【ピエモンテ:15】バローロ テイスティング(エルヴィオ コーニョ、カヴァロット) Part.1

こんにちは、HKOです。
本日はバローロです。
2日にわたって更新となりますが、本日はエルヴィオコーニョ、そしてカヴァロットの上位キュヴェとなります。


【データ】
エルヴィオ コーニョはランゲ ブリッコ ラヴェーラの丘に1990年に創設された比較的新しいワイナリー。
ランゲの中でも最南端に位置する場所にあります。
3代目エルヴィオ コーニョは1950年代末「マルカリーニ」で醸造を担当した実績を持っており、現在は娘のナディアと夫のヴァルテール・フィソーレが担当しています。
ミクロクリマの影響を受ける石灰質土壌のランゲにおいて南東向きの丘陵地帯に位置している為、日照条件も良く、海洋性の穏やかな気候の恩恵も受けています。降水量は少ないです。栽培には除草剤などは使用しません。
醸造では自然酵母を利用し、最新技術と伝統的製法を併用し、酸化しやすいネッビオーロ種へのアプローチとして厳密に温度管理をする最新式ステンレスタンクを使用、熟成はクロアチア産の伝統的な大樽を使用しています。
今回のブリッコ ペルニーチェはノヴェッロ村で栽培されるネッビオーロのクローン品種であるランピアの最上級のものを使用したキュヴェ。

カヴァロットはボスキスの丘の頂上に拠点を構えるカスティリオーネファレットの名門生産者。
創業は1929年、元詰めは1948年から開始。葡萄の栽培から醸造について、古典的な製法と味わいにこだわっています。
畑では、基本無農薬。除草剤もボルドー液のみで一切使用しない。房を制限するグリーンハーベストもほとんど行わない。自然のまま栽培し、雑草はある程度の高さまで刈り込んでからは自然に任せる手法を取っています。
カヴァロットの中でも最上とされるサン ジュゼッペ畑はカスティリオーネで、最も高い標高に位置する畑。標高300m~350m。樹齢は75年以上。地質全体に占める、砂質の割合は約20%程度。
そこで収穫したぶどうは35年以上使い続けている巨大なスラヴォニアンオークで栽培~熟成させる。


【テイスティングコメント】
生産者: エルヴィオ コーニョ
銘柄: バローロ ブリッコ ペルニーチェ 2010

13000円、WA93pt
外観は透明度の高いルビーで粘性は中庸。
ファーストノートは繊細で、薔薇やスミレなどの華やかな香りと共に、アメリカンチェリーなどの赤系の果実とオレンジやシトラスなどの柑橘の果実味が入り混じる。ほのかにイーストの香りも。甘い芳香というよりナチュラルな果実の香り。非常にピュアで、マスカテルな爽やかなフレーバーがある。 ローストした樽の香りは控えめでほのかにイースト香りがある。ラベンダーや青い葉、生肉、ユーカリやクローヴの要素がある。
タンニンは甘いが収斂性があり、酸は比較的強く表出している。果皮の厚いブルーベリーやブラックベリー、燻製肉の様な余韻を残していく。


生産者: カヴァロット
銘柄: バローロ ブリッコ ボスキス ヴィーニャ サン ジュゼッペ 2009

16000円、WA90pt
外観はガーネット、粘性は中庸。
ファーストノートはかなり強めのローストがかかった樽香を感じさせる。五香粉や深煎りのコーヒーの様なブルゴーニュにも通じる樽のニュアンス。その裏にイーストや塩気のあるドライシェリー、ブラックベリーなどの黒系果実のジャムを思わせる香りがある。クローヴやクミン、燻製肉の様な風味。薔薇の様な華やかさ、時折MLFの様なまろやかさが混じってくる。ストロベリーガムの様な甘やかさが出てくる。
こちらもタンニンや酸は滑らか。香りのロースト香とは裏腹に非常にキャッチーなオレンジとストロベリーとその梗を思わせるフレッシュな果実の余韻が広がっていく。
徐々に収斂性が目立ってくるが、かなりいい。


【所感】
まずはエルヴィオコーニョ。
相変わらずピュアで透明感のある香りのバローロ。ピノノワールにも通じるエレガンスがある。
赤系の果実が強調されるブルーノジャコーザにも近いタイプだと思います。
繊細な香りを放ちながら、ボディは堅牢で力強く、一見滑らかに見えるタンニンは収斂性に富んでいる。
薔薇やスミレのような華やかさがあり、赤系のクリアな果実味、オレンジの様な柑橘を思わせる酸の清涼感が伴う。そしてバローロによく見られるイーストの香りがある。樽の感じはあまり無いかもしれない。ついで生肉を思わせる旨味、ハーブの芳香が感じられる。
香りはさすがに物凄い良いですが、やはり収斂性が高いですね、これはやっぱり落ち着くのに時間がかかりそう。
キャッチーな側面がありながら、やはりバローロって感じですね。
次のカヴァロットはかなり個性的な印象を受けますね。
というのも、大樽で熟成していながら、かなりロースト香の影響を強く感じるワインとなっています。
五香粉や深煎りのコーヒーのニュアンスがまず前面に来て、その奥にイーストやドライシェリーなどの塩気を感じる要素が現れる。黒系果実のジャムやMLFの影響も強く感じられます。香りからかなり高級感が漂うバローロ。
凝縮感もグリセリン感もあり申し分無い。タッチは滑らかながら、タンニンの収斂性は高い、こちらは熟成を待って落ち着くしか無いかもしれません。
いずれもタイプは違いますが、相当良いと思います。
タンニンは...ランゲの肉料理で抑えていきましょう!

【ピエモンテ:14】プルノットのスタンダードライン バルバレスコ 2011を利く。

こんにちは、HKOです。
以前ピエモンテの特集をやった時に載せ忘れたのが1件あったので更新します。
プルノットのスタンダードなバルバレスコです。


【データ】
プルノットは1923年にランゲワイン協同組合をアルフレッド・プルノット氏が買取り、自身の名前でワイナリーを設立しています。拠点はモンフォルテダルバ。1956年の引退以降は醸造家ペッペ コッラ氏に引き継がれ、更に1989年にアンティノリに引き継がれています。畑の概念を早くに導入した生産者でもあります。
アンティノリに引き継がれて以降は優良畑「ブッシア」をはじめ、バルバレスコにも畑を買い増し、自社畑を少しずつ増やしています。
醸造に関しても、1999年には老朽化したセラーを最新の温度管理機能を備えた施設に一新し、発酵用のタンクは、古いコンクリート製のものから、ステンレス製に変更。熟成用の樽はバリックを採用しながら、スロベニアンオークの大樽もより小さい5,000~7,500リットルサイズへ変更しています。


【テイスティングコメント】
生産者: プルノット
銘柄: バルバレスコ 2011
品種: ネッビオーロ100%

外観は透明度の高い赤みの強いガーネット、粘性は中庸。
古典的なバルバレスコの作りではあるものの、ブルーベリーやブラックベリーの黒系小果実の果実味と、薔薇やスミレの華やかな赤い花の香りが突出。エナメルリムーバー、それと共にイーストの香りが感じられる。多少グリニッシュでクローヴなどの要素も。燻製した肉や鉄観音、ベニヤ板。
かなり果皮の香りが強く出ており、合わせてタニック、旨味が強く表出している。酸は分厚く、旨味が強く、タンニンはかなり収斂性が高い。抜栓直後は比較的飲みやすいが、時間を置くとやや飲みにくいバルバレスコ。


【所感】
実はこの時あまり体調が宜しくなく、咳をするだけで地獄の苦しみを味わうというやな感じになってたのですが、よくもまあテイスティングコメント取れたもんだ...
そんな感じで、プルノットのバルバレスコですが印象としては結構トラディショナルな感じがしますね。華やかで繊細なネッビオーロといった感じで。
基本的にドライで、甘みやローストの要素が少なくてブルゴーニュ的な色の濃淡のワインだと思います。
ただ時間を置いて、少し参加した時に、かなりタンニンと酸が出てくるので、そうなった時は飲みにくいですね、流石に...トラディショナルの宿命的なところはあるのかもしれませんが。
わかりやすいですが、タイミングによっては飲みにくいワインだと思います。


■横浜のレストランで。


熟成パルマ ディ プロシュート



カプレーゼ



カルパッチョ



タラバガニのトマトソース



ビステッカ ディ フィオレンティーナ(Tボーンステーキ)




【ピエモンテ: 13】バローロ伝統派生産者、変わらぬ思想と伝統の現在

こんにちは、HKOです。
昨日の革新派バローロに引き続き本日は伝統派バローロの代表的生産者をレポートします。
今回はジャコモ コンテルノ、アルド コンテルノ、ジュセッペ マスカレッロです。(※ブルーノ ジャコーザは過去記事をご参照くださいませ)


【データ】
ジャコモ コンテルノは1908年に創始者のジョヴァンニ コンテルノによって設立されたワイナリー。最も伝統的なバローロ生産者とも言われています。
現在は3代目のロベルト コンテルノが指揮を取っています。長期間の果皮の浸漬と、巨大なスラヴォニアン・オーク(大樽)での所有している自社畑はバローロ地区の南東部、西南西向きの標高約500mにある石灰混じりの畑、カッシーナ・フランチャ。
収穫は手摘み。収穫の段階でフラッグシップであるモンフォルティーノに使用するブドウを選別しています。
ブドウの収穫後は100%除梗した後、ステンレス製の発酵タンクで自然発酵、温度調節も行わない。果皮の浸漬は5週間にも及び、マロラクティック発酵後、ワインはガルベロット社製のスラヴォニアン オークの巨大な旧樽で、リゼルヴァは最低7年間、カッシーナ フランチャは4年間熟成されます。

アルド コンテルノは、1969年にジャコモ コンテルノから独立した、ジョバンニ コンテルノ氏の弟のワイナリー。モンフォルテ ダルバに拠点を置いています。今や本家ジャコモ コンテルノに勝るに劣らない評価を受けています。
拠点を置くモンフォルテ ダルバ村は非常に冷涼で、標高は480m。土壌はディアーノ砂岩と呼ばれる茶黄色の土壌と重い土壌が中心で力強いワインを産出します。収量は低めに抑え、ブドウを収穫。
圧搾はほとんど圧力をかけず、発酵は荒いタンニンを抑制する為、最新のコンピューター制御が可能な発酵槽で温度を管理をしながら、短めに行われます。スラヴォニアン・オークの大樽で2~3年間の熟成。バリックは使用しません。今回はブッシアの中の樹齢約65年のクリュ「チカラ」熟成は、大樽にて36ヶ月間行った後、瓶熟12ヶ月間を経てリリースされます。

ジュゼッペ マスカレッロはジュゼッペ・マスカレッロ1世が1881年にモンフォルテ ダルバに設立した老舗ワイナリー。現在の当主は3代目のマウロ マスカレッロ氏。
ヴィレッロ、ブリッコ、サント・ステファノ・ディ・ベルノなど、いくつも畑を所有していますが、最も銘醸畑と名高いのは 96%が石灰質の単一畑モンプリヴァート。
熟成は伝統的ながら一部近代的ない手法も取り入れており、ブドウの樹や土を入れ替え。グリーンハーベストを行い1ha当り6~6.5tという低収量での収穫などを行っています。熟度の高いブドウを手摘みで収穫。基準に達しないブドウは使用しません。
また1970年からは畑ごとの醸造も開始しています。
今回のバローロ モンプリヴァートは優良ヴィンテージでのみ瓶詰めされるワイン。基準未満のクオリティと判断されたヴィンテージはネッビオーロ・ランゲとして販売されます。セメントタンクとステンレスタンクで発酵、20日~25日マセラシオン、MLFの後、スラヴォニアンオーク(大樽)で38カ月熟成。


【テイスティングコメント】
生産者: アルド コンテルノ
銘柄: バローロ ブッシア チカラ 2006

20000円、WA94pt
外観は澄んだ淡いガーネット、粘性は中庸。
フレッシュかつ、やや果皮の影響が感じられるダークチェリーやブルーベリーの様な果実味、イーストや薔薇の香り、みずみずしい茎や葉、ほのかにグレープフルーツ、黒砂糖の様な甘さや凝縮感が感じられる。
その中に全体に行き渡る様な鉄分や血液の様なニュアンス、クローヴ、ほのかに鉄観音や井草の様な風味などの要素が感じられる。
フレッシュで輪郭がはっきりとしたバローロ。旨味も充実している。
タンニンは継ぎ目がなく、酸味がやや旨味と共に際立っている。薔薇や旨味の強いプラムなどに違い戻し香の行き渡り方を感じる。


生産者: ジャコモ コンテルノ
銘柄: バローロ カッシーナ フランチャ 2005

28000円、WA95pt
外観は澄んだ淡いガーネット、粘性は中庸。
ピノノワールの様な極めて繊細でピュアなネッビオーロ。血や鉄分の様な香りと共に、タイムや、フレッシュなダークチェリーやブルーベリーの様な果実味、オレンジの様な清涼感、薔薇の様な華やかさが感じられる。なめし革やローズヒップティー。クローヴ、フレッシュハーブの様な多少青い香りが感じられる。ごく僅かに井草の要素があるが、基本的には旨味に満ちたピュアな果実味が主体。凝縮感はかなり強く、高度にバランスが取れている。
タンニンは強固だが、なめらか。酸は生き生きとしており、強い旨味を伴っている。薔薇や藁、茎の戻し香と共にプラムやブドウの果皮の余韻が長く続いていく。


生産者: ジュゼッペ マスカレッロ
銘柄: バローロ モンプリヴァート 2005

28000円、WA94pt
外観はカッシーナフランチャと比べると、少し淡いガーネット、粘性は中庸。
最もトラディショナルに違いバローロのスタイルでイーストや藁の様なアロマと共に、極めてプラムやアプリコットを思わせる酸味と旨味のバランスが取れた果実味が最も強く感じられる。上白糖や薔薇のドライフラワー、焼きたてのパン ド ミ、生肉、鉄観音などの乾いた葉の要素、そしてスパイシーなジンジャーブレッドやクローヴの様な要素が感じられる。
酸とタンニンは共に力強いがバランスが取れている。
ジンジャーブレッドや果皮、干したプラムを思わせる戻し香。余韻は長く極めてよく出来ている。


【所感】
マルケージなどの生産者を伝統的と考えると幾つかパターンがある様な気がしています。
果実が瑞々しいタイプはブルーノジャコーザ、ジャコモコンテルノ、エルヴィオ コーニョ。
濃密でイーストや藁の香りが漂うタイプはジュゼッペ マスカレッロやフラチェスコ リナルディなど。
その間にアルドコンテルノがいる感じです。
そんな感じで一口に伝統派と言ってもかなり味わいに差異があるわけですが、共通してどちらも果実の本来の第一アロマや第二アロマがメインで、第三アロマは控えめだという点です。酵母とか果実本来の香りですね。
これが明らかに強く、フラワリーで酵母が目立つ香りが出てくると、そんな感じです。

ちなみにジャコモコンテルノとアルドコンテルノを比較するとなかなか違いがあって面白いですね。
アルド コンテルノはしっかりと果皮の色付きがあるのに、どちらかというと酸味が優勢、黒系果実のネットリとした甘さが特徴的。
ジャコモコンテルノは色調はアルドコンテルノと比べるとわずかに淡く(本当にごく僅か)、香りはピノノワールの様に繊細なのに、タンニンが圧倒的に優勢で、血や鉄分の風合いが強い。ヴォーヌロマネ的なエキス感、凝縮感に強靭なタンニンを乗せたとかそういう感じ。
マセラシオンの期間が長いのに色付きかやや薄いっていうのも変な話ですが、プレスにもよるので、まあそんなもんなんでしょうね。
極めてピュアで妖艶なネッビオーロですが、簡単に手を出すと、そのタンニンでしっぺ返し食らいますよ、と。
アルドコンテルノはその点、誘惑する様な妖艶さはないんですけど、ちゃんと甘いタンニンや黒砂糖の様なアロマがあって、バランス良く、イメージ通りの良いワインを演出していると思います。若いヴィンテージ飲むとこっちも厳しいんですがね、2005年が最初の飲み頃っぽい様な気がします。
ジュゼッペ マスカレッロは個人的には典型的なバローロを最上のクオリティで実現させている様な印象ですね。
酵母的なニュアンスとスロヴェニアンオークのニュアンスが前に出ていて、そのなかに旨味たっぷりのプラムやアプリコット、フラワリーなニュアンスがある様な気がしています。上白糖の様な強い甘さもありますし、まあ大筋キャッチーですし、上質ですね。多分しっかりと熟成もしてくれるものだと思います。複雑ですし。

伝統派と革新派を飲み比べると、やっぱり醸造的な要素ははっきりと出るものなんですね。
根本の品種特性は変わりませんが、受ける第一印象が全く違います。熟成によって醸造的要素が削ぎ落とされる事によって似通ってくるとは思いますが、ファーストインプレッションって大切だなぁと思うわけですね。
素っぴんが好きか、バッチリ化粧をした方が良いか好き好きって感じとなんか似てますね。






【ピエモンテ:12】モダン バローロ、近代派の成熟と今

こんにちは、HKOです。
本日はちょっと毛色が変わりまして、バローロを幾つかレポートします。

バローロといえば80年代に起こったバローロボーイズ達の革新が有名ですね。
結果として改革運動の末、国外市場での立ち位置を確保して、ランゲに富をもたらしたという。
主に革新派のバローロといえば、バリック樽の使用、マセラシオンの短縮、剪定の厳格化が、主な特徴として挙げられるのですが、どうにも紐解いていくともっと概念的で。
飲みやすいキャッチーなバローロであるべき、という部分に集約していると感じました。
革新派だからといって100%バリック新樽な訳でもないし、伝統派だからといってヴァンダンジュ ヴェールトをしない訳でもない。
単純に長期熟成型か、すぐに美味しく飲めるものを作るのか、スタイルの違いに過ぎないと。

今回は2回にわけて伝統派と革新派の仕事を見ていきたいと思います。
まずはロベルト ヴォエルツィオの古酒、そしてヴィエッティの新しいヴィンテージです。

【データ】
ヴィエッティはピエモンテ カスティリオーネ ファレットに20世紀初め頃に設立されたワイナリー。
現在もヴィエッティ家によって保有されており、オーナーはマリオ コルデーロと醸造家も務めるルカ クッラード。バローロのアメリカへの市場を開拓したワイナリーの一つ。
今回のバローロ ロッケはカステリオーネ・ファレットにある単一畑ロッケによるもので、ヴィエッティのフラッグシップとも言える一本。
収量は28hl/ha、ステンレスタンク内でポンピングオーバーを行いながら5日間アルコール発酵。30~32度で20日間発行。マセレーション20日間。
バリック樽で4週間マロラクティック発酵させ、31か月間スラヴォニアン・オークで熟成を行う。

ロベルト ヴォエルツィオは1986年にピエモンテ ラ モッラに設立されたワイナリー。近年特に評価が高いワイナリーで近代的な特徴と古典的な特徴双方を併せ持っています。
このワイナリーの大きな特徴は徹底した低収量です。
冬季に5~8芽を残して強剪定、7月中旬に1本の樹当たり5房だけ残して、約50%以上の房が取り除かれます。8月中旬頃きは房の下部をカット。
これによって1ha当たり6,000~8,000本の樹からバローロに使用する葡萄は1本の樹からわずか500~700gに抑えられます。化学肥料や除草剤、殺菌剤、防カビ剤は一切使用しない。セラーでは醸造からボトリングまで基本的にはシンプルに行っています。
今回のラ セッラはラ モッラらしい若干の砂質が入り混じる土壌のもの。バリックと大樽を併用し24ヶ月熟成、さらにステンレスタンクで8ヶ月熟成&瓶熟成。
年間生産本数は約4万~6万本。


【テイスティングコメント】
生産者: ロベルト ヴォエルツィオ
銘柄: バローロ ラ セッラ 1995

約12000円、WA87pt
外観はややオレンジを帯びた均一的なガーネット、粘性は高い。
バローロボーイズながらクラシックな風合を感じるバローロ。薔薇やスミレのドライフラワーの華やかな香り、濡れた木材や土、茎の様な極自然的な香りと共に、リコリスやスパイス、ほのかなクレゾールの香り、黒オリーブやブルーベリーの様な果実味があり、鉄観音や藁、パストラミハムの様なスパイシーな風味と生肉の様な風味、ユーカリやナツメグ、ほのかにニンニクの要素や炭焼きなどの樽の要素、ミルクの香りも帯びてくる。華やかさが突出しており、それと共に強い旨味が突出。特に甘さを伴った感じは無い。凝縮した旨味とドライフラワーの奔流。焼いたゴムなどの風味が感じられる。
タンニンはかなり強めで、それに対して酸は穏やか。感じられるタイヤの様な焦げ香、鉛筆の芯、リコリス、ブルーベリーの様な戻し香が感じられる。


生産者: ヴィエッティ
銘柄: バローロ ロッケ 2005

32000円、WA95pt
外観は澄んだ濃いめのガーネット、粘性は中庸。
かなりモダンなスタイルにも見えるバローロで、明らかなマロラクティック発酵と新樽の影響が前に出ている。バニラや熱したバターの様な滑らかな香りの中に、干したブルーベリーやダークチェリーの様な果実味、薔薇の様な華やかさが見事に収まっている。凝縮感が感じられる。香木などの香りが強いが、徐々にイースト的な香りや葉巻、燻製肉、溶剤などの要素。
クローヴ。徐々にカラメルトフィーにも似た甘い芳香が強く表出してくる。アタックはボルドー的だが、その奥にあるのはまごうことなくネッビオーロ。
酸とタンニン共に生き生きとしている。若干タンニンの方が優勢で引っかかりがある。ダークチェリーの果皮やバニラの様なまろやかな戻し香が極めてエレガントで余韻も長い。


【所感】
ロベルト ヴォエルツィオのラ モッラにある単一畑ラ セッラ。
超低収量で、熟成にバリック、大樽、ステンレスタンクを併用したバローロ。このワインを飲んで思ったのは、熟成によって醸造的な要素を差し引いていくと、ネッビオーロの本来の味わいが出てくるという点。スペルスやサンドローネのラ ヴィーニェはまだ醸造的要素が強く残っていました。(故にボルドー的な古酒の風合いがありました)
ラ セッラはその点、早く熟成が進んだのか、極めて古風なネッビオーロの味わいが感じられました。
フラワリーなネッビオーロの個性とバローロらしい藁の風味、それと共に熟成したニュアンスとクレゾールの香りが感じられます。
まだ熟成過程であるのは間違いなさそうなので、美味しいかは別問題ですが、先進的であるにも関わらず、極めてネッビオーロの特徴がハッキリと表出している感じです。ゴムの香りは樽が変質した感じですかね。
タンニンもまだまだ鋭角です。
もう少し熟成すればこなれてくると思います。

次にヴィエッティのカスティリオーニ デル ファレットにある単一畑ロッケ。
どうやらざっと見る限りヴィエッティ、パーカーポイントメッチャ高いですね。07なんて99点...
そんな感じで、いかにもアメリカ市場向け、といった感じのモダンバローロです。ガヤとかに近いと思いますが、まあ近いだけで違います。
マロラクティック発酵のニュアンスと甘い樽香が特徴的な極めてキャッチーなネッビオーロだと思います。
熱したバターやバニラのまろやかな風味、熟した黒系果実、華やかな薔薇の風味、カラメルトフィーや燻製肉などが力強く立ち上ってきます。
極めて豪華で近づきやすいネッビオーロ。
でもやっぱりネッビオーロだからタンニンは鋭角的。
醸造で分かりやすく、そして徐々にゆっくりとその本質を伝えるという部分に関しては、とてもユーザーフレンドリーだし、バローロの良さが伝わりやすく素晴らしいと思います。
こうあるべきだからお前ら理解しろ(プロダクトアウト)ではなく、ほらいいでしょ、でもよく見るとちゃんとネッビオーロしてるんだよ?(マーケットイン)って歩み寄る姿勢が今の現状に繋がってるんですねえ。なんとも素敵な事です。

ただとはいえ名声を高めるのも大切ですが、片一方でその地域ならではの、地域を象徴するような確固たるポリシーを持った生産者も、地域の特徴を確立させる為に必要です。
次回は伝統的生産者をレポートします。



【ピエモンテ:11】古典派、モダン織り交ぜたバローロ5種類を効く Part2

こんにちは、HKOです。
先日の続き、バローロです。
本日は熟成したモダンバローロ2種類です。


【データ】
ガヤはピエモンテにおける最も偉大な生産者のうちの一人です。
ポートフォリオも膨大でバルバレスコやバローロ、そして各々の単一畑。国際品種を使用したダルマジ、買収した生産者のブルネッロなど。いずれも比類なきレベルの高さ。価格も比類なき高さ。
国際品種の導入、単一畑、バリック樽の使用などイタリアにおいて革命的なシステムを数多く取り入れています。
特に単一畑はバルバレスコやバローロの名前をあえて使用せずランゲに格下げして生産しています。
なので、ボトルにはバルバレスコやバローロの表記こそありませんが実態としてはバローロ、バルバレスコの偉大な畑から産出される卓抜したネッビオーロです。
収量制限がなされて収穫された葡萄は、果皮と共に3週間ステンレスタンクで発酵が行われます。 バリック樽で12ヶ月熟成、その後さらにオーク大樽で約20ヶ月間の熟成を行われます。
通常伝統的なネッビオーロは大樽を使用しますが、最近のモダンバローロよろしく(最近は少なくないですが)バリック小樽を使用しています。技術革新も受け止めて比較的モダンな作りと言えると思います。


ルチアーノ サンドローネはエリオアルターレなどと共にモダンバローロの枠内で語られるバローロボーイズのうちの一人。大手ネゴシアンで仕事をする中で、カンヌビの畑を1978年に購入した事でワイナリーをスタートさせます。現在はルチアーノと弟のルカは栽培醸造を行っています。
カンヌビの麓にある醸造所は近代的な設備を備え、バローロ、ランガ、ロエロの地区に最上の畑を所有しています。
今回のレ ヴィーニャは4つの異なる畑のワインをブレンドさせて作るバローロ。 内訳は標高250m、樹齢20年、石灰岩粘土質のヴィニャーネ(バローロ地区)、
標高400m、平均樹齢25年、石灰岩質マール他、密度が濃く多様な土壌のメルリ(ノヴェーロ地区) 、
標高450m、平均樹齢45年、石灰岩質マール他、密度が濃く多様な土壌のコンテルニ(モンフォルテ ダルバ地区) 、標高250m、平均樹齢15年、石灰岩質マール、砂質のチェレッタ(モンフォルテ ダルバ地区) 。
それらの畑から収穫したブドウを畑別に醸造。ステンレスタンクでマセラシオン9~10日間、発酵28日間。フレンチバリックで5ヶ月程度MLF。個々の樽を翌年夏にブレンドし、同じ樽で秋まで熟成後、さらに18ヶ月瓶熟。


【テイスティングコメント】
生産者: ルチアーノ サンドローネ
銘柄: バローロ レ ヴィーニェ 2002

WA88pt、25000円
外観は淵にオレンジを帯びた均一な淡いガーネット、粘性は中庸。
枯葉や濡れた土、萎れた薔薇の様な香り、そしてブルーベリーやオリーブの様なやや塩気を感じさせる果実味、サフラン、クミンなどのスパイス、消毒液とともにお出汁にも似たキノコ系の旨味が表出している。
バニラのアロマが全体の印象をまろやかに。ドライハーブや燻製肉、鉄観音、炭焼きやイーストの様な香りを帯びる。ボルドー的な熟成感と共にバローロ的なアロマもしっかりと残している。徐々に渾然一体となったナツメグを含むソースのような香りも。
酸とタンニンは泣くほど絶妙で、優美の一言。
引っかかりは一切なく、滑らかで、土やドライフラワー、熟したベリーのような余韻が残る。
華やかかつエレガント。モダンスタイルが醸し出す絶妙な熟成香。


生産者: ガヤ
銘柄: スペルス 1999

WA94pt、41000円
外観は淵にオレンジを帯びた均一な淡いガーネット、粘性は中庸。
熟成したボルドーの様な見事な熟成感をまとった一本。腐葉土やキノコの様な熟成香と、円熟したブラックベリーやダークチェリーのジャムの様な果実味、ドライフラワーの様な香りが入り混じる。そこバニラのまろやかな芳香が香りにしなやかさを与えている。葉巻、西洋杉などの香り、そして熟成肉、タイムやリコリス、ナツメグなど熟成によるスパイシーな香り。炭焼きの様なアロマが漂う。
ボルドーの2回目の飲み頃を思わせる香り、ただしその中にある酸味の豊かさとなめし皮の様なアロマは非常に官能的。
枯葉や鉄観音、腐葉土、キノコ、ブラックベリーなどの様々な要素の余韻を残し、口の中のボディも厚い、さりとて酸とタンニンは穏やかで、完全に素晴らしい状態になっている。ほのかに苦味はあるが、ほぼ完璧な状態だと思われる。


【所感】
何これ最高かよ...
ちょっと絶句してしまう位いいです、この2本。
両方ともモダンバローロなんですが、メチャクチャ綺麗に熟成してる。経年としてはさほどではないので、奇跡的にバランスの良いタイミングで飲めたかもしれません。
私の中での認識では、いくらモダンバローロでもタンニンと熟成香とタンニンが張って微妙な時期であると思っていたのですが...これはすごいですね。
やっぱり実際飲んでみない事にはわからんなぁ。
うまい具合にタンニンも酸もこなれていて、いい感じの熟成感と適度な果実味が残っていて、綺麗な旨味があります。エレガントです。
ルチアーノ サンドローネはまだそれでも足りてないと思いますが、ガヤの方は1次ピークを迎えていると思います。まだ熟成香主体の2次ピークは先でしょうが、その一つ前のベストな状態だと思います。
というか1999ってこんなに熟成しているものか???

という前提の下、個別に。
まずルチアーノ サンドローネ。
枯れた葉や濡れた土、萎れた薔薇の様な香りを主体としながら、ブルーベリーやオリーブなどの塩気を感じる果実味、様々なスパイス。バニラのアロマやイーストの香りが感じられます。
熟成香ははっきりしていながら、まだまだボディは若々しく張ってます。酸とタンニンはテイスティングコメントの通り滑らかで優美。受けた感じではボルドースタイルの熟成香とネッビオーロの本来の香りの丁度真ん中くらいの風合いってところでしょうか。
ガヤほどではありませんが、こちらも突出した熟成ネッビオーロといった感じでしょうか。

次にガヤ。
ひょっとしたら今まで飲んだ熟成ネッビオーロの中ではほぼベストだったのでは...という感じ。
ネッビオーロは熟成に極めて時間が掛かるという話から80年代、70年代を幾つか飲んだのですが...勿論いいものはありましたが、全体的にどこかアンモニア香が強いものが結構多く苦手意識がありました。
ただこれは凄い!行ってしまえば、まるでボルドーの最上の古酒の様ではありませんか!
腐葉土やキノコ、そして熟成して円熟した黒系果実のジャムの様な果実味、ドライフラワーの香りがこれがもう見事にバランスが取れていて素晴らしい。そしてフレンチバリック的なバニラ、葉巻、西洋杉の香りもあり複雑さも演出してくれています。なめし革の様な要素もあり、非常に官能的でもあります。
酸とタンニンは落ち着いていながら、ボディは厚く熟成ポテンシャルも十二分に感じられます。

凄いですね、バローロの熟成したの。
少なくともモダンバローロの熟成はかなり半端ないってことが分かりました。
いや、奥が深い。ネッビオーロ、もっと試してみたいと思います。



プロフィール

HKO(はこ)

Author:HKO(はこ)
HKOです。
世界を股にかけない普通の内勤サラリーマン。
体はピノノワールとシャルドネで出来ていますが、最近は専らシラー、グルナッシュ、ヴィオニエなどの南仏品種や、ジンファンデルみたいな濃い品種が好み。貴重なワインや興味深いワインを求めて日夜東京を徘徊する日々。
食べ歩きを2014年頃からスタート。
ミシュラン星付きフレンチ(2017年度版まで)制覇まであと2店舗。
2店舗のハードルが高いので、最近は手軽なビストロなどを周遊。
基本フレンチ/イノベーティブ/フュージョンを愛するが、イタリアンや和食にも食指を伸ばす日々。ペアリングは考えず、皿の中で終局する世界観を大切にしています。

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