーが入り混じるフレッシュかつエレガントなバローロ。明るいキャラクター。果実味にザラメの様な甘さとイースト、グリニッシュなシナモンやリコリス、ほのかに薔薇や鉄観音の風味。パストラミハムや鉄釘の様な風味も入り混じる。フレッシュながらリキュールを思わせる瑞々しく甘露な赤系果実、どこか干した様な果実のアロマがある。最終的にはドライフルーツとイースト、枯葉の香りに包まれる。
伝統的なバローロを基調にしつつも、どこかブルゴーニュの様な洗練した味わいを感じる。
どちらかというとタンニンよりはるかに酸の方が際立っている...が荒い酸ではなく、目の細かい穏やかな酸ではあるのだか。やや果皮の風味があり、イチゴや茎のような余韻を残していく。


【所感】
今回は比較的新しいヴィンテージのバローロを試しています。正直言うと、個人的な経験からいくとちょっとびっくりなくらい飲みやすいバローロだったと思います。
個人的に気に入ったのはプルノットのバローロ ブッシア コロネッロ。飲んだ時に思ったのが「あっ、これブルーノ ジャコーザ的じゃん」と。
淡い色調、過剰なタンニンと抽出は無くて、瑞々しい果実味と凝縮感に満ちていて、幸せになれる系の明るいキャラクターのバローロ。それでいてしっかりとネッビオーロの薔薇の様な華やかさと鉄観音の様な乾いた葉の香りが主張している。スパイシーでフルーツリキュールを思わせる素晴らしいバローロです。透明感がありますよね。
味わいとしてはこの中で最も酸が突出しており、タンニンが無い代わりに熟成の骨格になってくれるのではないかと思います。輪郭も明確だし、かなりいいと思います。

次はエルヴィオ コーニョのヴィーニャ エレナ レゼルヴァですが、こちらもバローロとしては比較的飲みやすい性質がある様な気がします。
ただプルノットがミュジニー的だとすれば、こちらはジュヴレシャンベルタン的。
プルノットと共通するザラメの様な熟した果実味とトーストの様な風味はありますが、最も強く感じられるのは抽出の果皮成分の強さです。色合いとしてはプルノットと比べれば濃いですが、バローロを見渡した時に決して濃いとは言えない色調です。
ですが、明らかにこの中では薔薇や...ともすれば血液や鉄分の様な煌びやかでソリッドな要素が目立っています。少し土の要素やローズウッド、炭焼きの様な風味はありますが、基本これです。
極めて堅牢と言って差し支えないと思います。
ただフルーツ感は強くて凝縮した果実味はありますので、若いブルゴーニュを飲む感覚で飲めば十分に楽しめると思います。薔薇を思わせる香りが主張していて、大樽や酵母起因のイースト風味を感じさせるのはやっぱり伝統的な作りではあるなー、と思いますね。

最後のマッソリーノのバローロは最も伝統的で、いわゆる若い内は飲みにくいバローロのスタイルだと思います。(とはいえ、それでもチェレットやプロデュトゥーリ、マルケージ ディ バローロなんかと比べるとキャッチーではあると思いますが)
この中では強めの熟した果実の風味(少し乾燥させた様なスタイルの)はあれど、どこか消毒液を思わせるアロマやトースト、タバコや燻製肉、血の様な香りが堅牢な中で構成されています。
酸やタンニンは丸いので飲みやすくはありますが、いわゆる古典的なバローロのバランスを好まない人には少し厳しいかもしれません。
個人的にはしっかりと果実味があったので、まあ美味しくは飲めました。プルノットやエルヴィオ コーニョが美味しすぎたからちょっと微妙感はありましたね。

以上、バローロ3本でした。
プルノットはどこかブルーノジャコーザを思わせる味わいで凄い好みでしたし、基本的にはどれもしっかりと飲めるバローロで良かったです。
次回は熟成バローロです。



【ピエモンテ(&フリウリ):9】ラディコンの超絶オスラヴィエ、堅牢すぎた若いバローロ。

こんにちは、HKOです。
本日はイタリアのピエモンテ...とフリウーリです。

衝撃でもないごく当たり前の結論は最後で!!

とりあえず行ってみましょう。


【データ】
カンティーネ デイ マルケージ ディ バローロは1807年に設立された古い歴史を持つワイナリー。
今回のバローロはバローロ、モンフォルテ、カスティッリオーネ ファッレット、ラ モッラの日照土壌共に恵まれた複数の畑から作られる。傾斜が大きく、土性が中程度で珪砂を豊富に含む丘陵からなる。
収量は50hl/haで、手摘みで収穫されたブドウは、除梗と搾汁。温度管理されたステンレス槽内で発酵。マセレーションは8日間。ピジャージュは行う。
アルコール発酵後澱引き。その後セメント槽で2ヶ月間でマロラクティック発酵が自然に開始・終了。スラヴォニア製オーク、フランス製オークの大樽で約2年間熟成。12カ月瓶内熟成。

ラディコンは1980年代に設立されたフリウリに拠点を置く自然派ワイナリー。現オーナーはスタニスラオ ラディコン氏。本詰めを始めるにあたり、シャルドネやソーヴィニョンなど国際品種を導入、9,500~10,000本/haの高密植を実施、過熟気味のブドウを圧縮空気式の柔らかな圧搾にかけ、バリック内での醗酵・熟成というモダンな手法を取っていたが、1995年から約2週間のマセレーションと大樽での熟成を採用。より自然な生産をしている。今回のオスラヴィエ フォーリ ダル テンポはもともとD.O.C.でしたが、IGTに格下げされています。リゼルヴァの代わりにフォーリ ダル テンポという名称をつけています。


【テイスティングコメント】
生産者: カンティーナ デル マルケージ ディ バローロ
銘柄: バローロ 2008

外観は赤みの強いガーネットで粘性は高い。
薔薇やスミレの華やかなアロマや、焼いた藁、イースト、黒砂糖の様な香り。なめし皮や、瑞々しいプラム、ドライイチジクの果実味がある。リコリスや溶剤、インクやドライハーブの様な風味も感じられる。
典型的な古典派バローロで華やかさと酵母に通じるイーストっぽさ、瑞々しい果実味が特徴的。フレンチオークに起因するロースト香はない。
華やかな香りとは裏腹にパワフルな酸と共にアグレッシブなタンニンがあり、未だ堅牢かつ他を寄せ付けない雰囲気を纏う。薔薇やスミレ、黒系果実の果皮の風味が余韻として強く残る。禁欲的なワイン。


生産者: ラディコン
銘柄: オスラヴィエ フォーリ デル テンポ 2000
品種: シャルドネ、ソーヴィニヨン

外観はオレンジを帯びた黄金色、粘性は高い。
やや酸化を帯びた旨味が表出した味わい。
ドライアプリコットやリンゴなどの果実味、わずかにキャベツ、カラメルなどの風味、ややオイル感があり、幾つものハーブ、クローヴ、ローストナッツの風味。ハチミツやヨーグルトなどの風味。
非常に酸味と旨味が綺麗に表出しており、やや野生的なアロマとアプリコット、バター、カラメルの様な余韻が残る。
※抜栓前2週間前の澱落しが必要です。


【所感】
古典的バローロらしい非常に堅牢で厳しいタンニンとアグレッシブな酸に満ち満ちた味わいのワイン。
毎度ブルーノ ジャコーザのネッビオーロの幻想を求めてバローロを買うだけど、まあ無いよね...都合良すぎる...
ただしっかりと果実味があり、イースト的な要素や焼いた藁、黒砂糖の様な果実味が感じられる。樽と果実味は申し分ないが、とにかく抽出とイースト的な要素が目立ち、極めて堅牢な印象を感じる。2日目から少しは落ち着いたが依然強烈なパワフルさ。
何度同じ反省をしているか分からないけど、やっぱり若いバローロは難しい。
それに対してラディコンのオスラヴィエは誠に素晴らしかった。イカしたオレンジワインでいかにも自然派らしいアロマのある白。
というか自然派ワインて赤も白も近い感じの要素を結構感じるんだけど、まさにそれ。
ドライアプリコットやリンゴなどの旨味を感じさせる味わいにオイル感やローストナッツ、ヨーグルトの様な風味を感じさせる。カラメルのような甘さも。
熟成してるんだろうが、そもそも自然派ってこんな感じの味わいが多いので、熟成感はあまり感じない。というかありすぎて熟成起因なのか自然派独特の作りなのかわからない。
ただそんなんを吹き飛ばすくらい美味いワイン。酸味と旨味の表出が絶妙。

バローロは全然でしたが、ラディコンは熟成してるのもあるけど最高に美味かったです。
イタリアの名醸地であればあるほどフランスのワインより堅牢で厳しいワインが多いので、もういい加減若いのは控えよう...。
低価格帯フランスよりはすぐに飲んで美味しいの多いんだけどなあ。むずい。




【イタリア: 8】プロデュトゥーリ デル バルバレスコ、 バルバレスコ オヴェッロ 2008

こんにちは、HKOです。
本日はプロデュトゥーリ デル バルバレスコのバルバレスコ オヴェッロです。
個人的にイタリア随一のお買い得バルバレスコだと思っていて、レゼルヴァが発売される時はいつも購入しています。
古典的で、かつ上位クラスのワインが7000円で買えるというのはなかなか無いかも。
王道のバルバレスコなので、結構オススメです。


【データ】
プロデュットーリ デル バルバレスコはピエモンテに拠点を構える世界最高峰のクオリティのネッビオーロを生み出す協同組合(所属組合員は56人)。バルバレスコの中でも最高の区画を所有し、特にレゼルヴァ...アジリ、オヴェロ、モンテフィコ、モッカガッタ、モンテステファノ、リオ ソルド、ラバヤ、ポラといった9つの単一畑バルバレスコは世界的にも高い評価を受けています。
栽培は契約農家(組合員)によるもので、栽培、醸造方法は不明ですが、伝統的な方式で行われていると推測されます。(味わいの方向性的にそんな感じです。)


【テイスティングコメント】
生産者: プロデュトゥーリ デル バルバレスコ
銘柄: バルバレスコ リゼルヴァ ヴィネッネィ イン オヴェッロ 2008

約7000円、WA95pt
外観は透明度の高いやや濁ったガーネット、粘性は高い。
古典的な造りのバルバレスコだ。
イーストや焼いた木材の様な香ばしいアロマに、ややプラムやブラックベリーの果皮のニュアンス、スミレや漢方、なめし革の要素。
リコリスなどのハーヴィーな風味、ナツメグや茎の様なニュアンスが感じられる。
王道的なネッビオーロの造りで、リコリスやハーブのニュアンスと共にタニックな黒系果実が感じられる。
酸とタンニンは激しくエッジの効いたピーキーさがある。ボディは極めて厚く、筋肉質な印象を受けるワイン。


【所感】
ほぼ最高レベルの古典派バルバレスコだと思います。新樽のニュアンスはあまり感じられない(旧樽っぽい?)です。
最良の畑なだけに熟度は高く、タニックてパワフルなワインだと思いました。
華やかで、どこかまろやかさを感じさせるアジリと比べると、より黒系果実寄りのアロマで、力強い体躯や酸を持っている様に思えました。
長期熟成に耐えうる強いボディを持っているが、若いうちから最高に美味なワイン、という事はない。
しかし、さすがのプロデュトゥーリ デル バルバレスコ。この値段でこの品質とは...
個人的にはアジリの方が好き。





プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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